実はサタスペ的には割とやりたくないことだったりする。
ーーーBAR『ジェイルハウス』
妙に尻に馴染む椅子に座り、注文をする。
(アルコールはダメなんだな)
お酒は20歳にならないとダメと注意書きがあった。
「ポルノ。何にする?」
「あったかいココア。クマは?」
「コカ・コーラで。昨日ダードのおっさんが言ってたのが耳に残ってた」
「うーんじゃあ僕は普通に珈琲かな。ここの美味しくも不味くもないけど」
「アタシも!コーラお替り!」
それぞれに飲み物を注文し、それから、話をすることにする。
「しかし、もう来てたのか。学校は?」
「いやーそれがさ、ウチの学校の生徒で、家出してたと思われてた子が昨日から学校来ててねえ。見捨てた子とは顔あわせづらい~」
だらりとしたまま言う。
……そうか。そういや保護された住人には肉奴隷代わりにさらわれた一般人もいたんだったか。
やっぱろくでもねえな合法都市と思いつつ、話を聞くことにする。
「やっぱさあ、旭川も長年、合法都市の封じ込めはやってたけど、攻略はしなかったわけじゃん?
父さんも今の旭川程度の戦力でどうこうできるもんじゃないって言ってたし、札幌の意向もあってさ……それが例の石化現象でね」
何故か一瞬で崩壊、か……本当に何が起きたのか、オレには謎のままだ。
今にして思えばその前に謎の大爆発が起きて合法都市の結界が崩れ、それに乗じてヤクザとチャイナとメシアンが部隊率いて突っ込んできて、
そのまま詳細一切不明の『街の支配者』にぶちのめされたらしいってのが、その前兆だったんだろうなってくらいだ。
病院で聞いたところによると、オレたちも巻き込まれたあの『謎の石化現象』は合法都市全域に及んだらしい。
住人の大半が石化したし、結界なんかで石化を防いだり無事だった奴の力で自力で石化した連中を治療した一部の住人も、その後に来た合法都市制圧部隊にさっさと降伏した。
逃げた連中もいるが、それは北海道全域で狩り出されてる最中らしい。
そうして魔境とか言われてた合法都市は一瞬で壊滅し、今は治すだけの価値も意味もないクソどもの石像が蘇生できないように砕かれて転がる廃墟と化している……らしい。
(結局、あの石化現象はなんだったんだ?)
オレの故郷を一瞬で滅ぼした謎の現象。なんでそれが起きたのか知るのは、無理なんだろうなとは思う。
合法都市で起きる出来事なんて、街の住人が知れることなぞたかが知れてる。上の連中のやることなんてなおさら。
考えても仕方がないことなので、話を続ける。
「で、今日はここで駄弁る感じか?」
「ココアうまい。おかわり。さとう増量で」
ポルノがさっとお替りのココアを頼むのを見つつ、タナに尋ねる。
「う~ん。それも楽しそうなんだけどねえ。母さんからお仕事頼まれちゃったから、それやろうかなって。ついでにポルノとクマにも手伝ってもらいなさいって」
「……依頼内容による」
「話はきく、受けるかはそれから」
タナは信じられるが、あのカーナからの依頼なので、舐めたら普通に死ぬと思う。
「分かってるってば。と言っても依頼内容はすごいシンプルなんだよね。平たく言えば異界に突っ込んでボス殺してこい。以上」
なるほど、これ以上なくシンプルな依頼だ。
「異界の詳細と、ボスの概要は分かるか?」
「うん、一応はね。異界は雪の降る夜にこの先にある公園に入ると入れる異界で、敵は大半が氷に関わる悪魔。ボスはその公園で自殺した女子高生の怨霊だってさ」
なるほど、なるほど……つまり。
「「うさんくせえ……」」
ポルノとハモる。絶対ハメようとしてる奴だ。ジンだったら全力で裏取りから動く。
「ついでに言えば、お母さんに念押しされちゃったよ『"依頼書通り"なら"簡単"な依頼よ』ってね」
違うんですね分かります。やっぱ優しいわあの人。そのまま突っ込んだら死ぬぞって教えてくれる辺り。
「うん。ちなみにフリーのLv30くらいのデビルバスターが4人で挑んで、全滅してるね。サマナーは居なかったけど、一人は火炎特化だったってさ」
……この野郎、相変わらず試しやがって。
「というわけで、君たちの意見を聴こう」
おふざけ気味に聞かれ、オレたちは首をひねる。
「まず、雑魚は普通に氷系悪魔で間違いないと思う。そこ間違ってたら前提違いすぎて罠にならない」
「だな。そこは氷結耐性装備もってけばいいだろう」
ポルノの意見に同意する。
騙すっつっても入ったらボス倒すまで出られないタイプでもない限りは雑魚の構成誤魔化すのは難しいし、入ったら出れないタイプならそもそも異界内部の情報が出てこない。
ならば今回の依頼の雑魚は氷系悪魔で間違いないだろう。
「となると、仕込みはボス……?」
「うん。氷の異界にいる女子高生の怨霊ってのを素直に信じたら殺しに来るタイプだと思う」
「その条件で考えるなら想定される敵は……『氷結か呪殺、あるいはその両方を使う。バッステも使うかも。炎か破魔、あるいはその両方に弱い、物理は比較的効きにくい可能性が高い』って感じか」
素直に信じるなら大体そんな感じだろう。一般の突発で発生した依頼ならこれ前提で動いてもいい。
呪殺対策は嗜みなことを考えればそれこそ防寒具着て突っ込んで焼けば終わる……んな依頼回さないよなあカーナは。
「で、実際は?」
ポルノの確認にタナが頷いて言葉を続ける。
「うん。まずマリアさん、えっとね。旭川市警で傭兵みたいなポジの契約刑事の人にさっきここで聞いたんだけど、ここ何年かはあそこで自殺した女子高生なんていないってさ」
「まずそこからか……割とその辺、適当な組織がやってるなこれは……」
脳筋で力押し。合理性重視してて細かい整合性抜きで動くタイプ……
やり口が大分『コンビナート』だな。
そう思いつつ、とりあえずボスについて、思ったことを言う。
「完全に相手に手管見誤らせに来てるから『炎無効、破魔無効、攻撃手段は氷結は絶対にない』くらいか?
どの道氷悪魔だらけの異界抜けるのに、氷対策してねえわけがないだろってなるから、ボス戦前で着替えるでもしない限り意味はないけど」
「だね。あと、コンビナート絡んでそうだから、物理対策重視した方がいいかも。戦ってる最中に後ろから撃たれたらヤバい」
ポルノも同意見のようだ。普段はアホなのにこういう時は頭が回るな。
まあ、呪殺は対策が嗜みなことを考えると、しないわけにもいかないのでとりあえず無視していいだろう。
「ほえ~。やっぱポルノとクマって凄腕のサマナーなんだね。これだけでそこまで分かるなんて」
ジンからの教えに従ってるだけなんだが、少しこそばゆい。
「……ちなみにコンビナートってのはなんだい?合法都市はボクらにも謎が多くてね。概要は知ってるけど一応君たちの見解を聞きたい」
ここで、ここまでの流れを聴いていただけのニコが尋ねてくる。
そうか、旭川だと合法都市には詳しくないんだな、と気づいた。
「平たく言うと、旧共産圏の傭兵崩れどもだな。大体『火力こそ正義、相手が死ぬまで撃てば死ぬだろ』って脳筋スタイルなのが下っ端の奴ら」
「合法都市だとその辺どこも下っ端なら一緒だけど、アイツら全体的に使ってる装備の質がいいから、銃撃対策は欲しいところ。あと堅い」
コンビナート連中と戦うならまず考えるのは銃撃対策。
なのでノヅチの物理盾は本当にお世話になった、最強の遮蔽物だった(過去形)ぜノヅチ。
「自分が撃つのは好きだが、撃たれるのは嫌いだから、物理系に耐性あることが多い。
代わりに魔法が結構効くことが多いな。あとはバッステも割と軽視するから、穴をつきやすい」
「カッパスマイルで何人ものコンビナートが同士討ちする様子は圧巻」
とりあえずビールならぬとりあえずカッパスマイルも基本だった。
流石にある程度繰り返したら奴らも学習したのか魔力対策するようになったので、精神相性のナルキッソスの催眠術がささりまくったのまでセットだ。
……まあデモニカ使いの『ブラックアドレス』は多分出ても指揮官で1人か2人だ。アイツら、装備がアホほど高いからな。
「……そうか。バッドステータスが刺さるのか。それと銃撃ならプレートバンダナ……うん。ありがとう。やっぱりジンさんの息子さんと娘さんだ。本当に参考になったよ」
どうやらニコ的に満点の回答だったらしい。お礼を言われた。
「お礼と言っては何だけど、家に帰ったらお酒をただで上げよう。どうせ使うだろ?」
そこまで話せば、やり口は分かるらしい。ニヤリと笑って言う。
「ああ、悪いな兄弟」
「いいってことよ」
なんていうか、やりやすいな。やっぱり本田一家、合法都市のノリだわ。
*
大体方針は決まったので、早速とばかりに準備を終えて、異界に突入する準備を整える。
「じゃ、ボクはここで待ってるから、なんかあったらよろしくね」
異界の入り口では、ここまでオレたちを運んできてくれたニコ。
更に後ろにはヤタガラスの職員らしき連中が数人、護送車で駆けつけた武装した警官が数人、無言で立っている。
まあうまく捕獲出来たら連れてくためだろう。異界に突っ込んだら雑魚相手でもきついくらいの強さっぽいから、そうもなるか。
「いやー、思えば今日が初めての一緒のお仕事だね」
全身を覆うボディースーツの上から、ビャッコの紋章が浮いているボディーアーマー。
顔面にはしっかり魔力を防ぐ防毒マスク。呪殺を防ぐ魔法の腕時計と、セエレの力を感じさせるスニーカー。
玩具みたいなナイフに、トドメにメインの獲物はおっさんですら『性転換』を一瞬考えたほど威力あるらしい『ロイヤルポケット』である。
(やっぱ女ずりーわ。装備充実しすぎだわ)
魔晶変化武器、やっぱり女優遇しすぎだろ。
男専用なんてオレでも扱えるの謎のこん棒*1だぞこん棒。もっと強くなれば色々あるらしいが。
「旭川ではまだ虎2匹殺しただけだから、ほとんど仕事してないよ?」
ポルノの言葉に頷く。まあ、最初はほんの試し打ちだったし、こっからが本番だろう。
「うぬん。期待してるよ!」
というわけで突入する。ちなみにポルノはいつものおんぶ戦法前提でいつものハイレグアーマーである。
一応それ氷結に弱いけどいいのかと聞いたら。
「当たらなければどうということは無いし、攻撃される前に殺せばいい。どうせボスは氷結だけはない」
……まあな。そうだな。お前はそういう奴だよ。
異界の中は、なるほど大分弱い悪魔が多い異界だった。
(おおよそLv20±5ってところか)
人造異界だな。もしかしたら下っ端の訓練場も兼ねてるのか。
いつものヒーホーどもに、氷結使いの鬼女やら邪鬼やら。それと何故か天使。
構成が滅茶苦茶な辺りも、人造異界って感じだ。
……あのファッキン事故死専用の『自爆鳥』まで湧いてるのだけは許せないが。
「キャハハハ!遊ぼ!遊ぼ!」
「モー・ショボーは殺せ!最優先だ!」
言いながらガンガン撃つ。経費削減考えて通常弾だ。パンプキンボムはボスじゃないと勿体ないが、ボスに多分効かない。
なにせあの自爆鳥、複数近寄らせたら『終わる』可能性がある。
……あの脳筋ども!訓練用なら自爆鳥なんて雑魚に配置するなよ!
「なぎはらう」
「ほいほいりょーかい」
まあポルノが掃射して撃ち漏らしをタナが確実に仕留めていく。
流石に本田一家だ。安定感が違う。氷結魔法喰らってもぴんぴんしてるどころか回復するくらいだし。
で、まあ他のは普通に倒せる。苦戦すらしない。
「ヴぉーぱる、ヴぉーぱる」
謎の言葉を呟きながら、ポルノがすごい勢いで薙ぎ払っていく。
にゃん2クロー*2。威力もすごいし複数薙ぎ払えるという例によって例の如く『女専用』の『チート白兵武器』である。
だからあの謎こん棒*3と扱い違いすぎだろ!
ポルノは見た目細い割に覚醒パワーで筋力は『虎』だ。少なくともオレより確実に強い。
その恐るべき素早さも相まって、格下だと一瞬でスライスされる。
……耐久力は見た目通りだからボス戦だと大体オレの後ろに隠れてるが。
「しっかし、雑魚多いな……」
ひとしきり戦闘の動きを確認したところで、思わず愚痴る。
単純に数が多い。面倒だ。ドロップはヒロえもんのお陰で増えてるが。
「あ、じゃあエストマする?」
そんなことを思ってたら、タナに何でもないことのように言われる。
「……できんの?」
「ガンスリンガーってトリガーハッピーに狙い撃ちくらいしか覚える技ないし*4
使えるのはスクカジャ、スクンダ、エストマ、リフトマ、マッパー、テトラジャかな」
おいおいおい、なんだよその補助魔法特化型。
「……ガンスリンガー?」
「この靴履きこなすために多少は鍛えた*5けど、魔力が必要になる魔法一つも使えないから、魔法使いは名乗れないかなあ?」
ポルノの疑問に、当然のように答える。
クソ!?コイツも普通に本田一家だ!?
と言った感じで道中は滅茶苦茶安定した。あのファッキン自爆鳥近寄ってこなくなったし。
*
そしてたどり着いたボス。
……あーうん。そうだね女子高生の怨霊っぽいね。冬の北海道で半そでミニスカセーラー服な上に『裸足』は普通にありえねえけど。
女子高生ってアレ、無名地区の野生児系じゃねえか!?せめて百鬼夜行参考にしろよ!?
……と、ジンなら多分キレてた。結構おしゃれに気を使ってたもんな。
「……あいつらさあ。もっとここが旭川なの考えようや」
「え?普通じゃないの?お父さんもお母さんも割とあれくらいだらけた格好なことあるよ?」
本田一家長女の意見にポルノは首を振っていう。
「覚醒者と一般人一緒にすると色々ダメっておっさん言ってた」
というわけで大分確信した。あのズレ方は明らかに『コンビナート』だ。
多分辺りに潜伏してる。下手に顔見せると一気にハチの巣にされるし、なんならアレも下手するとマシンとかだ。
というわけで、元から呼んでたノーラスに加えて銃撃盾2号ことカマプアアを呼んで作戦タイム。
「「テトラカーンからのカッパスマイル一択」」
「え!?はや!?」
作戦タイム終了。というかもうそれで大体イケると確信した
というわけで作戦決行!
「SUMMON。幻魔ハチダイオウ!」
はい。用意するのは事前にアホほど酒飲ませたハチダイオウ。通称カッパ。
いつもはアホなんだがたっぷり飲ませた酒のお陰で『狡猾』そうな顔をしている。
「……サマナーよ。ワシにどうして欲しい?」
「決まってんだろ?笑顔を、魅せてやれよ」
ーーー心得た。
そう言って突っ込んでいくハチダイオウの背中に、ノーラスが吼える。
ーーーバウ!
そう、テトラカーンである。
「壊滅するまで待とうホトトギス」
ポルノは何が起きても問題ないよう待機。
「と、とりあえずテトラジャ!」
タナは本当に手堅いなあ。
「「「「……ウラー!」」」」
そして思った通り、突っ込んでいったカッパに一斉に銃撃の嵐。まあ。
「「「「うわー!?」」」」
全部反射されるわけだが。
「バカな!?俺たちの作戦がバレてただと!?」
あ、ボスっぽいブラックアドレスが顔見せた。まだ新兵だな。ヤバいブラックアドレスならさっさと逃げるか不意打ち狙って来る。
だが、もう遅い。
「さあ!ワシの笑顔に惚れろ!ドランクスマイル!」
おじいちゃんの笑顔に、突撃兵どもが一斉に魅了される。
ドランクスマイル。それは『飲んだ酒の量に応じて威力が高まる魔力の笑顔』
フルに酒飲ませたカッパの笑顔は、魔力耐性無いと大体何でも魅了するのだ。
「「「「いやーん」」」」
コンビナート連中は見事に全員魅了された。次からすごい勢いでお互い撃ち合ってくれるだろう。同士討ちタイムだ!
「これは!?『無名のおっさん』の得意技の!?」
問題は、おっさんが多用しすぎてブラックアドレスに大体通じないことかな!クソが!
まあ、魔力が通じないってことは他のが通りやすくなったと思おう。
「……っく!?撤退する!」
流石にブラックアドレスは判断が早い。スモーク炊きながら一人逃げた。まあ、しゃあない。
「……迎撃、開始……ガルダイン」
「ふぉおおおおお!?」
聞いたことのない魔法と共にものすごい風がカッパをなぎはらう。あ、大分足に来てるなコレ。次で多分死ぬ。
やっぱロボじゃねーか!と思いつつ、走り出す。
「ブオオオオ!ラクンダァ!」
神獣カマプアアは必殺のラクンダ。同士討ちさせるならこっちのがいい。基本腐らない、いい技だ。
「とりあえず撃っとく」
ポルノの銃撃がロボとコンビナートどもを捕らえる。
普通に当たり、ラクンダのお陰かかなりエグ目に吹っ飛んで中身の機械が見える。
コンビナート共はやっぱり銃撃に耐性あったが、ロボは銃撃耐性ない感じだ。
よかったなタナ。
次のターンからは攻撃なわけだが。
「ワオーン!」
ノーラスがラクカジャ。
「もういっちょバーン」
ポルノはオレを遮蔽代わりにしながら銃撃。削れればそれでいい。
まあ、魔法使えないし、アイテムいる状況でもないからな。
「えい!スクカジャ!」
タナは本当に手堅いなあ。いやマジで。
ガンスリンガーどこ行ったよ?と思わなくはない。
「で、通らばラッキー!」
そう言いながらオレはスクカジャで強化された状態で作り立ての『電光村正』で切りかかる。
魔法ビタイチ使えないし剣術なんて習ってもいねえオレにとっては貴重な属性攻撃だ。
まあ、風攻撃してきたなら電撃には耐性無いと信じよう。
「ガガガガガ!?」
と思ったら寄りにもよって弱点だった。マジか。
ついでに感電までしたぞ!?上振れか!?
「よっしゃあ!カッパ、必殺の『端杯手の突き』だあ!」
すかさず命令!今の性格には合わんが、ちゃんと忠誠度はカンストさせてある!
「任せろぉ!ワシの酔拳がさく裂じゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
端杯手の突き。それは『酒を飲めば飲むほど威力の上がる一撃』
普段からは考えられないほどの火力の拳が、感電して動けないロボを突き上げる!
「「「「ウラー!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
ダメ押しとばかりに発生する乱射乱発同士討ち。
ダメージ蓄積してたコンビナートが全滅し、ロボがボロボロになる。
……まだ生きてやがるぞコイツ!?
「ラクンダァ!」
そして2発目のラクンダ。割とダメ押しな気がする。
……ええまあ。勝った。まさかデカジャデクンダも持ってないとは。
*
「勝った」
「勝ちました」
「いえーい!」
見事にスクラップになったハイタッチをしたところで。
「じゃあ逃げるか」
「だね」
「……え?」
一瞬、タナが驚いた顔をする。
おいおい。合法都市なら常識だぜ?
オレはジンから教わった教えを披露する。
「いいか。ボスのブラックアドレスは、逃げた。すなわち」
「増援が来る可能性がある。逃げる一択」
「ええ……そういうもんなの?」
ほら、日本ではこう言うだろ?『逃げ帰るまでがお仕事』だって。
勝ち誇るなどアホのすること。というわけで。
「ノーラス。魔力続く限りテトラカーン使って走れ」
後ろから撃たれる覚悟は決めて命令してダッシュ。
「魔法で撃たれたら頑張って耐えて」
スクラップの首だけもぎ取ったポルノがノーラスの次にダッシュ。
やっぱいるよなあマカラカーン要員。
テトラカーンはジンが必須だってノーラスに覚えさせたが、マカラカーンは教えてくれなかったのだ。
「あ!?ちょっと!?エストマ!」
それを追いかけつつも、抜け目なくエストマを掛けるタナはなんかこうキラキラしていた。
「っしゃ。逃げるか」
一番遅い代わりに頑丈なオレは殿勤めつつそう思いながら一気に走る。
吹雪く中疾走するオレたちの『初仕事』はこうして見事に成功した。
「お、お帰り。思ったより、早かったね?」
ニコがちょっと引きつった笑みで出迎える。
ちなみに追手は来なかった。
やっぱアイツらも合法都市潰れて多少は消耗しているらしい。やったぜ。
えー、サタスペは基本『滅茶苦茶簡単に』死にます。
これより死ぬのパラノイアくらいです。それか他の冒険企画局ゲー。
システムが全体的に『殺す』方向に特化しています。チンピラの拳銃が『クリティカル』したら一発で『ムービー拳銃になる』レベルです。
攻撃でファンぶったら勝手に自殺が普通に発生します。
……そのため、プレイヤーたちは基本『マンチ』に走ります。死にたくないので。
具体的に、初公式リプレイのPC1が『マンチ』って名前なくらいです。
血戦は出来るだけ一方的に勝てる状況になってからやれ。それが『亜侠』の鉄則です。