いやまあ冷静に考えて、死ぬレベルのシナリオ"だけ"で成長できるの"主人公"だけだようん。
メガテン的成長:クマ、ポルノ、キラキラが全員Lv41になった。
サタスペ的成長:特にないです
オレとポルノ。そしてキラキラがそれぞれ無茶をした結果、オレたちはしばらく『真面目に修行』することになった。
「ここは旭川よ。合法都市じゃない。生きるか死ぬかの博打沙汰みたいな戦いはね、子供にはまだ早いわ」
「そういうわけだ。というわけでお前たち、Lv40を越えるまで一切の依頼は禁止だ。安心したまえ。いざとなったら救援が来る訓練用異界は、旭川にもある」
カーナとダードに諭され、旭川ヤタガラスが持っている、訓練用異界に毎日通う。
片道、バスで一時間はかかる謎の洞窟。
その名もずばり『旭川訓練洞窟第3号』とかいうまんますぎる異界。
これがヒルトリアクオリティって奴か。
敵は強いし、普通に戦術も駆使してくるし、見たことない技使って来るし、アホみたいに連携してくるし、普通に不意打ちもしてくるという嫌がらせみたいな異界だ。
負けても死なないって保証無かったら絶対来ねえレベル。
そんなわけでオレたちは何度も仲魔を倒され、全滅して『瀕死』になり、気絶し、ぶっ倒れた。そして入り口の診療所で目を覚まし、反省会を繰り返した。
これぜってえ『実戦』よりきついだろ!?ってヒルトリア人っぽい訓練場の管理人に言ったら、心底不思議そうに首を傾げられた。
「訓練が実戦より辛いのは当然だぞ?訓練でアホほどきつい戦いやってこそ、実戦で命のやり取りができるんだからな!」
なんかすげえこと言われた気がする。え?サマナーの戦いって基本生きるか死ぬかの瀬戸際でやるもんじゃなかったの?
「……マジっすか。実戦のが強くなれるとかないんですか?」
「それはまあある。格上の悪魔やヤバい敵との実戦1回で訓練数か月や数年分成長する奴は居る。だがな、それをずっとってのは本当に頭おかしい人しかできないから。
……昔いたらしいけどね、東京の方に何年も格上の異界に入って格上に挑み続けたっていう、頭おかしい人。絶対真似するなってお達し付きだったけど」
いるんだ。やっぱ東京怖い、怖くない?
オレはまだ見てないしなんなら一応はオレの生まれ故郷であるはずの東京が怖くなった。
オレやポルノみたいな平凡で普通な合法サマナーが行ってもいい場所なんだろうか?東京とかいう魔境。
「キラキラ、学校行かなくていいの?」
「ああ、いーのいーの。むしろのほほんとした推薦組がいるとね、受験組のストレスになるから来るなとか言われてるレベルだし」
ちなみにポルノとキラキラは倒されても倒されてもへこむことなくあっけらかんとしている。
いいな。オレもそういうメンタル欲しい。
というわけでオレたちは異界で戦い、仲魔を増やし、謎ラーメン屋で合体と強化を繰り返し、ついでに旭川ヤタガラスで色々教えてもらい、そしてまた異界に行く日々が続いた。
ちなみに最近はポルノとキラキラを交互に抱いている。一日は休みだ。毎日はちょっと辛いしな。
ちなみにニコの部屋のベッドもいつの間にかダブルベッドになってたし、最近はよくフブキさんが出入りしてる。まあ、お楽しみなんだろう。
冗談で避妊だけはしろよ?って言ったらフブキさんにライフル笑顔で突き付けられた。怖い。あの人意外と引き金軽いし、警官のえらい方だから街中で銃持ち歩いても何も言われないんだ。
……あと、ポルノとキラキラから話を聞いて、二人してハイエース乗って週末に札幌に出かけてた。エロか、エロ下着か!?
長年童貞と処女やってた奴がくっつくと、反動きついって本当だったんだなあ。言ったら今度こそ殺されそうだから言わないけど。
ただまあ、帰って来た時は二人ともめっちゃ充実した顔してたから、お楽しみはしたんだろうなとは思う。
あと、なんかジェイルハウスの噂じゃSM倶楽部棗に『聖☆痴女』とかいう顔隠してエロボンテージ着たパツキン外人で死にかけるほど激しく叩いてくるすげえどSの『女王様』がたまに来るようになったらしい。
……まさかジータじゃないよな?と思ったが、別口らしい。安心したが逆に考えるとあの地底人並にヤバいの別口とか、なんか急速に旭川の治安悪くなってない?
……そんなこんなで世間がもうすぐクリスマスになるころ。
「よし、仲魔も大体揃ったし、装備もいい感じになったな」
「右に同じ。ミズチウィップよく当たるようになった」
「ようやくディアラハンとメ・パトラ覚えられたよ……え?銃ももちろん練習はしてるよ?」
オレたちは全員Lv41になり、晴れて修行の日々から解放された。
*
修行が終わり、もうすぐクリスマスの旭川ロイヤルホテルでスイートルームえっちディが来るということもあり、オレたちはミナミに繰り出していた。
最近は修行&修行で謎ラーメン屋とジェイルハウス以外ほとんど行かなかったが、その間に随分とミナミも賑やかになったらしい。
ミナミもすっかりクリスマスムードになっていた。あちこちにイルミネーションが飾られ、色とりどりの電球がピカピカ光ってる。
ちょうど雪がちらついてるのもあって、まさにクリスマスだ。
「はーい!チーズケーキ!チーズケーキは如何ですか!?今なら一個買うたびにこの『勇者*1ジータ女王』謹製の『新生ランドソル大牧場の勲章*2』差し上げますよ!?」
「ただのチーズケーキではありません。駒場殿の知り合いから買い付けた材料を使い、当大牧場のプロの料理人が焼き上げた逸品です。味はお墨付きです」
「わたしが転職所*3で料理人に転職して頑張りましたよ~。迷宮の産物*4入ってないし、レシピも駒場さんのお知り合いから頂いたもので駒場さんも普通に美味いって言ってくれましたよ~」
なんか赤と白を組み合わせた服を着た見覚えがある売り子と、お付きのメイドコンビは、見なかったことにする。
そっとキラキラを見たら、キラキラもめっちゃ目を反らしてた。地底人ども、冬の間は巣から出てミナミに出没するのか。危険すぎる。
「クマ、あれ、チーズケーキだって。勲章もついてくるって」
「うんそうだな絶対買わないからさっさと逃げるぞ」
ポルノの手を掴み、奴らの見えないところまで移動する。
ちなみに物珍しさからかそれなりに売れてるようだ。全体的に怪しいのに耐性あるデビルバスターとか合法都市人が多かった気がする。
味は、まあ普通レベルにはいいんじゃないかな。正直、食べる気にはならない。
でもチーズケーキか。
「ビカラちゃん、好きそうだね」
「ああ、チーズ大好きだったもんな」
そういやアイツ、今どこで何してるんだろうな?
「それは認めまふ。くやしいでふけど、味はいいでふ。お試しセールとか言ってて、安いし」
「「うわぁ!?」」
話した瞬間、後ろから普通に声を掛けられてキラキラと一緒に滅茶苦茶びっくりした。
これが噂をすれば影という奴か。
「クマ大帝閣下。お呼びのようでしたのではせ参じました。ビカラです」
もぐもぐとプラスチックのフォークで少しずつ切ったチーズケーキを食いながら恭しく挨拶する。うん、相変わらず失礼なのか丁寧なのか分からんな地底人だけあって。
まあ、信頼は出来る。
「うん。うまい」
あとナチュラルにビカラのケーキ横から手でむしって食うなポルノ。お前、食い物の恨みは怖いんだぞ?最悪それで殺し合いになんの無名地区で散々みただろ。
「ははは。クマ大帝閣下の寵姫様に怒るほど無謀じゃありませんよ……そうじゃなかったら口に火をつけた爆弾突っ込んでますけど」
相変わらず沸点低いな地底人!?
一瞬、本気で殺す目をしたビカラにビビる。
「ほれ、クマも」
むしったケーキをオレに突き出してくる。食えってことだろう。
素手なのは気にしない。無名地区だと素手で食うの普通だったし。
「……うん。普通にうめえな。悔しいけど」
ポルノの手から食いついたケーキは普通に美味かった。
「うん。うまい」
そのままオレのつばがついた手でまたケーキむしって食うのはどうかと思うぞポルノ?
しかもなんか食べかす取るためか舐めまわしてるし。
「……ビカラちゃん!そのフォーク借りるね!……はい、あーん♡」
謎の対抗意識を見せたキラキラがビカラのフォークで奇麗に切り分けたチーズケーキを突き出す。
食えってことだろうから、普通に食う。
「うん。美味い」
ていうかポルノが食わせてきたのと同じ味だけどな。
「うん!だよね!……あ、マジで普通に美味しい」
そのままキラキラもフォークで食べてる。なんかポルノの方見てどや顔しながら。
ポルノがムッとしている。
「「……で、どっちのがおいしかった?」」
なんでそこでハモるんだよ!?同じケーキなんだから同じ味だろう!?
「ふう。じゃあボクはこれで。あ、あとシズコ様が時間あったらあとでお祭り運営委員会にも遊びに来てくださいとのことです」
そう言いながら、ゴミ箱に食べ終わったゴミを突っ込みつつまた姿を消す。
……ナチュラルに勲章を『ゴミ扱い』でゴミ箱に突っ込んでいくあたりが地底人クオリティだなうん。
*
それからなんかビカラに聞いて、ポルノの札幌での友達がいるらしい場所に行った。
……この前、地底人の巣で見た僧侶っぽいのとビキニアーマー戦士らしい。
あとでポルノに聞いたら、あいつらなんとゴリゴリのカルト系でびっくりした。
「旭川東方正教協会……うーん怪しい。怪しすぎる」
そう、メシアン系らしいけど聞いたことのない東方正教とか言う厄ネタしかない謎宗派だ。
というかだな。
「わあ……ここ、前に潰れたキャバクラの建物じゃん。なんか店の中で自殺した女の子が悪霊になってるとかで霊障起こすからって放置されてた*5奴」
地元旭川市民であるところのキラキラが建物の正体しってて余計にげんなりする。
どう見ても大人のお店借りてやる場所じゃないだろ宗教施設。
なんかまた怪しいポイント増えたぞコレ。
……一か月もしないうちに『信者』が100人越えたとか聞いた。
ジェイルハウスや旭川市警にも信者出来てるらしい。
昨今のメシアンは洗脳がやたら得意だとも聞くので、ニコに探ってこいって言われてる。
「えっと……ここ、よね?看板に『旭川東方正教協会』って書いてあるし……間違ってないわよね!?」
なんか外人らしい金髪のおばさんも何度も地図と看板を見ながら困惑してる。
「あ、あのう……おば、お姉さんもこちらに用事ですか?
オレたち、絶対怪しいのでちょっと調べてこいって言われてきたんですけど」
明らかに同じ気持ちであろうおばさんに話しかける。
多分、どっかの誰かが送り込んできた調査員とかだろう。
多分普通のスーツの上からコートを着て、きちんと髪を整えて、眼鏡をかけている。シワはあるが、奇麗な人だなって感じる。
完全に調査員とかそんな感じだ。修羅場になれたベテランの風格漂わせてるし。
「あ、あなたもかしら?あと、おばさんでいいわよ。もうお姉さんって言えるような年でもないもの」
そしてあちらもこっちを見て、同じ気持ちだったんだろう。普通に会話できる。
まあ、明らかに裏の悪魔業界人だもんなお互いに。
「えっと、クマです」
「ポルノ」
「キラキラです」
明らかに偽名というかコードネームにしか聞こえないだろう名前を名乗る。
「あ、はいどうもご丁寧に。私はジェーン・ドゥよ。ジェーンでいいわ」
向こうも分かってるんだろう。普通にあからさまな偽名を名乗ってくる。
まあ、本名名乗るバカはいないわな。
「……せっかくだし、一緒に入りましょうか?」
「そうっすね……」
「う、うん。一緒のが色々対処しやすそうだし」
ジェーンの提案に、頷く。いやだって絶対なんかされそうじゃん?
「そこまで心配しなくていいよ?あいつ等、ただのコンビナートだよ?」
唯一あいつ等のこと知ってるくさいポルノが端的に告げてくる。
……ポルノさん。それ欠片も安心できる要素ないんですよ?
コンビナートってウラーで鉛玉ぶちまけるやべー奴じゃないっすか。
噂に聞いた、銃撃を9割弾くすげえバンダナ*6とか用意しておくべきだったのかな?
そう思いながら、扉を開けた。そして。
「「いらっしゃいませ!『ご信者』様!」」
「は?」
……なんかすげえ怪しい出迎え方をされた。
「じゃ、ジャパニーズメイドキッサ!?トーキョーにそんな感じのがあるって聞いたけど!?」
「え?でもここ『旭川東方正教協会』だよね?メイド喫茶でもキャバクラでもイメクラでもないよね!?」
他の2人も出迎え見て似たような反応してる。
「……なるほど。メシアンが『金の魔力に堕ちる』とこうなるんだ」
ポルノが1人だけなんか納得してた。
「……どうやら初めての方のようですね。初めまして。私はこの旭川東方正教協会の会長を勤めます東方正教司祭のアクリス=メノールです。お気軽に『アクメちゃん』とでも呼んでください」
オレたちを出迎えたちっこい女の子ことアクメちゃんが笑顔のままに言う。
すげえ朗らかに下品なあだ名、自分から名乗ってるのがギャップ萌えって奴だなうん。
……なんか、どこかで見覚えがある『女子高生』スタイルで。
制服自体は着崩さずにきっちり着こなしてるから一見真面目に見えて、何気に十字架付きネックレス以外にも帽子とかチョーカーとか指輪とか腕時計とかアンクレットとかピアスとかバッジとかさりげなく装飾多めなのも今どきっぽい。
……アレ全部、なんらかの耐性とかつけるアクセサリーの類なら、相当な手練れだな。普通に戦いたくないレベルの。
「うわあ。あれ、ウチの制服じゃん……あんな子、いたっけ?」
あ、そうかキラキラの通ってるお嬢様学校の制服か。
道理で……なんかの犯罪かな?
「あ、いえ。来年の春から入学予定なので、先に無理を言って制服だけ先に購入させていただきました。先輩と一緒に学ぶことが出来ず残念です。本田先輩」
キラキラの疑問にものすごい簡単に答えが返って来た。キラキラのことも知ってるらしい。まあ街の有名人だしな普通に。
……お嬢様学校だったはずだけど、まあキラキラとか普通に改造鞄に入れてロイヤルポケット持ち込んでるし、自由な校風って奴なんだろう。
「私がアクリス様の護衛であり旭川東方正教協会の聖騎士。クラウディア=グリスティンです。クラちゃんとかグリさんとか呼ばれてます」
もう一人の方は、普通に出来る秘書って感じの格好だ。腰に聖騎士らしく剣こそ下げているが、それを除けば普通のスーツ姿だ。
ハイヒールにガーターベルトにパンツ見えそうなくらい短いタイトスカートに深い谷間が見えるくらい胸元が開いてる以外は……AVかな?
「げ、下品すぎる……いくらなんでももう少し年頃の大人らしい恰好して欲しいわ……最近のメシアンは卑猥な格好してることが多いとは聞くけど」
ほらジェーンもそう言ってるぞ。てかメシアンって今そんなんだったんだ。
「……でもこの方が、女としてモテますし、信者の皆様にも喜んでいただけるのですよ?同志」
そんなジェーンの言葉に、どや顔でそんな言葉が返ってくる。そこはかとなくニコがちらっと言ってた『大学デビュー』した感じだ。
高校まで真面目一辺倒だった奴が大学行って親の監視なくなった途端にオシャレとかエロに目覚めて弾けるとかどうとか。
とくに聖華学園でも強すぎたりして浮いた話一つなかった奴に限って男出来ると滅茶苦茶変わるらしい。
まあ、分かる。最近とみに御洒落に目覚めたフブキさんみたいな感じだ。
……で、コイツらと元々知り合いらしいポルノさん?感想は?
「久しぶり。元気そうだね。処女も痴女も」
「「その仇名だけはやめてください!」」
二人が血相変えて言い返す。無理もない。
「あれ?もう処女は処女辞めたの?痴女はまだ痴女っぽいけど」
「まだ処女です!」
そうか、アクメちゃん処女なのか。あと痴女らしいグリさんは黙って目を反らしてた。
とりあえず、だ。
「うん。ポルノ。その呼び方辞めよう?まあ多分そうなんだろうなってのは分かるけどさ」
「その呼び方を続けたら、最終的に抗争すらありうるから止めなさい。ロシア人は、日本人よりはるかに侮辱に敏感よ?」
「そうだな。呼び方はさ、普通にアクメちゃんとグリさんで良いだろ。な?」
キラキラとジェーンの言葉にオレも同意する。
いやポルノさん、流石にその仇名はどうかと思うんすよ。割とマジで。多分アクメちゃんが処女で、グリさん痴女なんだろうなってのは分かるけどさあ。
「……分かった。よろしくね。アクメちゃん、クラちゃん」
しぶしぶと言った感じでポルノが呼び方を変えたことに一同全員がホッとする。
「えーと、それで、このイメクラ……もとい教会?について教えてくれる?」
「はい。ご説明しますね信者様!」
キラキラの質問にアクメちゃんが張り切って説明してくれる。ははーんこれ『信者』と書いて『お客』と読む奴だな?ズレっぷりが確かにコンビナートではある。
そう思いながら、話を聞く。
「旭川東方正教協会は、日本では誤解されがちな東方正教を親しみやすくするために私たちが設立した団体です」
「メシアン共とは一緒にしないでいただきたい」
あーうん。アクメちゃんたちと一緒にされたらメシアン普通に嫌がりそうだ。まともなところほど。
それと多分、違う方向に誤解広めてるぞ。いやリアル東方正教よく知らんけど。確かロシア辺りの十字教ってくらいしかしらん。
「布教活動の一環として、主に病気や怪我の治療や、東方正教式の呪具の類をお譲りしています」
「どちらも主にアクリス様がやっています。私はただの護衛ですので」
なるほどなあ。そういうことなら、悪魔業界的にはまともだ。まともすぎる。少なくとも男のケツ掘ってくるらしい獣医より大分マシだ。
ジェイルハウス連中なら喜ぶだろう。
「そしてこちらがそれぞれに必要なお布施額をまとめた『料金表』になります」
「「「「料金表!?」」」」
いきなりイメクラになったぞ!?いやいくらかかるのか分かるのはすげえありがたいけど!?
「毒の治癒1万、麻痺治療2万、石化が5万、病気が5万、呪いの装備解除10万、蘇生は50万……!?」
「ペットボトル入りの聖水とか封魔の鈴とか確かに貴重だよね。うん、お値段も業界基準だと適正かなあ……多分、一般人には絶対ぼったくりにしか見えないけど」
一般人から見るとすげえ怪しいカルト(イメクラ系)、業界人からは明朗会計でめっちゃ良心的な治療施設兼オカルトアイテム販売所。
それが旭川東方正教協会だった。
「これなら信者になる奴が出てくるのは分かる。少なくとも乃木クリニック使うくらいならここ使うわ」
正直な感想は、それになる。ホモの医者とカワイイ処女司祭。
どっちがいいかと聞かれたら男としては答えは一択だ。
そう、思ってたときだった。
バーンと荒々しく扉が開かれ、男の死体を担いだ女が入って来た。
「す、すみません!ここで死んだ人を蘇生してくれるって聞いて!その、相棒が呪殺にやられて!」
動転した様子で、傷一つない死体を下ろして要領を得ない説明をする。
(なりたてか……)
ジェイルハウスにたまにいる、アプリとか手に入れて業界に足踏み入れたばかりの奴らだろう。
そこそこ実力ついて、調子こいたところでムド豚にムドられたとかそんな感じの。分かってない奴がそういう死にざま晒すのは、どこも変わらないらしい。
一応こまめに旭川の異界情勢まとめたマップとかもあるんだけど、それでも事故るときは事故るものだ。
「はい。蘇生ですね……クラウディア」
「奥のテーブルに運んでおきますので、アクリス様は説明をお願いいたします」
流石に本職の司祭らしく、てきぱきと動き出す。
聖騎士と言うだけあって力が強いグリさんが死体を軽々と担ぎ上げ、儀式用の魔法陣が書かれたテーブルの上にのせる。
そしてアクメちゃんが安心させるような笑顔で言う。
「大丈夫です、まだ死にたてですし、蘇生は成功しますよ」
「よ、よかったあ……それじゃあお願いします」
へたり込んだ女に、アクメちゃんが笑顔で言う。
「はい。それでは50万円のお布施を『前払い』でお願いいたします」
「ふぁ!?」
ああ、分かる。分かるよ。なり立てなら50万円って大金だよな?
ある程度の実力者ならはした金だけど。
「お手持ちがないのであれば、向かいのコンビニで下ろして来てください。後払いの場合、別途事務手数料が10万円発生します。
……それも無理だというのなら、借用書にサインをお願いいたします。月5万円の12回払いが標準ですね」
「りょ、良心的だわ……」「けど素人上がりだと絶対理解できないよねえ」
ジェーンとキラキラが正直な感想を述べる。
うん、悪魔業界アホほど金かかるし、多分あそこまで言うなら、アクメちゃん儀式形式なら『サマリカーム』使えるんだと思う。
50万円でサマリカームはめっちゃ安いと思う。
「そ、そんなお金……ないです。じゃあ、死ねってこと!?」
やっぱりそれが分かってないらしい女がかみつく。アカン。アクメちゃん怒らせると死ぬぞお前のレベルだと。
「……仕方ありません。特別な方法をご紹介いたします」
だが、アクメちゃんは笑顔を崩さない。それが逆にすげえ怖い。
「と、特別な方法……?」
「実は旭川東方正教会の信者になった方には、色々な特典があります。治療や呪具のお布施が2割引になる他、年1回まで『無償での蘇生』があるんです」
「「「「うわあ……」」」」
ついにポルノまで呆れた声を上げた。
これで信者増やしてたんだな……やり方がえげつなさ過ぎる。
「わ、分かりました!信者に、信者になります!だから助けて!」
「……分かりました。交渉成立ですね。新たなる東方正教の信者誕生に祝福を」
アクメちゃんが立ち上がり、死体が置かれたテーブルに近づき、そっと手を添える。
「えっと確か二ホンで有名なのは……祈り、ささやき、詠唱、念じろ、でしたよね?……はい、サマリカーム」
どっかのゲームを参考にしたらしい適当な文言述べた後、情緒たっぷりにサマリカームが発動する。
「……あれ、僕は……」
「よかった!本当に生き返った!すごい!」
男に女が抱き着く、感動的だな。うん。
そんな女の背中にグリさんが声をかける。
「そちらの、信者になった方には後ほど、こちらの部屋で洗礼の儀式と戒律を説明させていただきます。と言っても戒律は簡単かつ当たり前なものばかりです。
当協会の名を出した上での悪行を行わないとか、呪具を転売しないですとか、お布施の額に文句を言わないですとか、当協会を『ボッタクル教会』呼ばわりしたら破門ですとか」
ああ、最後は絶対言う奴いるわ。オレもふとしたら絶対に言いそうになるもん。
「当協会は信者の方限定で毎週日曜日の午前10時よりミナミの教会借りてミサを行っています。そこでの説法後、教会で販売される呪具はいつもの3割引となっています。
それと1個限定の抽選販売でサッポロから仕入れた死の魔法への身代わりになる『ホムンクルス』をお分けしておりますので、是非来ていただければ幸いです」
アクメちゃんは笑顔を崩さずにえげつないことを言う。まあ保険としては滅茶苦茶欲しいよなあ。
「うーん、これは……確かに、これだけのサービスあるなら、信者になる人出てくるなあ。お得だからで」
「彼女たち、言ってることはすごく理性的かつ良心的なのよ……宗教家としては現世利益と資本主義に染まりすぎてる気がするけど」
キラキラとジェーンの二人が頭を抱えながら言う。
まあノリがね?多分、日本のお店とかマルチ商法とか参考にしたうえで色々誤解してる……あ、だからコンビナートなのか。
「……お金の大事さと素晴らしさ、骨身に染み込ませた甲斐があったね」
多分こうなった元凶は、それをとてもうれしそうに見ていた。
金がないことの辛さで壊れたアクメちゃんは節約(全体的に良心的だけどドケチ)に、悪い遊び覚えた痴女は浪費(欲望に関するタガがゆるい)に目覚めました。
数か月後には節約で貯めた貯金額見てはにやつくアクメちゃんと、それをこっそり勝手に使ってアクメちゃんにガチギレされる痴女とかいう愉快な構図が繰り広げられます。
毎日3食卵焼きと食べられる野草のおひたしと玄米ご飯とかいう栄養重視な粗食で痴女がちゃぶ台ひっくり返したり、クレジットカードは悪魔の板!破壊する!とか言いながら放たれた怒りのザンダインで痴女のクレカが粉々になる。