星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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第一章
#1 ウサギ、家へ帰る


「はぁ……ただいま」

 

 

 会社員の卯月(うづき) 和人(かずと)は、深い溜息とともに仕事帰りの重い足で玄関に入る。

 彼女いない歴絶賛更新中の30代が目前な一人暮らしの男である。

 今日も今日とて理不尽に怒鳴ってくる上司の相手に、終わらない仕事による残業で身体も精神も疲れ切っていたからだ。

 新しい部屋に引っ越してきて3ヵ月たったが、仕事が忙しくてほとんどの荷物は未だに段ボールの中だ。

 

 

「明日は休みだし、何して過ごすかな…………痛ッ!!」

 

 

 久々の休日の予定を考えながらトボトボ歩いていると、床に置いていた段ボールに足を引っかけガシャンッと大きな音と共に箱の中身を盛大に床にバラまいてしまった。

 

 

「はぁ、やっちまった……ん?」

 

 

 和人はぶつけた足をさすりながら段ボールから盛大に飛び出した物を確認し、その中から一つの機器を見つけた。

 それは昔使っていたVRフルダイブゲーム用の機器である。

 

 

「あぁ~懐かしいな。そういえば処分とかしていなかったんだっけか」

 

 

 拾ったVRフルダイブの頭に嵌める機器を眺めつつ、セットになっていたはずの本体ハードを探し出した後にベッドに座り思い出に浸る。

 まだ高校生になったばかりのころにVRMMO【アナザーワールド・オンライン】という名のゲームが流行っていたのだ。

 オープンワールドに豊富なキャラクリエイト、多彩な武具にスキルなど自由度が高くユーザーからも高評価なゲームだった。

 

 

「もう何年前だっけ、コイツで遊んだのは……遊びこんだなぁ。たしか色んなダンジョンとか作ったりしたな」

 

 

 アナザーワールド・オンラインの数ある目玉の一つに【ダンジョンビルド・システム】がある。

 その名の通りプレイヤーがダンジョンを生成して他のプレイヤーが挑戦できるというシステムであり、数多くのプレイヤーが自分好みのダンジョンを作成したり他のプレイターが作ったダンジョンへ挑戦したりしていたのだ。

 和人もアナザーワールド・オンラインのゲームプレイヤーとしてダンジョンビルドを主な目的としたギルドに所属していて、ギルド仲間たちともに数々のダンジョンを作っていた。

 単純なモノからギミック増しましなモノ、イヤらしいトラップまみれでユーザーレビュー不評なダンジョンとかもゲーム仲間たちと沢山作ったのだ。

 

 

「あのころは毎日が楽しかったな……ほんと、楽しかった……」

 

 

 懐かしい……ほんとに懐かしい思い出ばかりだと思わず笑みが零れる。

 遊び始めたのは高校生の時であり、大学に進学した後でもずっと遊び続けていたのだ。

 だが楽しい楽しい時間も終わりを迎えた……就職活動である。

 働いて稼がねば生活は出来ない、卯月 和人もそうである。

 就活で忙しくなると自由に使える時間も無くなりプレイする時間は減り、無事就職したと思ったら務めた会社がまさかのブラック企業。

 今度は仕事で忙しくて時間も無くなり完全に遊ぶことはなくなって、そのまま引退してしまったのだ。

 そして遊ばなくなってから数年後にアナザーワールド・オンラインはサービス終了を告知し、ゲームデータをダウンロードしてオフラインで遊べるモードをリリースしてサービスは終わった。

 

 

「そういえばオフラインモードがあったな。よし、まだ電源は生きてるな」

 

 

 VR機器の電源アダプタをコンセントに繋ぎ、まだ動くことを確認するとヘッドセットを頭に被りプレイモードからオフラインモードを選択する。

 オフラインモードならばサーバーにつなげなくても、すでにダウンロードされている情報でワールドを形成してソロで遊べるはずだからだ。

 

 

「ははっ、何年ぶりだろうな」

 

 

 VR機器を付けままベッドに横たわり気を楽にするとゲーム世界へダイブが始まった。

 浮遊感を感じた後、まるで大きな穴にゆっくりと落下するような感覚が身体を駆け巡る。

 

 

「ん、VRダイブってこんな感じだったっけ?まぁ、久々だしな……」

 

 

 そして和人の意識は現実世界から、ゲームの世界へと落ちて行った。

 

 

 

   *

 

   *

 

   *

 

 

 

 和人は気が付くと片付いていない部屋ではなく、青空の下に広がる森の小道に立っていた。

 森から小鳥のさえずりが聞こえ、近くに小川が流れていると思われる水の音が聞こえてくる。

 

 

「ログインできたのか?」

 

 

 掌を開いたり閉じたりして手足の感覚を確かめる。

 ある程度動くことを確認したら、今度はラジオ体操のごとく全身を動かしてみる。

 

 

「ふんッ!ほぉ!!」

 

 

 リアルと同じような感覚で動かすことができる……が、一部だけリアルの時とは違う重量を感じる。

 和人は視線を下に向けると、男性である和人には無いはずの大きな膨らみによって足元が見えなかった。

 両手でその膨らみを下から持ち上げてみる、むにゅっとした柔らかい感触と十分な質量が手のひらへ伝わる!

 

 

「今見ると、ちょっと恥ずかしいな……てかこんなに重かったか?」

 

 

 しばらく胸部の膨らみを手のひらで堪能した和人が近くの小川を覗き込むと自分の姿が鏡のように映っていた。

 腰まであるフワっとした白銀の髪の毛を後ろで一つに纏めた髪型に、キリっと大きな紅い眼に身長は少し低めだが大きく膨らんだ胸部が目立つ。

 ノースリーブの服で肩を露出しつつもフード付きのジャケットを羽織っており、穿いているホットパンツからは太ましい……いや太くない、うん太くない太ももがむちっと主張している。

 そして頭の上にウサギのような長い耳が垂れており、お尻にはまんまるふさふさな尻尾が生えている。

 

 そう、卯月 和人はアナザーワールド・オンラインをウサミミ少女アバターで遊んでいたのだ!!

 

 

「ウサギ耳か、なんでこんなアバターで遊んでたんだろう昔の俺は……」

 

 

 当時、和人の心に一番響いていた性癖だったのだろう、ウサミミとか大きめの胸とか、今でも大好きのようで。

 けっしてリアルで女性と接点がなかったから、せめてゲームの中では等という考えのもとに作ったのではないと和人は誰に言うわけでもないが強く主張する。

 

 

「さて、ステータスはどうだったかな?……たしか、こうだったよな」

 

 

 右手を前にかざすと光り輝く半透明な本が出現して目の前で開く。

 この本がプレイヤーが使うメニュー画面だ。

 

 

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 プレイヤー名:カグナ

 種族    :獣人族(ジューマン)(兎)

 ランク   :502

 所属クラン :アリアドネの糸

 戦種(クラス) メイン:魔導士 / サブ:召喚士

 所持職種(ジョブ)  :ダンジョンビルダー・料理人・鑑定士 etc

 

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 本の形をしたメニュー画面にプレイヤーの基本情報が表示されいる。

 【カグナ】、それが卯月 和人が遊んでいたアバターの姿の名前だ。

 和人ことカグナがメニューに表示されていた内容に目を通していると、何処まで遊んでいたのかを段々と思い出してくる。

 

 

「そういえば、こんな感じだったなぁ懐かしい~。あ、メールとか残ってるのか?メールデータもダウンロードされてるはずだと思うんだが………ん?」

 

 

 カグナはメニュー画面を操作して引退からサービス終了までの間にフレンドからメールが来てないか確認しようとしたがメールボックスには『いつでも帰ってこい、席は残しておく』とギルド仲間からのメールを最後に知り合いからの未読メールは無かった。

 

 

「……結局、最後まで一緒に遊べなかった……な」

 

 

 最後のメールを読んで感傷に浸る。

 ブラックな仕事な日々を過ごしている今よりも、仲間たちと一緒にバカ騒ぎしていたころの方が充実した生活をしていたものだ。

 

 

「さて、いつまでも思い出に浸っている場合じゃないな」

 

 

 カグナが手を叩くとメニュー画面として機能していた本がパタンッという擬音が聞こえそうな勢いで閉じて消えていく。

 それを見たカグナは森の奥へと続く小道を歩き始めた。

 

 

「この先だったはずだよな、俺のマイホームは」

 

 

 プレイヤーは各々にマイエリアを与えられており、そこを開拓して建物を建てたり畑など冒険に役立つ施設を増築したり課金して拡張したりNPCの従業員を雇ったりなど自由に使える。

 カグナも、かつて素材やレアアイテムなどを集めに集めたり課金したりして好きなだけ開拓して立派な豪邸を作ったのだ。

 ギルド仲間からは発想が凡人だの派手さが足りないだの、オイ!コイツの豪邸に逆さまピラミッドぶっ刺そうぜ!だのといろいろと言われたものだが、作った本人が満足しているのなら十分である。

 あと勝手に人の家にピラミッドを刺そうとするなと、カグナは今でも思っている。

 

 

「この道も懐かしいなぁ~」

 

 

 カグナが相変わらず思い出に浸りながら小道を歩いていると開けた場所が見えてきた、拠点となる自分の屋敷を立てた場所だ。

 懐かしさに胸をときめかせて小走り気味で駆けていき目的地にたどり着くと、目の前に広がっていたのは苦労してた作った立派な豪邸

 

 

―――ではなく無残にもボロボロの廃墟と化した豪邸らしき残骸であった。

 

 

「は、廃墟になってるぅ!?!?!」

 

 

 カグナは目の前の惨状に絶叫した後、数分近く放心状態のままだった。

 

 

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