岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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アラソワザルモノ

 

 

ズズズッ…

 

最早自動ドアではなくなってしまったそれを割らないように開けていく。

 

「よし、開いたよ社長」

 

「ええありがとうカヨコ。ハルカ!そこで見張ってて!」

 

「あっ…ま、任せてください!」

 

入り口から少し離れた所に停めた車。万が一の為の待機部隊だ。部隊って言ってもハルカ1人なんだけどね。

 

「本当に彼女を待機させてて良いのかい?」

 

そう確認する岸部。

 

「誰か1人は外にいないと罠があった場合大変だよ」

 

「中で銃撃戦になったら僕は戦力外だ」

 

「変な組織が関わってるかもしれないって話してたっけ」

 

「私達がいるから大丈夫だよ~」

 

「…頼りにさせてもらうよ」

 

そうは言うがどこか浮かない表情を浮かべる岸部。

 

「大丈夫…?」

 

「いや…なんでもない」

 

「中で何があろうとも依頼を遂行するわよ!」

 

そんな社長の言葉を皮切りに私達は廃ショッピングモールの中に入った。

 

中は物が散乱しているなんて事は無く、少し掃除すれば今からでも営業できるように見える。

 

「思ったより綺麗だね」

 

「ええ、そうね」

 

「あ~でも天井は駄目だね」

 

ムツキの指の先には、穴だらけになった天井のガラス。

 

「あれじゃ雨が入り放題だよ」

 

「そうだね」

 

「一通り周ってみましょうか、しっかり警戒しながら行きましょ」

 

突然後ろから…なんて事があるかもしれないしね。私達だったら即座に反撃できるけど、岸部が撃たれたら相当不味い。

 

「大体こういうのって奥か地下の2択だよね〜」

 

「ああ、悪事を働く人間ってのはなるべく人目につきたくないものだからな」

 

「廃墟でも?」

 

「ああ」

 

確かにそうかもね。スーパーの商品棚の上に鏡を置いたら万引きが減ったって聞いたことある気がする。

 

「じゃ、早速奥から行こっか!」

 

「まあ、結構広いからね」

 

「なら手分けした方が良い」

 

そっかそっちの方が早く済むよね。

 

「なぁ、それこそ罠が」

 

「うーん、音響くから何かあった時にはわかるから良いんじゃないかしら?」

 

ここで話し合ってるよりはそっちの方がいいよね。

 

「なんにしろ動かないと」

 

 

それから私達はそれぞれどこを調べるかをある程度決めて分かれた。

 

「…はぁ…」

 

一通り見て周ってみても特に何かがいるわけでは無かった。室内にブランコやシーソーとかが設置されてるのは珍しいとは思うけどそれが何かに関係あるとは思えない。

 

 

違う…1つおかしな所がある。ここ出口が私達が入った1箇所しかないということ。他の所は元々無いわけじゃなくて誰かが塞いだかのように閉ざされていた。

 

「何かが入って来ないように…?」

 

なら、なんで全部閉じなかったんだろう。だとしたら入ってくるのは…前提で…阻みたいのは入った人間が出ること…。

 

凄く、凄く嫌な考えが浮かんだ。

 

「まずい…誰かと合流しないと」

 

たしか…社長が入り口周辺で…ムツキが私と反対周りで岸部が地下だったっけ、だとしたら入り口まで戻って社長と合流するのが1番早いか。

 

私は駆け足で入り口に戻ろうと…

 

『大体こういうのって奥か地下の2択だよね〜』

 

岸部が…地下?

 

人目につかないところが1番危ないって話したのに?

 

ゆっくりとその事実を呑み込んでいくうちに変な胸騒ぎと吐き気がこみ上げてきた。

 

合流なんて悠長な事言ってられない。岸部の様子が少しおかしかったのは…気がついてたから…?とりあえず社長に電話してすぐに地下に向かわないと…

 

ツーツーツー

 

早く…

 

そうだ、そもそもなんで私達は――

 

♫〜〜

 

真後ろから着信音が聴こえてくる。社長も違和感に気がついたのかな。

 

…なんで声かけてこないの?

 

♫〜〜

 

鳴り止まない着信音。私は振り向きざまに銃を―――

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

岸部ロハン彼はゆっくりと1廃ショッピングモールを歩いていく。

 

(やられたな)

 

話し合いの後彼は1人地下へと降りていった。そこで彼は車の出入り口が妙な形で閉じられているのを見つけた。

 

「これは入った人間を逃さないための罠か」

 

思えば最初からずっと妙だった。

 

依頼者の友人であるキヌエ。彼は彼女を一目見た時から不快感を覚えていた。それと同時に廃ショッピングモールに行けば全てがわかるという確信のようなモノを抱いた。あの状態の人間を治すなんて事が容易では無いこと、ましてやここに全てが真実があるなんて言う上手い話を疑うこと無く。

 

『なら手分けした方が良い』

 

それは一体誰の声だったか。少なくとも知ってる声ではなかった。

 

(気味が悪いのは僕達全員がその事に気がつかなかった事だ)

 

そうして彼は誰かと合流するために歩く。

 

歩く 

 

「———」

 

見つける

 

「わかった」

 

歩く

 

「———」

 

見つける

 

「わかった」

 

歩いていく

 

そうして彼はそれの近くに膝を落とす。ただじっと上を見つめる眼。そこに意思は感じられない。それをこのショッピングモールで見るのは3回目だ。

 

「……」

 

そしてその腕の延長線上には放り投げられた銃。そっとそれを拾い上げ彼女…鬼方カヨコに握らせる。

 

ただそれだけのなんの意味も無い行動。だが彼は何故かそうしなければいけない様な気がしていた。

 

「仕事道具だからか」

 

1人納得の行った様子で呟く。彼がその場を後にしようとしたその瞬間。

 

「———」

 

「……ああ」

 

なんとかするさ

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 目を閉じればここからは今でも賑やかな声が聞こえてきそうだ。

 

軽く埃を払って椅子に座る。フードコート。今は見る影もないが様々な料理屋が集まっていた形跡がある。視線を横にずらせばそこにあるのは子供用の椅子。淋しい景色だ。

 

タン…タン…タン

 

「正面から来るんだな」

 

「待ちに徹されるとしたくても不意打ちできない」

 

僕の対面の席に座ったそいつはやれやれと言ったように首を振る。

ガスマスクはその役目を果たせそうに無いくらいにはボロボロ、服は所々破けている。プロテクターも同様に破損。だが身体に傷があるわけじゃない。耐久力は並以上、もしくは回復力が優れているのか?

 

「そんなにヒトのことジロジロ見るのは失礼」

 

「失礼、はじめまして。僕は岸部ロハンだ」

 

手を差し出す。

 

「これはどうも」

 

握り返される手。

 

対面に居るそいつは繋がれた手見つめては首を傾げる。手を剥がそうとするが僕の力では解けない。

 

「おい、そろそろ離してくれないか」

 

「……使わないの?」

 

「…なんの事だい?」

 

「惚けなくたって良い、お前の不思議な力の事」

 

「君には僕がスーパーマンにでも見えているのかい?」

 

「連れない、せっかく同じ存在に会えたと思ったのに」

 

そう肩を落とす。

 

「私は「他者の心が見れるんだろう?」

 

僕はそれを知っている。

 

「驚いた…推理した?」

 

「教えて貰ったのさ」

 

そいつは嬉しそうに尋ねてくる。

 

「誰から?あの3人の誰?陸八魔アル?鬼方カヨコ?浅黄ムツキ?」

 

「全員」

 

『考えが読まれたわ』

 

『ロハンちゃんみたいだった』

 

『動きが全部先読みされてた』

 

満面の笑みを浮かべる。

 

「凄いね、ここに来たのがお前達で良かった、意志の力が桁違い」

 

「僕達がここに来たのも君の力によるものなのか」

 

「そう、でも流石に強制はできない」

 

多彩過ぎるな。

 

「君、今まで何人の感情を奪ってきた?」

 

「4人、感情を奪うのと誘導はここに来てから使えるようになった」

 

廃墟暮らしで覚醒したのか…?

 

「4人中3人が僕に言葉を託せたってことは逆に託せない方がレアなんじゃあないのか?」

 

「翼の無い鳥が自分は空を飛べない事を確信しているのと同じ、私の力でできるできないは理解してるお前もそうでしょ?」

 

「さあ?」

 

イマイチピンと来ないな。

 

「ふふ…これで私の目的に一歩近づける」

 

「目的…?」

 

「ついてきて」

 

ガコン!ガコン!

 

「おい、これ急に折れたりしないよな」

 

「多分…大丈夫」

 

不安を感じさせる音を鳴らしながら僕達は上下する。

 

なんの意味があってこの歳になってシーソーなんかに乗らされているんだ。

 

「なんでって思ってる?」

 

「…見たのか」

 

彼女は首を振って

 

「あなたの心を読むのは私の力とあなたの力が干渉しあって負荷がかかり過ぎる」

 

「そいつは良かったよ」

 

「うん、でも逆にあなたは私の事を読めると思うよ」

 

「へぇ…それはどうしてだい?」

 

「私は読まれる事を拒まないから」

 

平行になった瞬間、真正面から嘘が見えない目と合う。

 

「………話を戻してくれ、僕達はなんでシーソーに乗ってるんだ?」

 

「理性と本能ってどっちが優先されると思う?」

 

「それって関係あるのかい?」

 

「良いから」

 

「……理性だな、本能って言うと例えば睡眠欲とかだろう?僕はやろうと思えば3日間徹夜でも漫画を描き続けられる…食欲だって断食するやつとか居るだろう?」

 

人間は本能を理性で制御して生きている。なら理性の方が上である筈だ。

 

「うん、多分正しいよ」

 

上からそんな返事が聴こえてきた。

 

「結局それがこの状況と「でも命が関わったら?」

 

「命…?」

 

「そう、命…1週間遭難していた人間の前に食料を置いたら?」

 

「……脇目も振らず齧り付くだろうね…でもそれは極限状態だからだ」

 

「銃を乱射する人間から逃げる時に押しのけ合うのは」

 

「それも極限状態だからだ、自分の命が脅かされた状況で他人の事まで考えることのできる人間は少ないさ」

 

「お前達は本能と理性を天秤のように備えている、社会生活においては理性に…生存が脅かされる極限の状況の際には本能に」

 

僕を見上げながらゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

「それは人間にしかない、私の知る野生ではそんな天秤無かった」

 

おいおいおい、それじゃあまるで

 

「君が人間じゃあないように聞こえるが」

 

カタンッ

 

釣り合うものが無くなり急激に下に引っ張られる。

 

「心が生きる事を諦めていたが身体…本能は生きる事を諦めていなかったこの子に幸か不幸か心を読む事のできる猿が乗り移ってしまった」

 

「その割に随分と会話が成り立つな」

 

「能力と身体の記憶のおかげ」

 

人の身体に猿が乗り移るなんて事があり得るのだろうか。そうだとしてここまで会話が成り立つとは思えない。正直そう思い込んでいるだけって方が現実味があるね。心が限界を迎えたというのが事実だとするのならそれに絶えられなくなり別人格を作り出してしまったのではないか。

 

「結局目的ってのは?」

 

「知る事」

 

「何を?」

 

「極限の本能を超えるモノ」

 

 

 

 

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