岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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覆面水着団は奪わない

 

「お待たせしましたお客様」

 

「お待たせしすぎよ!なんで融資の調査に半日もかかるの!?ウチよりも先の人達がいるわけでも無かったみたいなのに!」

 

便利屋68は今回の依頼によって財政難へと追い込まれた。自分たちのご飯代さえ満足に払えない程。そこまでして行った襲撃はアビドス生達の粘り勝ち、依頼主にその事を報告しようとするがそれは本番では無いだのなんだと言われ2度目の正直を起こす為にブラックマーケットの銀行に来ている。

 

(別に僕が来る必要も無いと思うんだが…そのまま作戦も練りたいとの事らしいしな、そうして銀行に来たは良いんだが…まさか6時間…お待たせしましたはしっかり待たせた後に言うと反感を買うんだぜ)

 

6時間の間しりとりやあやとりで時間をつぶしていたが…昨日の戦闘の疲れもあり岸部ロハン以外は眠ってしまった。

 

「私どもの内々の事情でしてご了承ください……ところで陸八魔アル様…あなたはそんな態度が取れる立場でしょうか?」

 

「あ、うう…」

 

(まぁ融資を受ける側だしな、そこを言われると痛いな)

 

「当行の助けが必要なら辛抱強く待たれる事も重要かと…あ、お連れの方ですがそちらでお休みになられては困ります、セキュリティ、あの浮浪者……いえお客様を起こして差し上げなさい」

 

(……へぇ)

 

セキュリティが岸部ロハン以外の3人を起こしていく。

 

「それではご一緒に確認を…名前が陸八魔アル、ゲヘナ高校の2年生ですね、現在便利屋68の社長とのことですが、ペーパーカンパニーとまでは言いませんが財政が危うすぎませんか?犬探しや猫探し…浮気調査でしかお金が入っていないじゃないですか」

 

「違うわよ!しっかりと…護衛とかも受けてるけど…踏み倒されて回収できなかったりしてたのよ!」

 

「それに従業員は社長含め従業員は5人ですか、室長、課長、広報、平社員…肩書の無駄遣いですね、それになんですか広報って平社員で良いでしょ平社員で、会社ごっこでもしているんですか?」

 

「肩書があったほうが…依頼されやすいと思って…」

 

「あとですね事務所の賃貸料が高すぎます、ご自身達に合った物件を見つけていただかないと」

 

確かにそれが便利屋68の財布をかなり圧迫をしているのは事実である。

 

「…ちゃんとしたオフィスの方が…依頼も…」

 

「これでは融資は難しいです」

 

「うぅ…」

 

「それこそ身の丈に合ったペット探しや浮気調査に力を入れていくべきです、あっ!いっその事便利屋では無くて探偵に変更されては?」

 

「はぁ!?」

 

(もういっそ銀行強盗してやろうかしら…私達4人ならなんとか突破…駄目…ロハンさんがいるから……)

 

流れ弾の当たりどころが悪ければ岸部ロハンは死んでしまうだろう。だから仕方ない、今ここで俯いているのは仕方の無いことなんだ。

 

(違う……確かにロハンさんの安全面は心配だけど…それよりも……ブラックマーケットを敵に回す勇気が出ない……自分が情けない…こんなのじゃキヴォトス1の…)

 

「とにもかくにもこれで融資を受けようだなんてちゃんちゃらおかしいです」

 

「………っ」

 

俯いて立ち上がろうとする陸八魔アルの肩を抑える。

 

「なあ、1企業が融資を受けるのがそんなにおかしい事なのかい?」

 

「ですから…財政が破綻している企業に融資は…」

 

「ウチの社長が今言ったじゃないか、依頼料を回収できていないだけってな、それに依頼成功実績もあるじゃあないか」

 

「確かにありますけど……それは猫探しや人探しじゃないですか…傭兵としては…それに依頼料が踏み倒されたと言っていますがお金が入らないならそれは受けていない事と同義です」

 

「便利屋として融資を受けに来ているんだからそれで充分じゃあないのか?」

 

「身の丈に合った依頼を受けるべきと言いませんでしたか?なんなんですかさっきからあなた…何か言いたいことでも?そちらの社長との話はもうついたでしょう」

 

「……この際6時間も待たされたのはどうでもいい、融資を受ける側だしな半日だろうと3日だろうと待ってやるよ…だが君…言うに事欠いて僕の…この岸部ロハンの同僚を浮浪者扱いしてたよな…ふざけるんじゃあないっ!良いか、融資だのなんだの言っているが要は『契約』だろ?…契約に『敬意』を欠く奴がどこにいるっていうんだ」

 

「き、岸部ロハン…!?どうしてこんな企業に…!?」

 

「こんなだの身の丈だの…君は随分と見晴らしの良い位置に居るんだな」

 

「し、失礼しました…し、しかしそれなら話が変わってきますね!融資の名義を岸部様に変えれば融資をすぐにでも!」

 

自分なら融資を行っても良いと言う好待遇。だがそれが逆に便利屋68の広報の逆鱗に触れた!

 

「おいおいおいおいおい…お互いに社会で生きているものとして最低限立てなくちゃあならない顔ってのがあるのはわかるよな、なんで僕なら受けれる融資が陸八魔だと受けられないんだ」

 

「それは社会的信用度の…」

 

「それこそ僕が所属しているんだから変わらないじゃあ無いか…それともなんだ?君は僕の肩身を狭くさせたいのか」

 

「いやいや、そのようなつもりは…」

 

「それに今の言い方だと融資しようと思えばできるって事か?」

 

「いえ、それは…」

 

「はぁ…君じゃあ話にならない…もっと上の人を呼んできてくれよ」

 

銀行員は湯気が出そうな位真っ赤になる。

 

「………さっきから下手に出ていたら!調子に乗り腐って…!」

 

「さっきから…?さっきからって言ったのか今?僕が名乗った時からだろう」

 

「…あなたここに居て良いんですか?『大人気漫画家岸部ロハン、ブラックマーケットの銀行にて融資を』マスコミの良い餌になると思いません?」

 

「それは僕を脅しているのか?」

 

「いえ?自らの行動の危うさを振り返ってみたほうがよろしいのではと」

 

その言葉は火に油を注いだ。

 

「確かにある程度は炎上するだろうなぁ…だが生憎僕は普段から清廉潔白に生きてきたからな、謝罪して面白い漫画を描けば直ぐに過ぎ去っていく話でしかない……それよりも君の方が僕は心配だなぁ…ただでさえ信用が重要な銀行員それもブラックマーケットのが客を浮浪者扱いした上、人によって態度をひっくり返す…あんまり良い印象が得られるエピソードでは無いと思うんだがなぁ…」

 

「この…!」

 

怒りのあまりテーブルに身を乗り出そうとする銀行員。

 

「なんだ暴力も追加か?」

 

妙な雰囲気に気が付いた他3人が見に来る。

 

「ロハンちゃんやめなって!」

 

「や、やっちゃいましょう!」

 

「ちょっとハルカ…!社長止めるの手伝って!…社長…?」

 

(私よりロハンさんとハルカの方がよっぽどアウトローじゃない……何にも屈せず…何事も恐れない…)

 

(そうなりたかったのに…)

 

バチンッ

 

突然銀行が闇に包まれる。

 

ダダダダダ…!

 

何が起きているのか把握できていない間に銃声が鳴り響き。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

マーケットガード達の断末魔が続々とこだまする。

 

パッ!

 

光が点いた先に居たのは

 

「全員銃を捨ててその場に伏せなさい!」

 

「ぎ、銀行強盗…!?」

 

陸八魔アルの言う通り覆面を被った彼女達、強盗である。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

銃声が聞こえた時点で銀行員側のテーブルの下に移動したが…一体何やってるんだ…彼女達は…まさかそれ程までに追い詰められていたのか…?

 

「いいか、絶対に妙な事はしないでくれよ…弾丸1発で僕は死んでしまうからな」

 

「そちらこそ先程の様に人の神経を逆撫でするような話し方をあの人達にしないでくださいよ」

 

お互いに牽制し合いながら気配を殺す。

 

『え?ファウスト!?私がリーダーなんですか!?』

 

阿慈谷…だよな…どうして…?いや、意外と行動力あるからな…やりかねないっちゃあ…やりかねないか。いや、まだだ。確かに声も制服も彼女達そのものだ…だが、他人の空似なんて事も…

 

『ちなみに私は覆面水着団のクリスティーナだお♠』

 

ああ、駄目だ。間違いなく対策委員会の面々だ。そんなセンスの奴がこの世に2人も3人もいるよりかは同じ学校の奴が銀行強盗している方がまだ呑み込める。

 

『いつからそんな名前になったの?それにダサすぎるし』

 

やはり黒見は一般的感性を……いや、銀行強盗の時点で駄目だな。

 

『うへへ、ファウストさんは怒らせると怖いんだぞ〜!』

 

お前…

 

『あれ…あいつら…』

 

浅黄が小声で何かに気が付いたような声を挙げる。なんだ、何か弱点でも…

 

『アビドス…』

 

何故……知っているんだ…?

 

『ね、狙いは私達でしょうか!?それなら返り討ちにしちゃいましょうか!?』

 

『いや…違うみたい…あの子たち…まさかここを?』

 

『ロハンちゃん流れ弾には気をつけてね』

 

「あ、ああ」

 

『さあ、そこのあなたこのバッグに入れて…』

 

『は、はい!現金でも金塊でもなんでもさしあげますっ!』

 

「同僚として恥ずかしいッ…強盗に屈するなんて…!」

 

「仕方ないさ、誰だって痛いのは嫌だろう」

 

「……せめて抗う姿勢の1つや2つ欲しいと思うのは我儘でしょうか…?」

 

「……自分が襲われた時にそうすれば良いんじゃあないか?」

 

現金や…金塊って言ってたよな…やはり手段を選ばない段階まで来てしまったのか…?

 

『ありったけ詰め込みました!』

 

(何あの人達…すっご〜い!ブラックマーケットの銀行を襲うだなんて!こんな大胆な計画を実行できるアウトローが存在したのね!…いいなぁ…)

 

『全然アルちゃん気が付いてないじゃん…』

 

『すごい目輝いているね』

 

あぁ…確かに凄いアウトローだもんな。はぁ…かなり不味いな…裏の黒幕によってはこれ…自分で自分達の首を絞める事態になりかねない…いや 、それ以前に…

 

『よし、全員撤収〜!』

 

その号令と共に彼女達は去っていく。

 

『1人も逃がすな!』

 

強盗団に屈していた銀行員が声を荒げる。

 

「今更…取り繕った所で」

 

「あんまり意地悪言ってやるな、頑張ったんだろう」

 

「はぁ…あなたいつまでこっち側にいる気ですか」

 

「ああ、そうだな…お互い幸運だったな」

 

「不幸中のって言うんですよ」

 

テーブルから顔を上げると伊草しかいなかった。

 

「伊草、陸八魔達は?」

 

「さ、さっきの強盗団を追いかけていきました」

 

「そうか」

 

恐らくアウトローメーターがハイになった陸八魔のストッパーになれるのはあの2人だけだろう。伊草だと同調して更にヤバい状態になりかねない。

 

「僕達も行こうぜ」

 

「は、はい」

 

覆面水着団…彼女達を逃さないように包囲網が形成されるだろう。はははッこれで彼女達は立派な……なあ、小鳥遊…お前何やってんだ?

 

 

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