FとRはGM判断で出禁となりましたので、中の人繋がりで酷いことになってます。
今回の依頼は会場設営。とどのつまりはお手伝い。
旭川でお買い物とか色々準備があるっていうジュリアたちと一旦別れ、会場に行く。
会場では入有遁のおっさんが一足先に現地入りして、会場設営やってた。
中央のステージ以外、椅子とかスピーカーとかの準備。
当日は縁日的なのもやるみたいで、屋台も準備されてる。
それのお手伝いをするのがわたしの仕事だ。
「さーせん。次こっち運んでもらえますか?」
「おう!まかせとけ!」
見た目ゴリラ。パワーもゴリラのザッパが重い機材とか建築材とかを運ぶ。
「コタローさん。こっちおなしゃーす!」
「ほいほい。これ、調整すりゃいいんだな?」
発明特化のコタローは、スピーカーとかの機材の調整やってる。
あとはメインの舞台のまわりに色々張り巡らせて、入りにくくしたり。
「……マジで、そんなんできるんすか?すっげえ」
「旭川日本語学校の選択授業に『プログラミング基礎』あったからそこで覚えた。簡単な照明制御プログラムならいける」
ミドリはなんかパソコンめっちゃ得意になってた。多分前世補正。
「どうぞ……お、お茶、です……」
「ん。いい味してる。淹れるのうまいね」
菊千代の淹れたお茶も美味い。
てきざいてきしょってやつだ。
そんなわけで、わたしはふつうにエンヴィーと一緒に会場の外をぼんやり見てた。うん、いまんとこ、異常なしっと。
「……お前も働け!ポルノぉ!?」
「え?」「にゃん?」
すげえとーとつに、菊千代。切れた。
「いや、ふつうにはたらいてるけど?」
「さっきから見てたが、ずっとぼーっと外を見ているだけではないか!?それのどこが仕事だ!?」
えー、一番きつい仕事なんだけど?
もしかしてその辺、わかってない奴?
「あー、そのなんだ?ポルノ普通に働いてるぞ?」
「不審者入ってこねーかの見張りだ見張り。いっちゃん勘が鋭いから頼んでる」
「私がやってもよかったんだけど、折角ポルノがいるんだからでやって貰ってる」
ナユタの他のメンバーが丁寧に説明してる。ここ、地底人の巣だよ?略奪とかフツーにあり得るとこだよ?
そんなん、うっかりやべーの入って来たの見落としたらやべーことになるポジだよ?
「み、見張り?そんなの、その辺の者にでもやらせればよかろう!?」
「……菊千代。お前、今日はもう帰っていいよ」
あ、ミドリの逆鱗にふれた。すごく冷静に、怒りをぶつける。
サイバーズではモモイよりもキレないけど、キレたときのヤバさはミドリのが上だった。
「へ?え?」
「言ったよね?私の指示に従うならナユタに置いてやるって。それが出来ないなら、いらない。帰っていいよ」
そう言いながら、すっとガントレットを掲げる。
流石にその意味は分かるのか、菊千代はビビりながらも刀に手を掛ける。
「それはダメ。ミドリ、すてい」
止める。こんなところで殺し合いはアウト。合法じゃない。
「分かってるよ。ちょっと気が立ってただけ……本当に、ちょっと後悔してきた。余計な情見せるんじゃなかった」
そう言いながら、別の場所に行く。この場にいたらやばいのは自覚ありみたい。
なんとかおさまったので、菊千代に言葉を掛ける。
「つーわけでお茶くみでもしてろ菊千代」
多分この場にいるので一番お前がお茶淹れるの上手い。まさにてきざいてきしょ。
「んな!?貴様!バカにしてるのか!?」
褒めたのに、ついに刀抜きやがった。ん-、バカ?
われ、ミドリにタイマンで勝てる合法サマナーぞ?
「……エンヴィー。子守歌」「にゃーん♪」
「んが!?……ZZZ」
とりあえず、穏便に寝落ちで済ませた。特化型の前衛なら呪殺と、精々神経しか無効化してやがらないと踏んだので。
これが実戦だったら今頃、カッパスマイルで全裸にしてるところだったぞ。
「ほれ起きろ。菊千代」
「んがっ!?」
げしげし蹴って起こす。
「ひ、卑怯だろう!不意打ちで眠らせるなど」
「うんそうだよ?卑怯。で、実戦だったらそのまま頭あっぱらぱーにされてせいどれいコースだったね」
そう言うと流石に黙った。不意打ちでバッステ連打は、とりあえずダークサマナーの素人、こっちではカジュアルっていうのが女の子攫うときの常套手段。
一発でも通れば後は好き放題出来るし、魅了だとそのままこませる。
「それは……確かにそういう目に合った先輩がいるとは聞いているが……」
「菊千代も顔いいから、普通に狙われるよ?剣上手くても意味ないよ?」
そう言うと、ビビった顔になってる。ちょっとは不意打ちの怖さ分かったのか、落ち着いたのが分かった。
「……私は、正義の味方になりたかったんだ。子供の頃から磨いてきた剣技で、悪い奴らを成敗したいと」
「うん。なんとなく、知ってる」
実家が金持ってて、生きてくために戦わなくてもいいのに戦おうとする奴ら、大体それ。あとスリルとやらが欲しいとか。
わたしにはいまいち分からんノリ。働かなくて生きてけんなら働きたくねえのがふつうじゃねえの?
「だのに、初めての仕事がこんな、誰でもできるような、つまらないものなんて」
「そうだよ?仕事ってつまんねーから金もらわないとやらねーものだよ?」
まずそこ大事。金払ってでもやりたい遊びと、金貰わねーとやってらんねえ仕事はちがう。
金貰うのって大変。ミドリはまずそこを教えようとしてるみたい。
あいつ、すっかりリーダー面だな。リーダーのザッパも面白がってんのか面倒なのかなんも言わねーけど。
「そうか。仕事はつまらないモノ……か」
「そうそう。あと、すげーことはたまにしか起きない。ガチの殺し合いなんて月一であるかないか」
こっち来て2か月だけど、きつい殺し合いはミドリとくらいしかやってねえ。他は、まあ流れで勝ってきた。
「そういうわけだから、お茶お代わり」
「……分かった。まっていろ。お父さんに淹れる時くらい最高のお茶を淹れて来てやる」
うん。多分生徒会でも一番重宝するスキル。あいつら自分でお茶淹れるって発想、多分無いから。
*
兎にも角にも、一度聞いたら引き返せない。
そんなわけでオレとキラキラ。それとリーゼは地底人の巣へと向かった。
まあ集客するにも、警備するにも、まずは現場を見ておくべきだ。
地底人の巣は、また一段と人が増えていた。
(なんかこの辺りの土地、すげえ勢いで買ってるって)
旭川とはいえ、郊外の水も電気も無いようなただの荒れ地だと、坪単価びっくりするほど安いって、ニコが言ってた。
それを買い取ったことで、私有地の『広さだけなら半端ない』のが『地底人の巣』こと『ランドソル』である。
……で、元々水も電気もなくても、とりあえずのメシと、飲み水と適当な娯楽さえされば生きてけるのが地底人と無名地区の住人。
そんなわけで。
「す、スラムが旭川に!?」
「いや、スラムって言うには奇麗に整備されすぎてる。多分、あいつらのせいだな」
そう、オレの知るスラム……無名地区と比べて、あまりに奇麗なのだ。
道路があって、それにそって奇麗に建てられた家と呼んでもいいくらいの小屋。それを立ててるのが、あからさまにドワーフっぽい感じの熟練の大工だ。
使ってる素材は多分ホームセンターとかで買ってきた建材なんだが、それで電気もガスも水道もねえけどとにかくすめりゃいい、くらいの小屋ならあっという間に建てられる技術があるようだ。
「だから、ここはジータ様の
土地の利用権は宮廷の特権*2なのが常識だぞゴラァ!」
「逆らうのですか!?逆らうならさっさと逆らってくださいね!ヴィクトリー教*3の教え、存分に叩き込んで差し上げましょう!」
「電気もガスも風呂もTVもゲームすらもある迷宮長屋は迷宮と比べると楽園かってくらい良いところだけどやっぱ宮廷としては自分の
「この前なんてメトロ汗*4とダイナマイト*5のスパイが暴れてまとめてジータ様に迷宮に送り返されたからな」
「とりあえず隙あらば仕切ろうとする千年王朝*6どもなんとかしろよ」
うーんこの日本の法律が通用しない感じ!恐らくは新入りの無名地区の住人であろう奴の立てたいかにもな掘っ立て小屋が物理的に破壊されている。
地底人の、ジータよりは弱そうだが間違いなく『ランドメイカー』とか呼ばれてそうな奴らに。
逆らったら問答無用で鉄拳制裁が飛んでくる。殺さねえだけ温情みたいなノリだ。ていうか多分ガチで逆らったらマジで『処分』される奴だ。
主に私有地なので旭川市警でも用事が無ければ近づかないとか言われてる旭川にできた地底人の自治区。
新生ランドソル大牧場、略して『ランドソル』がここの住人が『地底人の巣』を指して言う言葉だ。
女王に逆らわなければ最低限の暮らしはできるって評判があるせいか、同じ地底人と無名地区の住人がガンガン増えてるらしい。
噂だと、本気で行くところ失った外人だの、本州でやらかしてさ迷ってた本州人だの、どっかから逃げてきた犯罪者だのもいて、そこそこ馴染んでるとも聞く。
まあ犯罪者は見つけ次第通報食らって旭川市警に逮捕されるけど。
地底人の巣も国と世界がまともな状態のときなら排除一択なんだが、どうも今の日本は『ランドソルより荒れてるところ』が珍しくないのでトップのジータが旭川に協力的なだけ『まだマシ』扱いとかニコも言ってた。
すげえな日本。これでマシなのかよ。素直にそう思った。
そう思い訪れた地底人の巣。ランドソルの私有地じゃない、街よりの場所にあるデカい郊外型スーパー『スーパー山田 旭川支店建設予定地』にて。
「「なんでいんの?」」
オレとポルノの声がハモった。
別々の依頼受けて別れたと思ったら合流した。なんだこれ。
「うわっ!?菊ちゃんじゃん!?なんでいんの!?」
「ほ、本田先輩!?なぜここに!?」
なんかキラキラと、ナユタの……あれ、誰コイツ?って奴も驚いている。
なんだろう。どっかで見たことあるんだけど名前出てこないっていうか……どっかでお会いしたような。
「なあ、ポルノ。あいつ、オレと知り合いだっけ?」
「いや、わたしもさっき会った。でもどっかで見覚えある。よくあることよくあること」
そうか。会ったことはなさそうだ。まあポルノは大分不思議ちゃんなのでしゃーない。
ナチュラルに前世で見た、とかたまに言い出すからなコイツ。
「おいそこの!?って!?貴様は確か本田先輩の婿だとか言う!?」
あ、気づかれた。まあ、この旭川じゃあ有名人だもんな既に。
「どうも初めまして。クマです。ネタみたいな名前ですけど、本名みたいなもんなんで」
「あ、ご丁寧にどうも。壬生菊千代と申します。分かります。私も男の子みたいな名前ってよく……って違う!?」
菊千代が奇麗にノリツッコミを決めた。中々にやるな。
格好もまともだし、姿勢もいい。髪の毛も染めてない黒のストレートだし、着てる制服がそもそもキラキラと一緒だし……
大分育ちが良いお嬢様だ。そのはずだ。なんでナユタにいるのか大分謎だ。
「あーうん。なんかこう、危なっかしくてな」
「そうそう。だってまず、制服のまま来てるんだぜ?明らかに業物っぽい刀一本抱えて」
「あーこれ、絶対死ぬ奴だって思ったら、ね?」
オレの疑問を察したらしい他の3人が口々に言う。
ああ、早速リーゼの言ってたアホなお嬢様の典型だったようだ。
「ちなみに菊ちゃん、来年から退魔生徒会の副会長になる予定だかんね?」
キラキラが追い打ちをかけてくる。
「マジっすかキラキラさん」
「マジっすよクマさん」
そうか……あの面子相手の副会長か。
「……頑張ってくれな。退魔生徒会の未来は多分、お前にかかってるぞ」
主に突っ込み役として。
「ああ!任せろ!生粋の旭川人は私だけだからな!この旭川の常識、叩き込んでくれる!」
うん。マジでお願い。あの子ら基本的に合法都市人だから……そして生徒会長に至っては地底人だから。
常識弁えた突っ込み役がいないとどこまでも暴走する連中しかいないから、本当に重要なポジションだ。
……そのポジション、ナユタ入るようなアホお嬢様で大丈夫なのか?
そんなことを思いながら、一応答える。
「オレは、こっちのリーゼさんの依頼で、集客頼まれてるんだよ。んで、下見に来た」
「こっちは会場設営のお仕事」
……なるほどな。まあつまりは、だ。
「両方、イベントの成功のために雇われた感じか」
「多分、そう」
ってことは敵対ってわけでも……うん?
「対バンするって聞いてたけど、そっちは誰が歌うんだ?アイドルのリーゼこっちに参加っぽいけど?」
「……ジュリア?」
ジュリア?確か、リーゼの姉だったか?有高エレキ部とか言ってたが。
そう思っていた時だった。
爆音でエルヴィス・プレスリーを流しながら走ってくる、すげえデカいデコトラ。
そして縦走する大量のバイク。
「……あ、そうか。スーパー山田だもんね。リーゼもジュリアも。そりゃあお手伝いあの子らになるか」
それで察したらしいキラキラが遠い目をする。
……ああ、そういえばそうだ。言われてみればアイツら『入有遁』の出身だわ。
「どもっす!クマさ~ん!」
年末年始に世話になったアインが、バイク運転しつつぶんぶんと手を振りながら近寄ってくる。
いや、やめろよ。コケるぞ。ちょっとハラハラする。
やがてデコトラが、会場のど真ん中に止まり、ウィーンという音を立てて、荷台が開いていく。
その中には、ステージ用機材がばっちりセットされたステージ。その中心には。
『イエーイ!やって来たぜ旭川ぁ!なのです!』
色々ギリギリ見えそうなレザーとシルバーアクセと網タイツとブーツでキメッキメのヘビメタスタイルな『ムムル』と愉快な仲間たちが居た。
「「ファッ!?」」
キラキラと菊千代が驚きの声を上げる……うん?
「なんでキラキラまで驚いてんの?」
「いやだってムムルちゃんだよ!?この前お兄ちゃんに抱かれたけど、基本的には清楚系の!?」
ああ、言われてみれば年末年始にお手伝いしてたときはそんな感じだったけど。
「お仕事モードだったんじゃねえの?」
仕事と普段で格好違うのはよくあることだ。それにアインが頷く。
「そうっすね。姉貴、普段はあんな感じですけど、ニコさん来たときはぶりっ子し」
パァン
アインの頬から血が一筋、すうっと流れる。
え?今すっげえナチュラルに撃たれなかった?
『黙れ愚弟、なのです。そういうことは言わなくてもいいのです』
マジかよと思ってステージの方を見たら、普通に大型拳銃片手で保持してるムムルが居た。
「姉貴、いちいち気軽に撃つなっていつ」
パァン
『もう一発逝っとくか?なのです』
「……サーセン。何でもないです」
足元に再び鉛玉がさく裂して、アインが黙った。物理的に黙らされる可能性を考えたんだろう。
ムムル、滅茶苦茶引き金軽いな!?
「ななななな!?なんだそこの悪魔人間もがぁ!?」
「あのね菊ちゃん。ムムルちゃん、拳銃の早撃ち滅茶苦茶得意だから、余計な事言わない方が良いと思うよ?」
キラキラが咄嗟に口をふさぐ。その時点で既に菊千代の足辺りに正確に銃口が向けられていた。
流石に身内でも悪魔人間でもない人間の頭狙わないくらいには頭いいらしい。雷族じゃなくて楽団だな。
そうか、あの村の住人な時点で弱いわけがないのか……今更そんなことに気づく。
「やるねあの子。私でも一人だと負けるかも」
ミドリが冷静にそんなことを言っている。本業がサマナーなのには一言も触れないのがプロって感じだ。
「ふふ。流石は入有遁でわたくしと唯一歌で渡り合えた
リーゼの言葉に驚愕する。
死屍累々が当たり前の楽団において『成功』をおさめたガチの奴のみが名乗れる称号。それが
ニコはこのこと知ってるんだろうか……いや、多分知らんな。猫の被り方の本気度が違う……むしろなんで隠さなくなったんだ?
……多分、リーゼもまた、言動からして
「おい待て!旭川だぞ!?気軽に銃を撃つな!?いくら実質無法地帯のランドソルでも怒られるぞ!?」
デコトラの助手席から明らかに竜っぽい色々がついたセーラー服の女子高生が飛び出してきてムムルに言う。
「誰あの人?」
「依頼人。スーパー山田の姉の方な山田ジュリアだって」
ポルノに聞いたらそう帰って来た。なるほど、アレがリーゼの姉貴か。
「相変わらず苦労してるね。ジュリア」
そういやセーラー服着てるってことは同い年くらいか。ある程度以上歳行って着てたらそれはアダルトなおねーさんか老害のやべー奴だってポルノも言ってたし。
『うっせ黙れ処女!18にもなって年の差10歳以内で自分より強い奴と結婚してえとか、いつまでも夢みてえなこと行ってんじゃねえぞぉ!?アタシみてえに覚悟キメて『特攻』しろや!なのです』
ムムルの言葉で気づく。アイツ、ニコを『射止めた』から隠さなくなったのか。すげえマウント取ってる。
年一とはいえ、毎年会いに来て、周囲と違う『賢くて頼れて優しい都会の男の子』とか、そんな感じで拗らせてったんだな。
あとでニコに教えてやろう。あいつ『既成事実』作っちまった相手には誠実だし。きっと喜んでくれるさ(笑)
「う、うるしゃい!強くなりたくて強くなったんじゃないの!むしろ勉強は得意なのに、明らかに人間に混じるには強すぎる上に竜の要素出すぎてて村の外に出せないって!?
しかもママはニューアルトンの皆様にご奉仕するスーパー山田の長女として
あ、泣いた。滅茶苦茶気にしてるらしい。
「……そうか。確かに思うとジュリア引くほど強かったけど、あれが、聖華学園名物『喪女ゴリラ』……そっかあ、私もああなるって見られてたんだ……そっかあ……ふーん」
キラキラがその様子見てまた怒りをあらわにしておられる。
……なるほど。
「……だから、許さない。お前だけのうのうと幸せになるのだけは絶対許さないぞリーゼ!スーパー山田の『旭川支社の支配権』この勝負で奪い取ってやる!そして旭川で旦那様を探す!覚悟しろ!リーゼ!」
なるほど、それで。
お、思った以上に拗らせてるなあの村。基本的に喧嘩っ早い悪魔人間しかいなかったのが、突然文明に触れたらそうもなるか。
……なんか思った以上にしょうもない理由だな?
と、思ってたところでビカラがやってきて言う。
「……リーゼ支社長。クマ大帝閣下。ジータ女王から『援軍要請』です」
え?どういうこと?
「……はい。分かっておりますわ。そのためにクマ様を雇用したのですもの」
にっこりと笑う。その笑顔はまるで『ヒルトリア人』のようだった。
*
「と、言うわけで助けて欲しいんだよね!」
「わたくしたちの計画に協力していただけませんか?合法サマナーとして」
ジータと、リーゼが『同じ側』に座っている。そういえば一応来年から同じ生徒会になるとかだったか。
「うん。このままだと最悪『すごい暴動』になるよ?」
「「ファッ!?どういうこと!?」」
キラキラが滅茶苦茶驚いている。オレもめっちゃ驚いた。
「うーん。まずね、リーゼの出店計画って、ランドソル的に『侵略』になるんだよね。しかもすごいあからさまな奴」
「わたくしも少し日本のやり方に慣れ親しみすぎていたようでして、ランドソルが『地底』であることを見落としていた、ということですわ」
いや、お前らが色々分かってるのは分かるんだけど。オレにも分かるように教えて?
「……どういうことだ?」
「うんまずね。スーパー山田の出店。それは私的にも助かるんだよ。ランドソルにいながらぶっちゃけ買い物楽になるし、色々手に入りやすくなるし。
お金は迷宮から獲って来た色々とか、悪魔業界関係で稼げたから民もそれなりに豊かになってるし、そろそろ自由にお買い物くらいは解禁してもいいかなって」
「スーパー山田はニューアルトンの小さなスーパーの経営経験しかありません。旭川での支店に関して、経営ノウハウが足りませんので、まずは地価の安い郊外で経験を積みたい。
いつまでもダーヴィド様のご厚意におんぶにだっこではいつか必ず再び時代に取り残される。そう説得しながら経営計画を提出したらお母様も出店計画に乗ってくださいました。
そして、郊外に突如現れた需要であるランドソルならば既存店との競合も人手不足の心配もなく、治安もジータ女王が睨みを利かせればニューアルトンよりはマシ。
そう言う思惑もあり出店を決めました」
……うん。コイツら両方マジで組織のトップなんだな。考え方が滅茶苦茶しっかりしてる。
副会長、頑張れ。お前以外全員『組織のトップ』とか言う面白組織だぞ。退魔生徒会。
「で、それがどうして侵略なんて物騒な話になるんだ?」
「うん。私も最近まで失念してたんだけどさあ。列強にそういうの滅茶苦茶得意なのいるんだよね。で、迷宮長屋の連中と下々が騒いでる。スーパー山田の侵略からランドソル守れってさ」
……列強?確か、地底においての強い国だったか?
「ビカラ。どういうことだ?」
恐らく、合法サマナーと地底の両方について詳しいビカラに尋ねる。
「はい。お話を伺う限りですが地底の常識に従えば今回の出店計画『ハグルマ資本主義神聖共和国*8』からの侵略と見るものが多く出てくるかと思われます。
発展してきた国の側に支社を作り、圧倒的技術力と経済力でもって宮廷を借金漬けにして運営権を乗っ取るのが奴らの常套手段です」
……地底本当に怖いところだな。そんなんまでいるのかよ。
地底が『無名なる地下帝国』と呼ばれてる理由がようやく分かった。コイツら普通に『外交』するんだ*9。
「なので侵略の意思がないことを示すために事前告知を兼ねて今回の企画をしたのですが、どこから聞きつけたのか、お姉様が支社長やりたい!と言い出しまして……お母様も止めきれなかったようです。
今回の対バンでわたくしが敗北した場合、経営権がニューアルトンしか知らない上に専業主婦希望のお姉様に移ってしまいます。まず間違いなく大惨事になるでしょう」
「うん。私もそう思う。ジュリアさん、完全に武勇と探索特化の脳筋型だもん。正直、才覚と魅力特化の内政型のリーゼでも危ういかな?って思ってるのに」
「あら、はっきりおっしゃいますのね?」
「国の運営は遊びじゃない。出来ない国から滅んでいくってね」
お互い笑いあってるけど、目が笑ってねえ!?コイツら両方、隙あらば取り込もうって思ってる『ライバル』だ!?*10
……まあ、オレも、半分も理解できてないが、多少知恵があっても雷族のトップやってる奴にそういう難しい話出来ねえだろうなとは思う。
でも、オレだって政治はほとんどわからねえぞ。ジンから簡単に教わったくらいの知識しかねえもん。
「「と、言うわけで、なんとか丸く収める方法、考えてくださいね?」」
そこでハモるのかよこえーよ!?
……うん、まあ。こういうときはだな?
「キラキラ。本田一家『全員』集められる?」
「ん?出来ると思うよ。家賊だもんね?」
これしかあるまい。オレの手に余る。
というわけでしょうもないところから大事件になるいつもの奴。
出来ないことは上に相談しよう。身内特権で。