岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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この世で一番強いもの〜⑤

 

 

 

 岸部ロハンがトリニティ総合学園で調査している頃

 

 Side鬼方カヨコ

 

 岸部との会話を終えてショッピングモールに向う3人を追いかける。明らかに岸部の様子はおかしかったけど……どうしたんだろう。

 

「カヨコどうしたの?」

 

「ちょっと岸部に忘れ物届けに行ってた」

 

「ロハンさんって結構おっちょこちょいよね」

 

「ロハンちゃん大丈夫かなー?」

 

「ロハンさんトリニティに知り合いがいるらしいわよ」

 

「人脈広いねー」

 

 岸部なら、意外と上手くやってそう

 

「あの、岸部さんってどんな人ですか?」

 

 そう女の子が私達に聞いてくる

 

「うーん?」

 

「いざ聞かれると難しいね」

 

「ここはビシッとアルちゃん! 一言で!」

 

「えぇ!? うーん……自由な人?」

 

「自由……」

 

 確かに岸部は凄い自由人かもしれない。好奇心が抑えられなくてすぐにどっか行っちゃうし。

 

「岸部さんってどうして絵を描くんでしょうか?」

 

「あ〜確かにすっごい熱意だもんね」

 

「聞いた事ないわね……」

 

「こう、初恋の人との約束とか!」

 

 ムツキが目を輝かせながらそんな事を言う。初恋……あの岸部が? 

 多分それは無いと思う。単純に

 

「絵が好きだからじゃない?」

 

「くふふ、それが一番ロハンちゃんっぽいか〜」

 

「好きだから……」

 

 そんな会話を続けながら私達はショッピングモールに到着した。

 

「暖かい〜」

 

「そうだね」

 

「さあ、〇〇ちゃんお花を見に行きましょ」

 

「うん、ムツキお姉ちゃん一緒に選んで欲しいな」

 

「任せて!」

 

 ムツキ凄い嬉しそう。私達は早速花屋に向かった。

 

「中々見つかんないね〜」

 

「これ綺麗じゃないかしら?」

 

「確かに綺麗ですけど……」

 

「ピンとこない感じ?」

 

「はい、すみません」

 

 どういう花が良いんだろう? 

 

「何かお探しでしょうか?」

 

 私達が頭を抱えていると店員さんが話しかけてくれた。

 

「お礼の花を探しているんですけど……中々しっくりこないみたいで……」

 

「なるほど……でしたら造花なんかいかがでしょうか?」

 

「造花……?」

 

「はい、色等を変更することも可能ですし安価で手入れも必要ないのでかなりおすすめですね」

 

「どうする? 〇〇ちゃん」

 

「それって白色ってありますか?」

 

「ええ、ありますよ」

 

「じゃあ……それにします!」

 

「では、少々お待ち下さい」

 

「良かったね、〇〇ちゃん」

 

「はい!」

 

 花も用意したし、後は岸部の調査結果が判明するのを待つだけ……

 

「ねぇ、社長」

 

「どうしたの?」

 

「岸部から何か連絡きた?」

 

「えーと、まだ何も来てないわ」

 

「そっか」

 

「カヨコちゃん心配し過ぎじゃない?」

 

「いや、そんな事ないよ」

 

 心配をしてないって言ったら嘘になる。あの岸部の様子がどうにも頭に残っている。

 

「あ! 来たわ!」

 

「なんてきたの?」

 

「ここに来いって」

 

 そう社長が見せてきたスマホの画面には地図アプリの座標が

 

「もしかしたら、ロハンちゃん本人に会えたのかも!」

 

「流石ロハンさんね!」

 

「行こっ! 〇〇ちゃん!」

 

「うんっ!」

 

 3人がはしゃぎだす。どうしても嫌な予感が拭えない。

 

「どうしたの? カヨコちゃん」

 

「いや……やっぱり大丈夫」

 

「そう?」

 

「早く行きましょ!」

 

 私達は位置情報へ向った。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 Side岸部ロハン

 

 とある場所に電話をかけ、4人を呼び出してしばらく待つ。ここはトリニティ総合学園から少し離れた山の麓、現在紅葉がとても綺麗だ。

 

「…大丈夫ですかね」

 

 阿慈谷が不安そうに聞いてくる

 

「大丈夫さ、彼女ならきっと乗り越えられるよ」

 

「それでも……こんなのって……」

 

「彼女は知る覚悟を決めていた。なら、僕は真実を伝えなければいけないんだ」

 

 沈黙が場を支配する。今は秋風の寒さがとても恨めしい。すると車の甲高い走行音が耳に入ってくる。

 

「あれ……凄いドリフト決めてません?」

 

「ああ、見事だな」

 

 僕たちの目に映ったのは4回転程ターンして止まった車。タイヤから摩擦で焦げ臭いがしてきている。僕と阿慈谷は一応誰が降りてくるのか警戒していると

 

「生きてるー! 助かったー!」

 

 浅黄と少女が解放された様な顔で中から飛び出してきた。

 

「社長……ホントに免許持ってるんだよね?」

 

「ちょっとカッコつけたくなっちゃって……」

 

 顔を真っ青にした陸八魔と青筋を立てた鬼方が降りてきた。

 

「ロハンちゃんー!」

 

 浅黄達が駆け寄ってきた。遭難3日目に人と出会った僕みたいな顔しているな。

 

「ロハンちゃん免許持ってるよね!?」

 

「うん? 持っているが……」

 

「帰りの運転! やって! お願い!」

 

「お願いします!」

 

「ちょっと! 酷かったの最後だけじゃないのよ!」

 

「その前にも色々ヒヤッとする場面あったよ」

 

「うっ……」

 

 陸八魔が撃沈された様だ 

 

「陸八魔、運転お疲れ様」

 

「あはは、凄い……個性的な人達ですね」

 

「その子が知り合いの?」

 

「ああ、僕の知人の阿慈谷だ」

 

「阿慈谷ヒフミです、よろしくお願いします」

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 Side少女

 

 自己紹介が済んだ私は岸部さんに

 

「岸部さん、お姉ちゃん……見つかったんですか?」

 

「……ああ」

 

 やっぱり岸部さんは凄い

 

「早速行こうよ!」

 

「ええ、そうね……案内してもらえる?」

 

 そう、アルさんとムツキお姉ちゃんが言うと岸部さんは振り返って歩き始めた

 

「こっちだ」

 

 岸部さんとヒフミさんの後ろをついていく。普段人が歩かないからか整備されてるとはいえ、少し歩きづらい、どうしてお姉ちゃんはこんな山奥にいるんだろう……そう思った私は岸部さんに質問した

 

「彼女の両親がこの山なら彼女の好きなトリニティの景色が一望できるからって事らしいな」

 

 そうなんだ……すっごい優しい両親だ。というか岸部さんお姉ちゃんの親まで調べてるの凄いや。でも流石にこんな山の中だと不便じゃないかな……お姉ちゃんどうやって生活してるんだろう? 

 

 私はサバイバルしてるお姉ちゃんを想像した。

 

 意外に様になってそうだ。笑いながら薪を割ってるのかなぁ……そう思うと早く会いたくなってしまう。しばらく歩いていると

 

「そろそろだ」

 

 岸部さんがそう言う。やっとだ……やっとお礼を伝えられる。それにまた一緒に遊びたい……手を繋ぎたい。暖かいだろうなぁ……

 

 開けた場所に出た。そこには赤が広がっている……これって……彼岸花……? ポツンと中心に長方形の石がポツンと置かれている。

 

「え?」

 

 誰かがそんな声を漏らした。アルさんかもしれないしカヨコさんかもしれないムツキお姉ちゃんかな。 

 

「ねぇ……ロハンさんこれって……!」

 

「ここで待ち合わせって事ですよね?」

 

 お姉ちゃん山登りで疲れて遅れてるのかもしれない。

 

「……」

 

 岸部さんは黙って首を振る。そしてあの石を見ながら

 

「あそこで眠っているよ」

 

 何故かみんなが悲痛な顔をして私を見てくる。どうしてだろう? だってこれは

 

「冗談ですよね?」

 

「僕が……こんな冗談言うと思うか」

 

「だってお姉ちゃんと約束したんですもん」

 

 そう、約束したんだ。

 

 洗濯をできるようになる。

 

 挨拶をしっかりとする。

 

 友達と仲良くする。

 

 絵を見せる。

 

 また明日遊ぶって…

 

 お姉ちゃんが約束を破るわけ無い。そんな事するわけが無い。

 

「だからこれは、に―」

 

「おい、それ以上口を開くんじゃあない」

 

 岸部さんが私の胸倉を掴む

 

「ロハン(ちゃん)(さん)!」

 

 3人が止めようとしてるけどカヨコさんがそれを制してる。

 

「だって……お姉ちゃんは―」

 

「なあ、僕は親切で言ってやってるんだぜ」

 

「……っ」

 

「真実から目を逸らすんじゃあないッ!」

 

 だって……だって……やっと会えたと思えたのに……! 

 

「寂しいよぉ……お姉ちゃん……」

 

 その言葉が私の口から零れた瞬間岸部さんは手を離した。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「寂しいよぉ……お姉ちゃん……」

 

 そんな言葉を聞いた瞬間僕の手から力が抜ける。少女はその言葉を皮切りに泣き崩れてしまった。少女が手に持っていた造花が転がる。僕はそれを拾い少女を眺めることしか出来なかった。

 

「しばらく……1人にしてあげましょう」

 

 陸八魔のそんな声を聞いて僕達はその場から少し離れた。重い沈黙の中

 

「ねぇ、ロハンちゃん」

 

 浅黄から声を掛けられる

 

「もっと……伝え方あったんじゃない?」

 

「いや、僕はこれが最善だと判断した」

 

「あんなに悲しませて最善……?」

 

「ああ、そうだ」

 

 少女のお姉ちゃんへの依存具合を見る限りここに連れてくるのが一番良いだろうからな。そんな事を浅黄に伝える。

 

「そうかもしれないけどさ! こんな荒療治みたいな……」

 

「彼女は知る覚悟があると僕に言った」

 

「……うん」

 

「なら、それに答えるのが僕にできる唯一の事だ」

 

「あ、あの……今この場で言うのも違うと思うんですけど……」

 

 阿慈谷が気まずそうに前置きをする

 

「とある噂があって……」

 

 阿慈谷が言うに噂とは深夜トリニティ郊外の廃墟の中にある泉に5円玉を投げ入れて願うと会いたかった人に合わせてくれるというものだった。

 

「だから……もしかしたら……」

 

「あの子のお姉さんを連れてきてもらうってこと?」

 

 そんな事可能なのか? 

 

「噂が本当ならそれも可能かなって……」

 

「ねぇアルちゃん行こうよ! そこ!」

 

「うーん……」

 

「僕は反対だ」

 

「どうして?」

 

「仮にその噂が間違いだった場合彼女が無駄に傷つくだけだからな」

 

「それは……そうだけど……」

 

「でも……1%でも可能性があるなら……私、会わせてあげたい!」

 

 浅黄の気持ちも理解できるが……僕が悩んでいると後ろから

 

「お願いしますっ!」

 

 少女の声が聞こえてきた

 

「うーん…よし! 行きましょロハンさん!」

 

「おいおい、マジか?」

 

「確かにここに連れてきた時点で依頼は完了したわ。でも折角だったら100%やれる事やってあげたいと思うの」

 

「でもなぁ、彼女を深夜連れ出したら施設の人心配するぜ、それにどんな理由で連れ出そうって言うんだ、バカ正直に言っても許可くれないだろ?」

 

「嘘を吐くわ」

 

「乗った」

 

 

 

 




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