うっせえ!俺は死にたくねえよ! 作:二次創作用
「門さんこれ幾ら?」
「お、お目が高いねこれは─────」
いつも通り賑わう市。江戸時代と言われても違和感を感じない風景。そこらの丁稚や小僧が声を上げる。女は目を輝かせる。活気で溢れたその場所にひっそりと佇む店。『よろづ』と書かれたその看板は周りの活気には少し場違いだった。
その店に居たのは店主と思われる男と平民に見える女。
店主は体全体を覆うような渦巻き柄の黒い羽織に眼帯を身に付けていた。もう片方は死んだような目をしており隈が少々目立つ。草臥れた印章が特徴的な男だった。
「そう、じゃあこれ貰ってくわね」
「おー、毎度ぉ。それじゃ、オマケにこれも」
「え?………良いのかい?毎回思うんだけどこんなに上等な物……」
渡されたのは光沢を放つ飴玉。この景色にはそぐわないように思われるそれは高価で貴重。それを当たり前のように差し出す男は笑顔で首を降る。
「良いんだよ。いつも買ってくれるお礼さ。その代わりにさ、秘密に頼むよ?」
「分かってるよ。私もあまり賑わってもらってこれが貰えなくなるのも嫌だからね」
「商売上がったりってな、はっはっはっ」
「ふふ、自業自得ね」
それから少しして女は上機嫌で出ていき、一人男は息をついた。
「ま、確かにこの世界じゃ高価かもな」
男は中断していた作業を再開する。机に広がった布や破片は何かのパーツの様に見えるが精確には分からない。しかし男には何が見えているのか次々に組上がっていく。
出来たのはどうやら髪飾り。紐に吉祥結びと少しの飾りがつき青を基調とした綺麗な代物だった。
「……よし、終わり~」
男が座敷に寝転がると羽織がずれて彼の一本しかない足があらわになる。健在の右足と膝から下がない左足。隻眼隻脚。しかしある程度鍛えられた体ではある。明らかに何かがあったと思われる風貌だがそれを知るものはこの場に居ない。
「あー、そういえば野菜ってそろそろ不味いかも」
一本足で器用に飛び上がり立つと、横に立て掛けてあった松葉杖で移動する。店の中には髪飾りから生活の品。食べ物や農具など様々な物が商品として並べられている。
「んーこれとこれはそろそろ怖いな。今日の夕飯にでも……」
店の外からする足音が一つ止まった。どうやらこの店に用があるらしい。
「店主、やっているか?」
「おや、あなたは……」
現れたのはこの世の物とは思えない美貌を持った女性。腰まで届いた白い長髪に藍色のメッシュ。青を基調とした上下一体の服を身に付け、頭には五重の塔の最上階を模したような青い帽子に赤いリボン。
「今日はどうされましたか慧音さん」
「生徒達の教材の作成を依頼したくてな……」
寺子屋の教師上白沢慧音はいつも通り格安で制作を頼めるこの店に足を運んだのだ。
町の代表とも言える程町人達から信頼を得ている彼女。ならばどうしてこんな地味な店に足を運んだのか。
それは一重にこの店の便利さだろう。早く安く作る。自分で作るよりも遥かに楽で安上がりなこの店。不思議な物を売っているのも相まって、たまには足を運ぶ価値があった。
「ああ、成る程。それで今回はどのような?」
「去年貰った服の作り方せっとという奴だ」
「あれですね。分かりました。少々お待ち下さい」
店主は店の奥へと向かい直ぐに何かを持って出てきた。
「これですよね。今回はどれだけ用意します?」
「すまないが……20程頼めるか?」
「ええ勿論。20程でしたら直ぐに出来ますので少々待って貰えますか?急用があるようなら明日受け取りに来て下さい」
「直ぐに?……いや、ここで待たせて貰うよ」
店主はまた奥へ向かい、半刻経たない程度でまた出てきた。今度は大量の荷物を持って。
「出来ましたので御確認下さい」
「おお、相変わらずの速さだな。それで代金は」
「いえ、要らないですから」
「いや、そういう訳には」
「寺子屋の教材は無料にすると決めているんです。子供達に教育をするのに金銭をあまり発生させたくないですから」
「だからといってここまでの物を貰っては申し訳が」
「いえいえ、慧音さんにはいつもこの店を秘密にして貰っていますから。そのお礼も兼ねているんですよ」
「………そうか。ならこれを買わせて貰おう。ほら代金だ。文句はないな?」
出されたのは黒色の髪飾り。少し飾りにしては地味なタイプの物だった。
「………それでしたらこっちの方が良いでしょう。値段も安いですし、色もお似合いですよ」
一方店主が差し出したのは先程完成させた青色の髪飾り。確かに色としてはこちらの方が似合うのだろう。
「心配しなくても大丈夫ですよ。いつだって当店は黒字ですから」
「む、そうか。ならこっちを買わせて貰うとしよう。あまり言いすぎるのも悪いから今日はこの辺で。それではまたな、店主」
「ええ、またのご来店をお待ちしております」
ここは幻想郷。忘れ去られた者達の楽園。異形ひしめく人外魔境の日常は残酷で少し平和だ。
***
「まあまあ美味いな」
いつものように飯をかきこんで、誰も居ない店を眺める。ある程度整えてはいるがぐちゃぐちゃだ。
「たまには散歩でもするかな」
歩かなくては鈍ってしまう。この店にいるだけではノイローゼで死んでしまうだろう。外の空気を吸って眺める。俺の好きな行為だ。年をとってから出来た趣味じゃなくて若い頃からってのが終ってる気がする。
「明日は休みだな」
店の戸を閉めて休業日の貼り紙を貼っておく。こんな深夜から人里の外に繰り出すんだ。帰ってくるのは少し遅くなる。
この時間に人が彷徨くこともないだろうからな。松葉杖を家に置いていく。
「光塵脚」
光が放たれ左足に収束する。俺のオリジナル鬼道だ。穏やかな光を纏った義足となり自然な形で進んでいく。足首らへんも動かせるし便利だ。
「今日はどこへ行こうかな。ま、てきとうにぶらつくか」
軽い足取りで森へ進み、湖を横切る。どこまで行っても神秘的な風景が広がる楽園だ。自然が好きならここへ一度は訪れたいだろう。
「む、敵の気配」
幻想郷は化け物が大量だ。外の世界みたいにビルとか住宅街ばっかで安全とはいかない。
「久しぶりに行こうか相棒」
虚空から刀を呼び出して振るう。襲いかかってきたのは低級妖怪。野犬にも狼にも見えるが毒を持っている危険な相手だ。一刀の元に切りふせて進む。
「いや、そんな文句言わないでくれよ。こいつら相手に始解なんて贅沢だろ?いつも手入れはしてるんだし勘弁してくれ。おっさんにはもう厳しいのよ」
相棒の斬魄刀と会話をしつつ更に進む。この世界に尸魂界は存在するのか分からないが霊力はある。博麗の物と同一ではないが、似てはいる。元となるのが同じだからだろうな。
「しゃねえなあ。分かったよ。少しだけな。もうちょっと奥に行けば気付かれないだろうからな」
全く面倒なものだ。だけどこいつには何度も助けられてきた。蔑ろには出来ないよな。
「いやいや、本当に感謝してるんだよ。これだけの世界で生き残れたのはお前のお陰だ。二つ目の世界もお前がいなかったら初手で詰んでただろ?」
幾つもの世界を渡ってきたからこそこいつとの絆は硬い。最初の世界で出会えたのがこいつで本当に良かったと思っている。
「ここらへんでいいかな。ふぅー、やりますかあ」
『一身を賭せ《灰楼》』
不気味な森が一気に塗り替えられ灰色に染まる。ただ大量の灰が舞う。風に揺られ、散っていく。斬魄刀に変化はなく、ただ何処からか灰が出るだけ。
「葬儀には丁度良いんだけどねえ」
使いようによっては綺麗だけどこの場じゃ異質すぎる。お世辞にも綺麗とは言えないし使い道が少ないよなこれ。まあ、前は掌サイズの灰しか出せなかったのにここまで出せるようになったんだし、成長っちゃ成長か。
「はいはい悪かったよ。でも仕方ないだろ。俺は綺麗なモンの方が好きなの。ま、この灰色は俺にはお似合いだけどねえ」
本当に趣味が悪いよな。自分で自分を皮肉ってる。
「じゃ、今日は山の方まで行くか。あー、いや香霖堂に行こう。久しぶりに顔が見たい」
今日はなんだか気分が良い。朝にはあちらにつけるだろうし、お土産なんかも持っていきたいな。そうすると一回家に帰る必要もあるな。
面倒だが、まあ仕方ないか。人が出てくる前に帰ろう。………久々に空でも飛ぶか。そうでもしないと松葉杖が無いことがバレる。
「……よっと。おお、これこれ。この感覚よ」
気特有の空を飛ぶ時のこの浮遊感。ベジータは元気かなあ。流石にもう死んでるか。
朝前には里を出て魔法の森の前まで歩いた。風が気持ちいい昼下がり、俺は無事香霖堂に辿り着いていた。
…………一応ノックはしとくか。
コンコンコンッ
「開いてるよ」
間髪いれずに聞こえてくる男の声。この店の主だ。
「邪魔するよ森近さん。いやあ今日は無縁塚の方じゃなくて良かった」
「何だ君か。ノックなんて殊勝なことをするのは大体面倒事の場合なんだけどね。君なら安心だ。久し振りだね
眼鏡をかけた男。東方プロジェクトにおいて非常に珍しい男性キャラクター。香霖堂の店主、森近霖之助がそこにいた。
勢いで書きました。たぶん恋愛が無いです。クロスオーバーとかなってますが出てくるのは技だけです。申し訳ねえ。