Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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前回のリザルト

メガテン的成長:ニコ以外はビャッコ撃破によりLv+1
サタスペ的成長:クマが「親分」、ポルノが「色事師」、ニコが「裏職人」をそれぞれ獲得



合法サマナー03 家賊団欒

無事仕事を終えたオレたちはそのまま、アジトに運ばれることになった。

「旭川だとこの手の依頼って本当は細かい手続きやら報酬の受け渡しやらあるんだけどね。父さんが全部代わりにやっといてくれるってさ」

とニコが言って来たのだ。

 

まあ、そうだろうなとは思ってた。ダードはおっさん……もといジンと同じタイプだ。

そういうところは身内根性丸出しだろうとは思ってた。

「思った以上に速い。もっとお客さん扱いされると思ってた」

ポルノも同じように思っていたらしく、意外なほど早く認められたことを驚いている。

普通は何回も依頼をこなして信頼を重ねてようやくってなるもんだが。

「そうかい?父さん、身内には結構甘いぜ?元は赤い貴族だったみたいだし」

赤い貴族?意味が分からんがスルーして、話を続ける。

「そうなのか?って言うか、オレら、身内扱いだったのか?」

確かにあんな『楽な仕事』回してくれるのは身内以外ないと言われればそうだが。

「まあ、僕も詳しく知らないけど、ジンって人は父さんの親友だったとは聞いたことがあるから、それじゃない?」

……まあ、だろうな。少なくとも『おっさん』って名前しか知らなかった俺らと比べれば、絶対に詳しいだろう。

「……なるほど。だからこんな楽な仕事くれたんだね」

オレと同じ意見をポロリとポルノが口にした瞬間、何故かニコはあっけにとられた顔をして、苦笑する。

「……あー、なるほど。確かに父さんが気に入るタイプだ」

そう言った後、笑いながら俺達の『勘違い』を訂正する。

 

「いいかい?Lv40のビャッコ2匹をLv30くらいが2人だけで正面から相手ってね。今の世界でもそれなりに危険な難易度の案件だよ。君らあっさり仕留めすぎてて怖かったくらいだ」

 

「……そうなのか?」

「想定外もなかったし、ちゃんと手の内が分かってるなら、普通に楽勝じゃあ?」

オレとポルノが同時に首をかしげるのを見ながら、ニコは言葉を続ける。

「父さんは、身内には甘い。それは事実だ。けれどね、同時に有能と無能の判定には恐ろしく厳しい人でもある。僕がこうして好き勝手出来てるのも結構有能だからこそだよ」

そのまま『手の内』を明かしていく。

「挑んで負けたら最低限の『世話』をする。挑まずに僕に助けを求めたら『合格』で、すべての仲魔駆使してでも倒したら『満点』そういう採点基準だったんだよ」

ほう、とため息を吐く。

 

「……まさか、造魔一体呼ぶだけで完封するとか、君ら相当な凄腕だと、僕は思うよ」

 

その瞬間だけニコは笑みを消し、どこか寂し気な顔をしていた。

 

 

それから、しばらく車を走らせ、市役所の地下にある駐車場にハイエースを止めて、徒歩で5分ほど。

閑静な住宅街の片隅にある小さな料理屋『カラジョルジョ』が『本田一家』の家だった。

「なんていうか、意外。一応偉い人なんだから、もっと大きい家に住んでるものかと」

ポルノが率直な感想を口にする。正直オレも同意見だ。

一階の表側が小さな店で、裏口と二階と三階が普通の家という作りはいかにも安っぽい。

「いやあ、市役所まで歩いて5分だし、車はウチの『特権』で勝手に市役所の地下駐車場に私用車を止めても怒られないんだから、立地最高だよ?そもそも家に自家用車の駐車場も2台分あるし」

ニコが不思議そうに言う。いや、市役所の地下駐車場にいつでも止め放題を特権と言われればそうなんだろうが、安っぽい特権だなあオイ。

言われれば店の傍には2台ほど、乗用車が止まってる。大き目の豪勢で高そうな車と、普段使いであろう小さめの車。

「……ここ本当に北海道ヤタガラス旭川支部長の家か?」

「支部長ってそれなりに偉いんじゃ?」

そのせいか、騙されてるんじゃないか?という気分になる。

もちろん、俺らみたいな合法都市の貧民にとっては豪勢と言ってもいい規模だが、それなりの権力持ってた奴なら合法都市でももっといい家に住んでたぞ。

「一家四人にちょっとお客さん泊めるくらいなら、普通にこの規模で充分だよ。実際今でも、客室2つに物置になってる部屋も1つあるくらいだもん」

うち、旭川に来たヤタガラス関係者泊めること結構多いから、客室は確保してるんだよ。ととぼけて言う。

「メイドとか、護衛とかいないの?」

「いや、うちは一応全員がある程度は戦えるからなあ。父さんも母さんも普通に結構強いから、並の暗殺者くらいなら逃げ切るくらいは出来るんだよ。

あとは父さんでも正面からじゃかなわない規模なり強さなりでわざわざ旭川まで襲撃(カチコミ)かけてくるようなのが着たら家にこもるより市役所に逃げた方がいい。

あそこは災害想定で『色々』強化されてるし、本気用の装備とかも全部あっちで保管されてる。ここは僕ら家賊が暮らす家であって、防衛用の拠点じゃないからね」

ポルノの疑問に、何でもないように答える……本田一家、思った以上に怖い連中だ。

「……割り切ってるな」

「父さんも母さんも、プライベートと仕事は分けたがるタイプだし、二人とも修羅場くぐって来たらしいからね」

そんな、当然のように言うなんでもない言葉に、オレは改めてダードがおっさん……ジンの友人だったことを思い知らされた。

 

「まあ!お帰りなさい!さ、入って入って!」

 

そんなことを思っていると、ガチャリと店の扉が開いて、一人の女が姿を見せる。

(……美人だな)

オレの好みとは真逆で、黒髪だし年上の女だが、素直にそう思った。

「クマのうわきもの」

ギュッと尻をつねられる。バレてたらしい。

「……損得抜きで抱くのはお前だけだ、ポルノ」

「ならよし」

セーフ!ポルノは怒らせると面倒なのだ。

仕事でも他の女抱くと、すねるし。

 

「……うわあ。父さんたちより熱々のカップルとか初めて見た」

「ふっ、甘いわね……アナタたちが産まれる前はもっとアツかったわよ?」

「やめて親の恋愛沙汰とか普通に聞きたくないから」

「むしろ燃え上がって来たわ。あとでスイートルームの予約入れておきましょ」

……後ろでコントやってるバカ親子はスルーする。スルーは大事だ。出来ないと死ぬことになることが多々あるので。

 

「……で、そっちのおばさんは誰?」

 

辞めろよお前!失礼だろ事実でも!?

 

「そういえば名乗ってなかったわね!まあ分かってると思うけど『本田花子』よ!

ダードの奥さんで、このバカ息子の母!……カーナって気軽に呼んでちょうだい!」

 

よし、気にしないタイプだ!……だよな?額に青筋浮いてるとか、普通に言うわけにいかない奴だよな?

あと、ネーミングセンスはまんまダードと同じだった。そんなところまで夫婦で似なくても。

 

「……カーナどっからでてきた?」

「え?もちろん『本名』からだけど?」

 

ポルノの疑問に当然のように答えるカーナ。

こっちは別段誤魔化す気はないらしい。そこはダードとは違うな。

 

 

CLOSEのプレートがかけられたドアをくぐると、そこは貸し切り状態になっていた。

「ふむ。無事戻ったようだな……シャワーはご飯の後でも大丈夫なレベルか。正直、想像以上だよ」

「あ、お帰りお兄ちゃん!もう待ちくたびれたよ!お腹空いたし、さっさと食べよう!」

そこにはYシャツ姿のダードと、ラフな格好をした女子が一人いた。

「待ちなさい!その前に、この子たちの自己紹介を終えてからよ!……ダード、ビールはその後にしてね?」

 

「えーもう、知ってるしよくない?そっちの男の子がクマで、女の子がポルノでしょ?良い名前だね!」

「……日本の宴会では、自己紹介は飯をひとしきり食ってからだと習ったんだが」

 

ぶつぶつと文句を言う二人に、パンパンと手を鳴らしながら、カーナがいう。

「というわけで自己紹介!手早く!素早く!はいどうぞ!」

 

「ドーモ、クマです。合法都市から来ました」

「ポルノ。以下同文」

 

「よし!早速焼こう!お肉、お肉♪……あ、ちなみにアタシは本田タチヤーナ。タナって呼んでね」

なんかすげえ勢いで自己紹介終わった。ていうかあっさり流された。

ていうかもう、オレらのことはどうでもいいというように、タナはガンガン肉を乗せていく。

タレ付けにされた肉の焼けるいい匂いが漂い、もうオレもどうでもよくなった。

思えば朝から何も食ってない。

 

「……うん。やっぱりビールは故郷のより日本のが美味いな。故郷で飲んだコカ・コーラを思い出させる味だ」

ダードはなんか手酌でビール注いで飲んで、謎の感想を述べている。意味が分からん。

「うーん。相変わらず父さんのたとえは分かりにくいな……あ、母さん、食器出すの手伝うよ」

「ありがとう。タナ!ちゃんとお野菜も焼きなさい!お肉だけ食べると、お肌に悪いわよ!」

ニコとカーナは普通に働いている。ダードとタナとは対照的だ。

 

「あ、すいません手伝います」

「いいのよ!今日のパーティーの主役はアンタたち二人なんだから!適当に食べてて!」

その様子にオレも手伝おうとしたら、止められ、今日のコレがオレたちの歓迎の宴だったことに初めて気づいた。

合法都市に居た頃には一度もなかったことだったので、気づかなかった。

「あ、ちょっとポルノちゃん!?それ生焼けだよ!?」

「大丈夫。故郷ではこれくらいの生でも普通に食べてた。むしろ食わないと奪われる」

ポルノはまだ焼けてない肉を普通にほうばっていた。なんていうか、馴染みすぎだろお前。

 

「……気持ちは分かるが、肉はちゃんと焼いた方が美味いぞ?どうせ食いきれないほど用意してあるからな、遠慮はいらん」

「……分かった。焼けるまで待つ」

ダードがおっさんくさい説得をして、ポルノもそれに納得したらしく、黙って待つことにしたようだ。肉の焼ける匂いでよだれたれてるけど。

「ふっふっふ……ウチのジンギスカンのタレは母さんの特別製だからね。よそでは食べられない逸品だよ?」

そうなのか。まあそもそもジンギスカンとやら食ったことねえからよく分からんが。

まあ要は焼いた肉だろとオレも座って食う……うめえ。

なんていうか、ただの食い物じゃねえ、料理って感じだ。

……ジンの作ってくれた雑な男飯よりも、ずっとうめえ。

「はいお待ち!ジンギスカンと言えば、具なしの海苔なしおにぎりだよね!」

「スライスしたパンも持って来たわ!マチェドニア風ならこっちよ!」

さらにパンと米が来た。なんだこれは、豪華すぎる。

 

オレは一心不乱に食いながら『料理』ってのを覚えようと誓った。

ジンにはできなかったことだ。

 

ちなみに、肉は全員が満腹になるころには見事に全部なくなっていた。

 

 

……朝、か。

 

メシを食い、片付けを手伝い、風呂に入り、風呂上がりのポルノを抱いて、もう一回風呂に入り、ガッツリ寝たあと、オレは完全回復状態で目を覚ました。

日が昇っている。静かな朝だ。銃撃の音も、バカみたいな笑い声も、殴り合い殺し合いの喧噪もないことで、ここが合法都市でないことを嫌でも感じさせる。

 

(オレたちは、ここにいてもいいんだろうか?)

 

そんな朝は、いつもふと思ってしまう。今の方が確実に楽しいし、楽なのだが、それでもオレたちの居場所は合法都市だったんじゃないかと思うのだ。

(……なんか前にも同じこと考えた気がする)

オレたちは、合法都市に馴染んでいた、馴染みすぎるほどに。あそこの暮らしは、妙に『懐かしかった』のだ。

(チンピラ、レイダー、モヒカン、ハンター、ソルジャー、ボウケンシャー、バスター、ランナー、カブキ、アキョウ、コウア……合法都市にいた『オレたち』はどう呼ぶのが『正しかった』のか)

ふと、そんな考えがよぎる。この平和な世界はオレたちの居場所ではない。そう思ってしまう。

もっとこう、ろくでもなくて、それでいてギラギラしてる。それがオレたちにとって『正しい』気がするのだ。

 

「……お悩みのようね!クマ!」

「うわあ!?」

だから、いきなり後ろから声を掛けられた時には本当にびっくりした。

「……カーマ?」

「そうよ。カーマかあさんよ」

こんな時間に起きだしてきたらしいカーマの手には、大量の乾いた洗濯もの。

そこにはオレたちが風呂場で脱ぎ捨てた服も含まれていた。

「……すんません。たたむの手伝います」

「うん。お願いね」

それが申し訳なくて、手伝いを申し出て、了承される。

 

服をたたみながら、少しだけ、話をした。オレのしょっぱい悩みについて。

多分分かんねえだろうなって思いながら。

「あー、うん。なんか分かるわあ。故郷無くすと、自分たちが誰だったか決め直すの割と困るのよね」

なんか普通に共感されたぞ?明らかに本気な感じで。

「カーマも、失ったのか……その、故郷を」

「盛大に爆発四散したわ!民主主義って劇薬よね!」

したんか。ていうかあっけらかんと言うなよ。

「……ちなみに答えは」

「自分で探せ。甘えんな」

超スパルタンな答えが返ってきた。なんていうか、相談した意味あったかこれ?

「ていうかズルしようとしない!私たちが答えだすまでにかかった時間を勝手に飛ばそうとすんなって感じ」

「ああ、そうかよ。じゃあもう聞かねえよクソが!」

カーマと話をしてて、なんとなくここの居心地がいい理由が分かった。

どんなところか知らんが、カーマとダードの故郷はろくでもない場所だったんだろう。

それこそ合法都市並に。だから、ノリが合うのだ。

 

「……ちなみに答え出すのにどれくらいかかった?」

「20年以上かかったわ!」

……なるほど、そんだけかかったんなら、そりゃあ一か月もたたないうちに答えだそうとか、甘えんなって意見になるわ。

納得できたので、最後に一つだけ聞く。

 

「で、アンタは一体何者だったんだ?カーマ」

「そりゃあ当然『ヒルトリア人』よ」

……カーマの答えは意味が分からなかったが、それでもなんとなく正しい気がした。




ほのぼの日常シーン!
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