『一体どんな要件があってこんな事を!』
明らかな他校の自治権の侵害、許される行為では無いと詰め寄る奥空アヤネ。
「要件はウチの厄介者共…便利屋68の捕縛だ」
「それがなんでロハン先輩と大将を捕まえる事になるのよ!」
「なんでもなにも、そいつらのせいで便利屋を逃がしたんだ、公務の妨害…捕縛する権利はあるだろ?」
「それは…本当?」
「「ああ、本当だ」」
至極当然の様にそう言う2人。アヤネは頭を抱えそうになった。
「じゃあ…お店がああなってるのは…便利屋が…いやそれだと逃がす意味無いし…」
「その便利屋って子達と岸部が一緒に食いに来たんだよ、それで急に衝撃が来てよ」
「手榴弾が投げ込まれたんだ」
「手榴弾…!?」
「待ってください、便利屋とロハンくんがどうして…?」
「どうしてもこうしても…仲間と飯を食べる事がそんなに変か?」
変とか変でないとかそういう話では無いとその場のアビドス生は思った。便利屋68はアビドスを潰そうとしている組織だ。何故その組織にアビドス生である岸部ロハンが所属しているのか。
「仲間って!裏切ってたの!?」
「落ち着いてセリカ」
「あのな、僕だってまさか君達と彼女達が争ってるだなんて知らなかったよ」
「知らなかったって!」
知らないで済む問題では無いと詰め寄ろうとするが…
「へぇ、じゃあお前を餌に便利屋を捕まえるのもアリだな」
「……ちょっと待ってくださいあっちにはシャーレの…」
「このままじゃこっちの面子丸潰れだ、どっちにしろの話だろ」
場の収集がつかなくなっていく。
『……ホシノ先輩とも繋がらないし…どうすれば…』
普段なら連絡が遅れることはあれどもここまで遅れる事は無かった。小鳥遊ホシノの判断を待つことは出来ない。
〝このままロハンを引き渡しちゃう?〟
「それは…」
「絶対無し、風紀委員を黙らせる」
「シロコちゃん…?!」
「もう!後で話聞くからね!…ここまで好き勝手やられて黙ってられないし」
『……やるしかないですね…』
「アビドス生が臨戦態勢に入りました」
「総員、攻撃ー!」
「ああ…」
チナツは思った、シャーレの先生が向こうにいる時点でこちらの勝ち目はほぼ無いだろうと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「私達が…負けた…!?」
銀髪の風紀委員が驚くのも無理は無いだろう。銀髪意外の面々は烏合と言っても良いかもしれないがそれでも5倍以上の人数差を全く感じさせない勢いで、倒れる人間が増えてった。ああいうのを破竹の勢いっていうんだろうな。
〝みんなお疲れ様〟
彼女達だけではこう上手くはいかなかっただろう。シャーレの先生。やはりこの人の持つ指揮能力は異常としか言えないだろう。
〝元気にしてた?〟
「お久しぶりです先生…先生がそちらにいる時点で後退を選ぶべきでした」
『アビドス対策委員会の奥空アヤネです、所属をお願いします』
「それは…『それは私から答えさせていただきます』
銀髪が答えようとするのに対して食い気味に割って入る声。
『通信…』
「アコちゃん…」
「アコ行政官…」
行政官というと…2番手か。
『こんにちは、アビドスの皆様、私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します』
言い方は悪いがかなり胡散臭い奴だな。
『今の状況について説明させていただきますがよろしいですか?』
「アコちゃん…その…」
さっきまでの勇ましい様子はどこへやらどうやら銀髪は行政官に頭が上がらないらしい。
『イオリ、反省文のテンプレートは私の左の引き出しにあるのご存知ですよね』
「………」
気持ちはわかる。僕も反省文を書かされた事があるが、
「うへぇ…これなら書かないほうがマシだよ〜」
なんて言われた事がある。それからは一度足りとも書いてないがな。
『行政官ということは…風紀委員会のナンバー2…』
ああ、なるほど…だから風紀委員達は身体に鞭打って銃を構えてるのか
『あら、実際はそう対した物ではありません、あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして』
人となりを見抜く裏技なんだが、そいつの周りの人間をみればそいつ自身が表するよりも正確な情報が得られる。アコという人間が普段接しているであろう風紀委員の反応は…
「本当にそうならそこにいる風紀委員達はそんなに緊張しないと思う」
「だ、誰が緊張してるって!?」
どうやらかなり人望があるらしい。
「……なるほど、素晴らしい洞察力をお持ちのようですね、砂狼シロコさん」
「………」
砂狼は警戒していて返事をしないようだ、折角自分が優位に立てそうな所だったのだが勿体ないな。
「アビドスには生徒会の面々のみが残っていると聞きましたが、それは皆さんのようですね」
『私たちは対策委員会です』
『奥空さん…でしたよね?それでは生徒会の方はいらっしゃいますか?私は生徒会の方々とお話したいのですが…』
「アビドスの生徒会は…!」
「待て、黒見……僕がその生徒会長だって言ったら素直に出ていってくれるのか?」
『岸部ロハンさんですよね……嘘はいけませんよ私達は信頼を築いていかないといけないんですから』
「信頼ってのは包囲して銃口で囲む事を言うんだったか?だとしたら僕は今まで漫画を描いてきてかなり誤用をしてしまっていたようだ」
「ふふ…そうですよね、全員武器を下ろしてください」
スッ
「あら…」
「本当に…銃を下ろした…?」
「先ほどまでの愚行は、私の方から謝罪させていただきます」
「なっ、私は命令通りにやっただけなんだけどっ!?」
「命令に民間人を拘束しろだなんて言葉が含まれていますか?」
「いや、だって…抵抗してきたし…」
「他校の自治区付近なのだからその辺りは注意するべきでしょう?」
付近…だって…?
「失礼しました、私たちゲヘナの風紀委員会はあくまで私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました、あまり望ましくない出来事もありましたがまだ違法行為とは言いきれないでしょう…ご理解いただけませんか?」
「……こちらにも非があったのは認めるさ、だが…建前だけ述べて「はいそうですか、お互い大変ですね」で済む問題でもないだろう?」
ましてやここでこれを見逃すと後々大きな問題になるだろう。
『建前…ですか』
「校則違反した奴らってのは便利屋68の面々の事だよな」
『はい、そうですが?』
「じゃあ、わざわざ他校の自治区で彼女達を捕まえる必要は無い」
リスクを負う必要は無い。
「僕達は便利屋だ、依頼があれば依頼者と話し依頼をこなす…本当に彼女達だけを捕まえたいんだったら偽の依頼でもしておびき寄せれば良いじゃあないか」
『……』
「何故、そうせずに今回この暴挙に乗りでたか…」
アビドスが目当て?違う、これまで散々チャンスはあった。
ただの見せしめ? 違う、このやり方はさらなる反発を生む。
今までのアビドスと違う大きな点、それは、
「シャーレの先生だな、君達…君の目当ては…」
『なるほど…漫画だけじゃないようですね…まあ…構いません』
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
『6時…9時…12時…15時…囲むように増員です…!』
「こんなに…!」
よっぽどシャーレが怖いようだ。
『少々過剰かと思われたのですが…シャーレを相手にするのですから…これくらいは…大は少を兼ねると言いますもんね☆』
「それは加減の分からない馬鹿が使う言葉だぞ」
『負け犬の遠吠えですか?』
「図星を突かれてから本気出す奴には言われたく無いな」
『まあ、確かにあなたの発言はほぼ正解と言っても良いでしょう…最悪シャーレとの衝突も考えていました、しかしこの状況を意図的に作り出した訳では無いのです』
「バラバラに散歩してたら偶然ここに集結したのか?」
『はぁ…事の次第をお話ししましょう』
ピッ
彼女が語った内容は、
ゲヘナと長らく敵対していたトリニティの生徒会であるティーパティがシャーレに関する報告書を入手したと報告があった。それに対抗してシャーレの情報を集めた結果一つの結論に達する。
シャーレは危険因子である。
万が一トリニティと結ぶ条約に影響があればかなりまずいということ風紀委員会の擁護下に置いておきたい。
「ん、状況がわかりやすくなった」
「私達が先生をみすみす連れて行かせるとでも思った?」
『まあ、そうなりますよね…皆さんゲヘナの風紀委員会は必要と判断すれば武力を行使する事を遠慮しません』
『「「「…!!」」」』
アビドスは武器を構える。
「一つ良いか?」
『…またあなたですか』
「君達、かなり運が良かったな」
『はい?まあ、こうしてこの状況に…』
「いや?ついででやられるほど僕の仲間は弱くない、もし君達と衝突すれば十中八九君達は地面を舐める事になるな」
『たらればの話なんてする必要あります?…便利屋はそもそもこの場に…』
「いいか、人の話はしっかり聞くもんだぜ?僕は運が良かったって言ったんだ、行政官…左の引き出しの用意しておくんだな」
『何を――』
ドガンッ!
爆風が空気を揺らし、砂を持ち上げる。
『これは…!?』
砂嵐が収まるとそこには
「お待たせ、ロハンさん」
「3人は?」
「…今は病院で眠っているわ」
身体中に武器や爆弾を巻き付けた陸八魔がいた。
「電話聞いてたか?」
「えぇ私達を随分な扱いしてくれたから…お礼しに来たわ」
「手伝ってくれるの?」
「いえ、違うわ…あなた達が私を手伝うの」
『敵の包囲を突破します!先生っ指揮を!』
────────────────────────
少し、未来の話。
「何故、アビドス校を狙うんだ?」
アビドスの自治区だったそれらの土地の大半を目の前の男は所有している。今更アビドス校の土地があろうと無かろうと…
「私の取引相手が欲する者があるからだな、寧ろ何故君たちがあそこに固執するのか一度聞いてみたかった所だ」
「……さあ、僕も知りたいね…欲する者といったな…それは小鳥遊ホシノの事か?」
あいつを欲する理由は多々あるだろう。
「ほう…そこまで推測出来ているのか」
「なら、小鳥遊と個人間でやり取りしてくれ、わざわざ僕達を巻き込むな」
「それは首を縦に振らない彼女に言うんだな、こうして話をしてみたが君がアビドスに拘る理由は無いように思えるがね」
数分話しただけで底が見えるほど僕は浅くない。
「忠告なんだが、君たちがやっている行為は眠れる獅子を呼び覚ますに他ならない…必ず後悔するぜ」
「眠れる獅子かそれは恐ろしい…フ…フッ眠れる獅子がどうなったか知っているだろう?」
「君達が随分と丁寧に起こすもんだから腐りようが無いな」
僕達はしばらく黙って見つめ合う。
ピーピー!
部屋に備え付けてある無線が音を鳴らす。
「なんだ?……なに侵入者だと…ああ、そうか…わかった」
ピッ
「ついて来い岸部ロハン、眠れる獅子のお目覚めだ」
フルアーマーアルちゃん
アルちゃんヘッド・・・ダイナマイトを巻いている。
アルちゃんアイ・・・ハードボイルな瞳。
アルちゃんイヤー・・・敵の心音を聞き逃さない。
アルちゃんライトハンド・・・鋼鉄を貫く。ショットガンを片手で撃つ。
アルちゃんレフトハンド・・・コンクリートが豆腐の如く砕ける。スナイパーライフルを片手で撃つ。
アルちゃんポンポン・・・爆弾とマシンガンとハンドガンが仕込んである。
アルちゃんコート・・・爆弾を沢山仕込んでいる。
アルちゃんハート・・・不安を押し殺している。