Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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サタスペと言えば最初のシナリオは『コレ』であろう。
なお、作者は旭川エアプなので、旭川市民の方はご容赦いただきたい。



合法サマナー02 二虎殲滅

しばらく病院で寝て過ごし、無事に退院したオレたちは、いよいよ『監察官』とやらに会うことになった。

向かう先は、旭川市役所の片隅にある、うらぶれた郷土史編纂資料室。

まあ普通の市民なら用事もなしに行こうとも思わないであろう地下の一室だ。

多分、存在すら知らねえ奴のが多いであろうところに『監察官』はいた。

 

「お前らが、アイツの残したガキどもか……なるほど、男の方は雰囲気がアイツそっくりだ」

 

おっさんのことをアイツと呼ぶその男は、かびくせえ郷土史編纂資料室に似つかわしくない男だった。

金髪碧眼、筋骨隆々の美中年で鷹のような目をしている。

(間違いなく、つええな)

その立ち振る舞いから、オレは大体検討をつける。コイツは、強い。もしかしたら、おっさんよりもはるかに。

同じことを思ったのであろうポルノが、ぎゅっとオレの服の裾をつまんだ。とりあえず、逆らっていい相手じゃねえことは分かった。

 

「……まあ、そう堅くなるな。オレももう、歳だ。生身でならお前らより弱い」

「……いいのか?『デモニカ使い』であることを隠さなくて」

 

オレだってあの街にいたんだ。軍人上がりであろう目の前の男がわざわざ歳に言及する意味くらいは分かる。

進化する装甲服、デモニカ。旧共産圏のエリート兵崩れには使い手がたまにいる。オレは使えないが。

 

「……なるほど、ジンの奴は思った以上にしっかり父親やってたようだな」

 

ジン。ジンか。そうか、おっさんはジンだったのか。

10年以上生きてて初めて知った。あのおっさん、名前くらいはもっと早く明かせよ。

結局一回も呼べなかったじゃねえか。クソが。

 

「ところで、おじさん。名前はなんていうの?」

 

話がひと段落したところでポルノが問いかける。ていうかさっさと名乗れよ。

「ふむ。名前を尋ねるときはまず自分から名乗れとは習わなかったのか?」

最初にやるべきだろ……と、思ったところでオレたちも名乗っていなかったことを思い出した。

 

「オレはクマだ。合法都市で生まれ育った普通のサマナーだ」

「ポルノ。合法都市出身、普通のバスター」

 

名前を聞くなら、最初に名乗れ。正体不明の奴を信じる奴なんていねえ。

そうおっさんから教わった。10年以上名前すら誰にも教えなかった奴の言葉だ。重みが違う。

 

「……合法都市出身であることは言うな。ただのフリーって言っとけ。この街じゃあ目立つだけだ」

そんなオレたちを見ながらため息と共にそれだけ言って、男は名乗った。

 

「本田太郎だ。表向きはこの郷土史料編纂室の室長ってことになってる」

「「うそつけ」」

 

思わず突っ込んだ。どう見ても本田太郎って顔じゃねえだろこの『金髪碧眼クソマッチョ』が。

「嘘じゃないぞ。帰化人って奴でな。その時に妻と戸籍登録した名前だ。故郷ではこの国で一番有名だった企業の苗字に、一番普通な名前。いい名前だろう?」

クソ!?コイツ、意外とズレてる!?

んな名前のやつ今どきいねえよ昭和か!?

 

……大丈夫なのか『北海道ヤタガラス旭川支部長』がコイツで。

 

「大体貴様らもクマとポルノとはなんだ。資料ではもっと普通の日本人名だったはずだが?」

「あいにくと、合法都市……故郷じゃあこの名前で通してたんでな。まあ必要な時以外はクマで通すつもりだ」

「いわば、ニックネーム。その方がカワイイ」

 

あっちの名前にはいい思い出もないし、その方がしっくりくる。

クマって名前には、オレとおっさんとポルノの思い出が全部詰まってるからな。

……ポルノは割と頭おかしいニックネームだと思うが言ってもしゃあないので黙っておく。

 

「……なるほどな。ならばオレは『ダード』と呼べ。オレの故郷の風習では、同志は親しく愛称で呼び合うものだった」

 

いや、本田太郎のダード要素どこだよと思わなくもないが、そこもスルー。どうせ語らねえだろうし。

 

「それで、オレたちは今日からどこに住めばいいんだ?アンタ……ダードが世話してくれるって聞いたが」

「病室追い出されたし、装備もない。このままでは適当に財布を盗まざるを得ない」

 

今着てるのはオレもポルノも普通の服に、北海道では必須の防寒具。

まあその辺で一般人として暮らすならどうとでもなるかもしれんが、如何せん金がねえ。

 

「……装備は返してやる。そのうえで一つ『簡単な仕事』を引き受けて欲しい。ちょっとしたテストみたいなもんだ」

 

ピクリ。その言葉にオレは警戒を募らせた。

合法都市じゃあ『簡単な仕事』って言われたら『死ぬほど厄介』か『面倒な相手を敵に回す仕事』だってのが常識だった。

 

おっさんなんて、その言葉を口にした瞬間、問答無用で『依頼人名乗る詐欺師』を殴って追い出すくらいだった。そもそも、だ。

 

「待て。簡単な仕事かどうか決めるのはアンタじゃねえ。オレとポルノだ」

「まずは依頼内容全部話して。そのうえで、簡単かどうか、わたしたちが決めるから」

 

「……ジンの野郎。本当に真面目に『親父』やってやがったんだな」

 

そう言ってため息を吐いたあと、依頼内容を言う。

 

「旭川郊外の牧場で聖獣ビャッコが2体。暴走した状態で出現した。そいつらを始末しろ」

 

……なるほど。万全の状態なら『簡単な仕事』だ。

 

「分かった。アンタ、思った以上に誠実な仕事を出すんだな」

ダードは意外と誠実な性質をしているようで安心する。

……いくらでも騙しようはあるこの状況でクソみたいな嘘つくような奴は、そもそも支部長なんて名乗れねえのは、オレには分かる。

 

「……わたしたちの装備は?」

まずは大前提の確認をポルノが確認する。流石に装備なしでビャッコに挑めというほどアホじゃないだろう。

「すべて返す。お前らならばやれる。装備を見てそう判断したのも今回の依頼だからな」

当然の答えが返ってくる。次。

「報酬は?」

依頼は依頼だ。報酬を確認せずにやる奴はいねえ。お互い今は試してる状態だ。

 

「そうだな。まずお前らの生活の一切の世話を見てやる。これは成功しようが失敗しようが見てやろう。

それと運転手兼、監督官を一人。ヤバそうだと思ったら助けを求めれば、助けてくれるだろう。ただし依頼は失敗扱いだ。

成功報酬は同じ内容をフリーに出した時にかかるのと同じくらいの相場通りの報酬。

あとはそうだな……倉庫に転がってる無銘の刀を一本くれてやる、そんなところか」

 

その報酬に驚いた。無銘の刀。前から欲しかった奴だ。

だからこそ余計に、身構える。ポルノもだ。

 

「……騙されてる?報酬が『良すぎる』気がする」

ポルノが警戒心をあらわに尋ねた。

「確かに、データが分かってる悪魔2体始末してそれだと貰いすぎだ……何か、裏があるのか?」

気になることは質問する。今のオレたちじゃあ裏取り出来る伝手がねえから、それ以外はできねえ。

そんなオレたちに、ダードは苦笑しながら、言う。

 

「オレは仕事任せる相手を騙すほどアホじゃないぞ……一つ教えておいてやろう。この国は、オレやお前らの故郷より大分『マシ』なんだよ、色々とな」

 

……なるほど。覚えておこう。とりあえずは、信用しても良さそうだ。

 

「牧場までの移動は、旭川支部の若手幹部にやらせる。装備もそいつの車に入れてあるから、牧場に移動しつつ装備しろ。以上だ。他に質問は?」

「いや、ない。とりあえずはアンタを……ダードを信じることにした」

今のところ、ダードは誠実だった。ならば、信じるべきだ。

どの道、他の伝手がねえからな。

 

かくてオレたちにとっては初めての旭川での仕事が始まった。

 

*

 

市役所を出てすぐ、話しかけられた。まあ普通に通達行ってたんだろう。

 

「やあ、君たちが支部長の言ってたクマとポルノの二人だね。僕は本田ニコラウス。ニコって呼んでくれ」

 

本田って苗字の通り、ダードのおっさんの血を引いてることを感じさせる、柔らかな印象の金髪の男だ。

合法都市にはいなかったような、とっぽい印象があるジャケットにジーンズという普通過ぎる格好。

……だが間違いなくオレたちより強い。北海道ヤタガラスの若手幹部ってのは嘘じゃあないだろうという、そういう男だった。

 

「さあ乗ってくれ。装備は全部車に運んである。スモークガラスだから、外からは見えないよ」

 

そう言いながら、真っ白な箱みてえな……確かハイエースだったかに案内される。

一見すると普通だが、バンパーやら足回りはしっかり作り直されているいい車だ。感心する。

 

「ああ、悪いが現場まで頼む。移動時間は?」

すぐに後部座席に乗り、座席の上にオレたちが合法都市時代に使っていた装備が全部あるのを確認しつつ、問う。

「ざっくり1時間ってところかな。もっと準備時間はいるかい?」

運転席に乗り込んだニコが車を出しながらオレたちに確認する。

「いんにゃ。充分だ」

オレの最重要装備である頑丈さ重視の『携帯電話型COMP』にしっかり聖獣ビャッコのデータが登録されているのを確認しつつ、言う。

本当に手際がいい。これが日本って国の普通かってなる。

 

それから、ポルノがこれからの予定を告げる。

「着替えに5分。作戦会議5分。あとはクマと車内セッ「辞めてくれ。この車、まだローン残ってるからさ。汚したくないんだ」

ニコににこやかに、だがガチ目のトーンで止められた。まあ、そりゃあそうだ。オレだってできれば知らん男と女の性臭染みついた車とか乗りたくねえわ。

「お楽しみは仕事の後だ。その方が、楽しいだろう?」

不満げな顔をするポルノを諭す。病院にいる間は出来なかったのもあってオレだって許されるならやりたいが、今は仕事の時間だ。

「……分かった。今夜は、寝かさない」

「……後で母さんに伝えとくよ。二人は同じ部屋にするようにって。確か屋根裏に父さんたちが若いころ使ってたダブルベッドもあったはずだし」

……本当に気が利くなコイツ。合法都市にはいなかったタイプだ。そう思いながら外の世界の凄さを実感する。

 

そう思いながら二人して下着姿になり、装備を替える。

お互い全裸すら見慣れてる身だから、特に感じることは無いし、ニコも普通にこちらを見ようともしない。

運転席からスマホとかいう新しい携帯電話使ってあちこちに連絡を入れている。手際の良さは流石の若手幹部様って感じだ。

(悪くねえな)

思った以上に快適な仕事になりそうだ。

そう思いながら、オレたちはさっさと作戦会議を切り上げて終わったらどんなプレイをするかでひとしきり盛り上がったり、連絡終えたニコにアサヒカワについて聞いたりしながら、現場へと向かった。

 

 

現場に到着し、早速確認。

 

見晴らしのいい、不意打ちは出来なさそうな牧場のど真ん中。そこで白い虎……ビャッコが日向ぼっこしてあくびをしていた。Lvは40で2体。まあ油断しなきゃどうとでもなる相手だ。

 

「いやあ、今朝方湧いてね。ちょうどよかったから君たちに頼もうとかと思ったんだ」

合法都市じゃあビャッコ2体同時とかまず無かったんだが、外の世界じゃあこんなもんらしい。

「じゃあ、やろっか」

「おう」

まあ、せっかくの『簡単な依頼』だ。さっさと終わらせよう。

 

そう思いながら、COMPからいつものを召喚する。

 

ーーーSUMMON。造魔ノーラス

 

召喚陣が現れて、現れるのは燃費最高の一匹の造魔。おっさん仕込みのいい造魔だ。

カジャ類にデカジャデクンダ、あとは突撃用のテトラカーンとスキルの構成もさることながら、一番『強い要素』はこれだ。

 

「へえ。驚いた。コイツどう見ても『シベリアンハスキー』じゃないか」

ニコがノーラスを見て驚きの声を上げた。そう、コイツは『ガワ』が完全に犬なのだ。街中で歩いていても造魔だと思われないくらい目立たないレベルで。

ちなみに病院で聞いた話では、首輪とリードをつけておけば、アサヒカワの街中で連れ歩いても大丈夫そうだ。

ヤクザやチンピラレベルのアホなら油断の一つも誘えるという、おっさん仕込みの良いやつだ。

「で、どうする?事前にカジャっておく?」

「いや、魔法の気配で気づかれるかもしれねえ。逃げられると面倒だ。一気に突っ込む」

そうと決まればとオレは膝まづいた。

「乗れ」

「うん」

背中にポルノを背負う。単純ながら強い。いつもの手だ。

 

「3,2,1……」

 

ゴー!

 

一気に走り出す!それに気づいてビャッコどもが臨戦態勢を整えるのが見えた。

 

「バウ!」

真っ先に動いたのはスピードに特化してポルノよりも早いノーラスだ。最速で放たれるテトラカーン。俺達は10秒間、物理攻撃が効かなくなった。

そのことに、自慢の牙と爪が効かなくなったビャッコどもが動揺したのか一瞬ひるんだ。

 

「眠れ」

続いてその一瞬のひるみをついてポルノがオレの肩越しに発砲。

使う銃はアールズ・ロック。おっさんがポルノに残していった魔晶変化武器の一つだ。

瞬速で放たれる弾丸が2発。両方が命中し、一頭が横倒しになった。

「残念。二匹は無理だった」

銃口から放たれた、対悪魔用麻酔弾。眠るかどうかは運だ。あいにくとオレらが運がいいのか悪いのかはオレには分からないが。

 

ーーーウオオオオオオオオ!

 

残った一匹が、破れかぶれとばかりに口からアイスブレスを吐き出す。Lv40のブレスともなれば即死は無いにせよ結構な痛手だし凍り付いたら厄介だ。

「残念。対策済だ」

だが、オレのハイドアーマーには通じない。ダメージは、ないし凍り付きもしない。ノーラスは普通に凍ってるけど。

ちなみに背中に背負ってるポルノのハイレグアーマーは氷結に弱い。代わりに何故か炎を無効化する。

 

どっちかが受けることで両方に対策するのがオレたちなりのちょっとした裏技*1だった。

 

「さてと、いつも通りだ」

吹雪を無効化し、いつもながら、女は魔晶装備が充実しててずりいなと思いながらオレも銃を構える。

オレのは、ごく普通のライフルだ。威力だって見劣りするし、一瞬で2発や3発撃つなんて芸当も出来ねえ。

出来るのは精々。

 

「寝たまま吹っ飛べ」

弾倉に『パンプキンボム』突っ込んで爆破させるくらいだ。

「っしゃ。奇麗に逝ったな」

狙ったのはもちろん、寝た方だ。確実に当たるし、走りながら動いてるビャッコに当てられると思うほど、オレは自分を信じていない。

まあ、奇麗に顔面に入ったし、弱点ついたおかげかそのまま首から上が吹っ飛んだのでヨシ。

 

ーーーマ、マテ!コウサンスル!ハナシアオウ!

 

詰んだのを確信したらしいビャッコがごろりと腹を見せてきた。ヨシ、このまま死ぬまでパンプキンボムをぶち込むか。どうせ今の実力では仲魔にしようにも使役できんし。

「ふーん。じゃあ、僕の仲魔になってみる?」

そう思った時、一足遅れてついて来てたらしいニコがそんなことを言いだした。手にはスマホ……もしかしてアレ、COMPだったのか?

 

ーーーワ、ワカッタ!オレサマハ聖獣ビャッコ。コンゴトモヨロシク……

 

そうしないと死ぬと思ったんだろう。ビャッコは逃げるようにニコのCOMPに吸い込まれていった。

「ふう、依頼完了だね」

データを確認しながら、ニコがにこやかに終了を告げる。

「……おい、仲魔にするとは聞いてなかったぞ」

「いや、契約では『始末』だったし、行けそうだったから行っただけだよ。ちょうど『妹に贈る誕生日プレゼント』探してたところだったし」

……マジかよ。

オレはワクワク☆サマナーいくせいけいかくに『聖獣ビャッコは女専用の魔晶変化防具』になると書いてあったことを思い出しながら戦慄した。

 

「さて、帰ろうか。さっき母さんから連絡あったんだ。今夜はジンギスカンだってさ」

 

そう、ニコが告げたところで、オレたちの初仕事は終わりを告げた。

 

*1
真・女神転生 シンクロニシティ SYNCHRONICITY PROLOGUEでどこぞのヒーホーどももやってた




という感じです。最初なので一番簡単なシナリオにしました!

……なお『亜侠』が挑むと結構死ぬから注意しろよ?
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