Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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よし、今回のゲストヒロイン登場だ!



合法サマナー27 作戦開始

網走日本語学校C組、通称『無名地区』組のたまり場に行くことになった。

 

ザッパとコタローの最初に行ったのは『休憩所』である。

「あいつ、こっちで寝てるか、談話室で遊んでるかの二択だからな」

そう、目的は無名地区組の協力者との接触である。

 

「分かってたけど、やる気ないね」「だな」

 

無名地区の連中がたまり場にしている、屋内の暖房が聞いた温かい休憩所は、懐かしさすら覚えるだらけまくった空気が漂っている。

畳とか言う板が敷き詰められただけの、暖房効いてるくらいしか取り柄のない部屋。

そこで無名地区のダメ人間どもがねこけてたり、男女でいちゃついてたり、特に何をするでもなく惚けている。

「え?ここ、男子と女子で別れてたりしないの?」

キラキラの質問に、ザッパが首を振って答える。

「学校だからな。男女共学なんだと。まあ、寝室とかここで『本番』やると地下の反省室行きだから、やるのはトイレとか運動場になるがな」

「うへえ……」

脳味噌が相変わらず合法都市らしいザッパの説明にキラキラが辟易とした顔をしてる。

これでも鼻もげる心配ないだけ元の無名地区よりはまともなんだけどなあ……というのは旭川育ちのお嬢様()には刺激が強すぎるので、黙っておく。

世の中知らない方が良いこともある。もう物理的に存在しねえしな無名地区。

 

なんでも寝室のベッドは消灯から起床までの時間以外は使用禁止らしく、休みになるとここに集まるらしい。

無名地区特有の悪臭こそ消えているが、それでもたるみ切って寝そべる怠け者たちの集団。

 

……ああ、そうだった無名地区の連中は、基本的にやる気がある奴は殆どいなかった。

 

そのことすら懐かしく思う。

頑張ってもどうせ奪われるから頑張るだけ無駄で、死ぬときゃ死ぬんだし気にしてもしょうがない。

食い物なら道端にいくらでも歩いてる。捕まえて焼いて食え。病気になった?諦めろ。

女は抱いても良いが、街角で娼婦やってるようなのは大体ロクでもねえ病気持ってるから鼻がもげるぞ。温かい寝床はいつでも奪い合いだ。

メシより酒だドラッグだ。長生き?早く死にたいのにしてどうすんだ?

 

それが無名地区で生きる連中の『半分』だった。

 

(まあ、ここ、無名地区の住人にとっては楽園みたいなものだもんな)

そいつらが『死の危険』がなくなれば、こうもなるんだろうな。そう思わせる。

 

合法都市でも他の地区に居られなくなった奴らや、組織とのつながり持たない連中が集まった無名地区は、合法都市で最も荒れた場所だった。

まともな食うものに困り、安全な寝床に困り、死体が変じたアンデッドから身を守る場所に困る。

一度寝て、明日生きて起きられる保証はどこにもない。そんな場所だった。

 

滅ぶ直前にいたってはおかしな空気が立ち込め、石化現象前からどっかのカルトが作った石化した人間が打ち捨てられ、どっかから連れてこられた奴らが犯されていた。

どこから流れてきたのか、余所者が頻繁に入り込み、街の支配者の放った刺客と戦い、逃げ帰るのを繰り返してもいたらしい。

だが、それすらもどこか他人事で、まあ、世界は、合法都市は変わらない。そう、信じてたのがオレらだった。

 

「……卒業する気がある奴は、休みでも図書室とか運動場とか訓練道場にいることが多いな。卒業して旭川に出れれば今より良い暮らしが出来るって信じてる連中さ。オレたち含めてな!」

コタローが笑いながら言う。

コタローは今、デビバスとしてやってくために鍛えつつも車や機械整備の勉強をしてたらしい。

言われてみるとコタローのつなぎには随分と油汚れが多い。

今までなんとなくでやってた機械の勉強が出来て、ジャンクじゃねえ本物の純正品の機械が触れて、修理したりできるだけでも楽しいそうだ……まあ、お前ならそうなるだろうな。

「じっさい、そう。ミナミで仕事してれば、めちゃくちゃかせげる」

「まあ、噂は色々聞いてる。なんかオレら無名地区で、しかも覚醒してねえ愚者でも受け入れてくれるすげえ村もあるんだろ?」

ザッパのどや顔に思わず辟易する……嘘じゃないけどさあ、それ多分『地底人の巣』だぞ?

 

確かに入有遁で聞いたビカラの話じゃあ地底では「人口こそ正義!*1」だとかで民はいくらでも受け入れる拡大路線だから、金もやる気もねえ食い詰め者が集まりだしてるとは聞く。

待遇は大分アレだけど、命を危険に晒さない仕事はいくらでもあって、最低限のメシと寝床と金は普通にくれるらしい。

やる気があるなら農業だの剣術だの料理だのも色々教えてくれるとかどうとか。

戸籍とかにもうるさくないので装備とか戦う気力失ったデビバスや行く当て無い連中、そして何より例のマンホールから這い出た他の地底人が最低限の暮らし求めて集まる場所になりつつある。

当然、その中には犯罪者の類もいるんだが、新しく地底で保護した腕の良いニンジャがいる宮廷も『属国』として奴らのところに加わったとかでオイタすると即ニンジャの通報食らって旭川市警に捕まるらしい。

なんかクリスマスの一件でバカと地底人どもがマブダチになったとかどうとか。あのバカ、意外と運が良い気がする。

 

……たまに一攫千金狙いで、例のマンホールから地底に入り込んでそのまま行方不明になる連中が出るらしいとか、それをジータがメシや寝床を豪華にするからと積極的にやらせてるってのはご愛敬だ。

無理やり送り込んだとかじゃなければ、悪魔業界の基本は自己責任だしな。

 

それはさておき。

 

「じゃあ、談話室に行くか」

 

次に移動するのは、談話室。なんでもゲーム類が置かれてるらしい。

「つってもほとんどが電源無しで、テレビゲームはふるくせーの1個だけだけどな」

そう言いながら入ると、なるほど。人だかりが出来てる。

一応トランプとか謎ボードゲームで遊んでる奴もいるんだが、やっぱりTVゲームのが人気らしい。

 

ーーーラウンド1 ファイト!……プレイヤー1 ウィン!

 

なんかどっかで見たことがある戦闘画面の格闘ゲーム……確か。

「スト2やってる」

ポルノの言葉で思い出した。スーファミの30本ゲームに入ってた奴だ。

「お、すげえ。昇竜拳普通に出してる」

片方のプレイヤーがすごく上手い。ほぼ一方的にボコってる。

オレが出そうとすると高確率で暴発する昇竜拳が普通に出てる辺り、相当な手練れだ。

「あれ、エドモンド本田が力士なのがちょっと残念だよね。しかも一番強いし」

本田繋がりと張り手と頭突きは出せるから、で大体エドモンド本田使って来るけど弱いキラキラがそんなことを言う。

「あいつだ。一方的に勝ってるリュウ使い。アイツが無名地区の協力者だ」

「確かお前らも面識あったはず」

そうか。ってことはダークサマナーか。

そう思いながら人だかりに近づくと、コタローの懐からチョコを1枚抜き取り、オレを踏み台にポルノがTVまで一気に近づく。

 

ーーープレイヤー1 ウィン!パーフェクト!

 

「いえー!わたしの勝ちー!もーこれで10連勝だよ!てわけでこの飴玉は没収ね♪」

 

負けた方のプレイヤーが、がっくりと肩を落としながら飴玉を置いて去っていく。

まあ、この状況なら賭けの一つや二つもするだろう。

決着がつくと、周囲も喜んだりがっくりしたりしてる。よく見ると飴玉とかをやりとりしてるから、賭博でもしてたんだろう。

 

勝って喜ぶ、ちょっと聞き覚えのある声。顔は見えないが、茶髪のおかっぱに、ツナギに開けられた穴から突き出した黒い猫の尻尾には確かに見覚えがある。

「次、いい?」

ポルノが話しかける。

「ん?いいけど……ええ!?」

それで振り向いて驚いた顔には確かに見覚えがある……けど、どっちだ?

 

「話は、対戦してからだ」

掛け金代わりにチョコレートを置いて、ポルノが言う。

なんか周りがどよめいている。

(飴玉はジャリ銭、チョコは札。そういう扱いだ。んでこの手の対戦なら、飴玉1つが相場。チョコ1枚は明らかに出しすぎ)

コタローがそんなことを言う。どうやら談話室ルールだとそうなるらしい。

「……ふぅん。いいよ。やろうよ」

チョコレートを見て驚いたあと、ポルノの挑発に不敵に笑い、座りなおす。

 

どうやら勝った方が居座れるルールらしく、開いてる側に、ポルノが座る。

選んだキャラは……リュウ。

(あれ、アイツ普段はダルシム使いじゃなかったか?)

そう思うが、黙ってる。アイツにはアイツなりの考えがあるんだろう。

 

ーーーラウンド1 ファイ!

 

それから対戦は、白熱したものとなった、1ラウンド目こそポルノが割と一方的に負けたが、それで癖を掴んだらしいポルノが2ラウンド目を制した。

 

ーーーファイナルラウンド! ファイ!

 

お互いの性能を把握したらしい3ラウンド目は激戦となった。同キャラ対決だから、純粋に本人の腕の差になる。

序盤に大技である竜巻旋風脚をあてたポルノが、優勢に見える。

 

「レバガチャぶっぱで、わたしに勝てると思わない方がいい」

「……落ち着け。負けないためには冷静に……勝つためにはドットを撃つように、正確に」

 

だが、途中から明らかに動きが変わり、最終的にポルノが逆転負けを喫した。

ポルノの動きをことごとくカウンター決めてきたのだ。

 

ーーープレイヤー1 ウィン!

 

「……わたしの勝ち……だよ!」

「うん。負けた。流石はサイバーズ」

負けたことにムッとしながらも言ったポルノの言葉で思い出した。

アイツら普段はネコみたいなヘッドフォンつけてたから、気づかなかった。

 

「そうそう!サイバーズの『モモイ』にゲームで勝とうなんて、百万年早かったね!ポルノさんよぉ!」

割とギリギリの戦いだった気がするが、黙っておく。

「そうか。お前、モモイか!」

「そうだよ!生きてたんだね!クマ!」

ようやく気付いたオレに、モモイがあっけらかんと言う。

アイツら双子でヘッドフォンないと全然見分けつかないから、途中までどっちか分からなかった。

 

サイバーズ。まだジンが生きてた頃に、ファントムのダークサマナーだったとか言う母親に連れられて合法都市に来た『ダークサマナー』の双子だ。

まあ合法都市にダークじゃねえサマナーなんていなかったが。

来たばっかの頃、母親に連れられてジンのところに挨拶に来たので覚えている。

 

3年くらい前に母親が死んだ後は独立して、姉貴と妹の二人で家賊(ファミコン)を組んで活動していた。

名前はサイバーズ。才羽って苗字だから、割とまんま。

母親の教えがよかったのか、結構頼りになる奴らで、時々は敵になり、時々は味方になり、そして時々はどっちでもない。まあ、お仕事のお付き合いって感じだ。

 

「……モモイ。コイツが、きょうりょく者?」

「まあな。合法都市時代にも組んだことがあっから、勝手がわかってるし、何より……ここで再会したときには『一人』だったからな」

ポルノの言葉にザッパが少しだけ言い淀んでそう言った……そうか。

 

「その、ご愁傷様です」

「あー、いいのいいの。気にしないで。ミドリが簡単に死ぬようなクソ雑魚で役立たずのゴミだっただけだからさ!」

それで察したオレの言葉に、あっけらかんとモモイは答える。少しだけ、辛そうだ。

 

そう、コイツには双子の妹がいた。才羽ミドリ。姉と違って大人しくて冷静なタイプだった。

一気呵成に攻めたがるモモイと、オレたちみたいに陣形を組んでじっくり攻略するタイプのミドリで対照的だったのを覚えている。

 

……ノリと勢いで生きてるモモイとは仲が良いのか悪いのか分からない感じだった。

おっさんは『ありゃあ喧嘩するほど仲がいいって奴だよ。昔のオレとオレの友達もあんな感じだった』とか言ってたが。

 

「てなわけで、改めてよろしくね!」

ポルノから勝ち取ったチョコレートを躊躇なく齧りながら、挨拶を交わした。

オレ、ポルノ、キラキラ、ビカラ、ザッパ、コタロー。そして、モモイ。これが今回の依頼の面子になる。

 

 

午後の時間を、オレたちは他の面子が目をつけてた『反乱分子』の確認に使うことにした。

「日本語学校って建前になってるが、日本語の勉強なんてのは一部のガチで字が読めねえ連中とガキどもだけがやってる。

後はまあ『将来に備えた』お勉強って奴が主流だ。オレもザッパもそれぞれそっちの授業ばっか受けてるわ」

コタロー曰く、やっぱりここは収容所であり職業訓練所みたいなものらしい。

 

最初に向かったのは、道場だった。

 

木刀や木槍、木づちにボクシンググローブといった訓練用の『武器』が揃っている。

「ここは主にデビバスになりたい奴や、元々戦闘技能持ってる奴らが集まってる。オレも休みの日はここが多いな。組手相手に困らないから」

「まずはアイツ。あの中心にいる奴だな」

そうしてコタローが道場の一角を指さす。

そこにはアクメちゃんから貰ったのであろうお菓子とジュースを飲み食いしながら、道場の一角に座って他愛もない他の似たような女子と雑談をしてる女が一人いた。

すぐそばには訓練に使ったのであろう木刀が置かれていて、結構な汗をかいている。

茶色い髪で、体つきも普通。なんていうか、その辺に普通にいそうな女の子だ。

「おう、聖騎士(テンプルナイト)のレオナ・アマラール。合法都市に攻め込んだ連中の部隊の一つの隊長やってたってさ」

とてもじゃないが、敵に回すと面倒な頭カッチカチのメシアンには見えなかった……下手すると色々とお前、本当に聖職者?って言いたくなるアクメちゃんよりも。

 

「うーん。なんていうか、剣道部の主将って感じ?女の子にモテそう」

「強いのは分かるけど、ふつう」

キラキラとポルノも同意見らしい。

 

「ああ、あいつは付き合いやすくて良い奴だよ。組手とかにも付き合ってくれるし、剣の扱いとかも教えてくれる。何よりメシアンじゃないからな」

「そうそう。わたしもたまに格闘技とか護身術とか習ってる。おじいちゃんから習ったとかでジュードーとかも出来るんだよねあの子」

ザッパとモモイもほぼ同意見のようだ。

「メシアンじゃない?どういうことだ?」

その中で気になったことを聞くと、ザッパがさくさくと答えてくれる。

「なんかさ、オレにもよく分からんけど、フランスとか言う国の生まれで、確かに洗礼受けたクリスチャンではあるけど、テンプルナイト名乗るほどには敬虔な信者ではなかったらしい」

「少なくともボッタクル教会の東方なんたらとは別系統なんだと。しかも本人が『ニュートラル属性』だったから普通に石化食らったって。まああそこのトップとは個人的に戦友で友人ではあったらしいけど」

なるほど。そう言うことか。メシア教は複数のキリスト教系の宗派が集まって出来てるから、内部でも結構差がデカいとはジンから昔聞いた。

全部ひとからげに扱うととんでもないことになるとも。

しかしロウじゃないのか……確かに聖騎士っぽくないな。

「まあ、いい子だよ。ボッタクル教会から仕送りが来るようになってからもお金を使いすぎないように上手く管理しつつも『アクリス……一体、何があったの!?』とか心配してたくらいだし」

モモイの物真似付きの言葉に頷く。ああ、うん。なんとなくわかるわ。ポルノがやらかすまでは清貧とか贅沢は敵とか言ってたんだろうなって性格してるし。

 

 

次に行ったのは、運動場だった。

「ほれ、アレ。ガキどもと遊んでる白いの。アイツが『エル』だ」

このクソ寒い中よくやるな。それがオレの感想だった。

雪積もって真っ白になった運動場。そこで雪合戦に興じてるガキどもと、そいつらより明らかにでかい、銀髪と白い肌の女。

歳はポルノくらいだろうか。なんかこう、イラっと来る顔している。

 

「えりゃあ!石入り雪玉を食らえー!」

「うわやられた~……ってちょっと!?石入れるのは反則でしょう!?私ならともかく人間だと当たり所悪いと死にますよ!?って痛!?石入り普通に投げつけるの辞めなさい!」

ガキどもの石入り雪玉がガンガンぶつけられてる。なんかこう、扱いが雑いぞ。

 

「流石に旭川ルールだと雪玉に石入れるのは反則だったんだけど……」

「合法都市ではセーフだった。むしろ手榴弾じゃないだけ温情」

キラキラとポルノの意見も分かれていた。そしてキラキラがドン引きしていた。

「でもあれ、流石にやばくないか?覚醒はしてるんだろうが、ガキどもも覚醒者だろ?」

止めた方がいいかと思って動こうとすると、コタローに止められた。

「それが、大丈夫らしい」

「なんで?」

オレの質問に、コタローが何でもないことのように答える。

「なんかさあ、アイツ、よく分からんけどノーラスと同じ『造魔』らしいんだわ」

「後から来た新参者なんだが、看守さんとかの話では、アイツ、元ブラックアドレスのタレコミで襲撃した施設で保管されてた奴らしい。

で、人間並にコミュニケーション取れるからってんで、この日本語学校送りになったんだと」

 

……なん……だと?

 

コタローの言葉に驚愕する。造魔のガワを人間に似せたのはたまにいるが、瞳孔とかガン開きだったりいつでも完全に無表情だったりでどう見てもよく出来た人形にしか見えない造魔が普通だった。

でもアレ、普通にしゃべってるんだけど?

 

「え?完全に人間と見分けつかない造魔とかいるの?」

「いや、悪魔に詳しい奴に聞いたら、東京の方にはいるらしいぞ?ほぼ人間にしか見えない造魔」

 

また東京か。

もう東京には何でもあると思うことにした。

 

 

続いて行ったのは、図書室。

そこで『毛沢東語録』とか言うあからさまにアレな本を読んでる銀髪のガキにしか見えないのが、不穏分子の1人らしい。

「あれが一応中華街の凶手だったらしいツバキ。基本何考えてるか分からんし、こっちが関わらなければなんもしないけど、喧嘩になると滅茶苦茶容赦ない」

「あいつにだけは喧嘩売るなって言われてる。タダでさえ力強いのに、手加減とかなしで、余裕で顔面砕かれる。途中で中華街の連中が止めたらピタッと止まるけど、普通に殺されるレベルだってさ」

ザッパとモモイはその喧嘩の様子を見てたらしい。

なんか百鬼夜行のヤクザと揉めて、喧嘩売られたときに普通に顔面が潰れてあと一歩で死ぬ勢いでぶん殴ったそうだ。

なるほどな……しかしどっかで見覚えがある気がする。どこでだ?

「……ツバキって、百鬼夜行の?」

そう思ってたらポルノがポツリと呟いた。それで思い出した。

「ああ、居たな。百鬼夜行では屈指の剣客とか言われてた侠客。確か鬼の力前提のクソデカ刀振り回すんだったか。なんか少し前から行方不明になったんだったか……まあ、中華街で捕まったんだろうな」

それで思い出した。百鬼夜行時代と『見た目』が違いすぎて気が付かなかった。

「中華街で捕まったってどういうこと?」

「ああ、あいつ等なんかこう、薬物とかカルトマジックとか駆使する、わけのわからん洗脳技術あってな。あそこで捕まると性格変わって中華街の手先になることがあるんだよ」

それで出来た凶手は、中華街の殺人人形とか言われてて恐れられてた。

死ぬの一切恐れないし、謎武術や謎武器使って突然襲って来るのだ。

言われればなんとなく目つきにキジルシが宿ってる。鬼の血を引いてるとかで生えてたデカい角がなくなってて、黒かった髪の毛が真っ白になってるから、まず間違いない。

「え、なにそれ。こわ」

キラキラがドン引きしている。

 

「しかしメシアンの聖騎士に、コンビナートの造魔兵器、そして中華街の凶手……もしかして、主だった不穏分子って全員『刺客』系か?」

 

ふと思いついたことをザッパに尋ねる。

「あー、そうかもな。あと残ってるフィーナも侠客だし」

「あいつなら多分今日は視聴覚室にいるな……見れば一発で分かると思う」

「うん。あの子は完全に侠客だよね。まああんまり強くなさそうだけど」

割と酷評されてる……まあ、見に行けば分かるか。

 

 

視聴覚室。毎週休日には映画が流れるようになってるらしい。

この学校では貴重な娯楽の時間。

 

ーーーうおおおお!兄貴の仇ぃ!往生せえやああああああああああ!

 

今日の映画はなんか古臭い感じの映画だった。

なんか主人公っぽいのが腹巻代わりにダイナマイト巻いた状態で、ガンガン撃たれて血塗れになりながら、敵のボスっぽいのにナイフを突き立ててる。

その一発で、全身からすげえ血しぶきあがってる、腹なのに……

 

(なんだこの映画……)

画像荒いし、話がアレだし、なんだこれ。

多分、滅茶苦茶古い映画だ。見てる奴少ないし。

 

「オー!イッケー!ヤッチマウデース!」

 

「で、まあ言うまでもないが」

「あいつが、フィーナな」

ああうん。だろうな。最前列でめっちゃ騒いでる金髪のアメリカンが居た。

多分アイツがフィーナだろう。

「……え?百鬼夜行のヤクザってもっとこう、日本人っぽい感じじゃないの!?」

キラキラがそんなことを言う。そういや知らないんだったが。

「あそこはな、日本人多いけど、そこそこアメリカ人や欧州人もいたんだよ。自分の国でやらかして逃げ込んだり、自分ところの組織から派遣されてきたマフィアの類がな。

で、そういう奴らの中にはたまに『被れる』奴が出てくる」

「ニンジャとかサムラーイとか言ってるようなの。大体なんちゃってども」

そう、百鬼夜行のニンジャがなんちゃってとか言われるのはそこが原因だ。大体怪しい外人のコスプレ感が酷い。

……多分、本物のニンジャはビカラみたいに本気で忍んでて、簡単に見分けられないんだろう。百鬼夜行のニンジャといえば街中で黒装束着たり、アフリカ投げナイフ投げてくるようなのだ。

 

「さあヤクザvsシリーズもイヨイヨ三本目デース!鮫vsヤクザ!吸血鬼の次は鮫デース!」

 

フィーナの言葉に驚く……アレ吸血鬼だったんだ。全然気づかなかった。そしてこれ、三部作だったんだ。

「モモイ、見てく?」

「あーうん。ちょっといらないかなあ……すごいZ級臭するし」

というわけで退散することにした。

 

 

「てな感じだよ」

「ああうん。わかった。ありがとうな。これ、お礼のチョコ」

世話になった礼にモモイにチョコレートを渡す。

「えへへ♪ありがと、じゃ、またね」

それを受け取ると、モモイはさっさとどこかへ行ってしまう。まあ、そろそろ夕方だしな。

「さて……と。そろそろ部屋に一度戻るか。ザッパ、コタロー。お前らも一緒だ」

「おう」「あいよ」

俺たちは『事前の打ち合わせ通り』に今日から泊る部屋に行く。

 

当然、男女6人の『大部屋』だ。

 

オレ、ポルノ、キラキラ、ビカラ。そしてザッパとコタロー。

「お、懐かしのオレの装備!」

「アイテムもちゃんとあるな。流石は二代目」

そこにはオレたちの本気装備が既に届けられている。一応チェックするが、変な小細工は無し。

まあ、当然だろう。ニコ直々の手配だ。今更裏切るようなバカは入れてない。

「つうわけで、だ」

全員がガチ装備に着替え終えて、車座に座る。

 

なんかこうなつかしい気がする。ずっと昔にも似たようなことがあったような。

 

そんなことを思いつつ、呼び出したノーラスとエンヴィーに扉の方を見張らせながら、話を切り出す。

「反乱計画をもみ消せる範囲でおさめること。それが旭川の『二代目』から、オレたち『ナユタ』への依頼だ」

そう、事件は既に始まっている。だからこその、ガチ勢だ。

今頃は他のチームもそれぞれに動いているだろう。たとえ裏切ったとしても他のチームが始末できるように。

……やっぱアイツ、ヒルトリア人だわ。そのことが逆に頼もしい。

 

反乱計画。どこがどうつながってるか分からないからこそ、オレたちは配置された。

旭川でも目立っていてこの旭川日本語学校に関わりある連中から選ばれた『反乱を防ぐためのチーム』として。

 

この旭川日本語学校に反乱の兆しがあると見て取った二代目ことニコの依頼だ。

 

ーーーまあ、そのために色々こっちも準備してたんだけどね?

 

そう言って、ニコは笑った。男として一皮剥けた顔で。やっぱ女を5人も囲ってる女は違うなって。

こっからが、本当の勝負だ。

 

そうしてチーム全員に一通りの『想定される敵』を説明し終えたところで。

 

『ああ、ごめん。ナユタチーム?悪いけど、早速のお仕事。外からの"襲撃"が発生した。運動場で不審人物発見だってさ。君たちが一番向いてる。頼んだよ』

 

そして、ニコの連絡と共に、裏仕事(シャドウラン)が始まる。

*1
迷宮キングダムの国家レベルは人口に比例します




というわけでサタスペっぽいシナリオとしての『盟約幹部からの裏仕事』である。
成り立ての亜侠には絶対に任せられない、ガチの奴。
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