岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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この世で一番強いもの〜①

 

「『この世で一番強いもの』は何かだって?」

 

 私は目の前の青年に問いかけてみた。

 

「それ、絵描きの僕に聞くのかい?」

 

 それもそうだが彼が思う強いものが知りたいのもまた事実だ。

 

「そうだなあ……絵描きとしてはペンと言いたい所だかねぇ」

 

 私は意外だなと思った。彼なら即答でペン、もしくは自分の作品と言うだろうと予想していたが。流石に銃や剣には勝てないと言う事だろうか? 私は訊ねる

 

「おいおいおい、僕からしたら銃や剣なんてくだらなくてしょうがないね。その2つと比べるんだったらペンの圧勝だね。銃や剣ってのは使った結果が1つしかないじゃあ無いか」

 

 私はどういう意味だろうと思って続きを促す。すると彼は珈琲を一口、口に含み

 

「そのまんまの意味さ、銃や剣は穴を開けるか斬るかしかないじゃあないか」

 

 とニヤッと笑った。私は吹っ飛ばしたりも出来るとおちゃらけて言うと彼は呆れた顔をして

 

「あのなあ、別に僕はそういう事を言ってるわけじゃあ無いんだがなあ」

 

 彼は指を2本立ててこう言った。

 

「剣も銃も結果が予想できてつまらないって事さ、それに比べてペンは書くまでそいつが何をどう表現するのか、未知数なのさ」

 

 でも、ペンは1番強いものじゃないんでしょ? 

 

「まあ、『あの日』に限って言えばそうかもしれないねぇ」

 

 あの日って? 

 

「これから話してやるさ」

 

 そう言って彼は立ち上がる

 

「結構長話になるからな、珈琲のおかわりいるかい?」

 

 そう訊ねる彼に私は空のマグカップを差し出した。 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────

 

 

 

 

 僕の名前は岸部ロハン。漫画家と画家をしている。アビドス高等学校1年生で便利屋68の広報を担当している。

 

 現在僕は依頼したとある物が遂に完成したと連絡を受けてわざわざ雨の日にミレニアム学園に来ている。僕は電話で予約していた見学許可証を貰いに、総合案内へ向かう。

 

 

 

「すまない、予約していた岸部ロハンと言うものだが見学許可証はここで貰えるのかい?」

 

 

 

「はい、只今セミナーの方へ確認中でございますので少々お待ち下さい」

 

 

 こういう時の少々って全然少々じゃあ無いんだよなあ。何て待っていると受付の子が

 

「お待ちしていただいて申し訳ないのですが……ご迷惑で無ければサインをいただけると……」

 

 

「別に構わないが仕事中に大丈夫なのかい?」

 

「死ぬ気で隠しますので」

 

「いいね、そういうの嫌いじゃあない」

 

 思ったより強かなやつだな。ペンを取り出しサインを描き、少し雑談をしていると後ろからキッチリとしたような足音が聞こえてきた。

 

「セミナー1年の早瀬ユウカです。今回案内をさせていただきます」

 

「僕は岸部ロハン、知っていると思うが漫画家だ。それと僕は案内頼んだを覚えは無いんだが……」

 

「岸部さんの事を疑っているわけでは無いのですが……一応他校の生徒ではあるので念の為という事らしいです」

 

「そうか、そういう事なら確かに納得できる」

 

「ご理解いただけて助かります」

 

「早速ですまないがエンジニア部ってところ

 案内頼めるかい?」

 

「任せてください」

 

 そう言って歩き出す早瀬に僕は付いていく

 

「今回、岸部さんは何を依頼したんですか?」

 

「取材の為の乗り物が欲しくてね」

 

「乗り物……ですか? あの、岸部さん漫画家なんですよね? 言い方は悪いかもしれませんがあんまり必要性を感じ無いのですが……」

 

 そう彼女が訝しげな表情を浮かべる。

 

「漫画の資料を自分の足で集めたくてね」

 

「映像で良くないですか?」

 

「おいおいおい、仮に僕が映像の雨を元に絵を描くとするだろ? それを専門家に見せた場合そいつは必ず映像を元にしたと判るだろうね」

 

 廊下の窓を開け

 

「それは決して僕が映像を描こうとしたわけではなく」

 

 手を伸ばし雨に触れる

 

「雨の質感、重さ、強弱等を自分で経験した通りに描くからだ」

 

 窓を閉め手をハンカチで拭く

 

「つまり僕が欲しいのはリアリティなんだ、自分で経験しそれを漫画にするというリアリティ。そのためにも行動範囲を広げたくてね、納得はできたかい?」

 

「全く理解できませんが……相当自分の仕事に自信があると言う事はよーくわかりました」

 

「そうかい」

 

「ほら、着きましたよエンジニア部の部室」

 

「ここがそうなのか」

 

「入るわよー?」

 

 早瀬がドアをノックをすると中から

 

「どうぞ」

 

 僕が早瀬の後について中に入るとそこには立派なドックが広がっていた。

 

「なあ、早瀬」

 

「どうしたんです?」

 

「ここの写真って撮ってもいいのかい?」

 

「流石に駄目ですね」

 

「そうか……」

 

「君が依頼主の?」

 

 声の主と目が合う

 

「岸部ロハンだ、絵描きをやっている。所属はアビドス高等学校」

 

「私の名前は白石ウタハ、エンジニア部の部長をしているよ」

 

「へぇ……部長なんだな、他の部員はどこだい?」

 

「いえ、現在エンジニア部の部員は彼女しかいません」

 

「へぇ……部活の基準的には問題ないのかい?」

 

 こういうのって10人以上部員が必要みたいな面倒くさいルールが付き物なんだよなぁ。

 

「確かに基準は満たしていませんが彼女には実績があるので」

 

 なるほどな、そういう実績を大事にしてくれる組織ってのは嫌いじゃあない。

 

「いずれ基準は満たすさ、それはそれとしてかの有名漫画家と話せるとは光栄だ。私は君の漫画とてもロマンに溢れていて好ましいね」

 

 僕はリアリティを大事にしているが、決してロマンというのを疎かにした事はない。ロマンとは夢だ。

 

 空を自由に飛びたい、超能力で物を動かしたい、巨大なロボットを操縦したい、どれも絵空事でしかないと笑う奴らもいるだろう。

 

 だが漫画家でそれを笑う奴は誰一人居ないと断言できる。それは僕達の存在を否定する事になるからだ。僕達は有り得ない事を絵を通して実現させる。それが読者に夢を見せ、憧れを与える。

 

 だから僕はリアリティとロマンどちらも欠かしたことは無いと断言できる

 

「ありがとう、このまま熱い握手でも交わしたいところだが……僕の依頼した物は何処にあるんだい?」

 

「それはここにあるよ」

 

 そう言うと白石がシートを被せられた物体の前に移動する。中々粋な事をしてくるじゃあ無いか

 

「結構大きいですね……」

 

「あんまり勿体ぶられると震えが止まらなくなってしまいそうだね」

 

「えぇ……何か危ない症状出てるじゃ無いですか」

 

「岸部君の為にも早めに下ろすとしよう」

 

 そう言って彼女がシートに手を掛け

 

「さあ、是非とも見てくれ!」

 

 剥がす。

 

「バイクオブバイク! TheROADKINGだ!」

 

 

 おいおいおい、こいつは……

 

「美しい……」

 

「すっごくシャープな形……」

 

 

「このバイクは岸部君の要望通りに山道、砂漠、道路。どんな悪路でも普段通りに運転できる用にした。最高時速は420キロ」

 

「凄いな……」

 

 駄目だ言葉が全然出てこない。このバイクを見ることが出来ただけで免許を取ったかいがある。

 

「それだけじゃ無い、このボタンを押すとサイドカーにもなる」

 

 サイドカー機能は頼んで無いが凄く便利そうだ。

 

「さらにサイドカーのボタンを特定の順に押すと自爆するようにしている」

 

 いざとなったらサイドカーだけで突撃させればいいって事か

 

「そいつは便利だな」

 

「え、自爆?便利?」

 

「まあ、ヘイローの無い岸部君の為に爆発では無くEMPにしておいた」

 

 気遣いも素晴らしいな

 

「それら諸々込で元の値段より8割値上げしてしまうが」

 

「逆に8割でいいのかい?」

 

 普通にもっと高くなりそうだが

 

「私の技術力を以てすれば妥当な額さ」

 

「最高だ」

 

 

 

 

「ありがとう白石、依頼以上の出来だ」

 

 ヘルメットを被ってバイクに跨りお礼を言う。

 

「ロマンを追う者同士これからもご贔屓にしてくれると助かる」

 

「早瀬も世話になった、助かった」

 

「いえ、私岸部さんの漫画読んでみようと思います」

 

「そうか読んだら是非、感想聞かせてくれ」

 

 エンジンを掛ける。

 

「じゃあまた何かの縁があったらよろしく頼むよ」

 

 そう言うと僕は返事を聞くよりも早く風を切り始めた。

 

 

 

 

 




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