岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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アウトローは止まれない

 

 

ゲヘナ風紀委員会の包囲網を突破するために、前進を続ける一同。

 

1人1人の強さ、手強さはあまり無いとはいえ人数が人数。対策委員会だけであれば疲労した所に雪崩込み対応できなくなった所を叩かれていただろう。

 

バンッ

 

ジッ

 

 

頭部に向け進む弾丸が首を傾げることで後ろに素通りしていく。驚きに弾丸を放った風紀委員は一瞬隙が生まれる。

 

「これあげるわ」

 

「えっ…わっ!」

 

気がつけば接近していた陸八魔アルに放り投げられる。当然仲間は彼女の事を受け止めようとするだろう。

 

「ありがっ」

 

ドガンッ

 

胸ポケットに入れられていた、それが弾けた。

美しき仲間意識は花火となり、彼女達の意識を奪う。

先の弾丸によって頭部のダイナマイトの導火線に火がついていたのだ。

 

「やる事えげつない」

 

「なにか、あの人雰囲気が…」

 

敵を捌きながら、アビドス生は彼女から感じとっていた…強者特有の気配を。1人で戦況をどうにでもできるのでは無いかと思わされる圧。

 

〝シロコ、左を警戒して〟

 

「わかった」

 

そしてそれは先生にもわかっていた。だから先生は彼女には指示を出していない…彼女をサポートする形にアビドス生を動かしている。

 

今の彼女を一言で表すと

 

 

 

 

「第一陣崩壊寸前です!」

 

『まさか…これ程とは…』

 

アビドス生の連携、先生の指揮は勿論の事やはり予想外だったのは…

 

『陸八魔…アル…』

 

無双…近づけばショットガンで張られる弾幕に狩られ、固まれば爆弾によって蹴散らされ、それらを乗り越え近接戦を仕掛ければ文字通り片手間で処理される。

 

「あれじゃまるで…」

 

『イオリ、まるで…なんですか?』

 

「いやっ…その…なんでもないかなぁ!」

 

言いたいことはわかっていた、だから言わせたくなかった。

 

便利屋68の社長陸八魔アル…取るに足らない存在そう見下していた。だから今回の件で旨い口実として利用した…しようとした。それがどうだ、彼女1人に押され一瞬でも……委員長の様だと思わされた。屈辱だった。

 

『君達は地面を舐めることになるな』

 

その言葉が脳裏を過ぎる。

 

『……ッ!』

 

「やってやる…!」

 

銀鏡イオリは駆け出す、彼女自身の意地を、風紀委員の誇りを、規則違反者への怒りを力に変え。彼女の放った弾丸は3発。1発目で陸八魔アルの持つ銃を破壊し2発目で体勢を崩し3発目でトドメを刺す。そのつもりであった。

 

彼女の失敗は破壊しようとしたその銃がショットガンであったこと。

 

ピンッ……ドガンッ!!!

 

(まさか…手榴弾でッ…!)

 

この銃を壊される位なら多少の爆風を受けた方が良い。そしてその爆風によって全ての弾丸が彼女に届く事なく。

 

「このッ……!」

 

体勢を崩した銀鏡イオリを

 

「………」

 

ダダダダダダダダダッ

 

鉛の嵐が闇へと誘った。

 

「陸八魔、大丈夫か?」

 

「………」

 

「なぁ、陸八魔」

 

「…大丈夫よ、まだやれるから」

 

「そうか」

 

「…良いのか岸部…あのままだと…」

 

「どっちにしろさ…今は陸八魔が中心で何とか捌けているんだ…それに本人が大丈夫って言ってるならそうなんだろう」

 

柴の目にはそうは見えなかった。当然岸部の目にも。だがこの場を突破するためにも今の状態の彼女の力がどうしても必要不可欠である事。身体を動かし続けることで便利屋の仲間の事を考えないようにしている事。その全てが彼の口から止まれの言葉を奪った。

 

ザッザッザッザッザッザッザッザッ

 

地面と靴が接する音が更に聞こえてくる。

 

「まだこんなにいるの…!?」

 

「それでもやらないと」

 

「弾薬が持つか…」

 

追加戦力の投入。彼女達アビドスにも着実に疲労が溜まってきていた。

 

〝まだ、いける?〟

 

「当然!」

 

組織のナンバー2がこの規模の戦力を独断で動かす事が果たして可能なのだろうか。先生の頭にそんな疑問が浮かぶ。

 

『流石にこれ以上は……委員長にバレたら私も反省文ですね…』

 

だが、引くに引けない。もう何人やられたのか。幹部すらも…先生を拘束するという成果を持って帰らなければ面子丸潰れどころの話ではない。

 

『さあ、最終ラウンドと言ったところでしょうか…風紀委員会攻撃を―』

 

『アコ』

 

号令を一つの声が遮る。

 

『え……ひ、ヒナ委員長!』

 

先ほどまでの様子はどこへやらどこかでみたような反応を見せる行政官。

 

「委員長…?」

 

「トップって事よね」

 

(確か陸八魔はゲヘナの風紀委員長の事が…)

 

「………」

 

岸部はそう思い陸八魔の様子をみたが…ただ、ジッとしていた。

 

『今何処にいるの?』

 

『わ、私は…そのほかの風紀委員のメンバーと…ゲヘナ近郊の市内のパトロールを…』

 

「嘘つき!」

 

「どうやら独断行動だったようですね…」

 

『い、委員長こそ出張では…』

 

『さっき帰ってきた』

 

『そ、そうですか…私はその、迅速に対応しなければならない用事がありまして…後ほど…』

 

「ロハンさん、先生私の後ろに」

 

陸八魔が2人の前に立つ。

 

『パトロール中に?何かあったの?』

 

『その…それは…』

 

『他校の自治区で、委員会メンバーを独断で運用するような事が?」

 

コツコツコツコツ

 

『え…?』

 

「あれが…」

 

「へぇ」

 

ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナが姿をあらわす。

 

「アコ、説明」

 

『そ、そのこれは……素行の悪い生徒を捕まえようと…』

 

「おいおいおいおい、君ぃそれはついでだって言ってたじゃあないか〜?ほら、君の高尚な目的を上司に教えてやれよ仲間外れは可哀想だぞ」

 

「水を得た魚ってこういう事を言うのね…」

 

黒見が呆れたように呟いた。

 

「……で?」

 

『本当の事を…』

 

「いや、もう察したからいい……ゲヘナの障害になりうる危険因子の除去…政治的な活動の一環ってとこね……詳しい話は帰ってから、謹慎していなさいアコ」

 

『……はい』

 

そう返事をしてアコは通信を切った。

 

「じゃあ仕切り直そうか」

 

砂狼が好戦的に風紀委員長を見据える。その姿に岸部は感心すら覚えた。

 

『ちょっと待ってください!なんでそんな好戦的なんですか!?ゲヘナ風紀委員長といえばキヴォトスでも匹敵する人間を探すのが難しい人物です!…ここは一旦交渉を…』

 

「部下の首輪もろくにつけられないような奴だ、案外付け入る隙があるんじゃないか?」

 

『どうして煽るような事を言うんですか!!』

 

「そこら辺どう思う?」

 

「……確かに私に言わずに事前通達無しでの他校の自治区における無断兵力運用、および他校生徒との衝突を行った…けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実」

 

「おいおいおいおいおい、怪我人を病院に連れてく救護活動をゲヘナでは公務の妨害っていうのかい?前提としてここはアビドスなんだぜ…そもそもその公務を行う権利があるのかという話になるだろ、何だ君達、連邦捜査部にでも所属先を変えるのか」

 

現在キヴォトスで他校の権利を無視できる組織はシャーレしか無い。

 

行政官の手を離れたとはいえ、それよりも上の執行権を持つ人間がいる。つまるところ戦力差は変わらない…絶望的に変わった。会話で間を持たせ、武力行使を行わせない方法を考える。最悪の場合を考え岸部ロハンは切り札を使用することを視野に入れ始めた。

 

『ちょっと…!』

「僕を止める暇があるなら、早く小鳥遊を呼ぶか何か切り抜ける手立てを考えてくれ……風紀委員長に真っ向から対抗できるのはあいつくらいだろ」

 

もしくは

 

今の陸八魔アルを空崎ヒナにぶつけるという案が彼の頭を一瞬過ぎる。確かに一方的に倒されることは無いだろう。だが、これ以上負担をかけ続ければ何か決定的な物が狂いだす、そんな予感が彼に危険視号を発する。

 

「……小鳥遊…?」

 

何か心当たりがあるような素振りを見せた空崎ヒナ。これ幸いにと

 

「小鳥遊ホシノは怖いぜ、何せ山を割り火を吹き…」

 

「火を吹きなんだって?」

 

新たな声がその場に響く。

 

「!!」

 

「ホシノ先輩!」

 

「ごめん、お昼寝してたら少し遅れちゃった、随分賑やかだからお祭りでもやってるのかと思ったよ〜」

 

「小鳥遊……ホシノ」

 

驚いた様子で目を見開き固まる。

 

「昼寝って!こっちがどれだけ大変だったか…ゲヘナのやつらが…!」

 

「うーん…風紀委員会だよねぇ…あの子を追ってここまで来たの?」

 

制服にチラリと目をやり、陸八魔を指す。

 

「……」

 

「事情は分からないけど…対策委員会全員集結したということで……やる?風紀委員長ちゃん」

 

「1年生の時とは随分変わった、人違いだと思うほどに」

 

「本当に老いるってのは恐ろしいよな」

 

「……色々と知ってるんだね」

 

「情報部にいた頃、各学園の要注意人物を調べていたから…でもまさか()()()()の後アビドスを去ったと思ったけど」

 

あの事件…その場にいる殆どの人間が?を浮かべる。だが、強者2人の会話に挟まろうとも思えなかった。

 

「図太いからな、きっと隕石が降っても普通に登校してくるぞ」

 

「……ロハン君後で話ね」

 

「……」

 

めんどくさそうに頭を掻く岸部。変なちゃちゃ入れなきゃ良いのにと全員が思った。

 

「だからシャーレが……まあいい、私も戦うためにここに来たわけじゃない……イオリは……はぁチナツ撤収準備、帰るよ」

 

「…はい」

 

スッ

 

空崎ヒナはアビドス生に向かって頭を下げた。

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、他校の自治区で騒ぎを起こしたことゲヘナ風紀委員会を代表してアビドス対策委員会に公式に謝罪する」

 

まさかと驚くアビドス生達。あの行政官なら、頭を下げ切るまでで3分は使うだろうと岸部は思った。

 

「今後、無断でここに立ち入る事は無いと約束する」

 

「委員長いいんですか便利屋は…」

 

「言ったでしょ、戦うつもりで来てないって……今のあの子は、少し面倒」

 

チラリと陸八魔の方を見るとそのまま撤退して行った。

 

「嵐の様に去っていった」

 

「…私もあの子達の所に戻るわ」

 

「ああ、後で僕も行くよ病室の番号教えてくれ」

 

「何とか一段落したって所だねぇ……事情わからないけど」

 

「私達も巻き込まれたみたいな物よ、ロハン先輩から助けてって連絡が来たと思えば、柴関があんな事になってるし……ロハン先輩が便利屋だったらしいし」

 

「…へぇーまさかだけどロハン君、裏切ってたりする?」

 

言い表せない圧をロハン以外は感じ取った。

 

「便利屋が君達を潰すためだけの企業ならそうなんじゃあないか?あのな、言わせてもらうがこの重要事態に連絡がつかなくなってた奴にどうこう言われる筋合い無いね」

 

『なんでそんな喧嘩腰で!もう…わからないだらけだし…』

 

「アヤネちゃん……」

 

「休憩した方が良さそうですね、明日状況の整理しましょう」

 

「……じゃあ今日は一旦かいさーん、明日教室でね」

 

疲れた身体を引きずりながら各々思う場所に何処かに向かう。

 

「店、どうすっかな…」

 

「なあ、柴」

 

瓦礫を見つめる背に問いかける。

 

「どうした?」

 

「ここの土地の権利は今誰が持っている?」

 

 

 

 

砂狼シロコが撤退していく風紀委員長が起こした行動が気になり先生に問う。

 

 

「先生、さっき風紀委員長になんて言われたの?」

 

〝それは…〟

 

『アビドスの捨てられた砂漠でカイザーコーポレーションが何かを企んでいる』

 

「………」

 

〝明日、みんなに共有するね〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてもここには影が付き纏う。

 

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