Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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準備回。多分無策で言ったら全滅するよとか言われてる。


合法サマナー22 共同戦線

とりあえず、今回のターゲットを確認し、ついでに不思議な力なのかなんなのかスマホが外部に通じないことを確認したところで、オレたちは朝めしをかねて朝からやってる定食屋に入った。

 

出てくるのはご飯に味噌汁、シャケの焼き魚といった普通の朝めしだ。ご飯だけはお代わり自由らしい。

それを食いながら、作戦会議をする。

 

「まずさあ、正面から突撃して戦いたいってバカ、いる?」

最初の発言はニコだった。

全員無言で手をあげない。そりゃそうだ。あんなん無策で突っ込んだらあいつらみたくミンチだっつの。

合法サマナーはこっちから仕掛けるときは、勝てる戦いしかしないのだ。向こうから襲われたときはしゃーないが。

「よし、誰もいないな!というわけで、だ」

ニコがうさんくせえ笑みをオレに向ける。

 

「共同戦線と行こうじゃないか?」

そんな発言と共に。

 

「え?元々みんなで一致団結して協力、じゃダメなの?」

キラキラの疑問に、ウイさんが答える。

「まだ同志ニコラウスからのメール情報のほかは1日の付き合いですが、私たち『退魔図書委員会』とクマさんたち『合法サマナー』は戦い方も論法も違うのは理解しています。

共同は出来ますが、どちらかがどちらかの下につくのは難しいでしょう」

ウイさんの冷静な指摘。

「でしょうね。私たち、そもそも戦うの嫌いだし」

「退魔のくせに潰し方がえげつないとか正々堂々戦う精神がないのかとか結構言われてたもんね」

ルナールと秋雲の思い出話。

「まあ私も最初はなんだこいつらって思ってたもん。今じゃすっかり馴染んじゃったし、ニコとラブラブなんだけどさ」

そしてフブキさんの感想。喪女トリオが一斉に舌打ちした。

 

……うん?オレら結構似てないか?

そう思うが黙ってる。なんか違うみたいだし。

 

「というわけで、ボクらは徹底的に『退魔図書委員会』としての戦い方をする予定」

そう宣言する。まあ、それが正しいのかは分からんが、こいつらずっとそれでやってきたんだろうから、いちいち口を出すこっちゃないな。

 

「まずは西館にあった当主の書斎の文献を漁るところから始めます。ルナールと秋雲も手伝ってください。今は暇でしょう?」

最初に何するかを宣言したのはウイさんだった。

「オッケー」「了解っと」

ルナールと秋雲もそれを手伝う。

喪女トリオはまずは文献調査らしい……ただ本読みたいだけじゃないだろうな?

「んで私が場所の調査かな。あと聞き込み。これでも刑事だし?」

フブキさんは足で稼ぐタイプのようだ。ジンと同じタイプなので一番理解できる。

 

「それでボクはみんなの分までサボる!いつものことだね!ああ、ちなみに目標は三日ね。

水と電気は問題ないみたいだし、それくらいなら道産子なら大雪に備えて食料蓄えてるけど、それ以上になると問題出るだろうし」

ニコがすげえ笑顔で外道なこと言ってる。

 

キラキラとポルノがすげえ顔しかめた。『なんだこいつ』って顔してる。

 

「いえ、あの『ニコ君』はほぼほぼ何でもできますので、遊兵といいますか、状況に合わせるといいますか……」

「予備戦力ですね。あと、副会長。呼び方が昔に戻ってますよ?んん?」「あう……」

ウイさんのフォローに、フブキがにやにやしながら指摘し、ウイさんが真っ赤になる。

 

「で、オレら何したらいいんだ?わざわざ分けたんだから、なんかあるんだろ?」

大体わかったが一応確認する。この状況で必要だろうけど、あえて退魔図書委員会が誰も担当してない部分。

 

「うん。湖にある島の調査をお願いしたい」

 

オレらがやらないといけない部分だ。

ニコの言葉に、オレとポルノ、キラキラにビカラが一斉に頷く。

状況を考えれば分かる。封印されてた場所になら絶対になんか手掛かりはあるだろう。

……そして敵が悪魔なら、そこに罠か最悪『本体』が襲って来るだろう。普通に考えて。

「分かってると思うけど、あくまで『調査』だからね?倒してしまっても構わんのだろう?とか言って正面から殴りあう十武神の脳筋みたいなことやらないように」

「それで真相暴き損ねて事件解決しないどころか悪化するって結構あるパターンなので、本当に辞めてください」

フブキとウイさんがめっちゃ嫌そうに言う。

いやいや、そんなアホいるのかよ……いたんだろうなあ。合法都市でも謎武術の流派作ってた『一門』とか命知らずを自称して無駄な戦いして死ぬアホ多かったし。

 

「分かった。島の調査は任せとけ。無理はしない。なんか分かったら報告するよ。それでいいな?」

全員が頷いたので、お仕事の時間が始まった。

 

 

それからオレたちはニコの車で一旦拠点となる宿屋に戻って来た。

まずは宿の部屋に戻ってフル装備を整える。あちこちに精密機器が使われてる歩人甲は『衝撃』が弱点なので悩むところだが、防御力を優先する。

「着替え終わったよ!」「きがえてきた」

キラキラとポルノもいつもの装備に身を包んでこっちに来る。

すぐ後ろには、いつでも戦闘装備に着替えられるらしいビカラが百鬼夜行風の戦闘服に着替えて控えている。

 

(大型悪魔、ボス悪魔との戦いか……)

大型悪魔、人によってはボス悪魔とも呼ぶような悪魔は対人や、異界攻略戦とはまた違う戦い方を求められるので、正直苦手なジャンルではある。

だが、ここで戦わなければもっとひどい結末しか見えない以上は、戦うしかない。

 

幸い、退魔図書委員会の得意な戦いは『ボス悪魔』だと見た、ちょうどいい。

 

(俺たちの戦いは、どうやら『古い』みたいだしな)

オレたちの戦い方、合法サマナーは、ジンが20年かけて編み出した戦い方だ。それは時に古臭いし、絶対に通用するほど強いとも思えない。

実際合法都市ですら時折、オレたちよりもヤバい戦い方をする相手と出会ってきたし、何より旭川訓練洞窟での死闘でオレたちはそれを学び取ることが出来た。

少なくとも、絶対に勝てるって程には強くないと。

 

古くなったなら、新しくすればいい。オレたちはまだ、ジンより弱いんだろうが、ジンより若いんだから。

 

そのまま湖に踏み込む。

「とりあえず、湖はまだ奴の『勢力圏外』か……」

空を見上げ、鳥がそのまま上空を旋回してるのを確認する。

あの手の大型悪魔は、大体縄張り的なものを持ってる。そこに入ると襲って来るのだ。

「となると、島?」

「たぶんそう。あそこは、クリティカルにやばい」

そんな会話をしているポルノをおんぶしながら、島に少しずつ近づく。

野生の勘に優れたポルノには観察に専念してもらっている。空を舞う鳥の動きを監視してもらっているのだ。

 

「……!クマ!」

「ああ、ここがギリギリだろうな」

 

ずっとオレに背負われて空を監視していたポルノから、警告が飛ぶ。動きが変わったんだろう。

そこで止まる。多分、これ以上近づくと、敵と見なされる。

「つまりここからが本番……」

恐らく、本気の殺し合いは初めてなのであろうキラキラが緊張する。

オレだってそうだ。ギリギリと見切ったラインから少し離れておく。100mくらい。

「一度でも目をつけられたらひたすらに追って来るはずだ……あの手のボス悪魔はしつこいからな」

だからこそ、目をつけられたら逃げられないことが多い。どちらかが死ぬまで戦うことになる。

まあ、悪魔とて死ぬのは嫌だからってんでヤバければ引く賢い奴はいるが。

「じゃあ、いよいよ」

「ああ、こっからが本番だ……まあ、緊張するな」

「うんそう。キラキラは大丈夫」

あとはこう、あいつがあんまり頭良くないと良いが。

そう思いながら、いよいよ行動に出る。

 

「「というわけで、ビカラ!頼んだ!」」

 

そう、ビカラの偵察である。

「……え?もしかして、ビカラちゃん一人で!?」

何故かキラキラが驚いた声を上げた……もしかしてビカラ単独で行かせると思われたのか!?

「まさか。そんな危ないことさせねえよ」

「単独行動は死んだら終わっちゃう」

オレとポルノの二人で断言する。それじゃあ偵察の意味なくなるじゃん?

「ああうん。よかった。だよね、うん」

キラキラも納得してくれたところで、同行者を『召喚』する。

「SUMMON 造魔ノーラス」「さもん。造魔エンヴィー」

そう、今回はオレより強い奴らが居たので呼んでなかったノーラスとエンヴィーである。

「……え?もしかしてビカラちゃんのお供ってこの子たち!?」

「「え?そうだけど?」」

偵察なら偵察に一番向いてる奴が行った方がいいし、護衛にビカラより『速い』の用意したのに何が不満なんだ?

 

ちなみに携帯電話型COMPで直に『通話』することでリアルタイムに命令出せるのがいいところだ。マグネタイトの繋がりだから電話関係なく通じるし。

代わりに状況は音で判断するしかないが、そこはビカラに逐次情報共有してもらうことで乗り越える。実況である。

 

「いやでもそれって、ビカラちゃん、どうなの?」

「任されました!」

「ええっ!?」

キラキラが何故かビカラに尋ね、ビカラが手をあげて元気よく答える。

どうやらビカラは分かってるらしい。むしろオレたちがいると『邪魔』だと。

そりゃあそうだ。百鬼夜行のなんちゃってどもよりはるかに隠密出来るニンジャより上手く素早く隠密して動けると思うほど、オレは自分の動きに自信がない。

……ポルノならもしかしたらビカラにもついてけるかもしれんが、打たれ弱いからな。最近はちょっと反省して鍛えだしてるけど。

 

「えっと、そのビカラちゃんがそれでいいってんなら文句言わないけど……」

「え?とりあえずニンジャやその配下が事前調査するのは基本*1ですよね?」

まだ歯切れが悪いキラキラに、ビカラが不思議そうに聞き返す。

どうやら単独で偵察に行くのは文句ないらしい。合法都市の連中だと結構嫌がるんだが。

「ただ不安なのは、ノーラスとエンヴィー。それにボク入れても3人なところでしょうか?いえ、ノーラスもエンヴィーも下手なランドメイカーよりはるかに強いのは分かってますけど」

「3人だと少ないって?」

そう言われればそうかもしれない。正面から殴りあうことは絶対に無理だ。まあニコたちからも戦うなとは言われてるし……

 

「はい。ニンジャですので逃げ足にはまあまあ自信ありますけど、全滅すると情報持ち帰れません*2から」

と思ったら予想以上にガンギマリな答えが返って来た。どうやら最悪死ぬ覚悟は完全に出来てるらしい。

(そういやコイツ、地底人だった……)

オレら無名地区の人間でもドン引きが珍しくない連中、地底人。ビカラもまたそこの産まれなのだと感じさせる。

「……そうか。ちなみに何人いるといいんだ?」

「そうですね。吊り天井に引っかかると最大6人死にます*3ので、調査用の配下は7人送るのが基本でした*4

「うわあ……」

そう思ったら帰って来た答えにキラキラがドン引きしてる。正直、オレもドン引きしてる。

とりあえず偵察で死ぬのが前提かよ!?唐突に地底の命の軽さを出すな!?なんなんだよ地底は!?

「では行ってまいります!ご武運を!」

そう言ってビカラはノーラスを連れ、頭の上にエンヴィーを乗せて走り出す。それに反応して鳥の方がすいっと島の方に移動しだした。

攻撃は、まだする様子はない。

「どうやら島に踏み込むのが『敵対条件』っぽいな」

「分かったので、下がろう。きっとビカラなら生きて帰ってくる」

……考えてみればアイツ、あのクソみたいな地底の迷宮で、その地底人どもの中でも特にロクでもないのが集まった『宮廷』に仕えてたんだ。

この程度のことは、日常茶飯事だったんだろう。

そう思いながら、オレたちはオレたちはゆっくりと湖から離れる。

 

「ノーラス。とりあえず限界までラクカジャ。切れそうになったら再度ラクカジャで」

「エンヴィーはテトラジャかけたら奇襲に警戒して。攻撃受けた時、ビカラの盾になればビカラも一発はしのげるから」

せめてビカラの生存率を少しでも上げつつオレたちは距離を取る。

 

きっと生きて帰ってくると信じながら。後ろから『戦闘開始』の音がするのを聞きつつ。

「ノーラス、10秒おきにマカラカーン」「エンヴィー、10秒おきにテトラカーン」

とりあえず『ビカラが生き残れる可能性』を上げる指示を適度に出しながら。

 

……そうしてノーラスとエンヴィーがしばらく時間を稼いだ後に『DEAD』してCOMPに帰還したころ。

 

「アイツ、結構諦めよかったです!ノーラスとエンヴィーが戦ってる間にボクだけ逃げて島の外で見つからないように隠密しつつ湖から出たら普通に諦めました!」

さらっと酷いこと言いつつ無傷でビカラは帰って来た。ついでに『戦闘の様子』という情報と『ご神体』を持ち帰って来た。

 

とりあえず、偵察は無事に完了した。

「……ああうん、君ら本当に予想以上にやるよね?色んな意味で」

湖の外で『デモニカ』着て待ってたニコからは何故か呆れられた。いざとなったら時間稼ぎくらいはする予定だったらしい。

デモニカ着た時の強さは強さ"だけ"ならもう旧式じゃない分、ダードより上とかどうとか。

 

……その強さで初手に絶対命中で万能属性攻撃が2~5回発動するし、雑にほとんどの魔法ダメージ軽減するし物理効かないって何なんだよ。

 

とりあえず今はニコと本気で戦ったら死ぬということは分かった。

「……お兄ちゃん、わざわざこっちまで送ってたんだ……普段は市役所から出さないのに」

「まあ今回は、父さん直々に頼まれてたし?自分たちが離れてる間に『敵の襲撃』があるかもって」

キラキラは知ってたらしい。ニコが『デモニカ』使えるアプリサマナー使いであることを。

いやまあ大体ジンと同じく『男は死んでも女子供守るもの』って考えらしいダードの『息子』がデモニカ使えない方がおかしいって言われたらそうなんだけどさあ!?

 

 

というわけでオレらは戻って来た。思った以上に色んな情報持ち帰って来たとウイさんにも驚かれた。

「とりあえず、こっちはまだ文献調査と儀式の準備が終わってませんので、もう少しお待ちください……とはいえコレは……なるほど」

ウイさんは『ご神体』を見て、何かに気づいたようだ。

「とりあえず、コレが悪魔封印に使われてたご神体みたいです……見事に真っ二つにされてますけど」

察するに鬼の奴が使ってた刀で縦に割られたのであろう木で出来たご神体。これが封印の要だったらしい。

百鬼夜行や中華街、あとはコンビナートとかメシアンで使われてたのとは明らかに違う形式の『神像』っぽい。

ぶっちゃけどこの宗教のか分からん……無名地区でも見かけなかったような気がする。

ビカラから聞いた話によると、森を抜けると空が見える石造りの石碑みたいなのがある広場になっていたらしい。

そこに作られた石の祠に安置されてたようだ。

 

「なんかこう、日本のものじゃない気はするんだが……キラキラなんか分かる?」

「うーんどっかで見た気はするんだけど……なんだろ?多分映画とかで見た覚えが」

キラキラに聞くと、どうやら見覚えはあるらしい。でも首をかしげている。

ポルノは、まあ聞くだけ無駄だろう。

 

「そうですね。映画で見覚えがあるかもしれません……これは『トーテム』ですよ」

 

「ああ!?言われてみれば!西部劇とかでたまに出てくる奴!?」

ウイさんの言葉に、キラキラが声を上げる……トーテム?なんだそりゃ?

「トーテムって何?」

「アメリカの昔の先住民族であるネイティブアメリカンの神像です。それにこの村の地名を考えれば、答えは大分絞れます」

ポルノの素直な質問に答えながら、紙にさらさらと書いたのは『入有遁(にゅうあるとん)→New アルトン→新たなアルトン』

……英語だったのか。アイヌ語どこに行ったんだ。

 

「アルトンは、イリノイ州にあるアメリカの街の名前で、かつてのネイティブアメリカンの部族の一つである『イリニ族』の領土でした。初代は恐らくイリニ族の関係者でしょう。

開拓が行われたという明治から大正だと、まだまだ迫害されてた時期ですし、当時の日本は開拓の指導者としてアメリカ人を積極的に受け入れてました。

さらに、この村の住人が迫害が当たり前だった悪魔人間であることを考えれば、当時はまだまだ未開だった北海道を新天地と定め密かに移住しても何もおかしくない」

そこまで来れば、オレにも答えは分かる。イリニ族とやらは知らんが、多分『自分たちの神話の神様』を崇めてたんだろう。

生まれついて人間より霊的素養のある悪魔人間ならなおさら。

 

「そしてイリニ族には『部族の守護者』である『怪鳥』の伝説が伝わっています」

……アメリカの先住民に伝わる神の一つ。なるほど、マイナーな神話の悪魔には違いない。

そして、退魔図書委員会のかつてのトップは、答えを導き出した。

 

「かつてのイリニ族の守護神。敵対部族の『戦死者の人肉の味』を覚えイリニ族を襲う人食いの化物と化したという『怪鳥ピアサ』が、空を舞う悪魔の正体です」

 

こうしてオレたちはようやく、犯人の名前を知ることが出来たのである。

 

*1
迷宮キングダムでは探索前の調査フェイズで敵と罠調べないと実際死ぬ

*2
調査フェイズで配下が全滅した部屋の情報は一切手に入りません

*3
調査フェイズで発動すると1D6人の調査に送り込んだ配下を問答無用で殺す迷宮キングダムの基本トラップ

*4
1D6で全滅しない迷宮キングダムの基本数。宗教にもなってるレベル




退魔図書委員会、大体こんな感じでやってました。リアルオカルト知識めっちゃ要求される奴。
そっからメガテン的な性能割り出してメタ取ってくるぞ!奥義もあるし。
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