サタスペにちなみ、五大盟約+1全部が『合法都市の覇者になる』条件が設定されてました。
百鬼夜行が祟り神、中華街が三業会、メシアンが性癖、旭川が傀儡都市、無名地区が犯罪結社を最大まで育てることで勝利となります。
今回は傀儡都市が『謎の国家英雄級転生者』に叩き潰された後、メシアンが勝ち、その後に本編通りとなりました。そして……
……ついに『合法都市の闇』も残りあと1つになったか。
無事、チェフェイの討伐が犠牲者無しに完了したというニコの報告を受け、僕は安堵の息を吐いた。
恐らくはニコに引き継がねばならないはずだった大仕事が、もうすぐ終わる。
それは随分とうれしく、同時に不思議なことだと思った。
ヒルトリアが、ヒルトリア人という確かな『遺産』を残して滅んだ後、僕とカーナはアメリカに渡り、
高級将校として教育を受け、政治事情も理解できる僕たちには、一番向いていると思ったのと、今度こそ『普通の暮らし』というものを手に入れたかったのだ。
幸い、僕には前世の経験と知識があったこともあり、随分と活躍したものだ。
彼の偉大過ぎる『大統領』と比べれば霞むとはいえ、傭兵としては破格の待遇だったし、最新鋭だった進化する装甲服ことデモニカすらも与えられた。
そうして何度か戦場で活躍した末、僕は演説をすることになった。クナーアン共和国時代に何度もやって来た、慣れた作業だった。そう思い、失敗した。
『私がこれだけの功績を上げることが出来たのは、頼れる仲間たちが居たからこそです。彼の『ラインの悪魔』と一緒にされても、困ってしまいます』
小粋なアメリカンジョークのつもりだった。
アメリカ人には受けがよかろうと、かつての共産圏において『共産主義最悪の敵』と恐れられたという遠い昔の伝説の存在を引き合いに出しただけだった。
実際その時は、少しだけ困惑による沈黙が下りただけで、ちょっと失敗したかな?そう思っただけだった。
……うっかりと忘れていたのだ。この世界に『ラインの悪魔』など存在しない。その存在を知っているのは『転生者』だけであることなんて。
一か月後、日本のヤタガラスを名乗る連中がやってきて、僕に告げた。
ヒルトリアで、アメリカとソ連相手に危うい綱渡りが出来るほどに政治力に長けていながら無名の『転生者』にしかできないであろう仕事がある。引き受けて欲しいと。
それが、旭川のどこかに潜んでいるという『旭川を合法都市の傀儡にしようとする転生者にしてファントムソサエティのダークサマナー』との戦いの幕開けであった。
カーナともども旭川ヤタガラスの一戦闘員から初めて長い長い暗闘を重ね、ついに旭川市警上層部に潜んでいた奴を突き止め倒したころ、僕は旭川ヤタガラスの支部長になっていた。
戦いぬくために、多くの味方を作って来た結果だった。今更、旭川にこれだけの影響力を持ちながら逃げることなど許さないと言われてしまったし、ついにカーナが身ごもったこともあって、引き受けた。
僕はもう、この国と旭川のことが好きになっていたし、戦いの中で協力を得たたくさんのヒルトリア人が旭川に住み着き、
僕が旭川の覇者となるための新たなる同志として、僕が死ぬまでの間の支援を条件に同盟を結んだ悪魔人間村『入有遁』がようやく安定しはじめていたのだから、逃げることなどできなかった。
合法都市には、旭川市警のダークサマナーと同じく『合法都市の闇』と呼ばれる存在が発生する可能性があったという。
曰く、北海道で発生する大規模な石化現象の元凶。
曰く、中華街に潜む、謎の洗脳技術を持つ剣士集団。
曰く、百鬼夜行最強の祟り神チェフェイ。
石化現象は起きたが東京から来たという英雄たちの尽力により、合法都市全域のみで済んだ。
北海道ヤタガラスや旭川の制圧部隊も間に合ったので結果として、最良の結果だったと思う。
そしてチェフェイは今回討伐され、中華街が壊滅したことで剣士集団も消えた。
……そして、無名地区で発生するはずだった、恐るべき才能を持つ無名地区最強のダークサマナーに率いられた犯罪結社『ナユタ』もまた、発生せずに終わった。
昨日、ニコからクマとポルノの2人が仲間たちと組んでいたチームの名前を聞いたときは、思わず電話を取り落としそうになった。
ジンは、知らぬ間に偉業を為していたのだ。愛を知らずに育ち、天性の才能を持ってナユタの支配者となるはずだった子供たちを、愛情をもって育てることで。
あの二人は、その恐ろしいほどの才能を、ただただ自分が、彼ら自身が思う『平凡な人生』を楽しむために使うことを選んだ。
合法サマナー。
彼らがそう呼ぶそれが、彼らの選んだ生き様だ。僕はそれを応援する。たかが天賦の才能があるくらいで、平凡な人生を否定されてたまるか。
なにせ娘婿として義理の息子と娘にもなるのだから、幸せになってもらわねば、困る。
だからこそ、合法都市の闇、最後の一つを叩き潰さねばならない。
……北海道の影異界『坂田インダストリィ地下研究所』から発掘され、ソ連に渡り研究され、完成した『最悪のサマナー』
コンビナートと呼ばれる連中が抱え込んだそれを破壊せねばならない。
高い適性を持った人間の脳の能力をコアに限界まで補助、拡張することで『統一された規格の悪魔数百体』を同時運用可能な、規格外の制御力を持つサマナー。
『S型デバイス』そのものでもあるサマナー『メルトセゲル』
サーシャは、それにすでにサイボーグ化された肉体を支配されているらしい。だからもう、逆らえないようだ。
そして一月の終わりに、新たに製造された数百体の造天使の群れが襲来することを『警告』してきた。
その前に終わりにしろと、派手な宣戦布告に見せかけて、教えてくれたのだ。ヒルトリア人らしいやり方で。
メルトセゲルの死が、自らの死と同義であることを知っていてなお。
僕はその戦友の覚悟に答えたい。それが出来た時、本当の意味でかつて夢見た『約束の国』が終わるのだと思う。
そして、これは僕の家族の問題でもある。
メルトセゲルのコアパーツ。高い適性を持った人間の脳……もう数十年もその状態でいるという彼女の名は『ターチヤナ・エルンネスト』
権力を手にしたあと、いくら探しても見つからなかった、僕の、たった一人の妹であった。
……ちなみに『無名なる地下帝国』の存在は僕らも知らなかった。ヤタガラスすら知らなかったらしい。
ジンの野郎、知ってたならアメリカンジョーク風に言うなよと憤慨した。
*
旭川日本語学校を卒業して1週間。ついに私、レオナ・アマラールの契約刑事としての初出勤日。
支給された婦警の服を着こみ、拳銃の代わりに渡された切れ味が殆どない剣になる『小型の木刀』タイプの特殊警棒を腰に指し、少し緊張しながら、私はこれまで何度か通った旭川市警の本庁に入った。
(思えば随分と、色々あったわね……)
合法都市で性奴隷をやってて、気がついたら病院に居て、そのままあのかんご……日本語学校に入学して、勇者として戦って、卒業。
そして訪れた旭川はいい街だった。
ミナミは、マフィアと百鬼夜行のお嬢様がたを束ねるお祭り運営委員会と、笑っちゃうほどの豪華特典で順調に信者を増やしている旭川東方正教協会。
この二つが仲いいんだか悪いんだか分からない睨みあいしてる以外は、そこそこ普通の街だ。
チンピラが居て、マフィアが居て、ギラギラしたフリーの悪魔業界人が居て、それなりに真面目に働いてる契約刑事がいて、普通の人間がいる。
街中では喧嘩だのスリだのと言ったちょっとした犯罪があったり、違法賭博やってる怪しいお店があったり、お世辞にも裕福ではなさそうな子供たちがせっせとこずかい稼ぎをしてたり、怪しい露店が出てたりする。
武器防具の類は旭川では基本的に本田一家を通じてしか購入できないこともあり、治安はむしろ平和だった頃のパリあたりと比べてもよいくらいだと思う。
しれっと街の一角に『玄武商会』という聞き覚えのある新装開店したての中華料理屋が出来ていたのには上手くやったんだなルミさんとか思うところはあるけど。
まあ、そんな感じで色々見て回った。官庁街とか、旭川大学とか、昔ながらの住宅街とかはびっくりするほど治安が良い。
カラジョルジョとか言う、官庁街の市役所すぐそばにある『武器防具販売の受付』を兼ねた本田一家の経営する料理屋の料理も女主人が愛想いいし、普通に美味しかった。
旭川市警で働き始めたら、多分足しげく通うと思う。体重が気になるけど。
まあ、そうしてこれから守っていくことになるあの人が住む旭川という街を好きになって来た。
ーーーここは掛け値なしにいい街さ。俺たち裏の世界の人間が真っ当に歩むために作られたような街だ。
旭川市警で、同僚となる契約刑事が口をそろえて言うのも分かる街だった。
どいつもこいつも異能者のくせに結婚資金が、とか子供の教育費が、とか大学行きたいけど勉強難しい、とか遊ぶ金が足りねえ、とか『表の人間』みたいなこと言ってることすら愛おしい。
「おはようございます!本日から配属になりました!レオナ・アマラールです!」
そして入った『特捜』の部署室。
……見事に誰もいなかった。
あれぇ?時間、間違ってないよね!?ていうか日本人って時間にやたら厳しいって聞いてたからちゃんと時間通りに来たのに!?
そう思ってると、後ろから声を掛けられる。
「おや、早いですね。フランス人はもっとこう、時間にルーズかと思っていましたが」
思わず振り向くと、先日ご挨拶させていただいた顔があった。
「は!これは合歓垣巡査殿!その、初日遅刻は流石にまずいかと思って時間通りに来たのですが」
契約刑事ではない、生粋の日本人にして、旭川市警の『上層部』の一人。
この特捜の直属の上司のさらに上になる人で、これでも勤務歴2年あるベテランらしい。
……ニコラウスさんの学生時代からの友人でもあり、現在は婚約者でもあり、東京に強いコネを持ってるというから、見た目の地位以上の重要人物だ。
「ああ、流石は勇者刑事レオナ。真面目ですね」
……なんか変なあだ名つけられてるのも、もう慣れた。
「あの、もしかして時間、間違ってました?」
「いえ、流石に副班長はとっくに着てますよ。ちょっと今、備品を取りに行ってもらっています」
……ああ、なるほど。それで納得が……うん?
「副班長ですか?班長は?」
「ああ、さっき寝坊したので遅刻すると連絡がありました。あとで説教ですねえ」
うわお。あの眼帯の子、就任初日でそれは大分アレだ。
「ちわーっす!さーせん!遅れましたぁ!あとコイツ、酔いつぶれて道端で寝てたんで一緒に連れてきました!」
などと言ってると噂をすれば影という奴で、急いで着替えたのが丸わかりの恰好で、眼帯付けた特捜の班長こと天龍が駆け込んできた。
よく見るとなんか白い髪のちっこいの抱えてる。なにそれ。子供?
「ふぅ……ポズムディ。起きろ!ツバキ!」
フブキさんが流れるようにパトラかけて、酔いを醒ましたあと、鋭い大声をかける。
「わひゃあ!?」
それに驚いて起きたらしい女の子が驚いた声を上げる。
……うん?この子の着てる服って……契約刑事向けの、婦警服?
「まったく、それでは百鬼刑事ツバキの名が泣きますよ?」
「いやあ、ここの婦警服見せるついでってことでアヤメと飲みに行ったらなんかパツキンのねーちゃんも合流してきてそのまま朝までコースだったもんでね。
久方ぶりの酒が本当に身体に染みた。それで加減間違えたよ。すまんね。ま、悪かったよ。許しておくれ」
ああ、潰れるまで飲むことに定評あるクラウディアと飲みに行ったのか……どうやらマジで契約刑事らしい。というか『百鬼』……あ!?
「なんかいつも変な本読んでる図書室の殺人人形!?」
「あ?舐めてんのかトカゲ交じりのクソガキ、殺すぞ?」
失礼なこと言ったら、見事に失礼な言葉で返された。
まあこれは私が悪い……けど、トカゲ交じりって、うん?
私に竜の血が混じってるの、なんでわかったの?
「ごめんなさい」
「わかりゃあいい。次からは気をつけな。雨龍んとこのクソガキ」
いや雨龍って……だからなんで分かるの!?
「ああ、そこの百鬼刑事ツバキは、角折られてますので分かりにくいですが、ざっくり五百年は生きてる鬼です。戦国時代にはもう当時の退魔師と戦った記録があると、ウイ先輩から伺いました」
「おう、雨龍んところの先祖に『鬼の剛剣』仕込んだのがアタシさ。まあ、鬼の剛力があって初めて振るえる鬼の剛剣を完全に使いこなすのはできなかったみたいだがね……話はアヤメから聞いてるよ。
アンタのアマラール流剛剣術とやら、どうやらアタシの鬼の剛剣に匹敵すると見た」
え……つまりこの人、アマラールのある意味ではご先祖様!?
「まあ今度、一つ本気でやりあってみようじゃあないか。なぁに、殺しはしないから安心しな。アタシも得意は雷電真剣だ。食いしばるくらいは出来るだろ?」
「……後でお願いいたします」
ちょっとワクワクしながら言う。アマラール流剛剣術が、その始祖の始祖とどこまでやりあえるか。純粋に気になるもの。
「はぁい。龍田戻りました。備品も一緒です」
「だから呼び方ぁ!?」
そう言いながら部屋に入ってくるのは、にこやかな笑顔を浮かべた龍田と、これまた白い髪と肌の婦警。察するに、特捜の最後の一人だろう。
「というわけで、備品刑事エルちゃんです。よろしくしてあげてね?」
「そこはせめて造魔刑事とかマジ天使刑事とかにして欲しかったですが……というわけでエルです。どもども」
ふう、とため息をついて軽く挨拶してくるが……造魔?
「ってことはノーラスくらいに強いのね」
私の感想。
「Lvも素早さもノーラスより高いのでノーラスより上かもしれません」
フブキさんの感想。
「いやいや、ノーラスさんほど勇敢でもねーヘタレだから微妙じゃね?」
天龍班長の感想。
「うーん。まあノーラスほど期待しない方が良いと思うわよぉ?」
龍田副班長の感想。
「ノーラスって誰だい?」
ツバキの感想。
「私の評価、造魔犬と比較されるレベルですか!?」
それらを聞いたエルが爆発した。まあ冗談だ。ノーラスと違って喋れるんだから、ノーラスよりはすごい……はず?
いやでもノーラスの雄姿見てるしなあ……
まあ、それはおいおい分かるだろう。
「ま、というわけで今日から特捜班が本格稼働します」
ひとしきり笑ったところで、フブキ係長がこの班について説明をする。
「普段は一般的な契約刑事として過ごしてください。婦警服も明日以降は自由としますが、その恰好のが市民受けはいいでしょう。
街をパトロールしたり、困った市民を助けたりですね。一応規定で契約刑事には『副業』は認められてますが、旭川市警の契約刑事として、弁えて行動するように」
事前に聞いた通り、契約刑事は本当に警察の名前を名乗る傭兵だ。警察だからこそ、職権乱用と犯罪行為は厳しく罰せられるという。
街中で武器や防具をこれ見よがしに持ち歩けて、寮があって真面目に警官やってれば最低限の生活は保障されてるくらいしか利点が……いや結構大きくないこの利点?
「貴方達特捜班は、ど……本田ニコラウス氏が直接の指揮権を持っています。いわば直属の実働部隊ですね。いつまでもニコラウス氏にやらせておくわけにもいきませんから」
そう『独自の情報網』と『謎の情報分析機関』を独自に持っているらしいニコラウスさんが、荒事に巻き込まれないようにする実働部隊。
普段はただの警官としてふるまう、旭川市警とは違う指揮系統にある特殊部隊。それはまるで。
「まるで
子供の頃、古ぼけたTVの前にかじりついて夢中になったものだ*1。確か警察の戦隊*2もあった。
「つまり
だが、ツバキ的には違うらしい。謎の分類を吐き出す。
……?キャンギャル?
聞き覚えのない言葉に首をかしげる。傾げたのは私とエルと、フブキさん。
天龍と龍田はツバキの言葉にちょっと笑いながら頷いている。
「すみません。ツバキ、キャンギャルというのは?」
「ああ、合法都市でたまに作られてたチームさ。金持ちの男が趣味で集めた合法都市の可愛い女の子にチーム組ませて合法都市であれこれやらせるのを眺めるって言う趣味悪い遊びだったね」
……うわあ。合法都市そんなんまでいたんだ。
「まあ、悪いこっちゃないんだよ?実力はあるのになんのコネも伝手もないメスガキどもや攫われてきただけの素人が合法都市で成り上がる貴重な機会だったし、飼うの目的だから装備や生活も充実してる。
やりたがる奴も多かった。つっても大半は最後破滅するんだが、そっからご主人様射止めたり、逆にご主人様に下剋上かまして乗っ取り成功させたりして
しかもそこそこ肯定的!?
「……つまりアイドルみたいな存在ですか」
フブキさんの言葉にポンと手を打つ。
言われてみれば若くてかわいい子が無茶させられて大体はそのうち消えるけど、たまに最後すっごいセレブになる人が出るのは大分アイドルだ。
「……まあクマ君上手く射止めたらそうなるわねえ……ちょっと目指してみようかしら」
龍田副班長。ちょっとやる気見せてる!?
「そこの勇者もニコラウスぼっちゃん射止めたら
天龍班長に言われ、はっ!?と気づく。そういえば、それはありかも!?
「……やろうとしたら、全力で潰す。これ以上増やすのはどっちも許さねえ」
その直後、光が消えた闇色の目をしたフブキ係長からどでかい釘を刺された……でもほら、正妻は無理でも愛人ならよくあることじゃない?
もう奇麗な身体だなんて口が裂けても言える身じゃないんだし。そう思う程度には
ーーーああ、愛が欲しい。身体以外を、心を求めてくれるような人。ニコラウスさんみたいないい男が。
「この勇者、ちょっとだけだが目が濁ってやがる……竜や蛇の悪魔は結構惚れっぽいからな。その血が出やがったか」
後ろでツバキがため息をついていた。
*
あの刑務所から解放され、わずかばかりの支度金を手に入れ、私たちはついにミナミに降り立った。
(あれ、旭川ってこんな街だったっけ?)
まだ子供だった頃の遠い昔に見た、如何にもつまらなそうな、ちょっと灰色だったはずの旭川。
それが今は、合法都市人が大量に入ってきたせいか、随分とロクでもないけど面白そうな街になっていた。
「はいはーい!こちらお祭り運営委員会の新企画!今度の土日に自称美人ネコマタ陰陽師と一緒に『日本のアメリカ』ことニューアルトン村に日帰りで行くバスツアーをやりまーす!
朝早くの出発なので朝ごはんは百夜堂特別メニューとして、特製朝食稲荷ずしセットもついてきます!コスプレ好きとケモナーなら行って損はないですよー!初めてなのでお安くしときますよー!」
お祭り運営委員会を名乗る、百鬼夜行風の連中が怪しげなビラを配る。聞いたことのない村へのバスツアーなのだが、如何にも金持ってそうな学生が興味深げに集まっていた。
「やほー!ボク、ビッキィ!ボクの芸を見ておくれよ!お祭り運営委員会にここに人集めろって言われてるんだ!お代は良いから、見てってよ!」
この前戦った自称ニンジャがものすごい大道芸を見せている。明らかに人類には無理じゃね?って芸の数々で、歓声と拍手が連発され、おひねりが大分飛び交っていた。
「えー、神は信じなくてもいいですが、今なら入信するだけで覚醒者限定、年1回の無料蘇生サービスがついてくる、旭川東方正教協会への入信、検討してみませんか?
年会費無料ですよ!掛け持ちでもいいですよー!今なら我らが教祖アクメちゃんの明らかに素人っぽいぎこちない笑顔の制服姿ブロマイドもついてきますよー!」
なんかすごいうたい文句でちょっとスリット深くてエロ下着がちらっと見えるカソック着たエロシスターが宗教の勧誘をしている。
鼻の下伸ばした男どもが群がっている。いやでも蘇生年1回無料は確かに魅力かも。
遠巻きに、もっと怪しいいかにもなカルトがぐぬぬ……って顔して見てるのが逆に怖い。
「新生ランドソル大牧場!今回の売り物はこちら!宮廷長屋から献上された迷宮小麦のクッキーが一袋500円!なんかMPがちょっとだけ回復しますよ!」
謎露店が謎のお菓子売ってる。てかMPちょっとだけでも回復するんだ。値段も効果考えるとすごい安いし。勝っておいた方がいいかな?
そう考える人が多いのか、デビバスやサマナー、魔術師っぽいのがどんどん買っていく。すぐに売り切れそうだ。
「よし!今日も地底人の巣を探検よ!」「あそこのダンジョンで荷物持ちして一稼ぎなのです!スイッチもう1台欲しいのです!」「3台だと1人は遊べないからね」「ゲームの趣味ばらばらだもんね」
ぼろい服着てる割に景気が良いこと言ってるコンビナートっぽいガキどもがいる……地底人の巣?一体なんなんだそれは?
あ、でもSWITCHは買わないといけないか。合法都市に入った頃は3DSだったうえに、もう壊れてなくなっちゃったし。
(ここが、クマとポルノの新しい故郷か……)
旭川は大分面白そうな街だった。おねえちゃんが生きてたら、目をキラキラさせながらはしゃいでただろうな。そう思うともういないのが少し寂しい。
そんなことを考えながら、とりあえずの目標である、ジェイルハウスに行く。
エルヴィス・プレスリーは生きている。
そんな謎看板が掛けられた、地下酒場に降りる。24時間営業で悪魔業界関係者だらけの酒場。
結構席が埋まっているけど、座れないほどじゃない。4人掛けのテーブルを一つ占拠して注文。
とりあえずで山盛りのフライドポテトと、コーラを人数分。
「ナユタ結成を祝して!」
「「かんぱーい!」」
「……乾杯」
そうしてコーラで乾杯をした。酒は苦いし不味い。飲む気にもならない。
「さてと何喰うかな?……お、カレーライスのご飯1kgが800円!安いな、これで行くか!」
「オレはっと、とりあえずハンバーガーと、ソフトクリームにしておくか。たんなかったら追加で」
男二人はさっさと決めた。というか最初に食べるものをとっくに決めてたって奴だろう。
「私は……うん。ソース焼きそばにしようかな」
ここは、安いけど味はまあ普通らしい。食えればそれでいい悪魔業界人のたまり場であって、飯屋ではない。うまい店はほかにもあると。
だから、焼きそばにした。子供の頃、合法都市に住む前、仕事で遅くなったお母さんのためにお姉ちゃんと一緒に作った、懐かしの味。
冷蔵庫に残ってた適当な具材と、水で戻すタイプの乾麺の焼きそば。これだけはいつも家にある食べ物の一つだった。
今思えば焼きすぎだったりべちゃべちゃだったりで美味しくはなかったはずなんだけど、お母さんはいつも世界一美味しいとほめてくれたし、私たちもすごく美味しいと思ってた。
だから、このお店のが美味しくても不味くても許せる。そう言うポジションにあるのが、私にとっての焼きそばだ。
注文を済ませ、待つ間、これからのことを考える。
(まずはナユタのみんなで足りない仲魔を補充して、合体して……造魔をドリー・カドモンに戻さないと)
アレをおねえちゃんと呼ぶのは、もうやめる。そうしないと、お姉ちゃんが安心して死んでられない。てか私あんなんじゃないよ!?とか言ってバケて出そうだ。
なので、一度リセットして、それからもう一回作り直す。
(名前は……ジン。そうしよう)
クマも言っていた。造魔につける名前は『どれだけこき使っても心が痛まないくらいには嫌いな奴にしておけ』と。
そう言ってクマの造魔に『ノーラス』という名前を付けたのが、ジンだったらしい。意味は知らないが、きっとジンが嫌いな奴の名前だったんだろう。
これから私は、ジンをこき使うんだ。合法サマナーにとって『一番の相棒』である造魔として。
そう考えたら、少しだけお母さんの仇が取れた気がして、その後に食べた焼きそばは子供の頃に食べた焼きそばより、ちょっとだけ美味しかった。
というわけで今回のシナリオも完結。次が最終シナリオ『合法戦争』になります。
まあ、クリア後のわちゃわちゃもありますが、宇宙怪獣襲来とか。