Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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というわけで夕方になったら血戦フェイズ入ります。イエー。


合法サマナー29 女之生様

ーーーそこは、今まで何度も引っ越しして訪れたどんな街よりもゴミゴミしていた。

 

「今日からここが貴方達の故郷になります。必死になって生きるのですよ」

明らかに酷い場所なのに、どこか懐かしそうに、母さんはそう言って、私たちを撫でた。

才羽ヨル。私たちのお母さん。元は中国の凶手だったらしい。

凄腕の凶手として有名で、でも、お互いに正体を知らないままに欧州のスパイと恋仲になって、私たちが出来て……

私たちが産まれる前に組織の別の凶手にやられてお父さんが死んだから、凶手を辞めたらしい。

無論、タダでやられたりはしない。組織の連中皆殺しにしたって聞いた。あの人を殺し、母さんを本気で怒らせた報いと、貴方達を守るためだったと笑顔で言い切って。

 

……それを手土産に母さんは日本に渡り、ファントムソサエティに忠誠を誓うことでどっかの誰かから奪った『才羽の苗字と戸籍』を手に入れ日本人の『ダークサマナー』になった。

 

そして、昼間は普通のOLをしながら、ファントムの仕事を受けてターゲットを始末し続けた。生きるためのお金と、安全を手に入れるために。

きっと母さんはとんでもない悪党だったけど、それでもたった一人の大事な母親だった。

 

でも、母さんはやり過ぎたらしい。次第に他のダークサマナーにねたまれ……正面からでは母さんに勝てないからって、私たちを殺そうとした。

無論、私たちだってタダでやられない。母さん仕込みの悪魔召喚術があったから、普通に返り討ちにしてぐちゃぐちゃにしてやった。楽勝だった。

 

……でも母さんはそれを見て悲しそうにした後、引っ越しを決意した。

行先は、北海道で一番危険な街である『合法都市』だった。

 

最初見た時、なんでこんなところに住まなきゃいけないのかと思ったけど、黙っていた。私たちがやり過ぎたのが原因だから。

……たまたま一緒にいた愚者の友達を死なせたのと、別の友達にダークサマナー殺すところ見られて逃げられたのがまずかったらしい。

私たちは子供だから罪には問われないけど、もう表社会にはいられない。そう言われ、私たちは合法都市に来た。

最新ゲームも手に入らないようなド田舎だ。

「……なるほど。ジンが選んだのも分かります。ここは、私の故郷に近い空気を感じる」

でも、母さんは気に入ったらしい。母さんは、少しだけお父さんとの思い出を語るのと同じ顔をしていた。

きっと、写真でしか見たことない、父さんみたいにかっこよかったんだろうなって思った。

 

……だから、実物を見た時は、ちょっとがっかりした。

「おう!お前も流れてきたのか!やっぱ誰でも考えることは一緒だな!」

『ジン』は、太ったおっさんだった。若かった頃はカッコよかったんだろうなとは思うけど、今はもうただの『無名のおっさん』だった……しかも子持ちの。

私たちより、少しだけ年上の子供が二人。お兄さんと、お姉さん。

「初めまして。小さなサマナーさんたち。私は、才羽ヨルです。こちらが」

その二人に母さんは目線をあわせるようにしゃがみ込んで笑顔で自己紹介をした。

「才羽モモイだよ!」「才羽ミドリです」

それにつられるように、私たちも自己紹介をした。

「クマだ」「ポルノ」

それに答えて、二人が名乗った。

 

その名前を聞いたとき、思わず噴き出した。全然似合わない。両方、銀髪で整った顔立ちで、アイドルって言われたら信じるくらいの、凄い美形だったから。

まあ、そんな美形ですごい適当な名前だったから、簡単に覚えられたのは確かだ。

 

それから母さんは、いつも通り仕事をした。無名地区の刺客である『ククバット』の一人として。

ククバットの仮面に加工した兜を被り、合法都市の色んな奴らを消してきた。私たちもお手伝いをした。

 

そうして前よりはずっと治安が悪かったけど、それでも家賊(ファミコン)として『殺戮の夜』は3人揃ってたから、平気だった。

 

……3年前、母さんは死んだ。殺したのはジンだった。

 

分かってる。組織に、ファントムソサエティにかぎつけられ、命令されたのだ。死にたくなければ、裏切り者のジンを消せって言われて、挑んだのだ。

そして、激闘の末に、負けて蘇生できないくらいに切り刻まれて、死んだ。ただのおっさんにしか見えなかったのに最強の凶手だった母さんよりも強いなんて、ズルい。

 

「悪いな。オレはな。アイツらが大人になるまでは死ねねえんだ……せめて弔ってやってくれ。オレじゃあ、それはできねえ」

 

そう言って去った後、傷一つつけられてない、外したククバットの仮面の下には、母さんの満足げな笑みが浮かんでいた。

それは、私たちのせいですべてを失ったはずなのに、一つも後悔してないような奇麗な死に顔だった。

それが悔しくて、悲しくて、二人して滅茶苦茶泣いた。

 

……だからいつか、私たちは無名のおっさんを殺そうと思った。理屈じゃない。母親殺されて黙ってるとか『ダークサマナー』の沽券に関わるし、何より、許せなかったから。

 

でも、その前にジンはどこかに消えた。

 

だから『クマとポルノを……ジンの子供たちを殺してやる』そう思った。それが多分、ジンが一番悲しむだろうから。

そして、近づいたのだ。父親のジンを失い、それでも悲しまなかった『本物のクズ』だったあいつ等に。

 

 

アクメちゃんにノーラスを預けたあと、オレたちは再びモモイと合流し、主だった反乱分子に事情を聴きまわることにした。

ちなみに全員完全武装だ。まあ昨日襲撃があったから、当然といえば当然だな。

……グリさんだけは流石にビキニアーマーの上から普通にここのツナギ着てた。もともと持ってきたあの女教師風スーツは昨日の戦いでお釈迦になったらしい。

まあ、あの恰好で歩き回ったら普通に痴女だしな。

 

本来は平日なので普通に作業あるはずなんだが、大規模な障害があったため、その対応に職員が駆り出されてて、学校はお休みらしい。

そんなわけで、学生たちはバカ騒ぎは自重しつつも、それなりに過ごしてるとか言う。

そのお陰か、モモイもあっさりと合流してきた。

 

「よっ!有名人!すっかり噂になってるよ!学生とか言ってたのに刺客全員撃退したスゲー奴らいるって」

 

開口一番、これである。まあ、そう言われても仕方がないか。

合法都市で刺客なんてもの、1人敵に回すだけでも大変なのに2人を同時に、ほぼ無傷で撃退するともなればそれは大分快挙だ。

どうやら合法都市の住人にとって、大変ホットな話題になってるそうだ。

「そうか……」「まあ当然」

オレらも一応ダークサマナーを倒してるから、それに含まれるようだ。

「でも、大変だね。旭川に連絡取れなくなったって?」

まあ、そうなる。大規模な電波障害だとかでスマホも通じないし、有線の方は電話線が切られていたらしい。

所長の話ではククバットがやったらしい。まあ、そういうことになっている。

一応マグネタイト式の、シュバなんたらでも通信できるとか言う通信機をニコが持ってきてたおかげで、仲間内での連絡は出来るのが救いだ。

 

今はバカと龍田がニコの護衛ということで部屋に残っている。向こうから届いた『装備』の手入れが大変らしい。なので最初に聞きに行くのは、ここだ。

 

「よう。エルだったか?朝から元気だな」

「あ、どうも……アサヒカワより派遣されてきたエージェントの方でしょうか?」

周囲の警戒を他の4人に任せ、1人グラウンドに佇む、エルに話しかける。他の連中は、それぞれ動いている。午後に作戦会議をして、夕方の襲撃を待つ。

ちなみに子供らは今日は一日部屋に待機して自習することになったとかで、一人もいない。まあ、異能者のガキなんてどっちにとってもトラブルしか発生させない代物だ。

それで閉じ込めってところだろう。ここのガキめらも扉くらいなら壊せるんだろうが、扉ぶっ壊したらやべえのは理解してるっぽいし。

「ああ、クマだ」

「ポルノ……エル、本当に、造魔?」

そんなことを考えながらの挨拶もそこそこに、ポルノとオレが気になることを聞く。そう、コタローの話では、コイツは造魔らしい。

ノーラスやエンヴィーも大分犬や猫に近いが、コイツはほぼ人間にしか見えない。言われてみれば肌がちょっと人間にしては白いなってくらいだ。

 

「そうですよ。私は完全造魔です。元々は約束の国における最強のサマナー『メルトセゲル』の仲魔となるべく調整されてたんですけど、そこを強奪され、契約書き換えた後起動されたもんで、ここに配備されました」

……なるほど、知られちゃいけなさそうな事情平気で言っちゃう辺りは大分造魔だな。

「メルトセゲル?」

「ええ。約束の国における最強のサマナーにして、約束の国の統治者。配下としてアレクサンドラ・ローガノフっておばちゃんを従えていますねえ」

……ああうん。こんな感じで持ってる情報全部話して、それからここに放り込まれたか。多分、機密情報を秘匿するとかそういう考え教えられる前に捕まったんだな。

完全造魔、意外と使いづらいかもしれない。ノーラスは物理的に喋れねえから、情報漏らす心配もない。

といっても、コイツが教え込まれた情報が嘘な可能性もあるから、裏取りは必須なんだろうが。

「そっか。色々教えてくれてありがとうな……ちなみに、今夜の予定とかある?」

「……回答拒否で」

OK分かった。また夜に、だな。

 

とりあえず、戦うことになりそうなのを確信しつつ、次へ向かう。

 

 

訓練道場では今まさに模擬戦が行われていた。

 

「ノーラス、右から来ます!かわしてください!そうしたら体当たりを!」「バウ!」

 

主に戦ってるのは、アクメちゃんに貸し出したノーラスだ。

まあ手に入れた仲魔の性能把握は大事だ。ついでに見た目犬だから、ただの護衛の犬として見せ札に使おうって算段だろう。

今も命令通り、持ち前の素早さと小ささを生かして攻撃をかわし、お返しとばかりに体当たりを食らわせる。

力は重視していないし、スキルといえるほどの鋭さはないとはいえ、造魔だ。

まともに喰らえば雑魚悪魔ならミンチになる一撃に、相手は木刀を盾代わりにいなしながらもたたらを踏んだ。

 

「っつつ……この子そんな動き出来るの!?……じゃあ、もうちょっと本気出しても大丈夫よね!?」

「ええ、出来るみたいです!私も驚いてます!どんどん来てください!ダメージ受けても回復しますので」

ノーラスの動きにびっくりした声を上げてるのは、聖騎士(テンプルナイト)のレオナ・アマラール。多分、この学校では一番強い聖騎士だ。

(おお、剣技がすげえな。足技とかも交じってる。少なくとも昨日アクメちゃん襲ったやつよりは絶対に強いな)

いつものツナギに木刀という剣士としては最低限の装備で、ノーラスと互角に戦えてる時点で相当な手練れだ。

アイツの強さ、魔法抜きでも能力値だけでLv30くらいの悪魔ならタイマンで食い殺すくらいにはあるし。

 

「じゃあ、これはどう!?……デスバウンド!」

 

レオナもノーラス相手なら手加減不要と判断したんだろう。剣技としては最高位の定番であるデスバウンドを放つ。

その鋭さに、流石のノーラスもかわしきれず……正面から食らってなお、いつも通りに立ち上がりレオナを見据える。

「……うっそ。使ってるの木刀とはいえデスバウンドの直撃で怯みもしないって頑丈過ぎない!?クラウディア並じゃない!?」

「そうですね……え、なにこの子怖い……」

グリさんもちょっと引いてた。まあ、ノーラス耐久力も重点的に上げてるからな。最後までたっててほしいから。

レオナの力量どの程度か知らんが、木刀の攻撃力でデスバウンドなら、天使パワーのデスバウンドよりは威力ないだろうし。

 

「良いわ。だったら……行くわよ!サルヴァーン!」

 

頭に血が上ったのか、レオナが悪魔の気配をうっすらと漂わせながら、叫び……何も起きなかった。

「……よ、よし!今回は私の負けね!ありがとうございました!」

そのことを誤魔化すように、顔を真っ赤にしながら負けを認める。

ここまでの攻防見てたせいか、周りも納得していた。

あからさまに『手練れの聖騎士と正面からやりあえる犬』ってなんなんだよって顔をしてるけど。

……まあ、ノーラス犬に見えるだけの造魔だし、本職の悪魔召喚師や凄腕なら犬じゃなくて造魔って見抜くから。

 

「はい。ありがとうございました……あ。の、ノーラス!次はお外で持久力の試験ですよ!あとはい、ディアです」

「終わったら最高級のジャーキーをあげましょう。戦場でもお酒のお供でも最高級の奴ですよ」

逃げるようにノーラスを連れて去っていくアクメちゃんを見送る。

うーんこれ。完全に可愛がるモード入ってる気がする。あとオレが居るの見た途端に敵意向けるの辞めて。その子うちの子なの。

 

それでこっちにも収穫はあった。

「……管使い?」

「だろうな。多分、剣の柄辺りに管でも仕込んでるんじゃねーか?」

侠客の中でも悪魔扱えるようなやべー奴だとたまにやる仕込み管って奴だ。

普通に腰やら首からぶら下げてる奴や、すぐ取り出せる場所に居れてある奴が普通なんだが、中には管を持ってることそのものを隠すために管に見えねえように小細工する奴もいる。

剣の柄は仕込み管としては定番だった。まあ、仕込み管やるレベルの侠客ってオレら程度だと絶対に正面からやりあっちゃダメな奴だけど。

 

そんなことを思いながら、近づく。

「よう、いい勝負だったな」

「惜しかった。もうちょっとねばれば、倒せてた」

ねぎらいの言葉に、ポルノの率直な感想。実際魔法抜きなら攻撃力はさほどでもないし、レオナが最後は勝ってたと思う。

魔法に特化してる魔法型が、魔法抜きで本職の刺客に勝てるわけもないからな。

「……いいえ。アクリスの回復魔法こみで考えると、二撃で倒せない時点でほぼ詰みね……もしかして、君らがポルノとクマ?」

事前に話は聞いてたんだろう。オレたちの正体に気づいたらしいレオナが問いかけてきたので頷く。

「そう。アクメちゃんのししょうが、わたし」

「おう。ついでに言うとノーラスの飼い主がオレだ」

オレの言葉に、周囲がざわめいた。

「……そう。本当に、あの子はすごいわね。強いし、早すぎるし、頑丈すぎる。もう見た目が犬ってだけの何か『別のもの』に見えたわ」

すげえな。魔法使ってないのに攻防でそこまで見抜いたか。やっぱ聖騎士って奴はできる奴はできるんだな。

「つうわけで、ちょっと話いい?」

「ええ。私も君たちに俄然興味が湧いて来たわ。合法サマナーさんたち」

なるほど、アクメちゃんと友達なのは間違いなさそうだ。色々聞いてたんだろう。

 

最初は当たり障りのない話から入って、色々聞いた。

「まず私ね、一応テンプルナイトってことになってるけど、別段メシア教の信者になったつもりないのよね。クリスチャンなのは否定しないけど」

なんで石化したん?というポルノの剛速球ストレートに対する回答がこれである。

むしろメシア教には大分思うところがあるらしく、ちょっと嫌そうだ。どうも敬虔な信者ってわけではないようだ。

「私の故郷のフランスって今、悪魔のせいで滅びかけててね……それで、ちょっと戦える奴らが集まってるうちにメシア系増えてきたのと、

合法都市にヤバい悪魔いるから倒しに来てくれって言われて派遣されて遠征したら扱いがテンプルナイトってことになったというか……」

うーんこの流されるような適当な感じ。本当にニュートラルだなコイツ。

「まあ、そんなわけでメシア系でも穏健派というか、主の教えは大事だけどそれに固執して世界どうこうしようって気はなかったのよ。悪魔倒して世界をまた平和にしたい気持ちはあるんだけどね」

本当にまともだなこの人。ていうか、テンプルナイト扱いで良いのかこの人は。

 

「……じゃあ、テンプルナイトじゃなくない?」

「まあそうね。昔は別の称号名乗ってたし」

ポルノがそう言うと、むしろ頷かれた。

「称号?どんなの?」

そう言うと、ちょっとそっぽを向き、恥ずかしそうに言った。

 

「……ゆ、勇者よ」

 

「ふーん。勇者って地上にもいるもんなんだな」

「はぁ!?」

素直にそう答えたら、目をむかれた。

 

「どういうこと!?」

「いや、旭川には自称だけど勇者で牧場主で女王な奴いるからなあ……」

「はあ!?何それ!?」

「ちなみにそいつ、地底人だってクマが言ってた」

「わけの分からない情報増やさないで!?意味が分からないわ!?地底人ってなに!?」

「あー、あとオレの親父もその地底人の勇者の父親で、勇者シグルドって呼ばれてたんだと」

「さらに設定盛らないで!?え?冗談?」

「クマの腰に差してるのが勇者シグルドの剣らしい。あとクマもジータから勇者って呼ばれてた」

「う、うんその……だ、大体分かったわ!合法都市も大概だったけど、旭川はそれ以上ね!?」

……その反応で大体わかった。やっぱり外人から見ても地底人普通に頭おかしいんだって。まあ、知ってた。

恐ろしいことに大体事実なんだ。旭川には大分馴染んだはずのオレでも飲み込めないレベルなんだけど。

「つうわけで、勇者名乗ってもそんな恥ずかしがらなくていいと思うぞ」

「そういうこと」

「そ、そうね……ただの自称勇者くらいどうってことないわね……」

そんなことを言って〆る。まあどうせ東京には普通にいるんだろうな、勇者。

 

 

フィーナとツバキは、二人して図書室にいた。ついさっきまでシズコとツバキが色々『説得』したらしいけど、無駄だったらしい。

「アサヒカワは、おかしいと思うのデース」

「はい。そうですねフィーナお嬢様」

フィーナの演説に、ツバキが同意する。改めて見ると、目が逝っちゃってる。ああうん。コレ完全に殺人人形だわ。

「こんなところに閉じ込めて、囚人みたいな暮らし強要する。もっと人間には自由がいると思いマース」

「はい。そうですねフィーナお嬢様」

で、フィーナの方はなんていうか、懐かしいノリだ。完全に百鬼夜行のバカ枠だ。

まあ、普通にガキなんだろう。しかも自分がバカだって気づいてない奴。

「そのくせ、ワタシが外人だからって差別する。シズコと私、どこが違うというのデス?」

「はい。そうですねフィーナお嬢様」

百鬼夜行と中華街は、金持ってる上層部はそこそこまともな暮らしが出来るとは言われてたが、そっち系だな。

ある日突然、合法都市が滅ぶなんて夢にも思ってなかったんだろう。オレもそうだけど。

「……うわあ。なんかこう、恥ずかしい感じ」

「うん。ダメだね。色んな意味で」

キラキラとモモイがそっと目を反らす。まあお前らも前はこんな感じだったんだろうな。なんとなくわかる。

「だから、改革が必要なのデース。もっと自由を、平等を!」

「はい。そうですねフィーナお嬢様」

恐ろしいことに合法都市の連中は、大体こんな感じだ。聞き耳立てながら頷いてる奴らいるし。

まあだからこんな反乱計画に乗ったんだろう。そう結論付けて立ち上がる。

「えーと、まあ、大体わかった。ありがとうな」

「ごいけんは、ニコに言っておく」

まあ、コレなら普通になんとかなるだろう。

 

それが、結論だ。

 

 

昼時、オレたちは休憩室の一つに陣取り、ナユタチームとして話をすることにした。

ちなみにメシは例の料理人が作った特製中華セットだ。この時間帯はオレらってことになってる。

他のチームは時間をずらして食うらしい。

「まあ、アレだな。反乱は多分失敗すると思う」

「「「「「だよねえ……」」」」」

オレの結論にポルノ以外が同意する。ポルノ?普通に肉まん食ってて話聞いてない。

「なんていうか……あの百鬼夜行の外人ってさ、現実見えて無さ過ぎじゃない?」

モモイが一番辛口だ。はふはふ言いながら炒飯食いつつも、むしろ怒ったように言う。

「いやー、お前も昔は大分あんなんだったぞ?」

「な。なんつーか危なっかしいって言うか……その、もっと殺意隠せって言うか」

ザッパとコタローの指摘にモモイが顔をしかめた。

「む、昔の話じゃん!?」

モモイが赤面して、言う。もう、あの頃の殺意は微塵も感じない。

うんまあ、分かってはいた。サイバーズ、オレら殺そうとしてるって。

「へあ!?そうだったの!?」

「おうともよ。コイツの母親、ジンが殺したからな……そりゃあ納得も出来ないだろうさ」

キラキラの驚いたような言葉になんか海の幸が乗った焼きそば食いながら答える。

母親死んで、もう、お金がない。生きてくためになんでもするから、雇って。ジンが死んだあと、そう言って近づいてきたのがサイバーズだった。

その日のうちに唐突に仲魔を呼んで銃構えて襲ってきたのはどうかと思うけど。

 

……それをオレとポルノの2人で返り討ちにして無力化して、実力差を教え込んだ後は、それなりに面倒を見てた。

 

仕事振ったり、ヤバい奴ら教えたり、情報交換したり、仕事一緒にやったり、バカ話してみたり、仕事紹介されたり、

それで死に掛けたり、一緒に強盗してみたり、たまたま敵味方に分かれたのでお互い仕事中は殺しあわない約束したり。

時々は殺されそうになったし、だんだんと知恵がついてきて、ヤバいなとは思ったけど、それでもだ。

まあ、お前らの母親殺したの、ジンだもんな。そら、恨まれるわ。

そう納得してたのもあるし、何より『知り合い』があまりに危うい生き様をしてて、見てられなかったのもある。

 

合法都市で、殺し合いの末に負けた奴の血縁ならば、恨むのは良い。だが、勝てるかどうかだけは絶対に見極めろ。

 

それが合法都市での掟だった。法律も何も通じないならば、そうなるに決まってる。

実力はある。戦いのセンスもある。だが致命的に生きてくために必要な知恵が足りてない。

それが、率直な感想だった。なまじ強すぎる母親が居たせいだろうと思って、それから、昔のオレらもこいつらと大差なかったなと思った。

オレらがそうはならなかったのは、ジンが丁寧に『生きる方法』を仕込んでくれたからだ。

そんな幸運があったからこそ、オレたちはジンを失った後も、頼れる仲間を見つけ、ナユタを作り、2年間生き延びられた。

……そう気づいたのは、旭川に来てからだけれども。

「……なんどか、殺そうと思った」

「ご、ごめんて」

ポルノがポツリと言い、モモイがビビった顔をする。

本気で言ってるのは、分かるんだろう。ポルノは、その辺容赦がないからな。

「まあ、合法都市が滅ぶ半年くらい前から全然見かけなかったから、生きてるの分かっただけでも良かったよ」

多分、その頃にミドリが死んだんだろう。よくある話ではある。

知り合い程度でも、やっぱ知ってる奴が死ぬのは気分が悪い。こんな生き方してるんだからしゃあないんだけど、それでもだ。

「……辞めてよ。そういうの、本当に」

「……うん。クマはさ、そういうの、あんまり言わない方が良いと思うよ」

モモイと、何故かキラキラからそんなことを言われた。

 

 

それから午後は、みんな集まり、作戦会議をすることになった。モモイは帰す。

アイツはあくまで協力者だからな。一応今夜は外に出ない方が良いとだけ伝えておいた。

念のため部屋の外に、居てもいなくてもあんま変わらないであろうバカとグリさん立てておき、部屋の周囲をビカラに見張らせる。

「というわけで、配置はこれで行こうと思う」

オレたち全員集めて、バッと紙を広げる。そこには、どの連中に誰が当たるかの担当が書かれていた。

「俺たちはエルか……」

ナユタチームであるところのオレの担当は、エル。完全造魔だとか言う奴だ。

「うん。アイツ、どうも以前キラキラたちが倒した造天使の指揮官ユニットみたいだからね。造天使の群れと戦うなら、君らが適任かなって」

そうか。前に倒したアレのことか。少し考えて、答えに気づく。

キラキラと初めて組んだ仕事で倒した、あの雑な格好のコンビナートが作ったサイボーグ……なるほど、羽をもいでおけば人間に見えるってことか。

「私たちは、二代目の護衛ね。まあ、順当な感じかしらぁ?」

龍田はニコの護衛。実際いるのか?って感じはするけど、まあバカも龍田も契約刑事みたいだし、襲われたときに護衛すらいないのは不自然すぎる。

順当だろう。

「……なんでアクメちゃんチームがフィーナとツバキで、シズコチームがレオナなの?普通逆じゃない?」

キラキラが気になるのはそこらしい。確かに昨日アクメちゃんたちを襲ったのが聖騎士とブラックアドレス、シズコたちを襲ったのが侠客と殺人人形だった。

それの親玉をそれぞれ叩きに行くのは……いや、違うな。

「いや、普通に知り合いと殺し合いさせるほど、ボクは鬼じゃないよ?」

考えてみれば、お互いに知り合い以上なんだ。殺し合いさせたら絶対に禍根が残る。それを避けるためにも、お互い違う方を殴りに行くのが順当だろう。

オレが結論にたどり着いたところで、ニコがキラキラの疑問に、簡単に答える。

まあ話してみた感じ、シズコは嫌われてるだろうし、アクメちゃんとレオナは普通に友人関係っぽい。わざわざ殺しあわずに済むなら、それに越したことは無いだろう。

「……ククバットは?」

ポルノがポツリと尋ね、ニコが答える。

「うーん。ちょっと奴はどう動くか読めないんだよね……正体がいまいち不明だし」

ニコは困ったように言う。確かにククバットが加わった戦場は間違いなくきつい。恐らく、一番きつい戦場に姿を現すだろう。

「……分かった。現れたら、わたしが倒す」

「え?」

だから、そう言われたときは一瞬、意味が分からなかった。

「現れたら、れんらくちょうだい。ククバットといえど、一人ならば、わたしの敵でなし」

その言葉に、少しだけ嫌な予感を覚える。

「相手は力量不明のククバットだが、少なくともビカラを瀕死に追い込むような奴だぞ?」

「神経弾対策すれば大丈夫……クマ、悪いけど、クマのマフラー貸して」

どうやら本気らしい。オレのマフラー……神経を防ぎ、魔力に弱くなる加工がされたものをふわりと巻く。

まあ、最近はもっぱら魔力対策にガスマスクを使うから、あんまり使ってなかったが……

「本当に、やるんだな?」

「まかせろ。まあ、負けそうになったら、逃げる」

どうやら決意は固いらしい……よし。

 

「分かった。絶対に無理はするなよ」

 

ポルノは、オレと同等の実力を持つ合法サマナーだ……そいつがやれるって言うならば、それを信じる。

それは、酷く不安なことだが、同時に、ポルノもまた成長しているんだなと思わせた。

 

「ナユタチームはポルノ抜きで編成する。それで、ポルノは奴が確認でき次第、迎撃で頼む」

 

キラキラが不安そうな顔をしているが、それでもやるというのなら、任せる。

一人前の合法サマナーがやれると言ってるんだ。それを信じてやれなければ、仲間じゃない。

 

話はまとまった。

 

オレたちは武装を整え、時を待つ。そして。

 

「ーーー旭川日本語学校、全域が異界化!全員、作戦開始!」

ニコの号令と共に『全員』が作戦活動を開始した。

 

『運動場にエルが出現。一応頑丈な扉付きのところ入れといたんだけど、普通にぶち抜かれたねえ。流石高レベル造魔』

 

オレたちの担当は、エル。奴と、奴が呼び出すであろう造天使の群れを撃滅する。

「分かった。すぐ向かう。SUMMON ピアサ」

「あ、出番ですね!あれ、処女がいない……男ばっかりじゃないですかぁ!?」

うるせえよ。

ザッパ、コタロー、キラキラ、ビカラ、オレ。ポルノが抜けた穴を、手持ちでは最強であるピアサで埋める。

コイツの得意魔法が『疾風』だからこそ、意表をつけるだろう。

 

『ああ、こちらニコ。ククバットが現れた。運動場から反対側の居住区の辺り。じゃあ、よろしくね」

「じゃ、ちょっと行って来る!」

そしてポルノもまた駆け出した。ククバット探しに。

 

 

もう覚えてないほどとおい昔。

わたしは一匹の猫だった。ただの猫じゃない。造魔の猫だ。エンヴィーって呼ばれてた。

多分、それであってる。全部薄れて、あいまいだけど。

 

ご主人様のことはもう、切れ切れにしか思い出せない。いつも黒いゴスロリを着てて、奇麗な金髪で、わたしみたいに幼いからだをしていた。

いつも最愛の、黒い騎士と一緒で、魔法が得意だった。相手の心を惑わし、壊し、意のままに操るような術を得意とする邪悪な魔女。

だけれども、それは確かにわたしのご主人様で、わたしには優しかったし、いつもあの黒い騎士のことだけを考えて生きていた。

二人はただただ自分が幸せになるために、世界を支配しようとしていた。それで最後は失敗して死んだ。

私はただの造魔だったから、なんでそこまでしないといけないのかは理解できなかったし、その後殺されて転生した。

 

死んで、生きてを繰り返すうちにわたしは、人間として生まれた。そこでクマに出会った。そして、自分にとってそれが何なのかを何度も繰り返すことで、覚えた。

 

最愛の人(カーラニーア)

 

ご主人様が、誰よりも愛したあの人を呼ぶときに使ってた言葉。わたしにとってのクマ。

クマのためならば、わたしは命だってかけてやる。だから。

 

「たおしに来たよ……」

 

クマが最初の不穏分子のリストにこの名前があるのを『見落とした』ときに、そしてそいつが名前を『間違えた』時に決意した。

こいつは、わたしが倒すと。

 

「……あっちゃーバレてたか」

ククバット仮面の下から、聞きなれた声がした。つまり、コイツの正体は『ダークサマナー』だ。

「まあ、しょうがないよね。アンタらさあ、お母さん殺したんだもん。もう、簡単には負けないよ。ここまで、そのためだけにずっと鍛えてきたんだし」

ああ、誰よりも大事な人を失って、壊れてしまったんだな。そう思いながら、告げる。

 

「うん。全力で行くねサイバーズの『才羽ミドリ』……さもん、一斉召喚!」

 

一斉召喚。事前に選んでおいた5体同時召喚で、ため込んでおいたマグネタイトが一気に抜ける。

でも、大丈夫。戦える。本気でやらなければ、絶対に勝てない。

 

「サモン、一斉召喚!……違うよ?私は、モモイだよ。だってそうでしょう?

カッパスマイルに引っかかって魅了されて襲い掛かってくるようなクソ雑魚のミドリごときに、私が殺されるはずがないもん!

私は、私如きに負けるような弱いおねえちゃんじゃなかったもん!」

そう言いながらも召喚されたのは、5体。セイリュウ、ビャッコ、スザク、ゲンブの四神と……腕が銃の形をしてる人型造魔。

 

「やるよ!おねえちゃん!今こそサイバーズが、ポルノを殺すときだよ!」

どう見てもモモイには見えないのっぺりした造魔をそう呼んで、ミドリが殺意をこちらに向けてくる。

間違いなく、本気で殺す気だ。

 

……ああ、やっぱりわたしが来てよかった。

こんな『キジルシ』になった知り合いなんて、クマには見せられない。

 

「こいよクソ雑魚。格の違いを見せてやる」

だからせめてコイツは、わたしが倒す。

 

「ファイナル」

 

私が、合図を告げる。

 

「ラウンド」

 

ミドリがそれに応じ。

 

「「ーーーファイ!」」

同時に叫んで、戦いが始まった。

 




多分GMは全員で行けば楽勝だったはずの中ボス戦の展開に頭抱えてる。
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