岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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ROADKINGは振り返らない

 

 

 

「覆面水着団は?」

 

僕と伊草が追いついた時にはもう陸八魔達の姿しかそこには無かった。

 

「あ、あの…ロハンさんこれ見て!」

 

そう震えながら陸八魔が見せてきた鞄の中には大量の札束。

 

「…これは?」

 

「あの人達が置いていってくれたの!きっと私への餞別じゃないかしら!」

 

「そんな訳無いじゃん…」

 

「…もしかしてこれでもうご飯抜かなくても良いんですか?」

 

「伊草…あぁこれだけあればたらふく食えるよ、毎食フレンチでもいいくらいさ」

 

まさか、忘れていったのか…そんな訳あるか?苺を食べに苺狩りに行って苺食べずに帰ってくるようなものだぜ。つまりは…お金以外の何かが欲しかったって事だな。一体何が…いや、情報が足りないから憶測にしかならない…なら先ずは

 

「なあ君達、アビドスって知ってるか?」

 

「え?どうしてアビドスが急に…」

 

「……覆面水着団の正体の話?」

 

「えぇ~!そうなの!?アビドスが!?」

 

「ああ、彼女達はアビドス高等学校の生徒さ」

 

「そうだったのね……」

 

「うわぁ…アルちゃん凄いショック受けてる」

 

「…どうして岸部の口からアビドスの名前が?」

 

「いや、先ずは僕の質問に答えてくれ、君達はアビドスとどういう関係なんだ?」

 

「どういうって…今回の依頼の襲撃先よ、どうしたの?ロハンさん何かあったの?」

 

なるほど、縁って言うのは嫌な所で繋がっていくな。

 

「いや、お腹空いてて少し気が立ってたのかもしれないな…そうだ僕のオススメの店があるんだが一緒に行かないか?」

 

「へぇ~珍しい事もあるんだねー、良いじゃんそろそろお昼時だしロハンちゃんのオススメのお店気になるし」

 

「そうね!お金もあるし行きましょう!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「あの、ここって…」

 

「ラーメン柴関…」

 

「ああ、偶にここに来る事があってね…中入ろうぜ」

 

岸部はそう言うとさっさと中に入っていってしまう。その後ろに続いて2人が入っていく。私もも続いて入ろうとした時ムツキに呼び止められた。

 

「ねぇ、カヨコちゃん……ロハンちゃんどうしちゃったと思う?」

 

「……わからないね、色々話聞いてみないと」

 

ムツキの言う通り今の岸部は少し焦っている…様に見えた。

 

「そうだね」

 

「いらっしゃ…岸部じゃねえか」

 

岸部の顔を見た大将さんは少し嬉しそうだ。

 

「相変わらず…入りの少ない店だな、経営は大丈夫か?」

 

静かな店内を見渡しながらそんな事を言う。失礼な気もするけど…

 

「ああ、お前みたいな物好きが沢山いるんで何とかやってるよ、連れは……アビドスの子達じゃねぇのかい?」

 

私達を見ながら大将はそう言う。アビドスの子達…ってまさか…

 

「仕事仲間さ、今日はここを紹介しようと思ったんだがどうやら来たことあるようだ」

 

「あの、この間は…」

 

「この間って何だ?ウチはラーメン屋だから注文通りラーメンを出しただけだ」

 

大将さんは凄い、粋な人だと思う。

 

「……何があったのか知らないが…なんか迷惑をかけたなら僕に付けといてくれ」

 

「へっ馬鹿な事言ってないで早く席に着けよ」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

(はぁ…商売人のくせにお人好し過ぎるな)

 

席に着き、誰が何を言い出すのか無言の間が少し空き。

 

「薄々察してるかと思うが僕はアビドス生だ」

 

ファミレスで世間話でもするくらいの…なんて事のない事かの様に岸部はそう言う。

 

「まあ、そうなるよね」

 

「さっきの会話見てれば薄々はわかるよー」

 

「え、えぇ…そうよね…シッテタワ」

 

「そ、それで…もしかして…報復を?」

 

なら、例え同じ便利屋だとはいえハルカは岸部をを始末するために動くだろう。

 

「……別に君達が襲撃した事に対してどうこう思うことがあるわけじゃないさ、むしろ僕は君達で良かったとさえ思っている」

 

その言い草だと…

 

「岸部…それは私達の事舐めてるの?」

 

今、私の眼はとても鋭くなっていると思う。

 

「まさか、君達の強さは良く知ってるさ…それと同じくらい君達の気高さもな、君達は決して誘拐や人質に頼らない…悪ではあるが下衆ではないってな」

 

社長は手付金を貰わない。何故なら手付金を貰ってしまえばどんな下衆な事も依頼人の指示によってしなければならない事になる可能性があるから。

 

「ロ、ロハンさんっ…」

 

「こうして今、面と面を向かい合ってそれを明かしたのは『謝罪』するためさ」

 

「謝罪って…?」

 

「僕は便利屋68に所属している身として出来る限り君達の依頼の遂行をサポートするべきなのが道理だ、だが今回の依頼…僕の私的な理由で手伝わない事を許して欲しい」

 

岸部がは深々と頭を下げる。あの岸部ロハンがだ。私は内心飛び上がりそうな位驚く。

 

「元々岸部は戦闘系の依頼はやらないって話だったし、別に気にしないよ」

 

「そうそう、お金もこんなにあるし〜あ!もしアビドス潰れちゃったらさみんな便利屋来なよ」

 

「そうね!あのアウトローさ…心強いわ!」

 

「えぇ…絶対に気まずくなる…」

 

そもそも自分達を潰した相手と働ける訳ないよ。

 

「もし、そうなったら拾ってやってくれ…そう簡単にはいかないと思うがな」

 

「あ、そういえばアビドスの復興って言ってたけどどういう状況なの?」

 

「借金があってね」

 

「え、じゃあこのお金は…?」

 

さっきの鞄を見つめ、そう聞くが。

 

「いや、その程度じゃあとてもじゃないが返せないさ」

 

「その程度って…これ一億はあると思うけど…」

 

「少なくともその鞄9個分は必要だな」

 

ピキーン

 

空気が凍る。

 

「ひょぇぇぇぇ~!」

 

「良く、そんな状態で戦えるね」

 

弾代もばかにならないだろうに。

 

「きゅうこってきゅうおく?」

 

「アル様…し、しっかりしてください…!」

 

あまりに額の大きさに恐怖すら覚えかける。

 

「それって返せるの?」

 

「月々の利子の700万を返すので精一杯さ」

 

「なんか、あまり驚かなくなってきちゃった」

 

「……岸部でも返せないの?」

 

大人気漫画家の岸部ロハンなら返せるのではないか、そんな疑問を口に出す。

 

「返せるさ、流石に一括は無理だがな…そうだな…生活に影響を出さないなら6年程…多少生活の質を落とすなら2〜3年だな」

 

時々なんで岸部がウチにいるのかわからなくなる。

 

「じゃあ…」

 

「返せると返しても良いは=じゃないってことさ、それじゃあ納得できない奴らなんだよ」

 

「そうなんだ…」

 

「ああ、僕が全額払った暁には『アビドス高等学校』から『岸部ロハン記念高校』に名前変えてやるって言ったらバッシングを受けてね」

 

「それは受けるよ」

 

もうそこまで行くとダサいダサくないの次元じゃないよね。

 

「はい、お待ちどう様」

 

大将さんがラーメンを運んで来てくれる。

 

「バイトは居ないのかい?」

 

「午後からお願いしてるよ、午前はそんなに人来ないからな」

 

「そうか」

 

なんだか、気楽な関係に見える。プロフェッショナル同士気が合うのかな。

 

「………」

 

大将は厨房に戻らず、岸部の方をジッと見ている。

 

「……なんだよ、食べづらいな」

 

「気にすんなよ、ほらずずーっと」

 

「いただきます」

 

岸部は割り箸を使い麺をすすっていく。

 

「どうだ?」

 

「…いつも通りだよ」

 

「そうか」

 

それだけ聞くと大将さんは嬉しそうに戻っていった。

 

「君達も早く食べるんだな、伸びるぞ」

 

「「「「いただきます」」」」

 

私達も麺を啜り始めた。やっぱり凄い美味しい。

 

カランっ

 

お店の入り口が開く音がっ…!

 

ドがんっ!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……うぐ…」

 

耳鳴りと身体のあちこちが痛みで意識が覚醒した。彼は見た店の扉が開いた瞬間、手榴弾が投げ込まれたのが。彼を守るために覆いかぶさる鬼方の姿も。

 

「鬼方…?おい、しっかりしろ!!」

 

(おかしい、あの程度の爆発で…こんなにヘイローを持つ鬼方がここまでのダメージを受ける筈がない…!)

 

「ロ、ロハンさん…!何がッ…ムツキっ!ハルカ!?」

 

陸八魔も恐らく庇われたのだろう。鬼方と同じ様に伊草も浅黄も目を覚まさない。

 

「まさか、アビドス…!」

 

「馬鹿を言うな…この店に手榴弾を投げ込む訳がない!」

 

「じゃあ誰なの!?」

 

「今は言い合ってる場合じゃないだろう?」

 

柴が店の奥から歩いてくる。

 

「柴…怪我は?」

 

「お前達より離れてたからな、ピンピンしてるよ」

 

柴大将は店の厨房に居たため爆発を直接受けることは無かった。

 

「その3人急いで病院に連れて行ったほうがいい」

 

「とりあえず建物から出なければ…生き埋めになる可能性もある」

 

「そうね、私がカヨコを運ぶから…ロハンさんハルカをお願い」

 

「じゃ、俺が残ったこの子だな」

 

「いや、投げ込んだ相手が待ち構えているかもしれない、僕が2人何とか担ぐから陸八魔は戦闘の用意をしてくれ」

 

「わかったわ…絶対許さない」

 

「岸部は小さめな2人を運べ」

 

「ああ、鬼方は頼む」

 

周囲を警戒しながら何とか外に3人を運び込む。

 

 

 

ゲヘナ風紀委員会火宮チナツが判断を扇ぐ。

 

「目標を発見…どうしますか?」

 

「一旦待機…自爆か?」

 

訝しげな表情を浮かべる同じく風紀委員銀鏡イオリ。

 

 

 

かなりの数の集団がこちらの様子を伺っているのがわかった。

 

「あれは…?」

 

「ゲヘナの風紀委員会…!どうして…!?」

 

「なんだって…?」

 

他校の風紀委員会が…どうしてここまで…ここはアビドスの自治区じゃあないのか…武力衝突になりかねないぞ…?

 

「便利屋68に告ぐ、抵抗をせず大人しくお縄につけ!」

 

勇ましい声が響く。

 

「君達、僕はアビドス高等学校所属なんだがどんな要件でここまでの横暴を行っているんだ!」

 

「ウチの厄介者共の確保の為だ、邪魔するならお前も捕縛対象だが?」

 

「……よっぽど考える頭がないようだが…これは立派な侵略行為って呼べるんじゃないか!」

 

「どうしますか?」

 

「無視でいい、そもそも制服着てないしな後から言い訳は出来るだろ」

 

 

 

一向に引く様子を見せない風紀委員会。

 

「全然引く気配ないな…」

 

「私1人じゃこの人数…」

 

「おい!怪我人がいるのが見えないのか!まさか君達そんなに人数が居て全員節穴なのか!」

 

「まさかウチの店を爆破したのお前らじゃないよな!」

 

「どうやら便利屋の3人が意識不明、民間人が1名巻き込まれているようです」

 

「ふん、めんどくさくなくて丁度いい、歩兵第1…奴らを確保しろ」

 

隊列を成してこちらに向かってくる風紀委員。

 

「どうすれば…!」

 

「陸八魔…任せた」

 

「え…」

 

向かってくる歩兵のうち1人の腕を極める。

 

「君達動くな!動いたらこいつの腕は凄いことになるぞ!」

 

「アビドスの1人が人質をとりました」

 

「公務を妨害した時点で敵だ」

 

「……ですが、どうやら岸部ロハンとの事」

 

「……誰だ…?強いのか?」

 

「人気漫画家…だそうです」

 

「へぇ、関係ない行け」

 

「ヘイローがない様なので近接戦で制圧してください」

 

無情にも人質を1人取った程度で止まる組織では無かった。岸部ロハンを取り押さえようと5人ほどが向かってくる。

 

「うちの客に何してんだ!」

 

柴大将のドロップキックが炸裂し、不意を突かれた形で進行は止まる。

 

「もう1人の民間人も…だそうです」

 

「手っ取り早く全員やれて楽だな」

 

ブーーーーン

 

遠くの方からバイクが走ってくる。

 

「今度は何だ?」

 

「あれは…無人のバイクです!」

 

「まさか…!お前ら逃がすな!」

 

狙いに気が付いた風紀委員会が急ぐがもう遅い。

 

「陸八魔!行け!」

 

腕につけた『ROADKING』と連動している時計を投げ渡す。

 

『イソゲイソゲ』

 

急いでサイドカーに3人を座らせ

 

「…ごめん…ロハンさんっ」

 

ROADKINGは後ろを振り向かない。

 

「貴様らっ!!」

 

「生憎急病人がいたんだ特例で許してくれよ」

 

「ふざけるな、公務妨害で拘束する!」

 

地面に身体を押し付けられ身動きが取れなくなる。

 

「…すまない柴…巻き込んでしまって」

 

「店に来る頻度上げたら許してやるよ」

 

ダダダダー!

 

銃弾によって砂埃が舞う。

 

「くっ!なんだ!?」

 

ドガッバキッ

 

僕を抑えていた風紀委員が蹴散らされる。

 

「ロハン、大将大丈夫?」

 

「ちょっ、シロコ先輩…いきなり撃つなんて…」

 

〝珍しく連絡来たと思ったら『助けてくれ』って心臓止まるかと思ったよ〟

 

「…助かったよ」

 

『何がどうなったら…こんな状況に』

 

本当にごもっともだ。

 

「どうやら…アビドス対策委員会の面々と…あれは…」

 

「シャーレの先生か」

 

闘いの予感が両者に走った。

 

 

 

 

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ヘイロー特化爆弾

 

ヘイローを持つ人間に対して強い効果を発揮する爆弾、ヘイローを破壊する事は出来ないが一般的な生徒だと3日間は動く事が出来ないほどのダメージを負ってしまう。

 

 

 




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