星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#13 ウサギ、出発する

()()()って……ナニ?」

 

 

 アリシアの口から聞いたことがない言葉が出てきた。

 アリシアは”メヌゥ”なるものを、カグナが使えると確信しているようだがカグナには心当たりがない。

 

 

「アイ、知ってる?」

 

『いいえ、私も知りません。単語検索にもヒットしません』

 

「そうか……アリシア、その……”メヌゥ”だっけ?なんなのソレは」

 

「お爺様から聞いた話ですので、私自身も良く知らないのですが……お爺様曰く、この世界の根本に干渉できる神の本であり選ばれた者のみ所有しているとか……」

 

「選ばれし者のみが持っている神の本……ね」

 

(メヌゥ……メヌゥ……聞いたことないが、なんか似たような言葉を知っている気がするんだが……だめだ、わからん)

 

 

 カグナの記憶に該当するモノはないが、どこかで聞いたことがあるような単語だとカグナは頭を捻らせている。

 サポートAIであるアイも知らず、少なくともゲームの専門用語にメヌゥという単語はないようだ。

 カグナとアイが一生懸命記憶を探っているとアリシアがメヌゥに関して続きを話し始める。

 

 

「なんでも、その本の持ち主は世界に蔓延るダンジョンを含んだ、あらゆる事象に干渉ができるとお爺様に聞いたことがあります」

 

「ダンジョンに干渉……なるほどね、私があのダンジョンを止めれたから、か」

 

『主、”メヌゥ”というのは、もしかして”メニュー”のことなのではないでしょうか?』

 

「メニュー?メニューって、このメニュー?」

 

 

 カグナはメニュー画面を表示する、分厚い本の形をしたUIのメニュー画面だ。

 たしかにアナザーワールド・オンラインのメニュー画面のデザインは、開いた本の形をしている。

 だから”神々の本”と間違えてもおかしくはないのかもしれない。

 カグナがメニュー画面を出しているとアリシアが不思議そうな顔をして問いかけてきた。

 

 

「カグナさん、何をしているのですか?」

 

「何って、メニュー……アリシアが言ったメヌゥ?を出しているんだよ」

 

「メヌゥを出している!?何処にですか!?」

 

「え、何処にって……ほら、右手に持ってるでしょ?」

 

「右手に?何も見えませんけど……」

 

「え、見えない?」

 

 

 アリシアはカグナの右手の方を見ているが、彼女にはメニュー画面は見えていないようだ。

 何があるのか探すかのようにアリシアはカグナの右手を凝視している。

 

 

(アリシアには、メニューが見えていない……?)

 

『どうやらプレイヤー以外に、メニューは見えないようですね』

 

「そうみたいだな」

 

 

 見えていないはずのメニューをまだ探しているアリシアを横目に、カグナはメニュー画面を閉じる。

 見えないため、メニューを消したことに気づかないアリシアに探すのを止めさせるためにカグナは疑問をつぶやいた。

 

 

「アリシアのお爺さんは、なんでそんなことを知っていたんだ?」

 

「えぇ、なんでも昔にメヌゥを持っている人と会ったことがあると聞きましたの」

 

「メヌゥを持ってる人だって!?」

 

(メヌゥ……メニューを持っているってことは、つまりプレイヤーってことか?俺以外のプレイヤーが居るのか?)

 

 

 メヌゥを持っているということは、カグナみたいにメニューが使える人物ということであろう。

 それはカグナと同じくプレイヤーである可能性が高い……であるならば、確認すべきことがある。

 

 

「ちなみに、そのメヌゥ持ってた人の名前は?」

 

「えぇっと、確か竜人種(ドラグル)の男性で、名前は………すいません、子供のころに聞いたお話ですので名前まで覚えておりません」

 

「そうか……」

 

 

 カグナはアリシアの話に出てきたメヌゥを持っているという人の名前を確認しようとしたが、アリシアは昔聞いたことなので名前は覚えていなかったようだ。

 もしかしら自分が知っている名前が出てくるかもしれないとカグナは思ったが、そう簡単にはいかなかった。

 カグナとアリシアが話ししていると、周辺の探索を終えたサラたちが戻ってきた。

 

 

「アリシアさ~ん、カグナさ~ん」

 

「一応この周辺を探索してみたけど、ダンジョンの気配の欠片もないぜ」

 

「そうですか、わかりました」

 

「とりあえず村に戻ろうか、ここに居てもしょうがないしさ」

 

「えぇ、戻りましょう。報告もしたいですし」

 

 

 カグナ達は、この場を後にして村に戻ることにした。

 

 

   *

 

   *

 

   *

 

 

「ダンジョンが消えただぁ!?」

 

 

 カグナ達は村の酒場で護衛準備をしていたゴーゼ達に、ダンジョンが消えたことを報告した。

 すると唾が飛んできそうな勢いでゴーゼが叫ぶ。

 ゴーゼの後ろに居る部下たちも、にわかに信じられないという顔つきでざわついている。

 

 

「近い、近いって!」

 

「あ、あぁ……すまん……」

 

 

 あまりの近さにロランはゴーゼを押して遠ざける。

 ゴーゼは、興奮をなんとか沈めてロラン達に再度確認する。

 

 

「その、ダンジョンが消えたって……本当か?」

 

「はい、たしかに消えました」

 

「この目でちゃんと確認したぜ」

 

 

 ゴーゼはサラとダリアンにも確認を取るが、二人からはロランと同じ回答が帰ってくる。

 二人の雰囲気から、ウソをついているわけじゃないとゴーゼは察するが簡単に信じられるような話しでもないため、どうすればいいのか判断が分からずにいた。

 

 

「信じられね……ダンジョンが消える話なんて聞いたことがねぇよ」

 

「ですよねぇ」

 

「あ~いや、お前さんたちを疑っているわけじゃないんだ……だが、な」

 

「わかるぜ。実際に見た俺達だって、いまだに夢じゃないかって思うぜ」

 

「そうか、わかった。あとで俺達も確認しに行こう、自分の眼で見たほうが確実だ」

 

 

 後ろの部下たちに向かってゴーゼは準備をするように指示を出す。

 そして席に座り水を飲んで少し落ち着くとゴーゼはロラン達に向かって問いかけた。

 

 

「それでお前さんたちは、これからどうするんだ?」

 

「アリシアさんの報告の結果待ちですね」

 

「あぁ~、通信魔水晶(スフィア)で冒険組合に報告しに行ってるのか」

 

 

 アリシアは通信魔水晶(スフィア)と呼ばれるテレビ電話のように離れた場所と連絡が取り合える魔道具を使い冒険組合の本部に報告するために、酒場で借りている部屋に戻っているので一階の酒場に姿がない。

 なんでもダンジョンの調査結果の報告するために、冒険組合の本部から借りて持ってきたのだ。

 サラ達とゴーゼはアリシアの報告が終わるまで、しばらく待つこととなる。

 するとサラが何かを思い出したかのように、カグナに昨晩の話しについて聞いてきた。

 

 

「そういえば、カグナさん」

 

「ん、なに?」

 

「昨日聞きたいことがあるっておっしゃってましたよね?」

 

「そういえばそうだったな。カグナは一体何が聞きたいんだ?」

 

 

 サラの問いかけに、ダリアンも食いついくる。

 アリシアが戻ってくるまで暇だし、カグナの聞きたいことにも興味があった。

 

 

「あぁ~そうだったね。実は人を探しているんだ」

 

「人を探している?」

 

「うん、この子たちを、ね」

 

 

 サラとダリアンからの問いにカグナは答えると、サラたちに見えるようにマイホームから持ち出してきた写真を見せる。

 カグナと三人の子供が写っている写真だ。

 

 

「この子供たちって……」

 

「しばらく面倒を見てたんだけど、ワケあって別の……遠いところに行ってたんだ。んで、久々に帰ってきたら、どこに居るのか分からなくなってね。あ、だいぶ昔の写真だから今と姿が違うかも……」

 

「ほぉ、人探しね」

 

 

 カグナ達が会話していると横からゴーゼが割り込んでくる。

 サラたちに見せていた写真を手に取り、写真に写っている子供たちの顔をマジマジと見つめていた。

 

 

「この目つきの悪いガキンチョ、どこかで見た気がするんだが……。探す当てはあるのかい、お嬢ちゃん」

 

「………」

 

『主、呼ばれてますよ』

 

「………えっ、あっ、お嬢ちゃんって私のこと!?」

 

「お前さん以外に誰がいるんだよ……」

 

「あ、あはははは、お嬢ちゃんって呼ばれるのに慣れてなくて」

 

「なんだい、そりゃ」

 

 

 カグナがゴーゼと話しをしていると、酒場の階段から足音が聞こえてくる。

 報告を終えたアリシアが戻ってきたのだ。

 

 

「お、報告は終わったのか。で、どうだったアリシア?」

 

「はい。ダンジョンの消失に関しては、しばらく様子を見て問題なければ引き上げても問題ないとのことです。様子見に関してはゴーゼさんたちにお願いしようかと」

 

「そうか、わかった。それでお前たちは?」

 

「私たちは組合長から直々に新しい依頼を言い渡されました」

 

「組合長から直々に?!」

 

 

 カグナ以外のメンバーが一斉にどよめく。

 周りの反応からして組合長から直々の依頼というのが、どれほどすごいモノなのかをカグナは考えていた。

 そんな中、アリシアはカグナの顔を見ながらがギルド長からの依頼内容を言う。

 

 

「カグナさん……アナタを冒険組合本部に居る組合長の元に、お連れするようにとのことです」

 

「え……えっと、私を?」

 

「はい、ですので私たちと冒険組合の本部がある王都まで、一緒に来ていただけませんでしょうか」

 

 

 どういうことだ?なんでだ?という言葉が酒場内に飛び交う。

 カグナも似たような疑問が頭の中を駆け巡っている。

 こっちの世界に来たばかりのカグナに知り合いがいるはずもなく、ましてや冒険組合の組合長というドエライ役職の人と知り合った覚えもない。

 

 

「あぁ~いいけど……なんで私を?」

 

「それは組合長に直接お聞きした方がよいかと、詳しくは……私も聞いておりませんので」

 

「そっか」

 

 

 なぜ冒険組合の組合長がカグナに会いたいのか、アリシアはその理由までは聞いてないようだ。

 もしかしてダンジョンの機能を停止させたことを報告したとか?っとアリシアの新しい依頼の内容についてカグナが考えているとアイがカグナに話しかけてきた。

 

 

『これは好都合なのではないでしょうか』

 

「好都合?」

 

『はい。主は、かつてのNPC達を探しておいでです。冒険組合の長ともなれば顔も広いでしょうし』

 

「なんらかしらの手がかりを知っているかもしれない、ってわけか」

 

『はい、その通りです』

 

「なるほど、そいつはいい」

 

 

 アイがこのまま組合長に会うべきではと提案してきた。

 旅の目的にしていた、かつてのNPC達に関する情報を得られるかもしれない。

 そう思うとこのまま組合長に会うのは悪い手じゃないとカグナは思い始めてきた。

 

 

「どうされました?」

 

「あぁ~いや、なんでもないよ。それよりも組合長に会うって件だけどさ、私の方も組合長に聞きたいことができたんだ。案内をお願い」

 

「えぇ、わかりましたわ」

 

 

   *

 

   *

 

   *

 

 

「それではゴーゼさん、あとはお願いします」

 

「あぁ、わかった。お前さんたちも気をつけてな」

 

 

 出立する準備をしたカグナ達は酒場を出て、アリシアは見送りのために一緒に外へ出たゴーゼ達に村を託した。

 ゴーゼ達の見送りを見届けたカグナとアリシアたちは、村の出口へと向かっていく。

 

 

「次の村まで徒歩での移動となります」

 

「歩いていくの?馬車とかは使わないのか」

 

「あの馬車はゴーゼさん達の持ち物なんです。私たちは乗せてもらっただけなので」

 

「そうなのか……次の村までどのくらい?」

 

「徒歩での移動ですが、さほど時間はかかりませんわ」

 

 

 アリシアは次の村にはすぐに着くと答えたため、カグナは安心してアリシア達に歩いて着いてくのであった。

 しかし双方の認識に大きな差異があることに、カグナはまだ気づいてはいなかったのである……。

 そしてカグナ達が村を出発してしばらくした後、サラがふと空に何かが飛んでいるのを見つけた。

 

 

「ん、あれは……?」

 

 

 サラは眼を細くして空に浮かんでいる何かを凝視する。

 しばらくして、その正体に心当たりが見つかるとサラは空を指さしロランとダリアンの二人に空を飛んでいるモノを見るように促す。

 

 

「ねぇ、ロラン!ダリアン!!アレ見て!空高く飛んでいるアレ!!」

 

「なんだ、どうしたサラ?」

 

「いいから、ほら!!」

 

「んなッ!あれは!?」

 

 

 サラが指さしたソレをカグナ達は見る。

 そこには空高く飛行している巨大な海亀の姿がその眼に映った。

 全身が濃い緑色をしており、前足のヒレを飛行機の翼のように真横に伸ばしており、後ろ足に当たる部分からは後ろ足ではなくジェット噴射のようなものを噴出している。

 

 

「空亀だよ、空亀!子供のころに村で見た!!」

 

「あぁ、まさかこんなところで、また見られるなんてな」

 

 

 空高く飛んでいる亀を見て大はしゃぎしているサラ達の横で、カグナは眼を見開いて空の海亀を見つめていた。

 ただ空の海亀を見ているカグナの視線は、サラ達のとは異なっている。

 何故なら、あの空高く飛んでいる亀のことをカグナは知っているからだ。

 

 

「アレは……まさか、”サンダータートルドMK2(マークツー)”!?」

 

 

 かつてカグナと同じクラン”アリアドネの糸”のメンバーであり、小さいころから一緒に遊んでいた幼馴染で特撮作品を見るのが大好きだった友人が作成した空飛ぶダンジョンだからだ。

 そしてカグナも友人のダンジョン作成の手伝いをしたのだ。

 懐かしい姿を久々に見たカグナは、かつての友人と共に作った思い出が脳裏に浮かぶ。

 共に苦労して作った我が子とも思えるダンジョンが、まだ空高く飛んでいることをカグナは知ったのだ。

 

 

「あは、あははは。なんだお前、稼働()きていたのか……」

 

『主、どうされました?』

 

「あ、いや……」

 

 

 カグナは、空の向こうへと飛行機雲を描きながら飛び去っていく空の亀をまじまじと見つめながら微笑んだ。

 

 

「なんでもないよ」

 

 

 その微笑みが、まるで頑張っている我が子を見つめる母親のような雰囲気をしていることに誰も気づいていないのであった。

 

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