岸部ロハンは透き通らない   作:マイケル行ける

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この世で一番強いもの〜④

 

 

 

 

 

 

「あ、岸部さん! こっちです!」

 

 

 校門の前に立つ阿慈谷がこちらに手を振る。

 

 

「待たせてしまってすまないね」

 

「いえ、大丈夫です。……えっと今日はどうしてトリニティに?」

 

「とある依頼を受けてね」

 

「依頼……ですか?」

 

「ああ、言ってなかったか? 最近便利屋に所属したって」

 

「言われてないですよ、最近新しい仕事を始めたとは言われましたけど……」

 

「ああ~言ってなかったか」

 

 僕は今日の出来事を彼女に説明することにした。

 

「なるほど……」

 

「ああ、だから生徒の情報が見たくてね」 

 

「図書室でそういうのって見れるかい?」

 

 見れたら大分楽なんだが……

 

「多分、見れないと思います、個人情報ですから」

 

「そうか……」

 

 まあ、仮に図書室で見れるとしても部外者の僕が閲覧させて貰える可能性は限り無く低いだろうな

 

「別にやる訳じゃあないんだが……忍び込むのに丁度いい時間とかあるかい?」

 

「あはは、やめてくださいね」

 

「ああ、これは最終手段として取っておくよ」

 

「絶対駄目ですからね?」

 

「ああ、善処するよ」

 

 もし、そうせざるを得ない時には阿慈谷に手伝って貰うことにしよう。

 

「生徒の名簿、ティーパーティの方達なら閲覧可能かもしれません」

 

 ティーパーティ……確か…

 

「この学園の生徒会だったかい?」

 

「はい、その3人なら多分閲覧出来ると思います」

 

「その話をするって事はいるんだろう? 親しい人が」

 

「え……ああ……はい、良くしてくれる先輩がいますね」

 

「早速、会いに行くとしようじゃあないか」

 

 やはり阿慈谷に相談して正解だった。

 

「通行許可証ってどこで貰うんだい?」

 

「一応本人から許可は貰っておきましたよ」

 

「君、やっぱり優秀だな」

 

「あはは、そんな事無いですよ」

 

 こうして僕達はティーパーティーのいる場所へと向かうことにした。

 明るい廊下を阿慈谷と歩いているとふと、思い出したことがある。

 

「なあ、阿慈谷」

 

「どうしたんですか?」

 

「君の好きなペ……ペロリさんだったか?」

 

「ペロロ様です!」

 

「そう、そのペロロさん」

 

「ペロロ様がどうかしたんですか?」

 

「僕の漫画がモモフレンズとコラボすることになってね」

 

「え!? そうなんですか!」

 

「そう、それで―どうやら到着したみたいだ」

 

「え?」

 

 果たして、どんな奴がこの扉の先にいるのか。

 

「さあ、行くぞ阿慈谷」

 

「それで! どうしたんですか! ちょっと!」

 

 鬼が出るか蛇が出るか。僕は扉を開け放った。

 

 扉の先に広がっていたのはとても綺麗な景色だった。これは……テラスか。僕が感心していると声が掛けられる。

 

「貴方がヒフミさんが仰っていた?」

 

「ああ、岸部ロハンだよろしく頼む。そういう君は?」

 

「ティーパーティホストの桐藤ナギサと申します」

 

「すまないね、突然押し掛ける形になってしまったようで」

 

「いえいえヒフミさんと頼みとあれば、どうぞお座り下さい」

 

 へえ、凄い友情だな。

 

「それにあの岸部ロハンさんが来るとなれば応対せざるを得ませんよ」

 

「僕はそこまで言われる程ではあると思うが……君、漫画とか読むのかい?」

 

 あんまりそういった人種には見えないがな。

 

「ええ、普段は読みませんよ」

 

「そうか」

 

「ですが、ステップラックは拝見しました」

 

「へぇ……どうだった?」

 

 そう聞くと桐藤は微笑んで

 

「とても素晴らしくて読む手が止まりませんでした」

 

「そう言ってもらえてとても嬉しいよ」

 

「続編、お描きにならないんですか?」

 

「ああ、あれで完成だからな」

 

「そうですか……」

 

「阿慈谷、いい友人を持ったじゃあないか」

 

「え、あ〜はい」

(岸部さんとペロロ様のコラボ……どうなるんだろう)

 

 阿慈谷はどこか上の空な様子だ。

 

「お茶飲まれます?」

 

「頂くとしよう」

 

 なるほどティーパーティーのティーはお茶のティーか。なんてことを思いながらお茶を飲む

 

「これは……美味しいな」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 そう言って彼女もお茶を飲む。カップをテーブルに置き僕の目を見て問い掛けてきた

 

「岸部ロハンさん、貴方は何故トリニティへ?」

 

「ああ、それは―」

 

「ナギちゃんお茶ちょうだーい!」

 

 僕が依頼の事を話そうとした瞬間明るい雰囲気の声がテラスに響いた。

 

「あれ、もしかしてお取り込み中だった?」

 

「はぁ……ミカさん、この人は」

 

「あー!言われなくてもわかるよ〜岸部ロハン先生でしょ! それにヒフミちゃんもいる!」

 

「ああ、僕が岸部ロハンだ」 「あはは、どうも」

 

「私、漫画全部読んだよ!」

 

「ありがたいね、君もティーパーティーなのかい?」

 

「うん! 私聖園ミカ! よろしくね!」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「それで、どうしてロハン先生ここに居るの? 取材? 取材かな? ばんばん聞いちゃってくれて―」

 

「ミカさん!」

 

「あーごめんねナギちゃん」

 

 なるほど、この2人結構バランス良いな。

 

「コホン、それで岸部さんは一体どうしてここへ?」

 

「ああ、それは……」

 

 僕は依頼の事を話し始めた。

 

 

「……だからトリニティへ来たんだ」

 

「そういうことですか……」

 

「大変だねぇ」

 

 様子を見る限り……見せて貰えるだろうか

 

「だから、過去の生徒のリストを見せて欲しい」

 

「でもリストって言ってもかなり多いんじゃない?」

 

「ああ、だから絞ろうと思う」

 

「でも名前わかって無いんでしょ?」

 

「入院歴のある生徒のリストを見せて欲しい」

 

「入院歴……?」

 

「少女の話では咳き込んでいたらしいからな」

 

「入院歴で絞っても多いと思うけど……?」

 

「ああ、この学校のリストは卒業後何年まで追っている?」

 

「3年程だったと思います」

 

「そうか、なら在学中もしくは卒業後3年間で」

 

 僕は一息ついて

 

「死亡した生徒のリストも見せて欲しい」

 

「ロハン先生流石にそれは考えすぎじゃない? 咳き込んでただけでしょ?」

 

「そうですよ岸部さん! そんな縁起の悪いこと言ったら駄目です!」

 

 聖園と阿慈谷にそう言われるが

 

「僕もそう思うんだが何か嫌な予感がしてね」

 

 そう、少女の記憶を読んでからずっとそんな予感が付いて回っているんだ。桐藤は悩む素振りを見せ

 

「すみません、そのリストをお見せすることはできません」

 

「えぇー! いいじゃん!」

 

「ティーパーティーとして、生徒の個人情報をお見せすることは決して許すことはできません」

 

 それもそうだ、彼女の言っていることは正しい。だが諦める事は出来ない

 

「ですが、1つ条件を飲んでいただけるのならお見せしましょう」

 

「なんだい? その条件って」

 

「ステップラックの続編を描いてください」

 

 は? 

 

「おいおいおい、冗談か?」

 

「いいえ、真剣ですよ」

 

「君はこの……この岸部ロハンに完結した漫画の続編を描けって言うのかい」

 

「はい」

 

 テラスが静まり返る。

 

「ふざけるんじゃあないぞッ! ステップラックはあそこで終わったんだ! あそこから続けようとしたら確実に蛇足になってしまう!」

 

「ええ、あの終わり方は綺麗でした」

 

「それがわかっていてどうして続編を望むんだ!」

 

「読みたいからじゃ駄目ですか?」

 

「は?」

 

「私が人生で初めて読んだ漫画だからです。その作品の続編を読みたいって思う事がそんなにおかしいですか?」

 

「……僕は2次創作許容派の人間だ。そんなに読みたいんだったら2次創作で良いじゃあないか」

 

「私は岸部ロハンのステップラックが読みたいんです」

 

「岸部さん……」 

 

 阿慈谷が心配そうに僕を見る

 

「それに、そこまでして個人情報が欲しいのかも解りますからね」

 

 話にならない。こんな馬鹿馬鹿しい条件あるか。

 僕は能力を使って桐藤に描き込もうと思い腕を動かす。

 

『ロハンさん、後は頼んだぜ』

 

 動きが止まる。仮に僕が能力を使って少女とそのお姉ちゃんを引き合わせたとする。その光景を僕は純粋に100%の想いで描くことができるだろうか……。姉御の舞台を描くことができるのだろうか。

 

「描けば見せてくれるのかい?」

 

「はい、約束します」

 

「本当だな?」 

 

「ええ、ティーパーティーとして誓います」

 

「ああ、わかった」

 

「え!? 良いんですか!? 岸部さん!」

 

 阿慈谷が心配そうな声を上げる。

 

「ただし、君にだけしか描かない、それを他の人に見せることはしない。これを守ってくれるなら描かせてもらおう」

 

「後者は同意します」

 

「他に何が必要なんだ?」

 

「3人分ください」

 

「ああ、わかった」

 

「ロハン先生はどうしてその子のためにそこまでするの?」

 

 聖園が不思議そうに僕に問い掛ける

 

「約束したからな」

 

 そう答えた。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「持ってきたよー! リスト!」

 

 凄い重そうな段ボールを数個一気に聖園が運んできた。

 

「凄い数だな」

 

「ええ、1人1枚ですからね」

 

「死亡した生徒のリストはどのファイルだい?」

 

「それはこの黒色のファイル達ですね」

 

 黒色か……正直僕はこのファイルから見つかって欲しくないと思ってしまっている。僕は桐藤と聖園の2人に少女の描いた貼り紙を見せ4人で探すことにした。

 

「あ、これ……」

 

 阿慈谷が声を上げ、紙を僕に渡す。特徴の全てが一致している。

 

「亡くなってたんだ……」

 

「……そのようですね」

 

「2人共、僕に協力してくれてありがとう。ステップラックの続編は誠心誠意描かせて貰う」

 

「先程、あんなに言いましたけど……無理なら描かなくとも……」

 

「おいおい、僕は岸部ロハンだぜ? しっかり描くさ」

 

「うん、それでこそロハン先生!」

 

 僕はそう言いながら手に持っている少女のお姉ちゃんの紙をしっかりと目に焼き付ける

 

「阿慈谷、もう少し手伝ってくれないか」

 

「はい、私で良ければ。手伝います」

 

 少女は真実を知る覚悟をしていた。なら、僕は真実を伝える覚悟をしなければ。

 

 そうして僕はとある場所の座標を陸八魔に送った。

 

 

 

 

 

 




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