星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
猟師と思わしき二人の男が森の中を歩いていた。
今日もいい獲物が居ないかと散策していると、一人がなにか妙なモノを見つける。
別の方向を探していた男を大声で呼び出す。
「おい、これをみてみろ」
「なんだこりゃ、足跡……か?」
おびただしい数の小さな足跡と、それ以上にでかい足跡が複数、地面にくっきりと刻まれていたのだ。
足跡は動物のモノとは思えない形状をしており、むしろ人間の裸足の足跡と言ったほうが納得してしまうような形である。
「何かの大軍が、ここを通った……みたいだな?」
「何かの大軍って、一体なんだよ」
「しらねぇよ!こんなの今まで見たことがない」
二人は猟師人生の中で、これほど奇怪なモノは今まで見たことがなかった。
一人が足跡は動物のものではないと推測していると一つの正体を思いつく。
「もしかして……魔物か?」
「それだと村が危険に!?」
男の言葉に片方の男が、すぐさまに反応する。
魔物が近くに居るとすれば、彼らの住んでいる村が危険になるからだ。
「いや、向かった先は村とは反対方向だ」
「村の反対方向って……おいおい、まさか」
足跡が進んでいるのは、彼らの村とは反対方向の方角であった。
この様子だと村へは近づくことはないだろうと男は思っているが、足跡が向かっている方角には村とは比べ物にならないものがあることを彼らは知っている。
*
*
*
空は雲がなく快晴である。
眼の前には果てしなく道が続いており、草原の草が風に揺れて波打っていた。
そんな長い道なりを4つの人影と少し後ろに1つの人影が歩いている。
「ぜぇ…はぁ……ぜぇ……」
カグナとアリシア達が村を出て3時間が過ぎていた。
アリシア達は何事もない普段通りの様子で道を歩いており、その少し後ろをカグナは歩いていた。
「カ、カグナ……さん?」
「ふぇ……へぇ……ぜぇ……ふぇ、んぁに?」
魔法を撃つのに使っている杖をつき、汗だくで歩き続けているカグナの様子を見たアリシアが思わず声をかけた。
そう……カグナのスタミナが底を付き始めていたのだ。
「おいおい、大丈夫か?まだたった3時間しか歩いてないぞ」
「さ、さんじかんもあるいたら……ふつーはこう……ならない!?」
ゲームでは全力で走ってスタミナ切れになっても数秒あれば回復する仕様であったが、今は現実になった世界となっている。
つまりゲームのように消費したスタミナが数秒で自動回復するなどという便利仕様は存在しない。
カグナは見た目こそ美少女ではあるが中身は30歳近くのおっさんに片足入れてる状態であり、いろいろと体力がキツくなりはじめている繊細な年頃なのだ。
今の身体は元の世界の身体よりも体力があるとはいえ、数時間も歩き続ける行為は慣れていないカグナには精神的にキツイのである。
「休憩しましょうか」
「そ、そうですね!」
「さ…さんせ……い……」
一行は近くに生えていた大きめの木の陰を休憩所にした。
サラは腰にさげていた、物を縮小させて収納する魔法が込められたポーチから水筒を取り出しカグナへと渡す。
それを受け取ったカグナは、乾いた喉を潤すために中の水を一気に飲む。
「ぷはぁ!水が旨い!!」
美味しい水が喉の渇きを癒してくれる。
おかげで少しは疲れが癒えた気がした。
「それにしても君たちは平気だね」
「この程度歩いたぐらいで疲れるような鍛え方してねぇしな」
「慣れ、ですかね?」
ダリアンとサラが、カグナの問いに答える。
3時間ほど歩いたが、4人とも村を出発した時と変わらず、カグナと違って疲れている様子はなかった。
後衛で肉体派ではないサラですら、そんなに疲れているようには思えない。
「くっ、これが若さか……」
『年寄みたいなこと言わないでください』
中身は30代直前おじさんなカグナは、10代後半な4人と年齢差を感じる気がしたがアイに虚しくツッコまれた。
カグナは休憩ついでにサラ達に問いかける、空の亀をなぜ知っていたのかを。
「そういえばキミ達は、あの空の亀こと知ってるのかい?」
「はい、子供のころに生まれ育った村で見たことがあるんです」
「へぇ~子供のころに、ね」
サラが子供のころの思い出を語った。
それを聞いたダリアンとロランも続けて口にする。
「あの亀が空を飛んでいるダンジョンって知ったのは、それからしばらく後のことだったな」
「いろいろな人に聞いたんですけど、あの空亀の元まで行ったことのある冒険者は今まで居ないらしいんですよ」
「え、そうなの?」
ロランが語った内容にカグナは違和感を覚える。
3人が言っている空亀とは、カグナが友人と共に作ったダンジョンであり挑戦者および突破者は何人も居たはずだと。
もっともそれはゲーム時代での話であって、現実化した世界での話ではないことにカグナはすぐには気が付かなかった。
そんな事情を知らないロラン達は、話を続ける。
「だから俺達思ったんですよ。あの空の亀の元にまで行けたら、ものすごいことなんじゃないか!って」
「まぁ、俺達が冒険者になるきっかけってヤツだな」
「ふふ、そうだね」
3人は楽しそうに思い出話を語っている。
カグナは3人の話を聞いて思わず微笑んでいた、まさか自分と友人が作ったダンジョンが3人の冒険者になる切っ掛けになるとはカグナは思いもしなかったからだ。
その様子を見ていたアイがカグナに、ダンジョンの作成者はカグナであることを告げるのか聞いてくる。
『あのダンジョンのこと、行く方法とかを皆さんに話すのですか?』
「いや、無粋な真似は止めておこう。自分たちの手で達成してこそ意味があるんだからさ」
『なるほど……』
空を飛ぶダンジョンの空亀こと”サンダータートル
だがそれ3人に喋ることはしないと断言した。
重大なネタバレは、やる気を萎えさせることになるからだ。
だから心の中で、こっそりと3人がダンジョン攻略できるよう祈ることにした。
みんなとの会話が弾んでいる中、アリシアがカグナの脚の様子を聞いてきた。
「脚の様子はどうですか?」
「う~ん、まだ疲れは取れないかな」
3時間の徒歩で脚に蓄積した疲労は簡単には抜けないようだ。
その様子を見ていたダリアンたちは、どうしようかと考える。
「この様子だと次の村に着くまでに日が暮れるんじゃないか?」
「そうですね、まだ距離がありますし」
「あはは、着く前に私の脚が壊れちゃうよ……次の村から王都への馬車が出てるんだっけ?」
「はい、それに間に合えば早くて三日後の昼頃にでも着くのですが」
「アンタのその脚の様子じゃ、まだまだかかりそうだがな」
カグナはサラから貰った簡易食料を齧りながら、自分の脚をさする。
ダリアンはカグナの歩行ペースを、サラは現在地と次の村への距離を計算している。
その結果、今のままだと120%間に合わない結論に至った。
するとカグナの脚の様子を危惧していた一行の会話を聞いていたアイが一つの提案をしてきた。
『主、王都へ行くだけなのでしたら次の村へ行くよりも、”彼ら”を召喚したらいかがでしょうか』
「彼ら?……あっ」
提案の内容を聞いたカグナは、とある召喚獣を思い出す。
カグナがアナザーワールド・オンラインの広大な世界を駆け巡るために移動用として用意していた召喚獣だ。
「たしかに、アイツらなら隣の村に行くよりも王都へ直行できるはず……」
「カグナさん、アイツらとは?」
「あぁ~、私の召喚獣の1体……いや1チームかな?」
カグナはよっこらせっと立ち上がり、杖を握りしめて召喚の準備を行う。
杖に魔力を込めると足元に召喚の魔法陣が展開される。
「
カグナが召喚魔法を唱えると、目の前に展開された召喚魔法の魔法陣がまばゆい光を放つ!
しばらくして光が収まると、魔法陣が有った場所に数匹のイノシシが現れていた。
真ん丸の身体に小さい脚のイノシシたちは、人ひとり乗せられるほどの大きさであり背中に人が跨るための背もたれ付きの
「これは……イノシシ?」
「しかも1匹じゃないぞ」
アリシアたちが現れたイノシシたちを眺めていると、先頭のイノシシがカグナのことを力強く見つめると大きく息を吸い、そして――。
「お久しぶりです!!姐さん!!!!」
「「「「お久しぶりです姐さん!!!!」」」」
先頭に居たリーゼントのような立派な毛を生やした1頭が大声で叫ぶ!
そして後ろのイノシシたちも続いて叫ぶ!
あまりにも大きな声で叫ぶものなので、カグナ達は思わず耳を塞いでいた。
「カグナさん……この真ん丸としたイノシシたちは、一体……?」
「か、かわいい……」
「あ”ぁん?だぁれが真ん丸可愛いマスコットみてぇだって、
「「「「あ、アニキッ!?」」」」
先頭の立派な前髪したイノシシがサラの可愛いという言葉に反応しケンカ腰になりかけたが、カグナに頭を杖で叩かれて制止される。
「誰も、そこまで言ってないだろが」
「あ、姐さん……いきなり何するんすかッ!?」
眼の前の光景にどう反応すればいいのか分からず硬直していたアリシア達に、カグナは召喚したイノシシたちを紹介する。
「このイノシシたちは、ハギキラワーク。私の召喚獣だよ」
「おぅ、俺たちはチーム
カグナが召喚したイノシシ達こと召喚獣のハギキラワークを見たアリシア達は、カグナの考えを把握した。
「カグナさん……もしかして、このイノシシたちに」
「そう、このハギキラワークに乗って王都まで行こうかって」
次の村へ行って馬車に乗るよりもカグナが召喚したハギキラワークに乗り直接王都へ向かおうと案である。
カグナの話しを聞いたカタキラは、自身たちが召喚された目的を把握した。
「なんスか。王都まで走るために呼んだンすか?」
「あぁ、私を含めた此処に居るメンバーを乗せて走ってくれ」
「そういうことっスか。それぐらい朝飯前だぜッ!!」
カタキラと舎弟のイノシシ達は、自分たちの走りを必要としていると知ったためかヤル気に満ち満ちており今にも走り出しそうにしていた。
そんなイノシシを見たダリアンがぼそりと呟く。
「このイノシシたちで大丈夫なのか?」
「あ”ぁぁん?てめぇ!俺達の走りを疑ってんのかあ”ん”!?」
「あッ、いやそういわけじゃ」
「いいぜ、そういうことなら乗りな!俺たちのスーパーでグレィトなスピードを見せてやる!!あ、俺はカグナの姐さん以外は乗せる気ねぇから後ろの連中に乗りな!!」
カタキラの言葉を聞いたサラが興味津々で舎弟イノシシの元へ駆け寄っていく。
「乗っていいかな?」
「いいっスよ!」
了承を得たサラは舎弟イノシシに跨る、ものすごいワクワクした顔をしていた。
それを見たアリシアたちは、各々のイノシシの元へと駆け寄っていく。
「乗馬は経験がありますけど、イノシシは初めてです」
「イノシシって故郷の村だと畑を荒らすヤツだったんだけど、まさか乗ることになるなんて」
「あぁ、なんか変な気分だ」
アリシア達がハギキラワークのイノシシに跨る。
「それじゃ準備はいいね?」
「かっ飛ばすぜ!振り落とされねぇように、しっかりと捕まってなぁ!!」
全員がしっかりと乗ったことを確認するとカグナはハギキラワークのリーダーであるカタキラに出発を告げる。
それを聞いたカタキラは、アリシアたちを乗せている舎弟のイノシシたちに向かって
「行くゾ!てめぇら!!チーム
「「「「オッス!!!」」」」
カタキラの掛け声とともにハギキラワークは王都へと向かって全速力で走り出す!
ハギキラワークに跨ったカグナ達は急激な加速と速度で、Gに従い身体が思いっきり後ろに引っ張られようとした。
カグナは慣れていたので耐えられているが、ハギキラワークの想像以上のスピードにアリシアたちは振り落とされないようにしっかりとイノシシにしがみ付く。
なお、サラも意外と平気な様子で笑っていた。
※冒険者御用達の収納ポーチ
縮小魔法を付与された、物を小さくして納めることができるポーチ。主に腰に下げている。
中に装備や冒険用道具などを収納したり、冒険で得たアイテムを収めることに使用している。
納めている物の重量も軽減されるので、ある程度重い物でも入れられる。
ただし収納にも限度があるので、なんでもかんでも入れられるわけではない。
なおカグナはメニューを使って装備・アイテムをアイテム欄に収納できるので実質無制限である。