星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#11 ウサギ、猿に怒られた、タンコブできてない?

 アリシアの眼の前で召喚主が召喚獣に殴られ叱られるという、不思議な光景が起きていた。

 白い毛に鋭い眼光を兼ね備えた熟練の職人の顔をした猿の人獣族(ビーストマン)のマヒトツは、額に怒りのマークを浮かべながらカグナのことを睨みつけている。

 カグナは殴られた所がとても痛かったのか、涙目でタンコブが出来ていないか確かめながら先ほどのことを再度聞いてみる。

 

 

「100年も音沙汰なしって、いったいどういうことだマヒトツ!?」

 

「んなぁもん、こっちが聞きたいわい!!」

 

「つまり、アレか……まさか俺がログインしなくなってからの10年近くが、こっちでは100年だったってことか……?」

 

「なぁ~にが10年近くじゃ、100年じゃぞ!100年!!」

 

 

 にわかに信じがたいことである。

 だが、マヒトツが言うことを信じるのであればカグナがログインしなくなって10年近くたったが、こっちの世界では100年の月日が立っていたことになっているらしい。

 元の世界と、こっちの世界では時間の流れに差があるのだろうか。

 

 

「ったく、お前が音沙汰もなくなってから、みながどれだけ心配したと思ってるんじゃか。あの龍めに聞けば、いずれ戻ってくると言っておったが、ようやく戻ってきおったか。遅すぎじゃバカタレめ」

 

「あはは……ごめん。でも昨日ヒコナを召喚()んだけど、そんな素振りは見せなかったけどな」

 

ヒコナ(あやつ)は、あぁいう性格じゃからな。あまり気にしてなかったんじゃろう」

 

 

 カグナとマヒトツが1匹の羊の顔を思い浮かべる……ふわふわと緩い性格の羊の顔を思い出して、あのマイペースな性格に期待したことが間違いであることに二人は結論づけたのであった。

 そんな二人のやり取りを見ていたアリシアは、呼び出された召喚獣の名前を聞いてあることに気づく。

 

 

「あ、あのカグナさん……」

 

「あぁ、ごめんごめん。こっちが私の召喚獣の――」

 

「まさか……この方は、マヒトツ()!?」

 

「へ、マヒトツ……様?」

 

「ん?なんじゃ、この娘は?」

 

 

 マヒトツがカグナと一緒に居た少女の存在に気づくと、カグナはマヒトツに召喚した用件、アリシアの剣の修復についてを伝えた。

 それを聞いたマヒトツは口に咥えていたキッセルを吸い、ゆっくり吐くと煙が風に散る。

 

 

「なるほど、この娘の破損した剣を修復(なお)すためにワシを召喚()んだというわけか」

 

「そういうこと、頼むよ」

 

「はぁ……本当じゃったら、お前からの依頼はボイコットするつもりじゃったが……どれ、そのヒビの入った剣とやらを見せてみぃ」

 

「あ、はい」

 

 

 アリシアは手に持っていた剣をマヒトツへと渡し、剣を受け取ったマヒトツは柄を握り鞘からゆっくりと剣を引き抜いた。

 使い込まれたと思わしき剣の刃には大きな亀裂が入っており、刃こぼれもちらほらと見受けられる。

 

 

「ん、コイツは……。ふむ……なるほどのぉ」

 

「………」

 

 

 ヒビが入った剣をマジマジと見るマヒトツ、そして緊張を隠し切れないアリシアはその様子を見ている只黙って見つめている。

 しばらく剣を眺めていると、マヒトツが一言呟く。

 

 

「よい」

 

「え?」

 

「実に良い面構えになっとる。持ち主にどれだけ大事に扱われていたのか、よくわかるわい」

 

 

 どうやらマヒトツは、アリシアの剣を気に入ったようだ。

 ニヤリと笑うマヒトツはアリシアの顔を見る。

 

 

「いいじゃろ。この剣、ワシがを直そう」

 

「ほ、本当ですか!!」

 

「無論じゃ。さて、では早速始めるか」

 

 

 マヒトツは足元に真っ赤な魔法陣を展開した。

 すると魔法陣から金床や鎚などの鍛冶に必要な道具が出てきた、これがマヒトツが使う簡易的な鍛冶場を作る展開魔法である。

 これのおかげでマヒトツは専用な工具や施設が必要な場合などを除いて、いつでも何処でも鍛冶作業が行えるのだ。

 アリシアから剣を受け取ったマヒトツが魔法陣の真ん中に座ると大きく息を吸って胸を膨らませると、そのまま手に持ったアリシアの剣に向かって炎を吐き出す。

 炎を浴びた剣は熱を帯びて真っ赤になっていた。

 

 

「……よし」

 

 

 マヒトツは真っ赤になった剣を金床に寝かせると、手に持った鎚で叩き始める。

 剣を叩いては炎を浴びせ、また叩き始めたら再度炎を当てる作業の繰り返しだ。

 カグナとアリシアは、マヒトツの作業を近すぎず遠すぎない場所で見守っている。

 

 

「あの、カグナさん」

 

「なんだい?」

 

「その……マヒトツ様とは、一体どのようなご関係で?」

 

「私の召喚獣だけど」

 

「あのマヒトツ様が、カグナさんの召喚獣!?」

 

「そうだけど……なんで”様”付けなの?」

 

「何故って、それはマヒトツ様が作られた剣一振りが屋敷が建てられるほどの価値を持つのですよ!?」

 

「え、ウソ……マジ?」

 

 

 アリシアから自身の召喚獣の評価を聞いたカグナは驚いていた。

 まさか、ただの召喚獣だったはずのマヒトツとマヒトツが作った武器にそれだけの価値をつけられているなどと考えもしなかったのだから。

 そしてカグナはマヒトツに作らせた武具を大量に所持している、普段は使わないがメニューの武具欄にあるのだ。

 その武具の一つ一つが高価なものになっているとは。

 

 

「そういえば、お爺様が持っている宝剣ハバキリは、たしかマヒトツ様が作られたとか……」

 

「ん、ハバキリ?どこかで聞いたことが――」

 

 

 カグナとアリシアが話していると、鎚の音が鳴りやんだ。

 二人がマヒトツの方を見ると、どうやら剣の修復が終わったらしくマヒトツが剣をもってアリシアの元にやってくる。

 

 

「ほれ、出来たぞ。修復しただけで刀剣の強化はしておらんからな」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 

 マヒトツから剣を受け取ったアリシアは刀身を見る。

 先ほどまであったヒビはキレイに無くなっている、むしろ以前よりも刃が輝いているように見えた。

 

 

「す、すごい」

 

「ふん、あの程度のヒビを修復(なお)すなぞ、ワシにからすればそう難しいもんじゃない」

 

「あの修復費の方は……」

 

「あぁ~いらんいらん、久々に良い剣を見せてくれた礼と思ってくれ。それに請求するのなら、そこに居るワシの召喚主(バカタレ)の方に請求するわい」

 

「ば、バカタレ!?」

 

 

 突然の請求に驚くカグナ、それを当たり前だという感じで横目で主人を見るマヒトツであった。

 アリシアは綺麗に元通りになった剣を手にして、とても喜んでいた。

 この剣のことを相当気に入っているのであろう。

 

 

「それじゃ、用も終わったようじゃしワシは送還()える。カグナよ」

 

「なんだよ?」

 

「暇があれば他の連中も召喚()んで、話しくらいしておけ。お前さんがずっと音沙汰なかったから皆お前に会いたがってるじゃろうからな」

 

「そうか……あぁ、わかった。ありがとう」

 

「ふん…………キヨノヒメを召喚()ぶ時は、気を付けとけ」

 

「…………ア、ハイ」

 

 

 マヒトツの口から出た名前を聞いたカグナは気が重くなった。

 キヨノヒメは、カグナの召喚獣のうちの一体だが少々性格が困った蛇娘なのである。

 そんなカグナの様子を見たマヒトツは、少し気が晴れたような気持ちになったようだ。

 そしてマヒトツの身体が光に包まれはじめる、送還が始まった。

 マヒトツは元居た場所に戻ろうとしている時、アリシアを見て帰り際に一言告げた。

 

 

「その剣、大事にしろよアリシア」

 

「はい!」

 

 

 アリシアはマヒトツに感謝の気持ちを込めて返事をする。

 それを聞き届けたマヒトツは一仕事終えたという表情で帰っていった。

 

 

「……あれ、私名乗りましたでしょうか?」

 

「そうだっけ?」

 

 

 名乗り忘れたはずの名前を何故マヒトツが言ってきたのか疑問に思っていたアリシアだが、酒場の方からサラが出てきて大声でカグナとアリシアを呼んできたので疑問は後回しにする。

 

 

「アリシアさーん、カグナさーん!朝ごはんが出来たそうですよー!!」

 

 

 どうやら酒場兼宿屋の女将が朝食を用意してくれたようだ。

 そういえば朝食は、まだだったことをカグナは思い出すと丁度腹の虫の鳴いた。

 

 

「朝ごはんを食べようか」

 

「ふふ、そうですね」

 

 

 愛剣が直って上機嫌なアリシアとカグナは、朝食を食べに酒場へと歩いて行った。

 




人獣族(ビーストマン)とは
一言で言えば、ケモナー御用達の種族と言えよう。
カグナのような獣人族(ジューマン)はケモミミやケモ尻尾といった【獣要素がある人】だが
人獣族(ビーストマン)は【人の要素を持った獣】といった具合である。
二足歩行で歩き、人と同じような動作をする種族というイメージ。


作中の用語とかは、ここで解説を入れようかなって思います
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