Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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裏街道系合法サマナー物語。周回遅れで時代遅れのお話。大体サタスペだけど、シリアスを目指す。
まずは主人公のご紹介。他はまあ元ネタはあるけどあえて秘密で。



合法サマナー01 崩壊世界

オレにとっての『世界』は、もっとゴミゴミしてるものだった。壊れた建物を住人が勝手に改築増築しまくってて、滅茶苦茶になってた。

 

いつも、どこでも誰かが喧嘩して、誰かが盗み、誰かが陰謀を企み、誰かが犯され、そして誰かが死んでいる。そんな世界だ。

 

ケーサツとかいう、弱いモノを守ってくれる奴らはおらず、いつもあちこちにやべー奴らが沢山いて、そいつらが悪いことをしてた。

弱い奴は何一つ得られるものなく食い物にされ、そいつらに目を付けられないよう気を付けてこそこそとしなければ生き残れない。そんな場所だった。

 

オレたちがトーキョーからここに移り住んだのは、今から10年以上前のことだった。

「今日からここがお前らの『故郷』だ。死ぬ気で生きろよ。死ぬまでな」

ここにオレたちを運んできた『おっさん』にそう言われたとき、オレは7歳で、あいつは5歳だったはずだ。もう10年以上も前の話だ。

借金で首回らなくなった親父とお袋が、ガキの頃から悪魔が見えて、余計な事言ったせいで気持ち悪がって虐待してたオレを売った。まあよくある話だ。

んでオレを買ったのがおっさんだった。多分本名はあったんだろうし、なんならもっとかっこいいコードネームもあったんだろうが、オレは聞いたことがない。

誰に対してもおっさんで通してたし、オレもあいつもおっさんとしか呼ばなかったから、おっさんだ。

そして、あいつ。そのときにオレと同じくどっかで買い取って来たらしい女の子。名前はなんとふざけたことに『ポルノ』だ。名前の意味は、なんかエロくなりそうだから。

……実際大当たりだったな。あのエロ親父め。アイツだけは、何度抱いても飽きがこない。身体の相性がやべえ位いい。他の女抱くのが作業になるレベルだ。

 

ちなみにオレの名前は『クマ』とかいうクッソ適当な名前だ。本名は別にあったはずなんだが、もう覚えちゃいねーし、まあクマでいいだろ。

 

いつだったか、おっさんになんでそんな適当な名前を付けたんだと聞いた。

そしたらおっさん曰く『クマみてーに強い男になれと思ったからクマだ』とかぬかした時は、ぶん殴った。

最も、貧弱なオレのパンチじゃあ大したダメージにはならず、腹パンされたおっさんはゲハゲハ笑ってた。

てかテメエのがよっぽどクマだろうがとは思った。脳筋バカめ。

 

「俺にとってお前らは『実験』なんだ」

おっさんは、オレたちを買い取り、そしてこの街に連れ込んだ理由をそう言っていた。煙草をくゆらせ、酒を飲みながら、笑って言った。

「俺はな、信じてたんだ。ダークサマナーは、サマナーより強いってな。だってそうだろう?卑怯でも何でもできる奴のがそれが出来ない奴より弱いはずがない」

まあ、言いたいことは分かる。正々堂々、正面から戦う『ヒーロー』やって勝てるのは、本当につえーやつだけだ。

普通なら卑怯だろうがなんだろうが上等の悪役のが勝つ。

「……そう信じてたんだがなあ」

だが、おっさんは少ししょんぼりしてこう続けた。

 

「オレがまだ若かった頃いた、ファントムソサエティってのは、ダークサマナーの集まりだった。逃げ出したオレがここ以外で生きていくのを許さねえくらいには、強い連中だった」

 

おっさんがまだ若かった頃の昔話を始める。当たり前の話だが、そういやこのおっさんにも、若いころなんてものがあったんだなって思った。

「どいつもこいつも、頭のネジ外れてて、殺しだろうが盗みだろう屁でもねえと思ってたさ。オレだってあそこでヘマしなきゃあここに逃げ込む羽目にならなかっただろうに」

そういうふうに若いころを語るおっさんは少しだけ懐かしそうで、楽しそうだった。

 

「……そのダークサマナーの群れであるファントムは、負けて消えた。誰一人勝てなかったんだ。素人上がりの『ただのサマナー』にな」

 

だから、一転して悲しそうにそう言った時は、オレも少しだけ悲しくなった。

きっとおっさんにとってはそのひでえ奴らだったらしいファントムソサエティってのも『故郷』の一つだったんだろうな、って今なら分かる。

「ああ、分かる。分かるさ。そいつが特別だったんだろう。だが、それでもどうしても思っちまったんだ。

まっとうなサマナーとダークサマナー、本当ならどっちのが強いのか。もしかしてオレも、真っ当なサマナーやってたらもっと強くなれたのかってな」

なんでだ?そう聞いたら、ため息と共に行った。

「卑怯ってのはな、簡単に抜いていい道具じゃねえ。本当にやべーとき、どうしても勝ちたいときにやるもんだ。普段から頼ってたら、鈍る。

簡単に勝てる手で勝ち続けたら、その手が通じねえ相手が出てきた時にどうしようもなく負ける。ダークサマナーはそこが弱い」

そう語るおっさんの目は鋭い。きっと昔……もっと若かった頃は本当に強かったんだろう。そう思わせる目だった。

 

「いいか、お前らは真っ当なサマナーを目指せ。悪いことせずに生きてけるほどこの世界は甘くはないが『言い訳が聞く』くらいには悪事を避けて生きるんだ。

やらねえと死ぬって時は卑怯だろうがなんだろうがしゃあないが……この国のルールじゃあそういう時"だけ"は何やっても良いことになってるって覚えとけ」

 

だからその言葉には素直に従い生きていくことにした。おっさん手製の攻略本『ワクワク☆サマナーいくせいけいかく -おとこのこへん-』を片手に、真っ当なサマナーを目指すことにしたのだ。

 

そうしてオレたちは、故郷でおっさんと暮らした。

おっさんはあちこちから依頼を受けて、時に引き受け、時に片付け、時にはサボり、時には逃げ、時に騙し、時に騙され、そして騙されたときは必ず騙した奴に一泡吹かせてきた。

剣の腕はそこそこ。銃の腕はまあまあ。仲魔だって例の教科書通り。おっさんは強さこそごく普通のダークサマナーだったが、それでも街じゃあ便利屋として有名だった。

依頼したときの成功率が結構高いし、失敗してもなんだかんだある程度は成果を上げる、最低でも生きて帰ってくるってのがおっさんの評価だった。

そうやって生きてく金を稼ぎながら、オレたちに真っ当なサマナーとやらになる方法を教えてきた。

 

「いいか、クマ。この世界はな『速さ』と『知恵』がすごい大事だ。考えろ。動け。それが出来るサマナーが強い。少なくとも俺はそう考えた」

 

おっさんはオレにそう教えた。それで、そうなるように鍛えられた。あとは死なない程度に身体を鍛え、最低限剣の扱いを覚えた。魔法はビタイチ使えない。

男なら女の影に隠れて生きるようなヘタレな生き方は許さねえと言われた。

古臭い考えだし別に知らねえ女がどうこうされるのなんざ目の前で起きても気にもならなかったが、ポルノが死んだり傷つくのは嫌だってのは同意だったので従った。

「サマナーの本道は、悪魔召喚だ。仲魔は大事にすべきだが、捨てること、合体することを躊躇するな。追いつけなくなる」

一番教え込まれたのは悪魔の扱い方だ。仲魔にする方法に、餌の与え方や手なづけ方。悪魔との連携の取り方と、耐性や特技の相性。

そして、どうやって使いつぶし、使えなくなったら再利用するかの手練手管。

「サマナーにとって仲魔は相棒だ。かけがえのねえ友達なり家族なりになる、なんて言ってる奴がいるが、あいつらは道具だ。道具なんだから、丁寧に扱え。

整備サボった銃で実戦していざ撃とうってしたときに暴発なんてことになったら目も当てられことになるのと一緒だ。分かるな?」

そういうおっさんの目は真剣で、多分、おっさんは『人間』も道具扱いしたりされたりしてたんだろうなって、こうして真っ白い天井を見ていると思う。

 

おっさんとはもう2年くらいはあってない。

最後に『ちょっと体の調子悪いから札幌の病院行って来る。代わりに仕事こなしといてくれ。サボんなよ』って言い残して、二度と帰ってこなかった。

まあ、死んだんだろう。そういうもんだ。おっさんのことだし病院で枯れ木みたいになって死ぬ姿見られたくねえとか、そういう下らねえ理由だ……畜生め。

 

おっさんが引き受けてた依頼を全部片づけた後は、おっさんのつくった伝手(コネ)を使って仕事を受けて、普通に暮らしてた。

オレもポルノもまあおっさんと比べりゃあ弱いなんてもんじゃなかったが、それでも仕事えり好みしてやれそうな依頼をやればなんとか食ってけるくらいには稼げた。

時にはおっさんが死んだと見てオレらに喧嘩売ってくる輩もいたが、まあその程度のアホならぶっ殺せるくらいには実力も、手練手管も身についていた。

 

気がつけばもう、オレたちは立派なダークサマナーになっていた。勝つために手段選ばねえ卑怯者で、盗みや殺しもこなしてた。

日本のホーリツじゃあ、そういうのは結局ハンザイシャだ。真っ当なサマナーとやらはオレたちじゃあ無理だったなってポルノと二人して笑っていた。

 

……病院で寝込みながら聞かされた話によると『故郷』で起きた犯罪は全部チャラになるらしい。

しばらくは『おっさん』の知り合いが『監察官』としてつくが、それが明けたら普通に暮らしていいと聞くが。

 

……オレたちは今から『2年前』に『失踪届け』が出されていた。

 

つまりは誘拐されたあと『商品』として運び込まれて『崩壊』に巻き込まれた『犯罪歴のないガキ』ってことになってるらしい。

それが、あのおっさんの最大の『仕込み』だった。

 

ーーー合法都市。そう呼ばれていたオレの『故郷』は、もうない。この前、気が付いたときには奇麗さっぱり消えちまっていた。

 

どうしてそうなったのかは、知らん。なんか頭ゆだってて他の奴らがしらんアジトでポルノとずっとやってたら、いつの間にか病院にいたって感じだ。

病院の裏の連中にも通じた看護師に聞いたところによると、オレたちは『石化』してる状態で保護されて、治療を受けたらしい。

なんでそうなったのかは分からん。しいて言うなら、あの時は装備の関係で『魔力に弱い』状態だったくらいだ。

 

「で、これからどうするよ?ポルノ」

「クマと一緒にいる。いつも通り」

 

だよな。それ以外は今の状態じゃあ決めようがない。

しょうがないのでポルノとクソみたいな話をして、眠くなったら寝て、病院のメシが味が薄くてまずいことを愚痴りあっただけ。

 

それがオレたちが『合法サマナー』として歩みだした第一日目の出来事のすべてだった。




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