その後、オレたちは旭川東方正教協会を後にした。アクメちゃん付きで。
「これから、正直怖いんですけど勇気を出してお祭り運営委員会にお引越しのご挨拶に伺おうかなって。ちゃんとタオルも用意しました。
蘇生以外はクラウディアもできますし、流石に蘇生してくれって人は3日に1人とかですので」
朗らかに庶民チックなこと言うなこの子。まあ、気持ちは分かる。合法都市的に百鬼夜行はほぼヤクザだ。女の子には怖いのは分かる。
めっちゃアクセつけまくってるしお嬢様学校の制服着た北欧系の美少女なのに言うことが庶民だ。これが、ギャップ萌えか!?
「……なんとなく、アクメちゃんとは仲良くなれそうな気がする。あと、アタシも普通にお嬢様なのを忘れないようにね?クマ」
い、言ってないのに察せられて、尻をつねられたぞ!?
ちなみにアクメちゃんとグリさんの生活費は、協会の『収益』から出てるそうな。多分めっちゃ金持ってるぞアイツら。お嬢様学校でお嬢様普通に出来るレベルで。
そして店、もとい教会の2階がまんま居住空間になってるらしい。無論、見せてはもらえなかった。そりゃそうだ。
「うん。アクメちゃんは大分まとも。痴女は所詮痴女」
ナチュラルにポルノの呼び方が痴女に戻ってる辺り、グリさんの方はダメなんだろうなとはおもった。
SM倶楽部に現れる『聖☆痴女』って多分あの人なんだろうなあとは思うが確認はしない。
オレはアダルトは好きだが、エクストリーム趣味は持ってないのだ。殺し合いでもないのに女を殴るのも女に殴られるのも普通に嫌だよ!
「……で、クマ君。とりあえず判定は?」
「まあ、白だな。アレ文句つける方が問題だわ」
そのままお祭り運営委員会にも興味があるからとついてきたジェーンに聞かれて、普通に答える。
とりあえず現状は真っ白としか言いようがない。キラキラから止められなかったらオレも2割引目当てで信者になってたレベル。
「まあ、そうね……元気にやってるなら、それに越したことは無いわね。上手く行ったようでよかったわ」
ジェーンの言葉は聞き流す。多分、良い人みたいだし。
……札幌で起きたことは教えない方がいいだろう。うん。
「さてと、そういやお祭り運営委員会って行ったことないな」
「そういやそうだね。シズコとアヤメ、元気にしてるかな?」
そんなことを言いながら歩いていく。
「アルミ缶を、アルミ缶をよこせ!なのです!今日こそチーズケーキ買うのです!」
「空き瓶もあったわ!どんどん集めるわよ!地底人のお姉さんが1本10円で買ってくれるって!」
「……モロトフカクテルは作っちゃダメって言われた。テンリューに渡したらなんか怒られた」
「しょうがないわ!アサヒカワではコンビナートと違って火炎びん一つ作るにも許可がいるって、タッタが言ってたもの!」
街では擦り切れてつぎはぎだらけのセーラー服着たコンビナート系らしい子供が、頑張って遊ぶ金欲しさにおこずかいを稼いでいた。
うーん平和だなあ。無名地区ではよく聞けた子供らしい会話に頬が緩む。
オレらもロクに稼げねえガキの頃はよく作ったもんだ火炎びん。無名地区では雑にアンデッド焼けるから常に需要あった。
「……なつかしいね。火炎びん。一回クマが出来わるいの引いて火だるまになった時には本当にびっくりした」
「……ねえアレ。ほっといていいの!?ミナミでも流石にまずい基準だよあれ!?」
「ロシアとかコンビナートの子供は、どこも大体あんな感じだから……一応作るなとは教えてるみたいだし」
「モロトフカクテルですか……使ったことはあっても作ったことは無かったですね。勉強忙しくて」
女の子たちもしんみりしてる。やっぱり日本でもそこそこポピュラーなんだな火炎びんは。
一つ学ぶことが出来た。火炎びんは日本でも普通に使うと。
そうこうしているうちにお祭り運営委員会の本拠地につく。
ーーー甘味処 百夜堂
あの後、一念発起してシズコとアヤメが旭川商工ローンで借りた金で作ったらしい甘味処である。
「「「「いらっしゃいませご主人様!」」」」
入った途端に百鬼夜行風の制服を着た女子たちに奇麗に揃った声で出迎えられる。
どうやら東京の方で流行ってるメイド喫茶的なのを取り入れたようだ。
洗練されてるなあ。色々雑かったアクメちゃんの後だと余計にそう思う。
「えっと、6人。席ある?」
時間帯のお陰か大分空いてるが、一応確認する。
「もちろんです!こちらへどうぞ!……ぇ」
出迎えたところで、なんか一瞬固まる。
(あれ、メシアンだよね?最近できたうちの商売敵の)
(なんか滅茶苦茶エロいお姉さんと、清純派コスプレロリがいるとかいう!?)
(誰かシズコさん呼んできて!おめかしめいっぱいでって!)
(あたし行って来る!由々しき事態だよ!?うちらの旦那様にメシアンがつくとか!?)
……なんか女の子たちが聞こえないくらい小さい声で話してる。それから従業員の一人が奥に駆け込んでいった。
「お、お待たせしました。粗茶ですが」
頼んでないのにお茶と焼きたてらしいいももち*1が出てくる。
「あの」
「今日はこちらが招いた身ですので!サービスです!もうすぐシズコ様が来ますので、それまでお待ちください」
あ、そうですか。じゃあありがたくいただきます。
そう思いながら、とりあえずお茶をすする。うん、美味い。
「えっとこれ、待ってた方がいい奴だよね?なんかシズコちゃん呼んでくるとか言ってたし」
「そうね。こう言うのは勝手に手を付けるとダメと、日本向けの礼儀作法の本に……あ」
キラキラとジェーンは、手を付けていいものか迷ってる。
「「え?」」
ポルノとアクメちゃんは速攻食ってた。ポルノはともかくアクメちゃんは割と意外だ。
「もう食べてる!?てかはや!?」
「イモモチは冷めないうちに食べた方が美味しいですし」
キラキラのツッコミに、アクメちゃんがきょとんとして言う。
あ、そこは普通にコンビナートなのね。アクメちゃん、理性的で清純だけど本質はコンビナートだった。
そんなこんなでシズコが出てくるまで茶を飲みながら待つ。結構客が多い。
「お待たせいたしました!だ……クマ様!河和シズコです♡」
そう言いながら奥からシズコが出てきた……アクメちゃんと同じ学校の制服で。
「へえ。お前も高校行くのか?」
「はい!シズコも、春から高校に通うことになったんです、旭川の未来を担うお嬢様の一人として、クマ様をお支えする一人として」
そう言いながらすごいナチュラルにオレの隣に座ってくる。ポルノとキラキラの視線がきつくなった。
こっちはスカート丈長めにしてるのと、足元が作りがしっかりしたブーツなのもあってなんかアニメで見た大正時代っぽい感じだ。
あと、なんかいい匂いがする。服の方にお香かなんかでにおいをつけてるらしいのと、いい匂いがする匂い袋を下げているのが見えた。
……これでショットガンさえ普通に担いでなかったら、立派にお嬢様で通じたんじゃね?
「それで、そちらの妙にゴテゴテした感じのメシアンの方はどちら様なんです?シズコにも教えて欲しいなって♡」
「……えーと、多分、本人に聞いた方がいいんじゃないか?」
なんでオレに聞くんだよ?と思いつつ、普通に答える。
その言葉に反応して、アクメちゃんが立ち上がってぺこりと頭を下げる。
「初めまして。旭川東方正教協会で会長を勤めております。アクリス=メノールと申します。お気軽にアクメちゃんって呼んでください。
これ、引っ越し挨拶のタオルです。日本ではこういうのが必要と聞きました」
「あら、これはご丁寧に。私は、お祭り運営委員会の委員長を務めております、河和の看板娘、河和シズコでございます。
メノールさんは新参であることは弁えているようで何よりです。私たち百鬼夜行、もといお祭り運営委員会は市民の皆様の味方です。
頭を素直に下げるならば優しくしてあげますよ、ア・ク・メちゃん♡」
結構敵意むき出しにしてるシズコにも、ニコニコと対応してる。よし、なんとか穏便に終わりそう。
そう思った瞬間である。
「ちなみにぃ、舐めたことしたら『尻の穴』に手を突っ込んで奥歯ガタガタいわしますから、大人しくしててくださいね?」
なんで煽るの!?ここ旭川よ!?いや百鬼夜行連中が基本メシアンカルトとコンビナートすげえ嫌ってるのは知ってたけどさあ!?
……いや待て、カルト系とは言えすっげえまともなアクメちゃんなら、穏便に!?
「……なるほど。犬に成り下がって多少はまともになったかと思ってもヒャッキヤコーは所詮ヒャッキヤコーだと……
田舎のマフィア風情が出来ると思うならやってみてください。確か、命を粗末にして無様に犬死にするのがヒャッキヤコーなのですよね?」
なんでこっちも笑顔のままめっちゃ濁った眼で言い返すの!?
今までの朗らかさが消えてもろにコンビナートになってるじゃん!?
「あん?誰が犬だとぉ?なんだその態度、百鬼夜行なめてんのかコラァ。クソカルトの分際でぇ」
ドスが効いてるのにめっちゃ普通の声で喋る、むしろ甘いようにすら聞こえるシズコの声。笑顔だ、ブチ切れてるけど。
「……そっちこそ東方正教の力を侮るようであれば後悔させますよ?クソマフィア」
ひたすらに冷徹に、敵に言葉を伝えるだけにしている、冷え切ったアクメちゃんの声。笑顔だ、ブチ切れてるけど。
お互い一歩も引かずに笑顔で睨みあう。いやこえーよなんだこれ。
なんでコイツら、合法都市の組織の幹部級の風格漂わせてるんだよ。
一体何があったんだ……そう思っていると隣に座ってたポルノがすすすっと耳元に口を寄せて事情を説明する。
(クマ。アクメちゃん、なんか合法都市に攻め込んだ連中の生き残り。あと、百鬼夜行で薬と調教でお尻の穴だけひたすら開発されてるから、百鬼夜行のこと滅茶苦茶恨んでる)
そっか。それじゃあしょうがないな。どうやらシズコの言葉が地雷原ピンポイントで踏み抜いたらしい。笑うしかない。
「アクリスもクラウディアもあんなことになってるなんて……合法都市ってやっぱり危険だったのね」
ジェーンの言葉にはオレも全力で同意する。元凶っぽいポルノは多分ほんの少ししか影響してない……はず。
かくて、ミナミにおける『不倶戴天の敵』同士の出会いは、為されてしまったのである。
「あれ、そういえばアヤメは?」
「ああ、アヤメさんなら地下でひたすら陰陽師のお札書いてます。お試しでネット販売したら凄い数の注文着て作れば作るだけ売れる状況みたいで」
となりではキラキラがアヤメどうしてるのか事情を聴いていた。思った以上に不憫なことになってるようだ。
*
こうして割と取り返しのつかないことになった気がするミナミを後にして、オレたちは官公庁街まで戻ってきていた。
「なんだか悪いわね。晩御飯までお店を紹介してもらっちゃって」
ジェーンも取っているホテルが官公庁街にあるということで、一緒に戻ってきて、ついでだからと晩餐を共にすることにした。
「……ミナミアサヒカワ……思った以上にいいところね」
それには同意する。まあ、アクメちゃんとシズコの出会いというささやかな不幸はあったけど、どの道、あの様子じゃあ遅かれ速かれだっただろうし。
(え!?ジェーンさん的にあれでいいところ判定になるの!?)
(うん。合法都市と比べるとめっちゃいいところだと思う)
(比較対象ー!?)
後ろでキラキラとポルノが漫才やってる。
「それで、どんなお店なの?」
ジェーンに尋ねられ、オレは素直に答えた。
「官公庁街で一番人気ある謎料理の店」
事実だ。最近とみに客が増えたってカーナも喜んでた。合法都市人が多いらしい。
「な、謎料理!?」
だが、その答えにジェーンが何故か驚愕する。いやだってなんて国の料理つってったっけ?レベルだしオレも。
大体肉とチーズとオリーブオイル多め、結構カロリー高いってところは知ってる。あと野菜たっぷりスープとかあるのも。
「いやだって、聞いたことのない国の料理だし」
「手前味噌ですけど、うちの母がやってる店なんです。母が帰化人なんですけど、その故郷の料理だと言ってました」
ポルノとキラキラが補足で説明すると、ジェーンは納得した。
「なるほどね……確かに、旭川は住んでる民族が多様だからそう言うこともあるか。分かったわ。それでなんてお店なの?」
「あ、もう着きました」
ここを選んだ理由が旭川市役所から近いってのもあるからな。
「……か、カラジョルジョ!?」
店名を見て、ジェーンが驚愕する。
例の縁日で毎回目立ちまくるので旭川市民や北海道民にはそれなりに有名ではある。
だが、裏で装備販売とかやってる関係上、絶対にネットとかに載せないし雑誌や新聞の取材も受けないから店の場所は地元民しか知らない店になってるらしい。
それで普段の客はあんまり増えてないので、カーナとオレらがたまに手伝うくらいでどうにかなってる。
地元民しか知らない通の店ってわけだ。
「戻ったか。無事で何よりだ」
「あら、お帰りなさい……あら?その人は?」
定時帰宅後にいつものように新聞を読んでいるダードと、夕方の営業に向けて仕込みをしてたカーナに出迎えられ、オレたちは口々にお帰りの挨拶をする。
「お客さん。連れてきた」
「あ、この人ね、今日知り合った人でジェーンさんだって」
「晩飯まだだから、ちょうどよいかって思って連れてきた。あの、大丈夫だよな?」
そう言いながら、オレはジェーンが通りやすいように道を開ける。
「その、お、お邪魔します……?」
少し申し訳なさそうにジェーンが入ってきた瞬間。
「「は?」」
ダードが新聞を取り落とし、カーナが皿を取り落として割った。
……え?なんかやらかしたか!?
「え、あ……その、ごめんなさいね?少し古い知り合いに似てたもので驚いてしまったの。いらっしゃいサ……ジェーンさん」
「う、うむ。そうだな。ゆっくりしていってくれ。ミス・ジェーン……ここまで驚いたのは士官学校時代のあの日以来だ」
なんかめっちゃ動揺してる?なんかこう、昔の因縁の相手だったとかそういう感じか?
(えーこれ、絶対知り合いな奴じゃん)
(あえて突っ込まない。それが大人の対応)
(だな。誤魔化そうとしてるんだし、下手に突っつくこともないか)
その様子に、オレら3人は素早く作戦会議を小声で済ませる。あの訓練で見についた癖みたいなもんだ。
まあ、合法都市でも旭川でも突然、予期しない出会いがあるのはよくあることだし。
それから、カラジョルジョは急遽閉店して、ジェーンを歓迎するすることになった。
「今日は特別メニューよ!このマチェドニア風ジンギスカン!私の一番の自信作なの!」
「うちの息子が選んだ特選ビールもあるぞ。好きなだけ飲んでくれ。あとで俺の秘蔵の酒も出す。お代は、まああれだ。気にするな」
「そ、そう?そう言うことなら、ご馳走になろうかしら?あ、カーナ。この店のレコードって、エルヴィス・プレスリーは何がある?」
そんなことを言いながら、店内のBGMになんか古いアメリカンな音楽が流れだす。
もう知り合いなの隠す気ねえなこいつら。
「……あ、お兄ちゃんから『なんか愉快なことになってるみたいだし、今日はフブキのマンションに泊めてもらうことにするね』ってメール来た」
逃げたなニコ。てかもう普通に同棲モードやんけ。
最近、家にいないこと多いし、なんか春になったらもっとデカいマンションにニコと引っ越すとか言ってたわそういえば。
「OK。避妊はしろよ?って返しとけ」
「うん。そうする」
とりあえずそんなことを言いながら、オレはカーナを手伝うことにした。キラキラもナチュラルに一緒に来る。
「はらへった。メシよこせ」
……ポルノ。お前も手伝えよ少しは。
そんなわけでオレたちは眠くなるまで、お客さんを交えた楽しい時間を過ごした。
ダードやカーナの昔の失敗談エピソードが次々に披露されたり、士官学校時代の5人が映った写真をダードが持ってきたりして、本当に楽しめた。
……その中の一人、黒髪の男が『ジン』だったんだろう。オレの知ってるおっさんよりも随分と若かったし、太ってもいなかったが、笑い方がそっくりだ。
*
あの輝かしき士官学校時代そのままに深夜遅くまで楽しんだ私は、さっさとアサヒカワをあとにしようとしたところで『捕捉』された。
ーーーどうやら。夢のような時間は終わりのようね。
カラジョルジョで『かつてのような時間』が過ごせたことに満足し、ついでに周囲の『異界化』を検知して立ち止まる。
……誰一人目撃者も民間人もいない時間帯を選んでくるのがダードらしい。どこまで計算してたのかしら?
そういうところは、変わらないのねと、微笑む。また一つ『アサヒカワ』に『好意』を抱くことが出来た。
「旭川市警だ。動くな。アレクサンドラ・ローガノフ!」
予想通りに、アメリカの娯楽映画みたいな言葉を掛けられて振り向く。
後ろには、明らかに素人じゃない雰囲気を持つ警官を名乗る傭兵に刑事を名乗る諜報員たち。
確か、アサヒカワの治安維持部隊にして、ダーヴィドの『私兵』的存在。
「……本当に、やんなっちゃうわ……」
このまま帰らせてくれないかしら?という甘い期待は裏切られた。
まあ、当然だろう。ここで逃がすような間抜けは『ヒルトリア人』じゃあない。
「貴方たちの飼い主、ダーヴィド・エルンネストに伝えなさい……一月最後の日に我ら『約束の国』はこのアサヒカワを制圧する。
下見は終えた。あとは潰すだけ……勝負しましょう?貴方たちの『アサヒカワ』と私たちの『ヒルトリア』はどちらが強いかをね。それじゃあ、お暇させてもらうわ」
だから私は見つかった場合の想定通りに、予定通りに行った。極めて穏当な『宣戦布告』を。
「なるほど。それはそれは、情報提供に感謝を。で、逃がすとお思いですか?テロリスト」
なるほど、良い判断してる。
刑事の統率者らしい女にパン、と銃で正確に眉間を撃たれて……私の身体から『油』が流れ出る。
断じて血ではない……血なんてもう『とっくの昔に』枯れ果てている。
「……は?」
頭部。ダメージは軽微。行動に支障なし……今の私には通用しない。
驚いた表情をした撃ち手……悪魔人間らしき女警官に告げる。
「デモニカを着てないデモニカソルジャーは、ただの人間だとでも思っていたのかしら?」
そう、私が纏うデモニカは、ただの偽装に過ぎない。私がもはや『人間でない』ことを隠すための。
「ソ連は、サイボーグ技術を持っていたわ。動物も、人間も……『天使』すらも『サイボーグ』に出来るだけの技術をね!」
「先日押収された『天使型』サイボーグ!?」
答え合わせが住んだ瞬間、私たちの周りに護衛の天使たちが降り立つ。
天使の一般的な弱点である『呪殺』が通じない、隠密状態で待機していた機械の天使である『造天使』たちが。
「アレクサンドラ・ローガノフ!いや……国際指名手配テロリスト『ヒルトリアの空』!貴女は一体この旭川をどうしようというんですか!?」
もし攻撃すれば、恐らく自分たちが負けるか甚大な被害を出すことを悟ったらしい女警官が、全員の攻撃を手で制しながら、それでも問うてくる。
なるほど、よっぽどいい教育を受けてきたみたい。素晴らしいわ。
「言ったでしょう?また作るのよ。この旭川に新しい『約束の国』をね」
だから、答えを返す。ご褒美だ。
「ふざけないでください!この国でそんなこと、出来るとでも!?」
「さあ?でもそのための準備はしてきたわ。だから作戦を実行する。私と『あの子』がね」
そう言った瞬間に、一瞬頭痛が走る。頭によぎるのは、あの子が『人間だった』頃の姿。
ああ、私はまだ『約束の国』に囚われ続けている。あの子と共に。
「今日はまだ、開戦の日ではない。だから、戦端を開く理由がない……しっかり準備しましょう?お互いにね」
そのまま私は造天使に抱え上げられ、アサヒカワを離れる。
ああ、ヒルトリア。我らが祖国。約束の国……そのためならば私は命すら惜しくない。
サタスペってる連中いないといきなりシャドウランとかガンドッグになるのよね……