ちなみに合法都市が物理で消滅した結果、『勝ち残った五大盟約が1つだけになった』感じ。
しかも恐ろしいことに『ダードが頑張りすぎたせい』で『オオサカと比べて圧倒的に民度高い』とかいう面白時空だ。
洗濯ものをたたみ終わった後、オレはカーマを手伝って朝飯の準備をする。
一升炊いた飯と、大量の茹でたウィンナーに、大量の目玉焼きと漬物。スープだけは味噌汁じゃなくてカーマ風。
飲み物は牛乳だ。朝は大体これらしい。
「醤油はいいんだけど味噌はあんまり好きじゃないのよねー」
そう言ってメシを並べたところで、全員が起きてくる。
「おはよ~……え?なんでクマ普通に母さん手伝ってんの?」
「おはよう。ってか、うちの女子二人、普通にクマに女子力で負けてんじゃん」
「大丈夫。クマを養うだけの甲斐性はこれからつける。そしたら一日中セックスする。ヒモにする」
「うむ。おはよう。今日も素敵だ、カーマ」
「はいはい。さっさと席に着く!遅刻するわよ!」
「大丈夫だ。重役出勤が許される程度の地位にはついた」
「アタシは父さんのコネで推薦取って進学先決まったし、もう自由登校状態だから出席も適当で大丈夫だよ」
「タナは本当に父さんの権力使うの躊躇しないなあ。まあ僕も今日は自主休講だから、遅刻の心配はないかな」
「ニートは学校も、しけんもなんにもない。ご飯のにおいしなかったら昼までねてた」
「……いいから、黙って、座って、食え。OK?」
「「「「……はい」」」」
それから、一気に飯を食う。みんなガンガン食ってどんどんお替りする。全員が食い盛りだ。
あんだけ用意してもすぐ無くなった……居候のオレらはもっと遠慮すべきだったのだろうか?
そんなことを思ってたところで、朝めしが終わった。
「よし!朝ごはん終わり!……クマもあとは私やっておくから、好きにしてていいわよ。ニコ、案内してあげて」
「はいはい。じゃあ、早速行く?それとも休んでから行く?」
ニコに尋ねられ、オレはすぐ隣で腹を抱えてるポルノを見て聞く。
「……ポルノ?どっちがいい?」
「運動のきぶん。れっつごー」
そういうことになった。
「出かける前にシャワー浴びてきなよポルノ。普通にアレな匂いしてるよ君?」
「……えっち」
……あとニコは気配りは出来るけどモテねーだろうなとは思った。
*
ポルノがシャワーを浴びてきたところで、オレたちは街に繰り出した。
武装は軽く拳銃とナイフに、防寒具という軽装。
まあノーラスは首輪とリード付けてだしっぱだし、COMPは持ってる。なんとかなるだろう。
「というわけで今日はボクが旭川の案内をします」
「いえー」
「い、いえー」
大学サボったらしいニコの案内で市役所のバス停からバスに乗り、オレたちはこの街に来た。
「というわけでここが旭川の繁華街こと『南旭川』になります。長いので『ミナミ』って呼ぶことが多いかな」
案内されたのは、若干寂れてて、市役所があったあたりよりちょっとだけろくでなしな匂いがする街だった。
「ここは若干治安が悪いから気を付けてね。多分合法都市よりはマシだと思うけど」
まあ、見れば分かる。
明らかにイキってる奴とか、あからさまに懐になんか入れてる奴とか、目が逝っちゃってる奴とか居るし。
(治安はざっくり『無名地区』以上『百鬼夜行』未満ってところか)
荒れっぷりから大体見極めをつける。おっさん……ジンから習った。
ちなみに無名地区はオレたちのホームで、一番やべえところ。百鬼夜行は昔からの土着組織……いわゆるヤクザが住んでる場所だった。
まあ、無名地区と比べたらどこも治安は良いもんだが。
「で、どこに行くの?」
「まずは最重要なところから案内するよ」
そう言いながら、ニコはスマホを手に歩く。歩いて行った先は……
「ラーメン屋?なんて読むんだコレ?」
「ご飯はさっき食べた。流石にもう入らない」
小汚いラーメン屋だった。名前はなんか聞いたことない漢字で書かれて読めない。
「あはは。ここでラーメン食う奴いないよ。『名状しがたいくらい』不味いからね」
名前についてはどうでもいいらしく、とりあえずここでラーメン食うなってことらしい。
まあ、無名地区名物『仏丼』とかの類だろう。
仕入れ先不明の『謎肉』使ってて、人間が食うと腹壊すけど、一部悪魔や悪魔人間には滅茶苦茶好評だった奴。
オレとポルノは食ったことはない。ジンがすげえ渋い顔して『アレは絶対に食うな』って言ってた。
「なんで連れてきた?」
ムッとしてポルノが聞くと、ニコは当たり前のように答える。
「ここが、旭川のサマナーにとって聖地だからさ」
……なるほど、それでピンときた。
「そうか。ここが『邪教の館』か」
「正解。やっぱり分かるんだね」
「……きづいてたし?」
オレが当てたことで、ポルノがちょっとムッとしていた。
「悪魔が集いし邪教の館にようこそ」
ラーメン屋の地下には、見慣れた装置が揃っていた。
そしていつもの、合法都市の奴と同じ雰囲気をしてるジジイ。
なるほど、サマナーにとっての最重要拠点だ。
「……で、今日のご注文、なににするね?」
定型のお約束を終えた後、中華系らしい謎のジジイが、問いかけてくる。
「えっと、今日は主に新顔の顔見せかな。ボクは今日は後にするよ」
ニコに譲ってもらったので、まずは挨拶をする。
「クマだ。よろしく頼む」
「ポルノ。同じく」
「わかたよ。クマに、ポルノね。今後とも御贔屓にね……で、注文ある?」
そう問われて、オレは荷物から布に包んだ無銘の刀を取り出す。
朝方、普通に物置から取り出して渡された。
ダードのおっさん、管理適当すぎないか?
まあ、このままだとゴミみたいな切れ味しかない代物ではあるが。
「剣合体ってここで出来るか?」
「……ばあさんが担当よ」
そう言った瞬間、厨房の方からすごい勢いでババアが飛び出してくる。
「刀。あと、食材、寄越せ。作る……アル」
うわあ。うさんくせえ。
そう思いながら刀を渡し、ついでにCOMPから仲魔を取り出す。
「こいつと、竜王ノヅチの合体を頼む」
「わかたよ。少し待て」
刀を手に、COMPから取り出したノヅチを引っ張って厨房へ行く。
さらばノヅチ。物理盾よ。お前が散々銃と剣を防いでくれたことは忘れない。
どーなどーなされてくノヅチを見送りつつ気を取り直して、続けての注文。
「神獣カマプアアを作りたい。今のオレなら制御できるはず」
そう言いながら、合体材料を示す。ついにLvが足りたのだ。
合法都市時代はずっとLv30で止まってたオレたちは、石化から復活したらLv31になっていた。
なんかこう、石化からの復活が限界越える儀式かなんかになったらしい。
それから、昨日ビャッコを仕留めたら、Lvが32まで上がっていたというわけだ。
神獣カマプアア。魔法に弱い代わりになんと物理攻撃を吸収するし『強力な魔法』も覚えるクソつよ悪魔である。
なんかどっかの国の豚の神様かなんからしい。詳しくは知らん。
というわけで普通に合体。
『ワクワク☆サマナーいくせいけいかく』によれば、神獣としては最弱故に、雑な材料で作れるのもポイント高い。
「オレサマ、神獣カマプアア。コンゴトモヨロシク」
「おう。しばらくの相手だろうが、よろしく頼む」
そう言いつつ、普通に合体し、あいさつを交わす。
確か性格は冷静。ちょっと扱いづらいな。
酒でも使うか?そう思ってたところだった。
「じゃあ最後はボクかな。魔晶変化お願い」
そう言いつつ取り出したのは……ビャッコ!?
「ニコ、それ昨日捕まえた奴じゃないのか?」
「そうだよ?」
くっ、さては貢いだか。宝石結構貴重なのに、金持ちのボンボンめ!
狡猾な悪魔に貢ぐ品は、大体高い。魔晶変化という特典があるせいだろう。
「……まあ『食べ物類』余ってたからね。すぐだった」
……なん、だと?
斜め上の回答に、もしやと思いつつ、問う。
「なあ、ニコ。酒ってどこで買ってるんだ?」
「普通に通販だよ。ストックはいくらかうちにある。もちろん、お金さえ払えば分けてあげるよ?」
……こ、コイツ。出来る!?
オレはニコが合法都市でも結構知ってるのは珍しかった『酒の使い手』であることに気づき、ニコがオレより『上のサマナー』であることを思い知らされた。
「他にも武器とか防具は主に『カラジョルジョ』で買えるよ?
市内での武器の流通、ある程度だけでも把握する意味でも、ウチが管理してる。
まあ、外から持ち込まれたり、通販で買ったものとかまではちょっと分からないけど、それでも最低限は分かるからね」
……なるほど、確かにカーマさん、滅茶苦茶強い気配したもんなあ。
やっぱこの街の裏側って、大分『本田一家』に支配されてる気がした。
*
こうして仲魔を整えた後は、病院の前を通り過ぎる。
「あそこが乃木クリニック。心霊治療込みで色々治してくれるし、悪魔も治療できるよ……クマだったら『2時間のお相手』すればタダで回復してもらえると思うよ」
いるか?最後の情報いるか?
「わたしは?」
「ダメだろうね。あの人、美形の『男』専門だから……ちなみにボクは顔だけはいいから『アリ』って言われてる。死んでも利用しないけど」
ポルノの言葉に身震いしながら答えたニコに遠い目をする。
そっか、さぞかし美人なんだろうなあ……その『女医』は。
ははは。またポルノに嫉妬されちまうぜ。
「ちなみに乃木先生、美形ではあるけど普通に男だからね?
あと、看護師のリョータ君も、女装してるけど男だし、なんなら護衛だけにクッソ強いから注意ね?」
だと思ったよ畜生!
そんなことを話しながら、精神的ダメージ癒してくれるSM倶楽部だの、謎の占いしてくれるアダムスキーなんちゃら大聖堂を通り過ぎる。
……うん、そういうマニアックなのはしばらくいいかなって。正直乃木クリニックですら最低限のお世話にしかなりたくない。
「しかしこう、意外と普通に住人いるんだなこの辺」
街を歩きながら、気になったことを尋ねる。
ここは確かに市役所近辺と比べれば治安が悪い。悪いんだが……
普通にスーパーがあり、薬局があり、ゲーセンがある。変な店の揃った商店街もある。
おっさんやおばさん、ジジイにババア、それから少し頭が悪そうな子供も普通に歩いている……武装一つせず、そのくせ金は持ってそうな感じで。
……合法都市、ましてや無名地区では絶対に見れなかった光景だ。
「まあ、治安悪いって言っても一般人が歩けないって程じゃないからね。路地裏とか、一部裏専門の店さえ避ければ、普通の街だと思うよ」
それを当然のように言うニコは、やっぱりオレたちとは違う世界の人間に見える。
……慣れるまでに20年か。
カーマの言葉の重さが、改めてのしかかった。
「……正直、重荷ではある。なんかこう時々、同級生からも『若旦那』とか『二代目』とか言われるし、明らかにボク狙いの女の子が来るんだ。
ボクは『普通の大学生』をしたかったのに」
そして、ニコもそれなりに重さを感じているらしい。産まれた時から恵まれてただろうに。
とはいえ、そういうもんなんだろう。悩みのない人間なんてそうそういない。
「さて、ついた。ここがミナミの最重要拠点。裏の社交場だよ」
気を取り直したように、ニコがそこを指さした。
ーーーエルヴィス・プレスリーは生きている。
そう書かれた謎の男が書かれた謎の看板。そもそもエルヴィスって誰だよ?
そう思いつつ、地下にあるらしい『酒場』に降りていく。
普通に高校生だの中学生だのに見える子がいるのも、誰も気にしない。
……そもそもオレらも『そういう歳』なんだよな。
そのことに気づきつつ、扉をくぐる。
ーーーBAR『ジェイルハウス』
それがこの旭川最大の『悪魔業界者』のたまり場だという。
「よっ。遅いよ3人とも!待ちくたびれちゃった!」
そしてそこには、当然のように学校をサボったらしい『タナ』がいた。
どうやらあの後、普通にこっちに来てたらしい。
……次の仕事が始まる気配がした。
ちなみにミナミの名物スポットは大体原作通りです。恐ろしいことに『基本ルールブック』に載ってるレベルです。