岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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トマラザルモノ

 

それは雲1つも無い空が広がっていた日の事だった。

 

「はぁ…はぁ…どこだったかな」

 

住宅街から少し離れた山の麓の森の中に青年が1人。

 

「結構しっかりした造りだったと思うんだけどなぁ…」

 

彼は今現在秘密基地を探している。別にこれといった切羽詰まった理由があるのでは無い。ただ高校で少し嫌な事があり『あーあ!小学生の頃は楽しかったんだけどなぁー』なんて思い出しているうちに秘密基地に来てみたくなったのだ。

 

秘密基地とは言ってもそれは古びた小屋であった。最初は無断でそれを使用していたが途中で持ち主に見つかってしまい。万事休すかと思われたが男心に理解のある人だった為ルールを守れば使わせてくれると条件を出してくれた。もちろん彼らは願ったり叶ったりでそれに食い付いた。

 

「やっぱり壊されちゃったかな…」

 

疲れと落胆からため息を1つ溢す。

 

「まあ、運動になったから良いかな」

 

青年が自分を納得させる為の言い訳を探していたその時、

 

ガサガサ

 

後ろに何かがいる音。彼は急いで振り返る。彼が己の足が逃げ出すのを止める事ができたのは音の正体が熊だった場合走って逃げるのは危険という事に気がついたからだ。

 

「キャキャッ」

 

「はぁ~なんだ猿かッ」

 

一瞬安心しかけた己を律する。自分よりも小さいとはいえ相手は野生動物。決して隙を見せて良い相手では無いのだ。

 

…………

 

お互いに見合ったまま時間だけが動く。

 

(あぁ…なんでこんな…ただ秘密基地を見にきただけなのに…)

 

先程までときめいていた心は今では怯え一色。あまりの落差に青年の目からは涙が出てきそうだった。

 

「……キャ」

 

猿はくるっと振り返るとそのまま進み始めた。

 

「…ふぅー」

 

その姿に息が抜けていく。

 

「キー!」

 

「わっ…え?付いてこいって事?」

 

「キャキャ」

 

(…まるで人間みたいだ)

 

どこか非現実的な状況に彼はワクワクしていた。

 

 

「ここは…ここだっ!」

 

暫く案内人…案内猿の後ろを歩いていくと記憶よりも少しボロボロではあるが確かに秘密基地がそこにあった。

 

「猿さん、どうしてここが…あれ?」

 

言葉が伝わるかはわからなかったが問うことを抑えられなかった。だが既にその存在はそこには無くなっていた。

 

「案内するだけしてどっか行っちゃった…お礼とか用意した方が良いかな…」

 

ドアと向き合う。感じるのは少しの緊張と孤独感。それはさっきまでは共に歩む存在がいた事による落差と友人達と共に来た記憶とのギャップのせいだろう。

 

ガチャッ

 

扉は当時の感触を手のひらに伝える。

 

「……ちょっと埃っぽいな」

 

中は当時のまんまだった。初めて見つけた時もそうだった。確かその時は各々掃除道具を持ち寄ったななんて感慨に浸る。

 

『なんだお前ら、秘密基地が欲しかのか…まあ、こんなに綺麗にされちゃあな…良いぜここ使ってもよ』

 

将来歳をとるならこうなりたい。そう思わせてくれる人だった。今は元気にしているだろうか。

 

「…ん?」

 

いや、記憶と1つ違う事がある。謎に盛り上がった黒い塊。それはどこか上下しているようにも見える。

 

(まさか小屋の中に熊!?)

 

『別にここらへんは獣が出るわけじゃねぇが夜に森の中歩くの危ねえから暗くなる前に帰れよ』

 

じいさんはそう言ってたがあれからかなり時間が経っている熊が生息圏を広げる事はあるのかもしれない。

 

(どうする…逃げるか…?)

 

思考が纏まらない内に黒い影はムクッと起き上がる。

 

「………誰?」

 

「あっ…人?」

 

本日2度目の肩透かしであった。

 

 

「ふーん…秘密基地だったんだここ」

 

「うん…とっても大切な思い出の場所…です」

 

2人は小屋の真ん中で向かい合うように腰を下ろしている。自分よりも歳下であろう少女。

 

「でもまさか君があの人の孫だなんて…」

 

正直頭の中で2人は一向に重ならなかった。性別が違うってのもあるのかもしれないが纏っている雰囲気が正反対と言うんだろうか。

 

「駄目なの?」

 

「いや、駄目って言う訳じゃ…」

 

(ちょっと怖い…)

 

「……高校生で昔に戻りたいって…ジジ臭いね」

 

吐き捨てるように少女はそう言った。

 

「は、はは…じいさんは元気?」 

 

なんとかして話題を変えようと2人の中で明確に共通している話題を出す。

 

「……死んじゃった」

 

「あっ…え?」

 

そんな可能性考えもしてなかった。最後に会ったのは小学校最後の夏、活力溢れていたあの人が…。

 

「1年くらい前に…急に」

 

「あっ…そのっ…ごめん」

 

「良いよ、もう慣れたから」

 

それは慣れるものなんだろうか。青年はゆっくりとあの人が亡くなった事実を噛みしめる。

 

(そうか…ここには来ることが無い…会えないんだ)

 

初めての死による喪失。青年の周りでそれが起きる事は無かった、その内起きるとは思っていた。だがまさかこんな急になんて。

 

「……ぅ…うぅ」

 

「えっ…大丈夫?」

 

心配そうにこっちを覗き込む少女。困ったように考え込むとゆっくりと青年の頭に手を乗せゆっくりと撫でる。

 

「おじいちゃんは私が泣くとこうしてくれてた」

 

「ごめん…ごめんッ…」

 

似てないと思っていたけど一番大切な所は似ていた。

 

 

 

 

「……もう大丈夫?」

 

情けないところを見せてしまった申し訳無さが勝ってきた。

 

「うん…ごめんね変なとこ見せちゃって…」

 

「別に気にしてない」

 

「…僕はそろそろ帰るよ」

 

「そう…さようなら」

 

青年はこの小屋から去ろうと立ち上がろうとしたがある物に気がついて座り直す。

 

「どうしたの?」

 

怪訝な視線が青年に注がれる。

 

「いや、そういえば君がここにいる理由聞いてなかったなって…」

 

「それ話す必要ある?」

 

「……うーん…わかんないかな」

 

「じゃあ話さない」

 

「でも…君がここにいる理由にその縄が関係あるのなら…必要あると思う」

 

入ってきた時には見えなかった、少女が青年を慰める為に移動した為その存在に気が付く事ができた。

 

「……ッ」

 

少女は後ろ手で縄を隠そうとするが既に遅く。

 

「今の反応でも充分過ぎるくらいなんだけど…最初はここに置いてあったものかなって思ったんだけど…それにしては埃1つ無いし形も…その…首吊りに使いそうだなって…」

 

「……あなたに関係ある?」

 

出会ったまだ数十分しか経っていない。そんな自分が目の前の人間が…命を絶とうとするのを止める権利があるのだろうか。

 

「…正直無いと思う」

 

「じゃあさっさと「でも」

 

「じいさんなら止めると思うから、だから君の事を教えて欲しい」

 

きっと権利とかそういうのじゃ無いと思うんだ。

 

「別に…これといった理由があるわけじゃない、確かに嫌がらせはされてるけど…それで死ぬ程弱くなんて無い」

 

「…ならどうして?」

 

「少しづつ毎日少しづつ真綿で首を絞められるみたいな感覚になるの、嫌な事があったら当然…最近は何も無い日にも…何も無いから…それが…苦しい…あなたはある?そういう感覚」

 

少女の年代の頃にそもそもそこまで深く毎日について考えた事は無かった。嬉しいことがあれば喜び、悲しいことがあれば涙を流す。そういう日々の過ごし方をしてきた。

 

「………無い…かな」

 

「そうなんだ、ならあなたにはわかんないよ」

 

それは明確な拒絶であった。このままでは駄目だ。このままではきっと僕が立ち去った後…それを使ってしまうだろう。

 

「今は苦しくてもきっと明日は…良い事が起きるよ」

 

苦し紛れの言葉だった。でも本心でもあった。過去は駄目でも未来にならきっと…きっと希望があるはずなんだ。

 

「…ねぇ…なにそれ?」

 

「え?」

 

「明日って何!?良い明日っていつ来るの!?」

 

胸倉を掴まれ体勢を崩す。

 

「うっ…あがっ…」

 

「明日になればとか…十年後には笑い話になるとか、いい思い出になるとかみんな好き勝手に言うけど私は…私は今…今ここに居るんだよッ!?今ここで生きてる私はっ…私は苦しいままだッ!」

 

これが俗に言う地雷を踏んだって事なんだろうか、首絞められたら物理的に僕の方が苦しいと思うんだけどなぁ…なんて青年はどこか他人事のように自分の置かれた状況を見ていた。確かに少女の言う通りだ。今の苦しみは未来で消えるわけじゃない、今の苦しみから逃れるために未来に頼るのはどこか本末転倒な気さえしてくる。自分の無神経さに呆れすら覚える。

 

だけど血を吐くかの様な少女の言葉、それが聞けたなら

 

(踏んで良かった)

 

「それは…辛いよね…」

 

「……ッ」

 

「確かに…未来が良くなっても今は…苦しいままだもんね」

 

「わかった様な口を聞くなッ!」

 

「だからさ、今から良くしていこう」

 

自分の首を締め付ける手を掴む。

 

「ゲームセンターって知ってるかな、いっぱいゲームが詰まってて最高の 場所なんだ」

 

「何を…?」

 

「高校生になって初めてバイトしてみたけどすっごく大変で…ラーメン屋なんだけどさ…大変な分お客さんが笑顔でご馳走様って言ってくれるとああ良かったなって」

 

「…それが何!?」

 

「中学校って赤点無いよね…?高校生になると赤点取っちゃうと補習になっちゃうんだけど意外と先生が気さくで…なんだかんだ楽しかった」

 

「さっきから何が言いたいのッ!?」

 

「キャンプもしたし海でスイカ割りもした、百物語で漏らしたやつもいた」

 

手を包む。

 

「僕にとってそれは過去なんだ」

 

「でも君はそれを未来にする事ができる」

 

「だからっ…未来じゃ意味無いって…」

 

「わかってる、だから先ずはゲームセンターに行こう、きっと気に入るから」

 

「は…え…?」

 

「そしたら次に…バイトは無理だから…ラーメン食べに行ってみよう…あっさり系のやつ」

 

「何を…言って…」

 

「良い明日っていつ来るのって言ってたよね?」

 

今なら苦し紛れじゃなくハッキリと言える。

 

「明日って今さ、今からが良い明日なんだ」

 

青年は自分の上で泣き崩れてしまった頭をゆっくりと撫でる。

 

 

「ごめん…なさい…」

 

すっかりしおらしくなってしまった少女。

 

「こちらこそ無神経に色々言っちゃってごめんね」

 

「でも…首絞めちゃったし…」

 

「うん、死ぬかと思った」

 

「…ごめんなさい…謝って許されることじゃないけど…本当にごめんなさい」

 

「流石にそれだけじゃ許す事はできないなぁ」

 

「…はい」

 

覚悟を決めた様な表情で少女は青年の次の言葉を待つ。

 

「ふふふ…ゲームセンター行ったときに僕にゲームで勝ったら許すよ」

 

青年は立ち上がりながらそう言った。

 

「え…それで…いいの…?」

 

「舐めてるね、僕が*1F−MEGA−Xでどれだけ走り抜けて来たかも知らずに…とりあえずここじゃ話が進まないから行こうよゲームセンター」

 

差し伸べられた手を掴もうとする少女、だがその動きは途中で止まる自分はこの手を取って良いのか、この人の首を絞めた手で…。そんな事を考えている間にぐっと引っ張り上げ立たされる。

 

「あっ…」

 

「早く行かないとゲームできないよ?」

 

青年はきょとんとした顔でそんな事を言う。

 

「うん…!」

 

「あれ…その縄良く見たら短くない?」

 

「その……木に結んでぶら下がったら切れちゃった」

 

「…あっそうなんだ…」

 

(良かったぁ…危うく第1発見者になるところだった…)

 

ホッとして縄を触ると切れた端であろう部分に違和感があった。

 

「ん…?」

 

よく見るとそれは千切れたと言うよりも切られた様な形になっていた。

 

「そういう事だったんだ…」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

(猿さん、君が僕をここに連れてきたのはこの子を任せたかったからなのかな)

 

随分と人間よりも人間みたいだね。

 

 

「はぁ…はぁ…きっつい…」

 

「大丈夫?」

 

自分とは違って息1つ切らしていない少女。

 

「凄いね…慣れてるの?」

 

「うん…よくおじいちゃんと歩いてたから」

 

「そっか」

 

そうして暫く歩いていると

 

ガサッ…ガサッ

 

そんな音が後ろから聞こえてきた。

 

「もしかして猿さんかな」

 

「猿さんって…何?」

 

「なんか、野生の猿が僕を秘密基地まで道案内してくれたんだよね」

 

「なにそれ…」

 

正直油断してたんだと思う。今まで上手く行き過ぎてたから。二度あることは三度あるってよく言うよね。だけど今回は三度目の正直の方だったんだ。

 

ぐおぉぉぉぉ!

 

低いとても低い声…心の底から恐怖を覚える声。黒い影は僕なんかよりも分厚くて大きくて怖い。何より怖かったのはその目、食欲しか無かったんだ。

 

「ひっ…」

 

叫び声を上げたのはどっちかもわからなかった。

 

 

逃げた。走った。走って走って、でもヤツの方が速くて。僕は生きたい。死にたくない。

 

お腹が空いてるから追ってきてるならお腹がいっぱいになったら…?

 

僕の横を走る顔を見る。

 

そうだ、この子死のうとしてたんだしちょうど良いじゃん

 

僕が少し後ろに引っ張れば多分体勢を崩すだろう。そしたら熊はお腹いっぱいになるし僕は生きれる。この子は死ねる…ならそれで良い…わけ無いよなぁ…わかってるんだ…それだと良い明日は来ない。

 

『僕にとってそれは過去なんだ』

 

なら、未来に繋げないと。

 

「ねぇ!ゲームセンターの名前は!PlusPlusね!」

 

「はぁ…はぁ…え…?」

 

「おすすめはF−MEGA−X、レースゲームで難易度は高いけどやりごたえあるから面白いと思う!」

 

「ちょっと…待って…!」

 

「ラーメンは塩味!」

 

「待って…!」

 

僕は手を口の方へ持っていき思いっきり噛む。鉄の味が口の中に広がる。

 

「絶対良くなるよ」

 

僕は進行方向を変える。

 

飢えた熊が追うのは当然血を流している獲物だ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それから…どうなったんだ?」

 

「覚えてない」

 

「…そうか…助かっているといいな」

 

そうは言っても熊相手に逃げ切るのは…不可能に近い…だから青年もそれを選択したんだろう。

 

「彼は心の底から怯えていた」

 

ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ

 

「少女を犠牲にする考えもあった」

 

「でも彼は打ち勝った!己の中の極限の生存欲に!」

 

「己を犠牲にしてまで他者を庇った!私の常識は崩れ去った!知りたい、どうすればそんな事ができる!?」

 

「お前ならわかるだろ!私の気持ちが!」

 

「………」

 

「だから…邪魔しないで欲しい、時間が無い…仲間たちを傷つけた事は謝る、だがお前も人を読むだろう?」

 

僕にわかってくれ、そいつはそう言う。

 

「別に僕は…仲間の心が抜かれたからここに居るんじゃあない」

 

彼女達は便利屋だ。依頼によっては人を傷つける事があるだろう。それで仕返しされたらお互い様ってやつさ別に良い。

 

「じゃあ!」

 

「だが君が手を出したのは僕の読者なんだ」

 

心が抜かれてる間彼女達は僕の漫画を読む事が出来なくなる。それを許容するのは無理だ。それに

 

『そんなの…おかしいじゃないですかっ…』

 

「納得しないやつがいるしな」

 

僕は便利屋68の広報だ。なら依頼を遂行しなければいけない。

 

「お前も…人を勝手に読んでいるじゃないか!私とお前何が違う!?」

 

青年の話をしてから感情が剥き出しになっているように見える。

 

「確かにやってる事は似たようなものだろうな」

 

「なら!」

 

「だが1つ決定的に違うところがある」

 

それは何よりも大切な事だ。

 

「僕は岸部ロハンで君はそうじゃないってことさ」

 

「は?」

 

「君が人の心を奪う免罪符に僕を使うなよ、僕は僕の行う全ての行為を肯定するが他人の行動まで肯定してやる義理なんか無いね、そもそも君…人から感情を奪うの…自分自身で良くない事って思っているだろ?」

 

「……ッ」

 

「だから似た力を持つ僕を最後に残した、肯定を欲したんだろ、こうやって人から感情を奪うのは自分自身の目的の為ならしょうがないことなんだって知る為なら仕方ないって言って欲しかったんだろう?」

 

「……」

 

「僕はこの力は足が速いってのと同じだと考えている、足が速い人間が人よりも速く走ったからと言って叱られるわけじゃあ無い、ならこの力を持つ僕が人の心を読んでもそれは速く走ったのと同じ事だとね」

 

でもこれは僕だからだ。

 

「………結局お前は私の邪魔をする?」

 

「まあ、そうなるね」

 

「なら…私がお前を黙らせてもそれは速く走ったのと同じ…」

 

「君が君のその考えを肯定するならそうなんじゃあないか」

 

「…ぁは…はははっ!なら…黙っていろ…岸部ロハンッ…!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ガンッ!!ズサァー!

 

サッカーボールの様に無惨に転がされる岸部ロハン。咄嗟にシーソーを折ってシールドの様にしたが衝撃を殺す事は出来無かった。

 

「少しは手加減してくれても良いんだぜ…」

 

「頼む岸部ロハン…手を引いて」

 

彼女は懇願する。

 

「今ので力の差わかった、このままだと私はお前を殺してしまうかもしれない」

 

彼女が言っている事は正論だ、身体スペックが根本から違う。それこそ人間と熊が戦おうとするようなものである。

 

「確かに…その方が良いのかもしれないな」

 

「極限に打ち勝った正体が解れば感情は返す…だからお願い」

 

ロハンの脳裏には託された言葉が浮かんでいた。

 

『考えが読まれたわ』

 

『ロハンちゃんみたいだった』

 

『動きが全部先読みされてた』

 

自分に向けての注意喚起、目の前のそいつが言うには並大抵の精神力では言葉を残す事は出来ない。3人の言葉には続きがあった。それは3人とも全く一緒。

 

『逃げて』

 

全く…つくづくお人好しな奴らだ。僕は懐から黒を取り出す。

 

ダンッダンッダンッダンッ

 

続けざま四回の銃声。

 

「無駄、お前が銃を使った事には驚いた、けど最初の1発以外とろくに撃ててない」

 

最初の1発以外銃口は上を向いていた。仮に弾丸が当たっていても大したダメージにはならなかっただろう。

 

「その銃…確か鬼方カヨコの…」

 

「ああ…託された」

 

「折角のチャンスを無駄にした、諦めて」

 

ゆっくりと迫る。

 

「…浅黄には言ってないんだが僕のヘブンズ・ドアーは無機物にも書き込む事が出来る」

 

「……それが?」

 

「書き込まれた無機物は最大3秒間だけ書き込んだ命令通りになる、例えばコンクリートにドロドロになると書き込んだ場合3秒間だけ生コンのようになる、重要なのは3秒後例えば生コンに足が埋まってしまっていたらその足が圧されるわけでは無いということ、しっかりと足の分隙間が生まれるんだ」

 

「凄いね」

 

「それを銃弾に使用…例えば進行方向が変わるとかだ、変わった弾丸は変わったまま進み続ける」

 

「まさか」

 

彼女は上を向く。

 

何も無い。

 

「何が狙い?」

 

「君、誰から襲った?」

 

「浅黄ムツキ…」

 

「君はそこで僕という存在に気が付いた、心を読める同類と言うことで僕だけを警戒していただろう?だが君の相手は便利屋68だ」

 

「何が…言いたい?」

 

「一番残しては行けない奴を残したんだよ君は、3発の銃弾にはそれぞれ一文字ずつ『S』『О』『S』と書かれている、上空で進行方向を曲げられた弾丸は駐車場に着弾し、合図となる。そして陸八魔アルは入り口で倒れている」

 

「まさか」

 

(私に能力の説明をしたのは…時間稼ぎ)

 

バリンッ!

 

天井が割れガラスが舞い黒い影が現れる。

 

「僕が君なら絶対に伊草ハルカは残さない」

 

ドンッ

 

伊草はなんてことないように着地するとゆっくりと顔を上げる。

 

「殺す」

 

 

 

 

 

*1
F−MEGAシリーズのゲームセンター版




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