あと奴は鬼子母神名乗りながら自分の子供食らうとか言う、
ハリティーの逆鱗撫でまくり行為したので滅茶苦茶嫌われてました。
かつては加護もあったやけどなあ……
ニコからの依頼を受け、オレたちは目標ポイントを目指す。
「ザッパ!コタロー!エンヴィー!後ろの警戒頼む!」
「エンヴィー。何か来たら、テトラカーン」
ナユタの参謀として、最低限の指示を出す。いつも通りだ。
「おうともよ!」「退路確保は任せとけ!」「にゃーん」
ザッパとコタロー、そして多数の雑魚を相手にするのに長けたエンヴィー。コイツらに任せておけば、とりあえず退路は確保できるだろう。
ナユタは
運動場に駆けつけつつ、オレは新たに作った仲魔を呼び出す。
「SUMMON 地母神ハリティー!」
この前のピアサ騒動でレベルが足りるようになった、地母神ハリティー。俗にいう『鬼子母神』だ。
「あら、私の力が必要かしら?いいわよ、幾らでも力を貸してあげるわ。貴方たちには『恩』があるもの」
……ちなみに、作った時から何故か忠誠度がカンストしていたし性格が使いやすい『友愛』になってた。
あと見た目が若い。オレの知ってるハリティーと違う……恩を売った覚えはないんだが何故か恩があるとか言ってる。謎だ。
「あいつ、そこまで嫌われてたのか……」
なんかポルノが知ってそうだが、まあ無理に聞くことでもない。とりあえず、運動場に急ぐ。
そして運動場では、派手に照明弾が打ち上げられていた。
「アイツか!不審者……!?」
その照明弾の下。派手な光に照らされて、奴はいた。
どこか鬼女ランダを思わせる謎の仮面をつけ、ぼろきれのようなマントで体型を見せないようにした、正体不明の存在。
「え、あいつ、なんなの……?」
「気を付けてください!アイツ、恐らくすごく強いです!」
旭川育ちのキラキラは知らないがために驚き、知らないながらも技量を見抜いたらしいビカラが警告を発する。
「気を付けて。あいつは『無名地区』の刺客……」
最大限に警戒態勢を取ったポルノがじわりと構えた瞬間。
「「うわああああああああああ!?『ククバット』だああああああああああああああ!?」」
追いついたザッパとコタローが驚きの声を上げた。
その言葉に反応したように、ククバットが身を翻し、どこかへと走り去っていく。
「……クマ大帝閣下!ボクが追わせていただきます!」
「ああ、気をつけろ。絶対に無理はするな!」
「はい!」
それに反応したビカラが、追うことを提案し、了承。
それと同時に、文字通りの意味で人間離れした速度で、ビカラがククバットを追っていく。
ククバットは手練れだが、すくなくとも竜鳥ピアサよりは弱いだろう。そう思ったし……オレたちが追ってる暇はない。
バサバサバサバサバサ……
「気をつけろ!敵が来るぞ!」
無数の羽ばたきの音がしてきたことに反応して、警告する。
「……そういや、アイツ、多分『ロウ』だったな」
ザッパがオレの隣に並び、その後ろにハリティーが陣取る。
ノーラスの後ろに、ポルノ。そしてオレの後ろがキラキラ。
「しかも補給いらねえのずりいわマジで……後ろには今んとこ敵はいねえぜ」
『おほほほほー!見つけましたよ!無名の子供たち!さあ、この死天の王の糧となりなさ~~~い!』
なるほど、不審者だ。不審すぎる。
バカ笑いしながら5体ほど『天使パワー』を従えた顔が2つくらいあって羽も4枚生えた『大天使』とか不審以外の何物でもない。
「えっと、何アイツ?」
「無名地区のダークサマナー兼エンジェルシフター。で、老害」
キラキラの疑問にポルノが答える。
『誰が老害かあああああああああああ!?』
それに反応して激高するアイツの正体を、キラキラに教える。
「無名地区で無名のおっさんの次に有名だった奴だ。自分で『死天の王』とか名乗ってる。誰ひとりコイツの天使の軍勢を倒しきれた奴はいない。やべえ相手さ」
……そう、とりあえずで言っておく。悟られないように。
『そう!私こそが無敵のダークサマナー『死天の王』!無名地区で最強であること!今こそお前たちの死をもって証明して差し上げましょう!』
あ、ずっと無名のおっさんより弱いって言われてたの、気にしてたんだなと思わせつつ、クソみたいなテンションで襲って来る死天の王。
そして、戦いが始まる。
初手はいつものノーラス。
「ノーラス!……テトラカーン!」
最初は、安牌のテトラカーン。天使パワーは物理重視だ。付け焼刃で魔法覚えさせても大した威力にならない。使い時だ。
『……おほほ。引っかかりましたねえ!』
……やっぱりか。奴のニヤリとした笑いにそう確信し、オレは予定通りの『速攻戦』を仕掛けることにする。
(ビカラに追わせたのはまずかったか?いや、アイツ以外では『単独』で追うのは危険すぎる!)
なにしろ相手はククバットだ。舐めてかかるのはヤバすぎる。恐らく目の前のコイツよりも強い。
「と、言うわけで死ね」
そしてポルノが耐性チェックも兼ねた『撃破手段』を試す。
うぼあああああああああああああああああ!?
『施餓鬼米』を投げつけられた天使パワーが『弱点』を突かれて一撃で消滅した。
「「「『……え?』」」」
その様子に、キラキラ、ザッパ、コタローに加えて何故か死天の王まで驚きの声を上げた。
いやお前は驚くなよ。タネ割れてたら秒で弱点も分かる奴だろうが。
「やっぱか」「やると思った」
そしてオレとポルノはその様子で確信した。コイツ、工夫が足りてない『老害』だと。
『バカな!?我が死天使の秘密をどうやって!?』
いや、おっさん普通に編み出してたぞ。自力で。そう思いながら、コイツの秘密をばらす。
「こいつのパワーは全部『ネクロマ』で呼び出してる!破魔ぶち込めば殺せるぞ!」
「んな!?なぜそれを!?」
その言葉に、死天の王がめっちゃ動揺した。バレてるって思わなかったんだろう。
死天の王は、おっさんいなくなった後は無名地区最強の殺し屋と言われていた。曰く、コイツに狙われて生き残ったものなどほとんどいないって言われるくらいには。
まあ、撃破方法知らんと、普通に負ける類ではある。テトラジャ重ねておけばそうそうバレんし。
まあ知ったこっちゃない。オレが2体目を施餓鬼米で破魔する。
「……!いくよ!」
それに反応してキラキラが3体目を施餓鬼米で破魔。これで半分が飛んだ。
「おのれおのれ!食らえ必殺の『テトラコワ「ちょっと遅いわね。痺れなさい!忠義の雷撃!」ガガガガガ」
死天の王が動くほんの一瞬先に、ハリティーの忠誠度最大で大ダメージに至った『忠義の雷撃』が刺さる。
それで感電して、魔法が発動できない。
そしてやっぱりテトラコワースか。訓練洞窟で散々見て来てもう見飽きたわ。
テトラカーンとマカラカーン同時掛けは、所持スキル確認も兼ねて遭遇戦の初手にだけやるくらいでちょうどいい。
普段から過信するな。あの洞窟で学んだことだった。
「「うがああああああああ!」」
生き残った2体の脳味噌までゾンビになってるらしいパワーがデスバウンドをかましてくるが、テトラカーンかかってるので普通に反射される。
まあこの程度2発で死ぬほどオレもザッパもノーラスもやわな鍛え方はしてないが。
「行くぜ!あいさつ代わりのショートジャブ!持ってきな!顔面2個野郎!」
「ほげ?!ぶべ!?」
そのままラフな喧嘩ファイトスタイルのザッパの拳がしびれて動けない死天の王の顔面に突き刺さる。左右で一発ずつ、両方ぶん殴る。
「……よし!ノーラス、タルカジャだ!」
死天の王が動くより先に動けなくするか仕留められると見て、攻撃力を上げていく。
「「ほいよっと!」」
ポルノとオレがぴったりと息を合わせて施餓鬼米を投げて破魔して、向こうはコイツ一人だ。
「死ねよやぁ!」「うぼぁ!?」
キラキラが抜き放ったロイヤルポケットの神経弾で狙い撃ち。ダメージはガッツリ通るが麻痺ってはない。耐性は高目みたいだ。
「さあ、あと何回黒焦げまでにかかるかしら?」「ガガガガガ……」
再びの忠義の雷撃で感電しつつ瀕死まで追い込まれ。
「どりゃあ!フライングボディプレス!」
『ば、バカなあああああああ!?この私がアアアアアアアア!?』
そしてトドメにザッパのごつい身体での押しつぶしが華麗に決まり2RでのKO勝ちを達成した。
*
ビカラが戻ってくるまでの間に、悪魔人間通り越してもう悪魔になってたのか倒したらそのままロストして消え始めた死天の王の装備を漁る。
多分ここにいたククバットと通信するために使ったのであろう通信機に、死んだ天使パワーで埋められた聖書型COMP。これはいらねえ。ニコに渡そう。
エンジェルシフターだったからか装備もロクなもんがねえ。うーん、いらねえ。
消耗品がいくらか。これは貰っておこう。戦法の都合上ネクロマ連発する上に魔法型なせいか、MP回復アイテム多めだったし。
「で、ククバットって何?」
そうしていると、キラキラからそんなことを尋ねられる。
「あ?あー、無名地区の『刺客』だな。罪狩*1や怪人*2や殺人鬼*3並に強い」
「みんな同じ仮面付けてて見分けつかないし、戦い方もいろいろ。何してくるかわからないから、一番めんどい」
オレとポルノがとりあえず説明する。
ククバット。無名地区の暗殺者とか刺客とか言われてる奴*4だ。
普段はただの住人やってるが、依頼受けたら揃いの仮面つけて標的殺しに行く。組織があるわけじゃないが顔特定されたらそのまま酷い目に合うのがわかってるから、みんな同じデザインなのだ。
その特徴は、仮面の下に何がいるか分からない。
ある程度どういう動きしてくるか見れば分かる他の地域の刺客より、危険な存在と見られている。
まあ、たまにただのチンピラがククバット仮面付けてるだけだったりするのはご愛敬*5って奴だ。
どうせやらかすのは『ククバットを見たら真っ先に、全力で殺せ』って鉄則も理解してないバカだし。
「刺客かあ。確か合法都市の他の地域にもいたんだっけ?」
「そうだな。コタローちょっとキラキラに教えてやれよ」
「おう」
アイテムを漁りながら、コタローが解説を始める。
合法都市には大きく分けて5種類の刺客と呼ばれる連中がいた。それぞれの地域に一種類と、新参だったメシアンの尖兵どもだ。
百鬼夜行に居たのが『侠客』と呼ばれる連中。旭川ではヤクザとか呼ばれてる。大体刀や短刀の扱いに長けてて、剣技で襲って来る。
銃も使うが、大抵は刀使いながら片手で使えるような拳銃で、威力はそんなに期待できない奴を使っている。
……稀に、COMPも持ってねえのに古くさい『管』から悪魔一匹だけ呼び出してクソみたいな連携してくるやべえ奴もいた。
中華街に居たのが『凶手』だ。こっちは侠客以上に白兵戦特化が多くて、白兵戦だけなら最強と言われてた。タクヒ便とか悪魔使う奴もいたが、少数派だ。
なんか素手でも武器持ち並かそれ以上に強いのが居たり、不意打ちで凶悪な即死技使う暗器使いが居たりして、近づけると厄介だった。
あとは『殺人人形』とか揶揄される、死ぬの怖がらないよう心壊された奴ら……達人級の凄腕に言わせれば言われたことしか出来ねえこっちのが弱いことが多いらしいが。
対照的なのがコンビナートの『ブラックアドレス』で、コイツらは大体やべえ戦争経験してきた正規軍人や傭兵のなれの果てと言われてる。
ちょっと古びた中古のデモニカ着こんでごつい銃で相手を死ぬまで撃てば大体殺せる、で意思統一されてるので単独ならともかく、数が集まるとやばい。
……絡め手で結構手玉取れるんだが、一度やられた手法の情報持ち帰らすと、次までに『対策』かましてくるから、連戦すると滅茶苦茶危険な奴らだった。
合法都市では最近出てきた新参扱いなのが『
メシアンカルトどもの尖兵で、十字架下げてる他は罪狩みたいに目立つ奴らか剣と鎧で武装してて、魔法にも長けてるとか言うファンタジーな奴らだ。
……実際には銃得意な奴らもいるんだろうが、それは多分ブラックアドレスの一種として扱われてるんだと思う。外人が多かったし。
合法都市では長らく見かけなかったが、最近妙にそいつらの出入りが多いし、なんか内輪もめしてるのか外から突っ込んでくる奴がいたんで、警戒はされてた。
「とまあこんな感じだな。どうどう?オレすごくねえ?クマより頭の良さじゃあ上だぜ?」
「へー……合法都市、そんなんいたんだ。まあ確かに頭の良さだとクマより上かもねえ。ま、それだけじゃないんだけどね♡」
ナユタじゃあアイテム作りと情報の担当だったコタローの解説に感心したような声を上げるキラキラ。
おら、オレの女だぞ。あんまデレデレすんな。
そう思ってたときだった。
「……戻りました。すみません、治療を」
ククバットを追ってたビカラがシュタッと現れて、そのままどさりと倒れた。
「うわ!?めっちゃ撃たれてる!?でぃ、ディアラハン!」
倒れ伏した後に血が広がって行く。このままだと危険だと判断したらしいキラキラが慌ててディアラハンで傷を癒す。
「……大帝閣下。あいつ、銃使いでした。しかも弾丸は『神経弾』です。無策で食らい続ければ、非常に危険かと」
息も絶え絶えになりながら、最低限の報告だけして、気絶したビカラ。
……ならば、やるべきことは一つだ。
「そうか。よく調べてくれた、ありがとうな。ビカラ」
抱き上げて、医務室まで運ぶことにしつつ、ねぎらいの言葉を掛ける。気のせいかビカラが微笑んだように見えた。
命がけで情報調べて来てくれたならそれくらいしかできねえ。あとは着替えさせて精々休ませてやるくらいだ……明日の朝までは。
「でかした。お前こそ最強のニンジャ。ニンジャオブニンジャ」
ポルノも同じ気持ちだったらしく、黙ってビカラを撫でている。
(うええ……めっちゃくやしいけど、ビカラちゃんマジで死にかけたし怒るに怒れない……)
(こええよな……基本的に滅茶苦茶冷静なのにすげえ優しいんだよなアイツら)
(なんつーの、だんだん、おっさんに似てきたよなアイツら)
後ろが何かうるさいのは、無視することにした。
で、翌日。
「というわけでクマ大帝閣下!やり遂げました!ビカラ!前よりパワーアップして完・全・復・活!です!」
なんかコイツ、一晩寝たら治った。一応傷は全部ふさいだとはいえ、回復速い速くない?大分血とか失ってはずだけど。
この回復の速さも地底人クオリティ*6なのか。
「えーと、今日は一日休んでろって言うつもりだったんだが」
「何言ってるんですか!あんな光栄なお言葉を掛けられて、寝てるなんてニンジャの名折れです!……あ、でも褒美として、また抱いて下されると嬉しいです♡」
しれっとエロ要求してくるくらいだし、もう寝てろって言っても止まらねえ奴だなこれ?
「分かった。終わったら、4Pのきょかしてやる」
おいポルノ、勝手に決めるな。いやまあビカラの鍛えられてるのに柔らかい身体はいいものだったけど!?
「まあ、ビカラちゃん、本当に頑張ってるもんね。許可するしかないかなー……これ以上は本当に許さないかんね?クマ」
キラキラも賛成に回りやがった。シズコの時は反対したのにな。
……で、オレの意思はどこに?
分かってる、こうなったら男は弱いって。
「「地底人もヒルトリア人もこえー……」」
ちなみになんか他の2人はドン引きしてた。
もうあいつ等の中でキラキラは日本人じゃないらしい。
*
というわけで、朝のひと時は、それぞれの報告会も兼ねていた。
場所は、二代目のお坊ちゃまであるニコに割り振られた豪華な部屋。学校って言うかホテルのスイートルームって感じの部屋だ。
オレらに割り振られた囚人……もとい学生とそんな変わらん殺風景な部屋とは大違いだ。
襲撃があったので、ということでみんなここで飯を食ってるし、今後はここを拠点にする予定だ。
部屋の中に怪しいもんがないかは昨日のうちにバカと龍田とアヤメとアクメちゃんで念入りに調べたらしい。
これで見つからなかったらもう、オレらじゃどうしようもない凄腕がいるってレベルの警戒だ。
今も、武装一切なしの中華街の料理人が1人だけ、忙しなく自分で作った料理を給仕している。
どこであっても料理さえできれば満足ってタイプらしく、普段は学生として学食で頑張って働いてるという。
ちなみにメシは料理人が作った中華風朝がゆだ。なんか中華街の最高級の料理屋の料理人が学食で飯作ってるらしい。
その関係で、旭川日本語学校の中華はめっちゃクオリティが高いそうだ。
「私たちの所にはテンプルナイトとブラックアドレスが来ました……ルミさん。これ、もう一杯いただけます?」
「あいよ!お嬢ちゃん、ほそっこいのに食うねえ。料理人冥利に尽きるよ」
食えるだけ食うとばかりに4杯目の朝がゆをおかわりしながら、アクメちゃんがしれっと言った。
どうもオレたちが侵入者と戦ってる間、東方正教協会とお祭り運営委員会にも刺客が送り込まれてたらしい。
2人チームに、2人のタイプ違う刺客は、大分本気で殺しに来てる。
「良く勝てたな。お前ら、正面からの削りあい苦手そうなのに」
テンプルナイトって剣と魔法メインと聞くし、ブラックアドレスなら銃撃メインだろう。
アクメちゃんはバッステとか魔法に強いだろうけど、あからさまに魔法よりだし、数こそ少なくとも一人で手練れの物理型2人を相手するのはきつかっただろうに。
「クマ、痴女のメイン装備はデモンズスキン。脱ぐとエロい」
「その呼び方辞めて!まあ、確かにデモンズスキンのお陰はあります……あのテンプルナイト、斬撃メインの剣術は中々のものでしたが、打撃系の格闘術の方はいまいち鍛えてなかったようで。
それと、プレートバンダナを装備していたので、アクリス様のザンマとディアラハンもあって、ほぼ無傷で殴り倒せましたね。両方捕縛して地下送りにしました」
ああ、絡め手とか苦手そうなコンビが、斬撃と銃撃がほぼほぼ通じないクッソ頑丈な前衛に阻まれて順当に殴り殺された感じか。
痴女……もといグリさん、正面からの殴り合いに特化してるっぽいんだよな。それで至った結論があのビキニアーマーなのは笑うしかないが。
「でも、ブラックアドレスはともかくとして、テンプルナイトって元戦友とかそういうのじゃないの?大丈夫だった?」
……身内に甘いことに定評あるキラキラの質問に、グリさんはひょい。と首をかしげて言う。
「いやテンプルナイトといってもドイツの聖騎士団の出でプロテスタント系列でしたし?東方正教的にはどちらかというと敵ですよ?
ドイツ人は殺せ!80年前に殺された戦友の恨みを忘れるな!と、おじいさまもよく言ってました」
しらねーよ。お前らの派閥と歴史は複雑すぎて中の人でもねーとわかんねーんだよ。
まあ、とりあえず心配はなさそうだ。
「ウチらんとこは『侠客』と『凶手』やな。凶手の方は殺人人形の方やで」
逆に正面からの殴り合いには如何にも弱そうなシズコとアヤメも、見事にしのぎ切っていたらしい。
……つっても、コイツら陰陽系だから、順当っちゃ順当なのか。
「どうやって倒した?」
「ああ、まずな。隠密いまいちやったから仕掛けといたシキガミの探知に引っかかってん。それで装備からして精神と魔力と神経防ぎそうやったんで……緊縛でまず侠客の方、動けなくしたんや」
「ゲンさん、斬りあいに持ち込めればアヤメ位なら殺せますけど、まず持ち込むまでが出来ないんですよね。死ぬの前提の鉄砲玉系って言うか」
うわお。辛口評価だ。あと、腐ってもシズコも百鬼夜行人らしく、カチコミ慣れしてる。ついでに相手もいかにもな侠客だったらしい。
言い方からして、知り合いではあったんだろう。まあ、河和は百鬼夜行の穏健派とか言ってたし、百鬼夜行の武闘派とは仲が悪かったとかだな。
「んで、侠客動けなくなった時点で強行突破に方針変えたらしくてな。青龍刀担いだエロいチャイナ服の女の子が突っ込んできたんや」
ああ、あるある。マグネタイト用のお楽しみ兼ねた、エロ衣装の凶手。頭おかしくなってるので一切嫌がらないし、むしろ喜んで何本でもくわえ込むとか聞く。
「クマって、もしかしてコスプレえっちとか興味あったりする?」「とりあえず、この制服着たままやったら喜ぶ、かも。仕事終わったら捨ててもいいものだし」
……キラキラ。そんな目で見るな。オレは抱いたことない。アイツら身体に毒とか怪しい魔法仕込まれてたりしてるから、普通に抱くと下手な娼婦よりやべえんだ。
でも正直、制服えっちは興味があります。ない奴はそれはそれで男辞めてると思うんだ。
「で、まあ。緊縛自体は通じそうやったから、捨て駒のシキガミ盾にしながらウチの『女の子だけ裸にできる術』で全裸にして」
「河和秘伝の痺れ薬で動けなくしました。今は情報聞き出すの兼ねてちゃんと治療したので正気に戻ってますよ。なんか封剣士だとか言う、大陸系の剣士らしいです。
情報はロクになかったんですけど行く当てもないし、洗脳から助けてもらったお礼に、なんでも言うこと聞くとか言ってましたんで、こき使ってやろうかと思ってます。クマ様♡」
いや全裸て。そんな術あんのかよカルトマジック。いや確かに年末の京都では東京の化物級に強い女が全裸で刀抱えて鬼神の如く魔人と戦ってたとか実況スレにちらっと出てたけど!?
そして、河和の家は、薬にも強いらしい。まあ、合法都市で食い物扱う店やってた一族なら、それくらいは出来てもおかしくないのか。
……そういやお祭り運営委員会って、なんか合法的な魔法系の薬扱ってたなそういえば。流石に回復系中心で犯罪に使えるのは自重してるらしいけど。
というわけで、絡め手に特化してるアヤメとシズコは、無事乗り切ったようだ。心配する必要もなかったな。
……しかしこう。
「これ、明らかにここの校長、明らかに首謀者ですよね?その、ニコラウスさん」
「だろうねえ。こんな大規模な襲撃、全部見逃しましたとか言ったらそれはそれで反乱してなかったよりヤバいもん」
オレの確認に、ニコが朗らかに言う。まあそんな無能、合法都市だったら即座に殺されてる。それは多分旭川でも一緒だ。
「でもま、君らが全部襲撃撃退してくれたおかげで、一つ良いことがあった」
むしろ楽しくなってきたという顔で、ニコが宣言する。
「なんかさあ、乗って来たバスが事故で壊れたから、明日迎え来るまで帰れないってさ。あと、謎の通信障害で、旭川と連絡つかないって。
明日までにはなんとかするから、今日一日我慢してくれってさ」
全員がうわあ……って顔になった。
……うーんこのコンビナート感。失敗して頭に血が上ったのか、なりふり構ってないな。
「で、どうするよ?ニコ」
もう色々確定したので、敬語捨てて、聞く。昨日の襲撃からしてキラキラも普通に殺すか攫ってお楽しみ位するつもりみたいだし。
「とりあえず、なんも気づいてないバカのボンボン演じるためにも昼間はみんな、事情聴取行ってくれる?天龍と龍田は一応護衛ね。装備は昨日のうちにこっち運んでおいたから」
本当にコイツはヒルトリア人だなあ。呆れつつも、策を考える。
「……SUMMON。ノーラス」
まずはノーラスを呼び出し、命じる。
「明日まで、アクメちゃんの護衛してくれ。アクメちゃんの命令は、オレの命令と思ってくれていい……アクメちゃん。コイツ、預かってて」
「ふぇ!?い、いいんですか!?ポルノさんから伺いましたが、その子、エンヴィーさん並に強いって!?」
命令に従い、尻尾振りながらアクメちゃんに近づいてくノーラスに、アクメちゃんが滅茶苦茶びっくりした声を上げる。
そういや、ポルノと組んだなら、エンヴィーも見てるのか。
アイツからは結局、札幌の事件のことロクに聞き出せなかったというか、戦闘はなんかそんな苦戦せず勝ったとしか聞いてない。
出てくる思い出といえば、痴女と処女に色々買ってやったとか、メシ奢りまくったとかそういう話ばかりだ。
合法サマナーとしてのトドメの一撃が『通報』だったのには笑ったが。
いやあ、今はトラタローもいるし、一番死にそうなの、アクメちゃんだからなあ。
「いや、エンヴィーと違って手堅いというか、普通のことしかできねえから、そこまでじゃねえかなあ。ほれ、これ使える魔法のリスト」
「あ、はい……ええっ!?」
オレが差し出した使える魔法のリスト見て、アクメちゃんが何故か滅茶苦茶驚いてる。
「なんと……犬の見た目でスキルがこれですか!?」
何事かと覗き込んだグリさんも同様だった。
テトラカーン、マカラカーン、タルカジャ、ラクカジャ、デカジャ、デクンダ、メ・パトラ、リカームドラ。
ノーラスが使える魔法はコレがすべてだ。どれもこれも、普通の魔法ばかり。あとは早くて頑丈ってくらいしか特徴がない。
状態異常魔法色々使えるエンヴィーと比べると面白味のないスキルになっている。
「こ、これ、本当に頂いてもいいんですか!?」
「いや、やらねーよ!?貸すだけだよ!?明日まで!終わったら返せよ!?」
思わず、といった感じのアクメちゃんの言葉に反発する。
人の大事な相棒。しれっと貰おうとするとか地底人かお前は……もう、しれっと借りパクされたシルキーの時の悲劇は繰り返さないつもりだ。
まあ、あっちはあっちでなんか滅茶苦茶馴染んでるし、Lvも何故か上がったとか言うから……
「あ、いえ違うんです!そ、そうですよね。分かりました。大切に使わせていただきます……今の
「専門の悪魔召喚師を悪魔が恐れる理由の一端が分かった気がします……」
なんかアクメちゃんとグリさんが、ちょっと無名地区の住人が食い物と金見た時みたいな眼光はなってる気がするのが気になるが、話はまとまった。
「ちなみにシズコにはないんですか?」
「いや、お前らまずまともに戦ったら負けってタイプだろ」
「むう……」
なんかシズコに謎の質問されたが普通に返した。なんかシズコがむくれてる。
で、だ。
「さてと、朱城さん。ここまで色々聞いてもらっといてなんだけど、どうする?」
ここまでの話黙って給仕しながら聞いてた料理人に、ニコが尋ねる。返答次第では残念なことになるわけだが。
そう思いながら答えを待つ。で、帰って来た答えが。
「あ、じゃあ今日一日はここに泊り込みの専属料理人やっていいですか?ここ、厨房も専用で材料も最高級の回してくれるんで、豪華料理作り放題なんですよ。
その分お昼と夜は期待してくれていいですよ。玄武商会の本気、出しまくるので」
普通に笑顔でこれである……この料理人、めっちゃ図太いな。多分どこでもやってけるタイプだ。
ソウルハッカーズの造魔って本当にその人の趣味でるよね。
実機では大体便利魔法詰め合わせ作ってました。
作戦方針は決まった。あとは動くだけだ。