昨日、スーパー銭湯をガッツリ堪能して帰って来た翌日の朝。
「おはよ」
『アイラブ北海道』のクソダサTシャツを着たわたしが目を覚まして挨拶をする。
「おはようございます」
スーパー銭湯で買った『サッポロ最高』のクソダサTシャツを着たまま部屋の掃除をしてた処女が朗らかに挨拶をする。
「……ZZZ」
一人だけ大人だから!でひたすらザンギ食いながらビール飲んだ挙句『ビール万歳』のクソダサTシャツを買わせた痴女はまだ寝ていた。
「おきろ痴女」「はう!?……お、おはようございます」
尻を蹴る。めっちゃ申し訳なさそうに痴女が謝る。一人だけ寝てるとか護衛の自覚あるのかこの痴女。
いやまあエンヴィーいればとりあえず護衛はいらないんだけど。
と思いつつ、昨日コンビニで買っておいた焼き鳥弁当(豚肉)を電子レンジで温めて3人で食う。
なんで豚肉なのに焼き鳥なんだろう?合法都市では焼き鳥と言えば鶏肉だけだったのに。
「ほわぁ……なんだか、どんどん清貧を忘れて贅沢を覚えているような気がします……もしかして、ここが楽園?」
「ただのコンビニ弁当でこの味……ロシアでの厳しい暮らしは、一体何だったんだろう……共産主義って一体……」
なんか温めただけのコンビニ弁当で変なこと言い出した処女と痴女。涙目になってる。
……うん。今日はあれで行こう。カーナは食べすぎると太るとか言って付き合ってくれなかったし。
ちなみにわたしはいくら食べても太らない体質だから大丈夫だよ?って言ったら千切れるかと思う勢いで頬つねられた。解せぬ。
「で、今日はどこで何をするんですか?その、夕方まで」
「護衛の仕事を引き受けた以上、どこでもお付き合いします!」
なんか痴女と処女が護衛の仕事にも前向きになったところで、今日の観光を発表する。
「札幌食べ歩きツアー、生魚抜きで行く」
合法都市だと魚ってほとんど出回らなかったので苦手なのだ。カラジョルジョでも魚あんまり出てこないし。
「た、食べ歩き……!?」
「一体何を食べるんです!?」
二人が前のめりになる。お前らさっき普通に焼き鳥弁当食ってたじゃん?と思いつつ、いう。
「行ってのお楽しみ」
というわけで、お腹を空かせるために歩き回りつつ、食べに行こう。
*
「で、最初はここ、大通公園」
公園に行く。漂うのは香ばしく醤油の焦げる香り。
……どっかの店のパチモンだっていうけど、気にしない。食べたことないし。
食べるのは。
「焼きトウモロコシ」
トウモロコシを醤油塗りながら焼いただけのシンプルな奴。
獲りたてじゃないから味落ちてるとか言われてるけど、充分うまいので気にしない。
「こ、これがトウモロコシ……?私が知ってるのと違う。甘すぎてこれもう、果物の類じゃないでふかあ!?」
「何本でもイケる気がします!ビールが欲し……いえ、やめましょう。流石に護衛中に酒はダメです」
処女と痴女も喜んでいるのでヨシ。めっちゃがっついてる。
「次は、じゃがバター」
ふかした黄色くてちっこいジャガイモにバター乗せただけのお手軽メニュー。よくクマとかキラキラが夜食とか言って出してくる。
カロリー爆弾とか言われてるが、気にしない。いくら食っても太らない体質なので。
と言って食べてはみたが、大体うちで出てくるのと同じ味がする。ちょっと残念。
「ただのジャガイモでも味が違う気が……インカの目覚めってなんですか!?」
「じゃ、ジャガイモにもこんな小さくて甘いのがあるなんて……知りませんでした」
なんか処女と痴女は驚いている。なんか芋が特別らしい。ウチで食ってるのとおなじ味なのに。
というわけで次。
「札幌駅で食う、札幌名物スープカレー」
味噌ラーメンはもう食べたので、こっちで行く。デカい鶏肉と野菜がガッツリ入った奴。
ご飯にかけて食べる。まあスープなので普通に飲むもよし。
「香辛料が効いてて、幾らでも食べられそうです!」
「び、ビールを……いや駄目だ!?」
痴女、昨日久しぶりに飲んでから大分タガ緩んでる感じがする。
所詮は酒に弱いことに定評あるコンビナート系かコイツも。
合法都市の外で育ってもコンビナートはコンビナートなんだなあと思いつつ、次のお店。
「パーラーで巨大パフェ。一度はやってみたい乙女の味」
めっちゃデカいパフェだ。アイスこんもり果物たっぷり生クリームどっさり。
デカい。超デカい。これ3人でもきつい気がする。
一応紅茶も頼んでおく。絶対身体冷える。
「あま~い!夢みたい!こんなのロシアでは一度も!?」
「普通のアイスですら貴重品だったのに何ですかコレはふざけてるんですか!?」
と思ったら処女と痴女がめっちゃ食ってた。わたしも食ってるけどそれ以上。
そういやコイツら多分、コンビナート系列だった。寒さへの耐性めっちゃあるんだ。
ある程度食べて満足したわたしを尻目に、食いつくしてちょっと物欲しげだ。
「もう一杯、行っとく?」
「「是非!」」
そ、即答!?合法サマナーのわたしでももうちょっとえんりょするのに、コイツらえんりょなくなってきたな。
*
「というわけで今夜は焼肉です。生き残れたら」
「「やったあ!」」
夜の予定を告げたら、めっちゃ喜ばれた。てかこれから普通に殺し合いなんだけど?
夕刻。昨日と同じ場所に移動する。もうすぐ日が暮れる。
そうなったら、またミズコノオウと戦うことになる。
「また、昨日と同じ戦法ですか?簡単ですし」
「甘い」
舐めたこと言った処女をぴしゃりと叱る。
「相手は連携しているのは間違いない。同じ手は使わない方がいい」
同じ悪魔が三日連続で襲って来るのだ。対策はしてくると見るべき。しなかったらそん時は同じ戦法か処女のハマオンで吹っ飛ばす『正攻法』でいいけど。
「な、なるほど……考えてみればその通りですね」
「気を引き締めましょう!アクリス様!勝てば晴れてビール飲めますので!」
……所詮こいつらもコンビナートだな。
今後はロシア生まれは大体コンビナートだと思うことにする。贅沢に滅茶苦茶弱い。
「と、いうわけでさもん、神獣カマプアア、幻魔ハチダイオウ……エンヴィー、呼び出して」
「ぷはあああああああああ……出番かのお、サマナー」
『限界まで酒を飲ませたハチダイオウ』が後衛。
「キノウハナニモセズオワッタ……」
いつもの雑に物理を吸うカマプアアが前衛。そして。
「ナーゴォ……」
低い声を上げたエンヴィーに召喚させたコイツが前衛。一番脆い処女を庇うように出す。
「て、天使プリンシパリティ!?呪殺が弱点の!?」
「その、天使様は尊いお方ではありますが、いささか今回の相手には不利ではないでしょうか?」
出てきた顔色わるい『天使プリンシパリティ』を見て、二人がおずおずと進言してくる……素人め。
「……わたしの知る限り、対アンデッドにて最凶がコイツ。間違いない。処女、回復はわたしの指示どおりにやって」
「わ、分かりました!」
合法サマナーとして、無名地区の住人として断言する。
何しろコイツは『ワクワク☆サマナーいくせいけいかく -おんなのこへん-』にも書いてあるレベルの『鉄板』だ。
コイツがアンデッドに負けるのみたことない。
と、言ってるうちに夕暮れが来て、日が沈む。
ーーー産んで、産んでぇ……
そして現れるミズコノオウと。
オオオオオオオ……
大量の屍鬼。つまり『精神相性』通じない奴。
「対策はあると思ったけど……対応が、すごく雑い」
まあ、エンヴィーの子守歌が猛威奮いすぎたからだろうと思っておく。
というわけで、戦闘が始まる。敵は間違いなく『サマナー』じゃないなと思いながら。
「エンヴィー。テトラカーン」
「にゃー」
まず、屍鬼だけで固めた時点で、魔法攻撃の幅がすごい狭まる。
与えてくるバッステ技も大体がかみつきだのひっかきだのの物理に連動した攻撃なので、物理反射がめっちゃ刺さるし、ついでに魔力しょっぱいので魔法使っても大体ショボい。
元々バッステ対策重視で固めてはいるし、そうそう通らない。で。
「とりあえず、テトラジャの石っと」
定石通りの事故防ぎ。痴女が死ぬの困るし。数残しても今の状況なら問題なし。
「「……」」
そして二人は様子見。そのための準備だ。
で、発動するのが必殺の。
「ワシの笑顔をみろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
カッパスマイルである。
屍鬼は、『魔力相性が普通』に通る。つまり、カッパスマイルがめっちゃ刺さる。
「おしおきの時間だよ。ベイビー」
ーーー産んでええええええええええええ!!!!!!!!!!
「……ヤワラカクシテヤロウ。クイヤスイヨウ。ラク・ンダ」
というわけでダメ押しにカマプアアのラクンダかけつつ、一人だけ魔力通じなかったミズコノオウが絶叫しながら共食い始めた屍鬼どもに食い殺されるのを観察していた。
……わたしたちに戦い方を教えた『無名のおっさん』だったら、こうしてただろうから。
「というわけで、三体撃破完了……りたーん」
途中、何回かこっちに攻撃してきたが、事故死はテトラジャで防ぎ、テトラカーン食らって唯一出来たのであろう悪魔の産声による万能ダメージは処女のディアラハンや魔石で回復したのでほぼ無傷。
地面に転がった胎児のミイラを見ながら、宣言する。こっそり幻魔ハチダイオウを戻しながら。
「か、勝ちました!これで……!?」
嬉しそうにしながらお腹を出した処女がお腹にくっきり残った呪いにびっくりしていた。
「……やっぱり、そう来るだろうとは思ってた」
手口から見た予想が当たったことにため息を吐く。
「どういうことですか!?なぜミズコノオウを倒したのに」
「分からない?ミズコノオウがいるってことは」
そう、これは無名のおっさんが一番嫌ってた奴らのやり口。
ーーーダークサマナーの手法だ。
「ミズコノオウの『母親』もいるってことだよ?」
処女が持っていたミイラが懐から飛び出し、空中に浮く。
地面に転がってたミイラも空中に浮かんで、ちょうど「666」の形になった。
「さもん。神樹ナルキッソス」
わたしがガチ編成の仲魔を呼ぶと同時に、闇の中からのっそりと現れ、空中に浮かんだ胎児のミイラを掴んだ、呪いの『根源』が現れる。
「ああ、可愛い私の子たちよ。無念だったでしょう?その無念ごと……私の糧となりな」
「じ、自分の子供を!?」「た、食べてる……!?なんと邪悪な!?」
そう言って掴んだミイラを食うのは、わたしより幼い、中学生くらいに見える『ババア』だった。
艶やかな黒髪に、歳を考えてないセーラー服。一体いつから生きてるのか分からないほどのババアだ。
「……まさか、このダークサマナー『鬼子母神の小夜子』までたどり着くやつが出るとは、何年振りかねえ」
無数の『処女』に産みなおさせて強化されてきた『自分の胎児』を糧に力を蓄えてきた下品な笑みを浮かべた『自称』ダークサマナーだ。
「うそつき。あんなバカな戦いしかできないダークサマナーなんているわけがない」
そう言いながら、アナライズ結果を確認して、確信する。
アナライズ結果……『母子合体魔人 サヨコ Lv60』
やっぱり正しかった。アナライズ結果が『人間』や『サマナー』じゃないならもう『ダークサマナー』ですらないじゃないか。
「……舐めた口を聞くんじゃないよ!小娘が!今や私のレベルはねえ、ファントムで最強と言われたあのフィネガンよりも上さあ!」
すぐキレる。冷静さが無い。やっぱりただの素人。
……いや、違う。無名地区で見た。昔は本当に強かったのに、それに驕り腐って戦う力を失ったバカ。つまり。
「そっか。じゃあ死ねよ。時代に取り残された『老害』ババア」
今度の敵は、老害だ。それなら、大分楽なはずだ。だって、あいつら、弱いもん。
ーーー老害になったダークサマナーは、本当にもろい。だから、オレはダークサマナーが弱いと思った。
無名のおっさんはそう言っていた。
それと敵と悪魔はいくら殺してもいい。それが合法サマナーのルール。ならば煽ってもいいのだ。どうせ、殺す。
「そうかい!殺してやる!いや、手足もぎ取ってそのまま次の子を産む孕み袋にしてやるよぉ!」
そう言うと同時に、髪の毛がぶわっと広がる。なるほど、髪がそのままいくらでも『生える』武器になるタイプか。
「やれるもんならやってみろ。若作りの老害ババア」
だからわたしも堂々と言い返す。少なくともかつては『本物のダークサマナー』だったおっさんならこう言ってただろうから。
よし、シナリオボスで大分シリアスに持ち直したな!
だが、この話はサタスペであることを忘れてはならない。
『鬼子母神の小夜子』は北海道の闇として何十年も犠牲者出し続けて自己強化し続けてきた指名手配犯的な元ファントムのダークサマナーです。
自分の堕胎した胎児をミズコノオウに『改造』することが出来ます。
処女が弱い異能者ならミズコノオウの餌ですし、ミズコノオウ倒せる強い異能者の処女だったら倒されたミズコノオウ食った後、サヨコが悪霊量産する孕み袋に『改造』します。
そんなわけで北海道の処女が多い中学校や高校にセーラー服姿で出没し『堕胎の小夜子さん』として有名になっています。
とっても邪悪なダークサマナーでした(過去形)