岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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『DMI』②

 

 

困惑する陸八魔に少し待ってもらい不良達を解散させる。

 

「ほら飾っておくと良い」

 

不良達1人1人に土下座姿を描いた画用紙を渡していく。

 

「「「「…ありがとう…ございます…」」」」」  

 

肩を落として歩いていく不良達。

 

「あ~そういえば、別に僕は興味が無いんだが…」

 

「どうしたの?ロハンさん」

 

「この先でゴミ拾いのボランティア募集してるらしいよ」

 

そう後ろ背に呼び掛けた。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「あの人達ボランティアなんかしないと思うよ?」

 

「さあ?意外と興味あるかもしれないぜ」

 

「そうかな?」

 

首を傾げる才羽。今回は僕が描き込んだのが元で彼女達のボランティアに対する興味が生まれた。だが…人が何に興味を持っているのかなんてのはわからないものだからな。

 

「悪いな陸八魔、待たせてしまって」

 

「全然大丈夫よ、それでなんであの人たちは土下座していたのかしら?」

 

「なんでって…あれ?ロハンさんなんでだっけ?」

 

「それは、君が反省したなら態度で表せって言ったのが発端じゃあないか」

 

「あっ!そうだった!」

 

その土下座があまりにも見事だったから僕が描き始めたって訳だ。

 

「こんな寒い中土下座させるのはちょっと…ねぇ…」

 

陸八魔が言いづらそうにこちらを見る。

 

「ちょっとってなんだいちょっとって」

 

そう言いながら自分達を客観視する。高校生数人を土下座させ笑う1人と捲し立てる1人、この状況だとまるで

 

「僕達が加害者みたいだな」

 

「えぇぇぇ!?私被害者なのにー!」

 

「その反応的に、違うのよね?」

 

「全然違うよー!」

 

なるほど、さっきの驚いた視線はそう言うことだったのか。僕が1人合点していると才羽が陸八魔にさっきの出来事を説明をする。

 

「…大変だったのね」

 

「うん、でもロハンさんが助けてくれたからプラスマイナス的にはプラス!」

 

「それは良かったわね」

 

陸八魔が優しく微笑む。

 

「君、やっぱり結構強かだな」

 

「えへへ、そうかなー」

 

「コホン、あのねロハンさん」

 

陸八魔が咳払いをして真剣な表情で目を合わせてくる。

 

「急に改まってどうしたんだ?」

 

「この子を助けたのは立派だと思うわ」

 

「…ああ、自分でもそう思うね」

 

「でもねロハンさん、折角カッコいいことしたなら最後までしっかりとしないとね」

 

僕としても今回のあの対応、少し…僅かながら調子にノッていた部分があるといえるかもしれない。僕は陸八魔の企業に入っている。僕個人が変な噂をされようとも何とも無いが、便利屋68全体がそういう組織だと思われるのは流石に申し訳ないしな。

 

「そうだな」

 

「私の社員だもの、決める所はバシッと決めないと!」

 

「ああ、心得ておくよ」

 

「え、陸八魔さんって社長なの?」

 

「ええ、そうよ」

 

「えぇ~!すごい!どんな会社なの!?」

 

「うふふ、キヴォトス1アウトローでハードボイルドな会社よ」

 

そんな説明で納得する人間がいる訳ないだろう。

 

「うわぁ~すっごいカッコいい響き!」

 

ここ以外に。

 

「ええ、そうでしょう!ふふっ何か依頼があれば便利屋68へ」

 

不敵な笑みを浮かべる陸八魔。随分と様になっている。

 

「便利屋かぁ~どうしてロハンさんは入ったの?」

 

さて、どう答えるとするか。正直に面白そうだからって言うのも良いんだが。陸八魔に目を向けると

 

(お願いっ!)

 

どうやら、うちの社長はカッコつけたいようだ。

 

「陸八魔の熱意に惹かれてね」

 

「うはぁ~!やっぱり社長って凄いんだね!」

 

「ふふっそれほどでもないわよ」(ありがとう!ロハンさん!)

 

どうやら満足してくれたようだ。

 

「あ、そうだ!ロハンさんに何かお礼しないと!」

 

才羽がやる気たっぷりにそんな事を言い始めた。

 

「お礼…さっき良い光景が見れて十分なんだがなぁ」

 

「それ私がやったわけじゃないじゃん!」 

 

別に才羽に頼むほど困っている事は無い…いや、是非とも読ませて貰いたいところだが…この公園今かなり人目がある。そんな中じゃあリスクが高すぎる。

 

「あんまりあの光景って良い光景って言えないような……」

 

「そうか?これから君が土下座する時の良いお手本になると思うよ」

 

「そうね!是非ともお手本に…ってなんで私が土下座する前提なのよ!?」

 

「しないのかい?」 

 

「しないわよ!」

 

こうも反応が良いと浅黄の気持ちがわかってくるな。

 

「そういえば陸八魔は何かこの辺に用事でもあったのか?」

 

「え、いやぁ…そのぉ」

 

キョロキョロとしどろもどろになり始めたな陸八魔。それに追い打ちを掛けるかのように

 

「もしかして極秘任務とか!?」

 

才羽が目を輝かせ、陸八魔の返答を促す。

 

「……………って」

 

「ん?」

 

「タイムセールに行こうかなって…」

 

まあ、極秘任務だったらわざわざ僕達には話しかけないだろうな。僕はスマホを取り出しこの辺のスーパーのタイムセール情報を見ていく。

 

「社長でもタイムセールって使うの?」

 

「…ちょっと…オフィスの家賃がきつくて…」

 

「ふーん、陸八魔さんって形から入るタイプなんだね!」

 

「うぐっ…」

 

悪意の無い言葉が鋭く刺さる。

 

「形から入るのは別に悪いことじゃあないさ」

 

「そうよね!ロハンさん!」

 

「まあ、形だけじゃあ無くて中身も伴うようになっていかないとな」

 

「…はい」 

 

僕の知り合いにも真似をしている奴がいるが、そいつと陸八魔は明確に違う。立ち振る舞いを真似て今後の自分に活かすのが陸八魔、立ち振る舞いを真似てそれになろうするのが…いや、今この話は重要じゃあない。

 

「才羽、お礼内容決まったよ」

 

「え、なになに!?」

 

ワクワクしている才羽に僕はスマホの画面を見せる。

 

卵お一人様1パック限定!特別価格!

 

「行くぞ、卵が僕らを待っている」

 

「ええ!」

 

「ええぇー!」

 

 

この時の僕達は幸せだったのだろう。

 

「ロハンさん!このスーパー卵以外にもお得なもの結構あるらしいわ!」

 

「まあ、お礼だから良いんだけど…卵かぁ…」

 

この、卵を巡ってあんな事になるとは

 

「卵っ♪卵っ♪卵っ♪」

 

「陸八魔さんって卵好きなの?」

 

「好き嫌いじゃあ無い。安いか高いかだ」

 

「そっかぁ」

 

知らなかったから

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

慌ただしい売り場の中に悲痛な声が混ざる。

    

「ロハンさんっ!ロハンさんっ!」

 

桃色の女の子が倒れている男の人を揺さぶるが反応は返って来ない。

 

「やめなさい、もう…ロハンさんはっ!」

 

コートを羽織っている女の人がそれを制止する。

 

「でも…でも!」

 

「この、僕がただでやられるとでも…?」

 

「ロハンさんっ!」

 

そう彼は言うと懐から卵1パックを取り出し、桃色の女の子に預ける。

 

「こんな…こんな物っ!」

 

「それ以上言うんじゃあない」

 

桃色の女の子の言葉を男の人が遮る。

 

「これ1個の前で、何人が…何人が夢を…食卓を散らしてきたと思っているんだっ…」

 

「うぅ…ロハンさん…」

 

「なあ…陸八魔そこに居るのか」

 

「ええ、居るわよ」

 

「この卵…どうやって食べるんだい?」

 

男の人の言葉にコートの女の人はほんの少し考えこう答えた。

 

「…卵かけご飯…」

 

男の人からの返事は無かった。ただ、穏やかに…眠る顔がそこにはあった。

 

それを見ていた私は声を掛ける。

 

「あ、あの…すみません、店内で寸劇は…ちょっと…」

 

「「あっ…すみません」」

 

私の言葉に女の人達は頭を下げる。

 

「邪魔になっていたらすまなかった。あまりに人が多くてヘイローが無い僕にはちょっと過酷だったからね」

 

そういう彼の頭には確かにヘイローが無かった。

 

「でも…3パック…しっかりと確保されてますよね…?」

 

彼は懐から出した物以外にも2パックしっかりとカゴに入れていた。

 

「まあ、僕以外の2人が弾き出されるのは見てたからね、ルール違反では無いだろう?」

 

「は…はい、お一人様1パックまでなので…多分大丈夫だと…」

 

「ほんと…流石ねロハンさん」

 

「コツみたいなのあるの?」

 

「意識の隙間を突くのさ」

 

何言ってるんだろう…この人…

 

「それってコツって言わないと思う…」

 

「このスーパーって結構こういう割引するのかい」

 

「は…はい」

 

「良かったな陸八魔」

 

「ええ、これからもお世話になると思うわ…」

 

その後、あの人達は色んな売り場を周って会計して去っていった。それにしても、あの男の人…どこかで…

そう、思い出そうとする私の視線はレジ横の本コーナーに向かった。そしてその中の一冊の表紙を見た。

 

「岸部ロハン…だったんだ…」

 

漫画はあんまり読んだ事ないけど…絵画は結構好きだったから…

 

「サイン…貰っておけば良かったかな…?」

 

ちょっと後悔していると

 

「ごめん!ソラちゃん、これから雨らしくて、外に出してる商品入れるの手伝ってもらえる?」

 

「あ、はい」

 

 

 

 

 




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