岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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感想、評価、アドバイスその他諸々大変ありがとうございます。


この世で一番強いもの〜⑥

 

 

 車のエンジン音と寝息が静かな車内に響く

 

「ふわぁ……」

 

「流石に眠いか浅黄」

 

 現在僕は浅黄と少女と阿慈谷と一緒にトリニティ郊外の廃墟の前に来ている。

 

 

「逆にどうしてロハンちゃんは平気なの?」

 

「慣れてるからな」

 

「ふーん、後1時間かぁ……」

 

「寝ればいいじゃあないか」

 

「私寝ちゃったらロハンちゃん寂しくなっちゃうじゃん〜」

 

「面白い冗談だな」

 

 そんな会話をしながら噂の時刻を待つ

 

「アルちゃん達寝ちゃったかな?」

 

「さあな、ぐっすり夢の中じゃあないか?」

 

「でもまさか、依頼が来るとはねー」

 

「名前が広がって来てるって事じゃあないか」

 

 明日の分の依頼があるので流石にそちらを蔑ろにするわけにはいかないって事で陸八魔と鬼方にはしっかりと睡眠をとって貰うことにしたんだ。

 

「阿慈谷寝る時ぬいぐるみ抱いてるんだな」

 

「様になるね〜」

 

「ああ、そうだな」

 

「絵になるって言ったら、あの時のじゃんけんもそうじゃない?」

 

 何故僕達がじゃんけんをすることになったのかそれは半日前まで遡る。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「嘘を吐くわ」

 

 陸八魔がニヤリと笑う。こういう時の陸八魔のカリスマ感、是非とも僕にご教示していただきたいものだ

 

「乗った」

 

「決まりね!」

 

「でも……一体どうやって連れ出すんですか?」

 

 阿慈谷が首を傾げながら訊ねる

 

「それは……嘘を吐いて?」

 

「どんな嘘ですか? ……深夜に小さい子を連れ出すのって……かなり難しいと思うんですけど……」

 

 そんな阿慈谷の言葉に陸八魔は顔色を青、白、赤といったふうに変えていき吹っ切れたように少女の肩を掴み

 

「どうやってこの娘を連れ出すのか! 案ある人!?」

 

 そんな陸八魔の言葉ににポカーンとする2人

 

「おいおいおい、君ぃ…考え無しにあんな事言ったのかい?」

 

「はぁ……まあ、社長のことだから薄々わかってたけど……」

 

「くふふ、アルちゃんらしいね~」

 

「だって! 会わせてあげたいじゃない!」

 

「アルさん……ありがとうございます……」

 

 少女は陸八魔のストレートな言葉が胸に来たらしくちょっと涙目だ。

 

「……あの」

 

「どうした? 阿慈谷」

 

「友達のお家にお泊りするからというのはどうでしょうか?」 

 

 なるほど……確かにそれなら違和感無く少女は深夜施設に居なくても良くなる。

 

「お手柄だ阿慈谷」

 

「でもさ、お泊りって言っても年齢離れすぎてて怪しくない?」

 

 確かに、高校生の集団に混じって小学生がお泊りするってのは違和感があり過ぎる。僕達が頭を抱えていると

 

「くふふ、良いこと思いついちゃった!」

 

「へぇ、聞かせてくれるかい?」

 

「電話だよ! 電話! 電話越しなら年齢バレないと思うし!」

 

 なるほど確かにそうだ。それで友人の母親だと言えば誤魔化せそうではあるな。

 

「なら、スマホからじゃあなくて固定電話からの方が良いんじゃあないか?」

 

「そうだね、その方が友人の家に泊まる感が出るもんね」

 

「それなら、事務所の電話使おうよ!」

 

「早速、いきましょう!」

 

「ちょっと待て」

 

 陸八魔達を制止する。確かにこの作戦の成功率は高い。しかし肝心な点を1つ見逃している。僕は少女と目を合わせ

 

「君、家に泊まる様な仲の良い『友達』いるのかい?」

 

「ちょっロハンさん!」

 

「あのさ、ロハンちゃん……それって聞く必要あるの?」 

 

 浅黄の声が低くなる

 

「ああ、この作戦を成功させるのに一番重要な所だ」

 

 そう、今まで友達の居なかった人間が急にお泊まりするとなると施設の人が違和感を持つだろう。僕は涙目の少女と見つめ合う

 

「岸部さん、馬鹿にしてるんですか?」

 

 少女から圧が発生する

 

「え、〇〇ちゃん?」

 

「この私に……『友達』が居ないって言ってるんですか……?」

 

「質問に質問で返すのは良くないぜ、いるのかいないのかハッキリと答えて貰おうじゃあないか」

 

「確かに、私お姉ちゃんと会う前はそんな友達いませんでしたよ! でもお姉ちゃんから半分勇気を貰って……『友達』と呼べる人達と出会いました」

 

「つまり?」

 

「いますよ! お姉ちゃんのお陰で!」

 

「そうか」

 

 噂が本当なら少女の成長も見せることができそうだな

 

「ねえ、ロハンちゃん」

 

「うん? どうした浅黄」

 

「後でちょっと話そうね」

 

 一体何を話すのかは知らないが、適当に躱すとしようじゃあないか。

 

 そうして僕達は事務所へと戻り電話をすることにした。

 

 事務所に着いて早々浅黄が火種を落とした。

 

「お母さん役はアルちゃんで良いとして子供役誰にしようね?」

 

「え? 普通にムツキがやるんじゃないの?」

 

「それだとつまらなくない?」

 

「あはは……岸部さんよろしくお願いします」

 

「おいおい、1番駄目だろ僕は」

 

「ちょっと待って! なんで誰も私のお母さん役に触れないの!?」

 

 いや、だって……なあ? 

 

「ピッタリ過ぎて違和感無かったから……」

 

「えぇ~!?」

 

 このままじゃあ埒が明かない為

 

「とりあえず、じゃんけんってのは……どうかな?」

 

 僕はそう提案した

 

 

「4人で一斉にやって負けた人が子供役ね!」

 

「絶対に……勝ちますっ!」

 

「負けられないね……」

 

 3人共気合十分って所だな

 

 

「「「「最初はグー! ジャンケン!」」」」

 

 ここで勝てば傍観者への切符を掴むことができる! 

 

「「「「ポン!」」」」

 

 

 浅黄は……パー、阿慈谷も……パー、鬼方は……グー、そして僕もグー

 

「やったー!」

 

「良かった……」

 

 

 勝者の声がやけに大きく聞こえる。おそらく、今僕と鬼方の心は一致しているだろう。

 

((このままだと不味い!))

 

 

「くふふ、2人共次にいこうよ」

 

「ああ、わかっている」

 

「わかってるよ」

 

「掛け声は僕らでやっても良いんだろ?」

 

「うーん、まあ良いよ!」

 

 息を深く吐く。鬼方には悪いが『ズル』させてもらおう

 

「よし、行くぞ」

 

「来なよ、岸部」

 

「「最初は!」」

 

 ここだ! 

 

「「パー!」」

 

 な、なにィ!? 

 

「岸部、甘いよ」

 

「読んでいたのか……鬼方っ……」

 

「さあね」

 

 鬼方が不敵に笑う

 

「カヨコさん、かっこいい〜!」

 

「読めてたならチョキ出せば良かったんじゃ無いかしら?」

 

 陸八魔のそんな言葉に鬼方が固まる。

 

「おいおい、僕に情けをくれたってことかい?」

 

「……うん、そういう事」

 

「2人共早くしないと日が暮れちゃうよ〜」

 

「「わかってる!」」

 

 小細工が通用する相手では無かった様だ、僕はハッキリ言って鬼方を舐めていた、自惚れていたんだ。今、その全てを捨る……

 

「準備は良いかい?」

 

「もちろん」

 

「「アイコで!」」

 

 頼む! 

 

「「ショッ!」」

 

 

 場が沈黙に包まれる……ありがとう……僕の直感。

 

 

「おお……!」

 

「ロハンさんの勝ちね」

 

 鬼方……チョキ、岸部……グー

 

「勝者! ロハンちゃ―」

 

 浅黄が勝者を宣言しようとした瞬間『それ』は起こった。突如、鬼方のチョキが僕のグーを挟み込んだのだ。

 

「おい、鬼方っ……何を!?」

 

 僕の質問に答えず彼女は指に力を入れ始めた

 

「ぐっ……う、うおぉぉ!」

 

 ま、まずいっこのままでは……! 何とか何とかしなければ……

 だが残酷にも鬼方の力には勝てずに僕のグーは開かれてしまった。

 

「よし……これで私の勝ちだよね」

 

「え、えーとまあ……そうかな」

 

「勝者! カヨコちゃ―」

 

「ちょっと待ってくれないか」

 

「え? どうしたのロハンちゃん」

 

「どうして、僕の負けなんだい?」

 

「え、だって」 

 

「岸部の手はパー私の手はチョキ、ジャンケンのルール的に私の勝ちだよ」

 

「まあ、一応カヨコちゃんの言う通りかな……?」

 

 まあ、確かにその状況なら僕の負けだ。だが……

 

「いやいや、良く見てくれないか?」

 

「え?」

 

「確かに僕はパーだが……」

 

 鬼方の目が信じられないものを見たかのように見開かれる。

 

「どうして……」

 

「鬼方……君の手の形……『グー』じゃあないか」

 

「そ、そんな……どうやって……」

 

「君が勢い余って握り込んだんじゃあないか?」 

 

「そんなはず―」

 

 鬼方の声を遮って陸八魔に訊ねる

 

「なあ! 陸八魔これ、どう見ても『グー』だよな」

 

「え、ええそうね」

 

「阿慈谷これ、握り込んでるよなあ?」

 

「あはは、そう……ですね」

 

「つまり……どういうことになるんだ?」

 

 僕が少女の方を向いて問い掛けると

 

「勝者! 岸部ロハン!」

 

 元気いっぱい宣言した。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「結局ロハンちゃんあのジャンケンどうやったの?」

 

「さあな、鬼方が気合い入れすぎたんじゃあないか?」

 

 あれは本当に危なかった。まさか鬼方が力技を使ってくるのは予想外だった。まあ、僕も同じ状況でヘブンズ・ドアーにもう少しパワーがあればやるがな。

 

「あの後のカヨコちゃんの名演技凄かったよね!」

 

「アカデミー賞狙えそうだったな」

 

 あの名演技は録音したかったが……鬼方に睨まれてしまったからな、断念してしまった。

 

「だが、子供役は君得意そうだけどな」

 

「うーん……なんか気分じゃなかったかな~」

 

 今一瞬少女の方に目が行っていたな、おそらくだが……浅黄はお姉ちゃんと慕ってくれている少女の前で子供の真似をするのが嫌だったんだろうな。

 

「そういう時もあるよな」

 

「……うん」

 

 折角僕が気を使ったのに逆に気まずくなってしまったようだ。

 

「あのさ、ロハンちゃん」

 

「どうした?」

 

「ロハンちゃんなんか〇〇ちゃんに厳しくない?」

 

「そうか?」

 

「うん、当たり強めかなーって」

 

 あまり自覚が無かったが……

 

「なにか理由あるの?」

 

 僕が少女に厳しい理由か……あまり思い付かないが……強いて言うとするなら

 

「絵が上手いからかな」

 

 僕の答えに浅黄が唖然とするもすぐに調子を戻し、

 

「ふーん、ロハンちゃん嫉妬してるって事ー?」

 

「ああ、そうかもしれないな」

 

「くふふ、ロハンちゃんも嫉妬するんだー?」

 

「ほら、後30分くらいで噂の時間だぜ、2人を起こすぞお姉ちゃん」

 

浅黄にそう急かす。

 

「あっ! 逃げたー!」

 

 さあ果たして噂がどうなるか、僕はそっと2人の額にデコピンをしようと構えた。

 

 

 

 

 




多分後1、2話でこの世で一番強いものは終わると思います。
感想、アドバイス、その他諸々お待ちしております。
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