Re;Start外伝 合法サマナー   作:ぶらまに

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悪ノリこそがサタスペの華!


合法サマナー07 縁日初日

吹きすさぶ風。明日はちょっと雪が降るらしい。まあこの時期の旭川ならそこそこあり得る天気だ。

テントは設営されていた。雨風防げる大き目の奴だ。入口以外は風も入ってこないので外と比べれば温かい。

 

そして暖房は、ショボ目の充電式の電気ヒーター一つ。まあ防寒具フル装備必須な環境だな。

 

というわけで。

「舐めとんのか!こんなんでアイスとか売れるわけないやん!クソが!合法都市やったら河和家舐め腐った礼に腹マイト巻いた鉄砲玉ぶち込んどるとこや!」

「ど、どうしよう!?い、いっそススキノに行って……その、シズコ可愛いし初物だから『売れる』と思うし」

「網走出れへんとそれすら出来んわボケェ!それに売る言うても収容所の連中なんてみんな地位も名誉も金も失った貧乏人ばかりやないかい!?」

「そ、それはそうだけど……」

ブチ切れるアヤメとさっきから顔真っ白なシズコ。

アヤメ、大分極道部分漏れてるなあ。まあ、それだけ必死ということなんだろう。

 

ちなみに移動はタクシーだった。

金払ってでも『敵』であるニコの車には乗りたくないし、むしろとっとと帰れ死ねって言われて無駄に高笑いしながら帰っていった。

 

それと。

 

「お兄ちゃんも父さんも母さんも、明日明後日は『敵』だから。全力で叩き潰すよ。いいね?」

「アッハイ」

タナがマジギレしていた。流石に許容できないレベルの裏切りに見えたらしい。

それを実の兄がやったというのだから、完全にブチ切れだった。

 

……多分、カラジョルジョに残して置いたら『裏切り者』になると思ったからこその今回の措置なんだろうな。

 

「で、どうする?」

ポルノが確認してくる。今日は戦う気はないので普通にダッフルコート姿だ。下はいつものエロ衣装だけど。

「まあ、普通にコイツらの店の護衛を二日間、地道にこなせば報酬は出るんだろうな。ダードだし」

そこは信頼できる。ダードの依頼を額面通りに取れば、精々暴れた客をそれとなく無力化したり取り押さえるくらいだろう。

 

なにより立地が酷い。向かいのテントのテナントがよりによって『カラジョルジョ』なのだ。

 

ここで銃撃だの傷害沙汰だのの問題を起こしたらまず間違いなく旭川にはいられなくなるだろう。そういう意味でも本当に突っ立ってるだけで終わる。

護衛している店の経営が思わしくないとか、そもそもロクに客が来ないだろうってところを除けば、本当に楽な仕事だ……なので。

 

「つうわけで、百夜堂を成功させるための会議でもやるかあ」

「おっけー」

「だね!」

 

オレたちの宣言に、何故か他の2人が驚いたような顔をしている。

「え……そ、そんなのやってくれるんですか!?」

「アンタら全員、普通に旭川が送り込んできた監視役ちゃうんかい!?」

何を言う。心外な。

 

「オレたちは、アンタらの『店を手伝い』に来た。つまり『店の成功』が、オレたちの成功ってことだ」

「ていうか、二日間、立ってるだけとかヒマ。忙しい方が、たぶん楽しい」

「そっちがどういおうと、明日から、本田一家に全力で吠え面かかせるから、いいね?」

三者三様。だが全員、やるって方向なのは一緒だ。

 

「そ、そっか。そうか……うん」

その様子を見て、シズコは少し悩んだ後、決心したように言う。

 

「百夜堂の看板娘、河和シズコから『正式な依頼』です。百夜堂のテナントを成功させてください!」

「……報酬は?」

「上手く行ったらシズコの『一番大切なもの』を差し上げます!」

興奮に顔を赤くして、そんなことを宣言する。なるほど『家宝の何か』ってところだろう。

百鬼夜行連中は、その手の特殊な一品ものを持ってることが多いからな。

働きぶりで貰えるものが変わるとなれば、頑張らざるを得ない。良い一手だ。

「いいだろう。引き受けた。頼むぜ。シズコ」

「はい!先生!」

オレが承諾を告げると、オレの呼び方が先生に変わった。

「せんせい?」

「はい。百夜堂のお手伝いをしてくれるなら『先生』ですから!」

ポルノの疑問に堂々とシズコは答えた。

 

……まあ、主に考えるのはオレってことなら先生っていやあ先生か。

 

「で、最初に決めることはま「アタシのニックネームだね!」

いやそれ今いる?

そう思ったところで、ずずいっとタナが迫ってくる。

 

「『本田一家のタナ』じゃない。『合法サマナーの一味の一人』としての仇名。クマが考えてよ」

「いきなりだな……そうだな……」

こういうのはフィーリングで決めるべきだ。なので、その顔をよく見て……

 

「ーーーキラキラ?」

 

「はい決定。今度からこっちで働くときは『キラキラ』ね!よろしく!」

顔を見ててなんとなく出てきた名前で仇名が決まった。

いやそんな適当でいいのか。ポルノよりは大分マシだとは思うけど。

 

というわけで、タナ改めキラキラを交えた5人での作戦会議が始まった。

 

 

人手は、日本語学校のから何人か連れてくる予定になってるので、足りている。

まず、メニューの変更はできない。食材は手配済だし、代わりを手配する時間はない。

ヒーターを物理的に増やす?出来なくはないけど、テントでは電気使えないからどの道テント全部あっためるのは無理。

じゃあ火は?お祭りでは火事防止のため、事前申請無しでガスは使用禁止になってる。百夜堂は申請出してない。

ガスコンロでお湯作って熱いお茶出すくらいはする予定だった。

 

「……えーこれ、どうすればいいのか分かんないんだけど」

「つんでる?」

「なんや頼りにならんなあ!?シズコお嬢様が特大の報酬まで出しとるんやさかい、キリキリアイディアだしーな!」

おう、そこのクソ猫、雇い主だと思って調子こくなよ?殺るぞ?

 

「……ですよねー。あはは。先生。なにかアイディアありませんか?」

ちょっと虚ろな目をしたシズコに問われる。無論、ある。

 

「当然ある。つっても最低限だけどな……SUMMON。妖精ジャックランタン」

COMPから取り出したのは、ジャックランタン。すなわち『パンプキンボムの素』である。

「ヒーホー!久しぶりだホ!サマナー!で、そろそろオイラもパンプキンボムになるときが来たホ?」

当然、忠誠度は『カンスト』だ。パンプキンボムにむしろ向こうからなりたがってるレベルだ。

……悪魔的に、本当に慕ったサマナーのためなら、使い捨ての銃弾になるのは普通に『アリ』らしい。悪魔の考えはよくわからん。

「いや、今日はちょっと違う。いつもみたいにこのテントを『いい感じに温める』のって、出来るか?」

「おまかせだホー!マハラギ!」

部屋の天井を炎が舞う。その炎で、部屋の温度が急上昇する……アイスの一つも食べたくなるほどに。

「こ、これは……」

「なんやこれ。コイツ滅茶苦茶凄腕やないかい!?」

その様子に依頼人コンビが驚いているが、普通じゃないのか?

 

「え、なんでこんなことできるの?」

「無名地区ではそこそこ知られたテク。持ち歩けるし、MAGいるけど電気もたきぎもいらないだんぼー。とっても、エコ」

合法都市は暖房無いと普通に冬に凍死するからな。それで死んだ奴ら、無名地区では珍しくなかった。

ジンも寒い夜の寝る前はジャックランタン呼んで部屋をあっためてから寝てたもんだ。

 

「ちょ、ちょいまちい!……やったら!」

それにはっと思いついたらしいアヤメがオンミョージの技で何か召喚する。

それは、今の状況には最適であろう『燃えている火の玉』だった。

「式神の『オニビ』や。戦力としては『アギ撃てる程度の雑魚も雑魚』やが、部屋あっためるんはコイツでも出来る!むしろ素で燃えとるからおるだけでええ!」

なんだよ、あるじゃねーか解決方法。

オレはそっとジャックランタンをしまった。普通にあっちのが『燃費』がいい。

「どうせなら、行灯とか立てて照明っぽくしたらオシャレじゃない?」

「てかそれを火の代わりにすれば、あったかいものも出せるんじゃないか?そうだな。お汁粉とかなら大量に作っておけば」

「それだよ!どうせなら内装も弄れる範囲で奇麗に飾って、あと日本語学校から色々小道具持ってきて……」

それから、色々アイディアを出して、徹夜で準備を行った。突貫工事だ。合法都市なら『ヤクの一つも配られてたレベル』の。

が、旭川では手に入らなかったので、ミナミで買ってきた『マッスルドリンコ』飲みながら頑張った。

 

ーーー教えてやるぜ。本田一家。『合法都市』の流儀って奴をな!

 

 

「ま、まにあった……マジ、きつい」

「文化祭でもここまで頑張らなかったよ……マジきつい」

「……とりあえず午前中は二人とも、休んでていいぞ。どうせヒマだろうし」

ポルノとキラキラは潰れていた。慣れない徹夜での作業に体力を使い果たしたらしい。

体力勝負ならオレに分がある。二人に休んでおくよう言いつつ、オレは一日目を迎えた。

(夕方までなら何とか持つだろう)

二徹は流石にオレでもきつい。今夜はガッツリ休もう。

(しかしマジ衣装だけはどうにかならなかったのか)

そう思いながら、オレは着せられた衣装を見る。

 

ーーー百鬼夜行風の『ミニスカ女学生』な格好を。

 

「クソが!」

思わず吐き捨てる。

 

ことのおこりは、今回の出店で呼ばれてた面子が全員、百鬼夜行の『女子』だったことである。

……ああうん。強面のヤクザだの、逝っちゃってる目をした剣術師だの、表に出せんわ。旭川だとヤバい店だと思われる。

 

というわけで今回の店員は元々の百夜堂のメンツや、躾の出来た名家の女子らしい。見た目はカワイイ。中身はやべえのばっかりである。

獣人とか悪魔人間……角生えてるオニ系列もいる。

他のもオンミョージの技や百鬼夜行名物の『暗殺用拳銃』だの『暗殺用短刀』だの懐に飲んでるようなのばっかりだ。

(まあ、合法都市の出身だもんなコイツら)

今回の責任者のシズコからして、普通に『ショットガン』担いでるし。

 

……ま、まあ撃たなきゃセーフだろ。今、トーキョーで流行ってるコスプレとかそんな感じで誤魔化せる。とダードとニコも言っていた。

(逆に言うと、撃ったら『アウト』なんだろうな)

 

とにかく手が早いし、いきなり殺しに来ることに定評ある『仁義なき百鬼夜行』がそれを出来るか。それも試験の趣旨なんだろう。

 

そう考えたところで、問題である。

 

「……なあ、普通に男用の制服は?」

「持ってきてません!」

「じゃあ裏方に専念するとか」

「ダメです!むしろキラキラさん曰く『接客の主力』です!」

「そもそも、オレは男だぞ!?女用の服が似合うわけがないだろ!?」

「大丈夫!滅茶苦茶似合ってます!正直嫉妬するレベルです!先生素敵です!」

真っ赤な顔したシズコに片っ端から反論を潰される。どうやらオレは接客するしかないらしい。

 

……クソが!?面白ネタ枠振りやがって!?

 

ああそうさ、認めるよ。オレは女顔だ。いくら鍛えても筋肉がつかねえ。

ジンやダードみたいな『男らしさ』が足りてねえのは自分でもわかっていた。

 

「ふっ……まるで昔、トーキョーで見た『カブキ』だな」

「ふふ。お客さんから聞いたことがあるわ。日本では『女装は最も男らしい姿』だと」

「ふふふ……正直侮ってたよ。まさかの『男の娘』スタイルとはね」

 

向いのカラジョルジョこと本田一家もオレの姿見て笑ってやがった。畜生め。

ちなみに向こうの店員は主に『市役所』や『旭川市警』から来てるらしい……華はないが、作業になれた大人だ。ガチすぎるだろ。

 

午前10時になり、お客を入れる時間が来た。

 

カラジョルジョは午前を捨てて余裕の『準備中』だ。12時から開始らしい。既に美味そうな匂いを漂わせてやがる。

ガッツリ『火の使用許可』を取ってる辺り抜け目ない。寒いテントで食う『あっつあつの料理』はさぞ美味かろう。

(年季が違う。そういうことか)

なにせ向こうはこの旭川にガッツリと根を下ろした連中だ。コネだって腐るほどあるだろうし、例年通りの売り上げは確実に取れる。

 

一方のこっちは初参戦の新参だ。目立っていくしかない。

幸い、味は間違いない。なにしろ百夜堂伝統の逸品だ。材料が安く買えたとかで、合法都市時代と比べるとアホほど安くなっていた。

調子に乗って仕入れすぎたので、大量に売れ残ると普通に死ぬらしいが。

「まあ、午前中はこっちも暇だろうし、様子見だな」

そう思い、始まった瞬間。

 

何故かこっちに客が大量にきた。

 

 

「はいはい!こっち金時2つ!それと番茶頂きましたー!」

「お客さん、ちょっと詰めてもらえますか!?すいません。お客様が一杯でして!」

「え?写真?いいですけど、ご注文いただかないと……え!?撮らせてくれるならスペシャル百夜堂セットを!?どうぞどうぞいくらでも!」

「なんや、この尻尾気になるんか?ボン。触ってみるか?……あん♡」

「アヤメ姐さんエロ声出してないで仕事してくださいよ!?……ほらほら!店員さんの尻尾と耳と角のお触りは厳禁!金取りますよ金!

……え?具体的にいくらかって?そうですね……せ、1,000円とか?」

 

なんていうか思った以上に大忙しだった。どうなっているんだ?

 

「すいません。そこのお嬢さん。写真いいですか?」

「あー、すんません。オレ、店員じゃなくてただのバイトなんで。ついでにこんな格好ですが男ですよ」

「なん……だと?まずいぞ。これは『妄想少女』に速攻で連絡を入れないとあとで呪われる奴だ!?」

しょうがないのでオレも適当に接客こなしながら、仕事をこなす。

 

「ほれ。奢ってやるからさっさと帰れ。叩き出されたくなかったらな」

 

テントの片隅をずっと陣取り、ずっとこっちを見てたアホ『2人』に宇治金時を突き出し、帰れと促す。

「な!?俺は客だぞ!?」

「いつまでも注文しねーのは客じゃねーんだよ。さっさと食って帰れこの『ブラックアドレス』が」

軽い弄りでぎくりとしやがった。だからコンビナート連中はダメなんだ。脳筋過ぎて潜伏とか潜入が絶望的に出来ねえ。

格好だけ女子高生風でも普通に分かるんだよ。動きとか、日本の常識に慣れて無さ過ぎて。

 

「あらあら。天龍ちゃんの負けねえ~。本当にごめんなさいね~。まだこっちに慣れてなくて~」

「ば、バカか龍田!?コイツらに名前明かしてんじゃねーよ!?」

 

いや、お前のがバカだよ天龍ちゃん(笑)

 

というかもう一人はだいぶ厄介な奴だな。恰好弄ったら普通に気づくの難しいレベルだ。

潜入任務出来る『ブラックアドレス』とか普通に敵に回したくねえぞ。

「……ま、まあ。くれるってんなら食う。返さねえからな?」

そう言ってガツガツ食ってやがる天龍。まあ普通に『合法都市人』だろうな。

ガチの『旧共産圏ブラックアドレス』なら、もっとこうアホみたいな恰好で来る。

ボロボロの浮浪者風とか、この店で死ぬほど浮くであろうスーツ姿とか。

「ごめんなさいね~。天龍ちゃん、最近ちょっと誰かさんのせいで任務に失敗したせいでお金なくて飢えてて……こう言うときってどうすればいいのかしら~」

さりげなく牽制兼ねた確認が飛んでくる。デモニカ抜きとは言え相手はブラックアドレスが二人だ……まあ『常識レベル』なら教えてやってもいいだろ。

「市役所からバスに乗って、南旭川に行け。そこにジェイルハウスってバーがある。なんか仕事くれっつったら色々紹介してくれるから、出来そうなのやれよ」

「……随分と親切なのね~」

だがそれが龍田の警戒に触れたらしい。まあ分かる。合法都市で『無償の親切』は『基本的には罠』だからな。

まあ、オレだって合法都市なら普通に情報料取ってたが、ここは旭川だ。

「オレたちは『合法的』に生きようとしてんだ。多少の親切くらいはしてやるさ。ロハでな」

ていうかオレもニコにロハで教わったわけだし、こっちが『勝手に漏らした』情報だ。それで金取るわけにもいかねえだろ普通に。

「ふう~ん。じゃあこっちも『勝手に』お返し、払わないとねえ~」

そう言いながらナプキンを取り、ペンでさらさらと何かを書いておく。

「あげるわ~。いらなかったら捨ててね~」

そのナプキンには、どっかのメールアドレスと文言が一つ。

 

ーーー龍田。ガンスリンガー。Lv35……お仕事募集中♡

 

「ま、暇なら時なら『お手伝い』くらいは出来るから~。よろしくね~」

「……ありがとうございます」

俺はそれをポケットに入れ、頭を一つ下げる。

貴重な『ブラックアドレス並の銃の使い手』の連絡先だ。ついでに報酬次第で簡単な仕事を引き受けてくれるらしい。

 

「おい!龍田!食わねえなら貰うけどいいか!?」

「……ぶち殺すわよ~?天龍ちゃん~?」

ちなみにバカはバカのままだった。もうコイツ『バカ』でいいだろ。

 

 

「疲れたぞオイ。帰っていいか」

「ダメ。一度引き受けた仕事は最後までやる。おっさんの教え」

「ふっふっふ。アタシの読み通りだったね。クマ大人気じゃ~ん♪」

昼休憩の時間。オレたちは適当に駄弁りながらメシを食っていた。

場所は向かいの『カラジョルジョ』だ。敵情視察兼ねてる。

 

……普通にキラキラからも金取った辺り今回は『ガチ』なようだ。

 

「……やっぱうめえな」

「うん。いつもより凝ってる気がする」

「毎年、これ目当てにわざわざ札幌とか釧路から来る人までいるらしいからね~」

寒空の下で食う、カラジョルジョの飯は美味かった。

 

豆と野菜のたっぷり入った熱々のスープに、チーズを肉で巻いたフライ串。

定番のフライドポテトに、クソデカい鳥の揚げたやつ。

炊飯器から出した米握っただけのまだ温かいおにぎりとなんか独特の風味がある堅いパンもある。

 

それになにより。

 

「カーナちゃん!ニコラウスセレクトの『大雪ピルスナー』追加で!あとザンギももう一つ」

「すいませ~ん。こっち、ガラナ3つ!あとパンにチーズ肉フライ挟んだバーガーも3つ、それとフライドポテト1皿ください!」

 

あっつあつの食い物にあわせる飲み物。これが本当にでかい。

まだ昼なのにジェイルハウスみが漂う『酒場』のノリだ。どいつもこいつもすげえ勢いで飲んで食ってる。

……てかこれ明らかに合法都市人混ざってるぞコレ。暴れそうになった瞬間に一瞬で制圧されて酔っ払いとしてどっかに運ばれてくけど。

 

寒空の下、あっつあつのつまみで飲むビールは美味いか?……美味いんだろうなあ。オレには分からんが。

「てかビールだけで10種類くらいあんぞ。どうなってんだ?」

「父さんのコネと、お兄ちゃんの舌で選んだ逸品揃えてる上に、原価ギリギリでご提供だってさ。お祭りだから、儲けとか考えてないって」

「……やっぱガチじゃねーか」

「これ毎年やってるってマジ?」

お、思った以上に手ごわいぞ。カラジョルジョが普段から結構、裏じゃない客が来る店なのは知ってたが。

「ていうか旭川の縁日。来る客は大体『これ目当て』って言われてるんだよね。父さん、基本的に『妥協しない』人だから」

キラキラはそう言いつつ、テントの奥を見る。

 

普通にカラジョルジョのエプロンつけて動きやすい格好で肉体労働の雑用に励むダードの姿を。

「あ、あの……室長。その程度は私どもが」

「ふ。老人だと思ってくれるな。これでも体はまだまだ動くつもりだ……だがまあ、無理そうならば同志諸君らに助けを求める。それまでは好きにやらせてくれたまえ。

私もね、たまには愛する妻と共に仕事に励みたいという気持ちもあるんだ……普段は手伝えないからね」

「し、室長……」

……ヤバいぞ!?普通に上役に欲しい奴だ!?明らかに下っ端共が忠誠誓ってるもん!?

 

今回の『敵』のヤバさが本気で分かる一幕だった。

 

 

そして、午後。

「キラキラちゃん!完☆全☆復☆活!」

「午後からは、わたしたちも手伝う、戦力3倍」

百鬼夜行風の制服着たキラキラとポルノが新たに戦力に加わる。うーん、やっぱ素材がいいと違うな。

「やっぱ、ガイジンでも似合う人は似あうんよなあ百鬼夜行服」

「もうちょっとアホの子じゃなかったらフィーナも連れてこれたんだけどね」

アヤメとシズコ的にもポイントが高いらしい。大分盛り上がってる。

まあ普通にポルノもキラキラも素早いから、接客と片付けの効率はあがるはずだ。

 

……どんなに忙しくなっても、対応して見せる!

 

と、思ったら、客数はむしろ減った。ただし。

「キラキラちゃ~ん!こっち向いて!お、お金払う……宇治金時頼むからさあ!」

「いえ~い☆可愛く撮ってね?」

慣れた感じでポーズをとるキラキラ。

「ぽ、ポルノちゃんエロ可愛すぎる!?頭撫でていい?させてくれたらスペシャルセット頼んじゃう!」

「……忙しいので10秒。ほら、撫でれ。10,9……」

頭だのお腹だのの健全な場所お触りされつつ次々と高額注文を取るポルノ。

 

一人当たりが落とす金がヤバくなった。どうなってんだコレ?

「ここに角と尻尾とネコミミお触り1,000円のお店があると聞いて」

「札幌組は明日には来るらしい」

「東京と大阪からも何人か来るって言ってる!予約できるホテル教えてくれって!」

なんか明らかに合法都市人とも日本人とも違う変な連中が集まりだしたぞ。どうなってんだコレ?

 

「……父さん、アレ。風営法的にどうなの?」

「……祭りは無礼講だ。この程度の些細な違反でうるさく言うようではヒルトリア人ではないし、そもそも合法都市の人間にそんな理屈が通じると思うか?」

「無理だね……うわあ。キリギリスでスレ立ってる。旭川の縁日ヤバいって。ヤバさは絶対に札幌ほどじゃないのに」

「ダード……このままでは『負け』かねないわよ?ここ10年縁日の売り上げでは『無敗』だったカラジョルジョは」

「そうだな……いささか勝ちすぎて進化を怠っていたとは……まるでヒルトリアだな」

 

向かい側の本田一家の判定ではセーフ。合法らしい。法律そこまで詳しくないけど。

 

それと一番の問題は。

 

「クマきゅんカワイイ。可愛いよ」

「はあ~。まさかこんなシケた街でガチの男の娘見られるとか思わないじゃない」

「クソ!?課金限界が低すぎる!?設定ミスでしょ!?もっと貢がせてよぉ!?」

「すいません。ドンペリとかないんです?あ、無い……おかしい。明らかに安すぎる」

変な連中(女)にオレが囲まれてることである。

クソ!?珍獣か!?珍獣扱いか!?

 

「同志オータムクラウド。どう思う」

「同志ポポルスキー。控えめに言ってパーフェクトだ」

 

ていうかこっち見ながら延々絵を描いてる明らかにオレたちより高レベルな雰囲気漂わせてるアイツらなんなんだよ。

10分おきに追加でお汁粉注文してすごい勢いで糖分補給とか言って一瞬で飲み干すから迷惑客として追い出すことも出来ねえ。

 

ーーー本日の縁日は終了いたします。明日も開催いたしますので、皆様お誘いあわせの上、ご来場ください。

 

そんなこんなで、夜7時を迎えて混迷のうちに1日目は終わった。残り1日。

 

 

その日の夜は、急遽、シズコたちの泊ってる旅館でお世話になることになった。

着替えと荷物取りに行ったキラキラ曰く『あのヒルトリア人ども、作戦会議するから敵は入れられない』んだそうだ。

(やっぱりガチだなヒルトリア人)

まあ、ニコからの説明からしてヒルトリア人は『旧共産圏。つまり大体コンビナート』だということだから、そうもなるか。

「つかれたね……」

「だな」

温泉に浸かり、タオルだけ巻いたポルノとだらけて話をする。

ここ、混浴OKらしいので、普通に二人で入っている。身体はちゃんと洗ってから入った。

「……で、今日は抱くの?」

「いや、無理。明日もあるし寝かせてくれ」

うん。わかってる。徹夜で無理してる今、ここで体力消耗するわけにもいかないし、明日までは『お預け』だ。大分溜まってはいるけど。

……辞めろ。そんな期待と落胆が混じった目で見るな。我慢できなくなっちまう……

 

グッと耐えたところで、バーンと風呂場が開いた。

「一緒に入ろ!クマ!」

なんということでしょう。そこにはタオルだけ巻いたキラキラが!?

「……キラキラ?」

「なんでいる?」

いきなりの登場にビビる。てかあけっぴろげ過ぎない?

「え?お風呂位一緒でもいいじゃん?」

そんな俺たちをものともせず、キラキラはオレの隣に座る。

……ポルノにはないおっぱいが当たってやがる。普通に誘われてんなこれは。

「……キラキラなら、いいよ?」

「あ。はい」

ですよねー。これで察せない奴いるわけねえだろ。

 

「ーーーキラキラなら、ね?」

 

そう言った瞬間、脱衣所の方から逃げていく音が二人分。まあシズコとアヤメだろうな。

百鬼夜行の連中は身持ちは堅いが惚れっぽいことでも有名だし。

 

「うーん。分からん。オレのどこが良いんだろう?」

 

筋肉もうっすらとしかつかねえし、顔も女っぽい。合法都市では金持ちの変態とか、脳みそ壊れてるやべえ奴以外には受けない顔だった。未だにオレには分からん。




大体原作再現の結果です!2周目だとチート性能でハルウリ出来るのよねクマ。
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