星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#15 ウサギ、悪者退治する

 イノシシに乗った集団が王都へと続く道を駆け抜けている。

 

 

「いい風だなぁ~~」

 

 

 走り屋イノシシ集団ハギキラワークのリーダーこと、カタキラに跨っているカグナは全身で風を感じながら髪の毛と長いウサ耳をなびかせていた。

 その後ろを走るイノシシたちに乗っているアリシア達はハギキラワークの走りに慣れてきたのか、そのスピードを楽しむほど余裕が出来ている。

 

 

「慣れると、こいつら意外と乗り心地が悪くないな」

 

「あっ、もうこの辺なのか。もうすぐ王都が見えてきそう」

 

「これなら予想よりも早く着きそうですね」

 

 

 ロラン達が見たことある風景らしく彼らの言う通りなら、もうすぐ王都の姿が遠目に見えてくるらしい。

 村から王都までの道のりをハギキラワークで走り、途中一晩野宿したとはいえ馬車で行くよりも大分早い。

 

 

「なんか見おぼえのある風景だな」

 

『主も過去に、この道を通ったことがあるかと』

 

「そうだっけ?まぁ、だいぶ前なんだろうな……」

 

 

 カグナも今走っている風景になんとなく見覚えがあった。

 おそらくゲーム時代に何度か通ったのだろう、ただカグナにとっては10年ほど前の記憶なのでほとんど覚えてはいない。

 ましてや、こっちの世界では100年の月日が過ぎているとのことなので、細かい箇所は昔のままではないのであろう。

 そんなことを考えながら走っていると、アリシアが何かを見つけた。

 

 

「カグナさん、アレ見てください」

 

「ん、どうした?」

 

 

 アリシアが何かを見つけた方向を見てみると、カグナ達が走っている道とは別の道があった。

 おそらくカグナ達が通ってきたところとは違う箇所から伸びている道で、途中で合流する感じのする道だった。

 問題なのは、その道を急いで走らせている馬車と、その馬車を追いかけている大きな鳥のような恐竜のような生き物に乗っている集団が居るということだ。

 

 

「あれは……商人の馬車が盗賊に襲われているのか!?」

 

「大変、助けないと!!」

 

 

 事態を把握したダリアンとサラが叫ぶ。

 二人の言う通り、襲われて逃げている商人と追いかけている盗賊の一団の追いかけっこだ。

 状況を把握したカグナは、自身が跨っているイノシシのカタキラに一言かける。

 

 

「カタキラ」

 

了解()っす!!」

 

 

 その一言だけで理解したカタキラ率いるハギキラワークは方向を変えて速度を上げた。

 

 

   *

 

   *

 

   *

 

 馬車を止めた盗賊が、馬車に乗っていた商人の男を剣で斬りつけた。

 

 

「があッ!!?」

 

「へッ、俺たちの言う通りに大人しく止まっていればケガしなくてすんだがなぁ~自業自得ってヤツだなぁ」

 

 

 商人は斬られた腕を抑え、抑えている手の指から赤い鮮血が溢れ出てきている。

 盗賊たちは馬車の中身を物色しようと近づいてきた。

 

 

「やめろ!近寄るな!!」

 

「へへへ、大人しく荷物を渡しな。そうすれば命までは取りやし――ぐはッ!?!」

 

 

 商人を追い詰めていた盗賊の一人が、突如勢いよく走ってきたカタキラに吹き飛ばされた。

 そしてそのままカグナを乗せたカタキラは横滑りをし地面に4本の急ブレーキ跡の線を(えが)きながら停止して盗賊たちの前に立ちふさがる。

 突然、目の前に現れたイノシシに乗ったウサミミの美少女に盗賊たちは唖然として数秒思考が停止していた。

 数秒ほどたってようやく自分の部下が、眼の前のイノシシに勢いよく飛ばされて地面に激突した現実に受け入れる。

 盗賊の中で一際大柄な男が、目の前に現れたイノシシに向かって吠える、おそらくこの男が盗賊達の頭なのだろう。

 

 

「な、なんだてめぇは!?俺の可愛い部下になにしやがる!!」

 

「ハッ!なんだ、さっきのはてめぇの部下だったのかよ!!ちんけ過ぎて、畑の隅っこに突っ立ってるブサイクな案山子(カカシ)かと思ったぜ!!!」

 

「んだとぉ、このイノシシ野郎!!!変な髪型みたいな毛生やしやがってケモノのくせに、おしゃれのつもりか!?」

 

「てんめぇ、俺のスーパーグレィトな前毛(あたま)をバカにしやがったなぁ!?!あ”ぁん!!!」

 

「ダセェもんをダセェと言って何が悪いん…………イノシシが喋ったぁ!?!?」

 

 

 盗賊の頭はカタキラと口喧嘩を始めるとイノシシが喋って口喧嘩してきたことに驚愕していた。

 そんなくだらないことをしているうちにアリシア達も到着し臨戦態勢をとる。

 

 

「ケガをしてますね。治しますので、じっとしてください」

 

「あぁ……ありがとう」

 

 

 サラは斬りつけられてケガをした商人の元に駆け寄り、回復魔法を唱える。

 カグナがカタキラから降りて魔杖を構えて盗賊たちの前に出ようとした時、アリシアがカグナより前に出てカグナを制止した。

 

 

「カグナさん、ここは私たちが」

 

「いいの?」

 

「はい、おまかせを!カグナさんは、商人の護衛をお願いします」

 

「わかった」

 

 

 アリシアが腰の剣を抜き、ダリアンは拳と手を合わせて盗賊たちの元へと歩み寄る。

 そんな二人を見た盗賊たちが吠えた。

 

 

「舐めんなッ!この人数で勝てると思ってんのかぁ!?

 

盗賊(ひと)の仕事を邪魔したんだ。痛いめみないとわかんねぇみたいだなクソガキども!!」

 

「はぁ……いいから、かかって来いよ」

 

 

 吠える盗賊たちにダリアンが挑発した。

 気が短かったのか、挑発にあっさり乗った盗賊たちはアリシアとダリアンへと襲い掛かってくる!!

 だが……

 

 

「おせぇ!!」

 

「がはッ!?」

 

 

 ダリアンは盗賊の一人の攻撃をあっさりと躱し、返しの一撃を襲い掛かってきた盗賊の腹にめり込ませる!

 腹に重い一撃を貰った盗賊の男は膝を地につけ、呼吸が荒くなって(うずくま)った。

 ダリアンは自分が沈めた相手が反撃する余裕がないことを確認すると、次の相手に向かい拳を振るう。

 その横でアリシアも盗賊たちと戦っていた。

 

 

「好きにはさせません!!!」

 

「ぐぁ!!!」

 

 

 アリシアは手に持った盾で盗賊たちの攻撃を受けたり流したりしつつ剣で斬りつけたり柄で殴りつけたり、時には盾で相手の顔を強打したりして襲い来る盗賊たちを次々と黙らせていく。

 二人の活躍により、次々と仲間たちを倒されることに盗賊たちも焦りだす。

 

 

「なんだ、こいつら強いぞ!!」

 

「一人で戦おうとするな!数で囲め!!」

 

 

 ダリアンが、また盗賊を仕留めていると後ろの茂みから身を潜めていた別の盗賊の男が手に持った斧で襲い掛かってくる。

 

 

「もらったッ!!!」

 

「なッ!?」

 

「死ね!くそ野郎が―――がはッ!!?なんだ!?煙!!?」

 

 

 ダリアンは死角から襲い掛かってきた盗賊に気が付いたが、躱すにしろ受けるにしろタイミングが少し遅かった。

 無傷ではすまないだろう……そう思っていたが、突然盗賊の男の顔に何かが飛んできてはじけて赤い煙まみれになった。

 

 

「がっ!眼が!眼が痛てぇ!!!」

 

 

 盗賊の男は真っ赤に純血した眼を手で押さえて悶絶し始めた。

 どうやら先ほどの煙が眼に入り痛みでダリアンへの奇襲どころではないみたいである、そんな隙を見逃すほどダリアンは愚かではない。

 眼を抑えて悶えている盗賊の男の腹に重い一撃がめり込む!

 男は一瞬足が地から離れて腰がくの字に曲がり、そのまま白目をむいて地面へと倒れた。

 その様子を見ていたロランは、溜息混じりにダリアンへと話しかける。

 

 

「ッたく、気をつけろよ」

 

「へッ、わりぃ助かった」

 

 

 ロランは紐と布で作った簡易投石紐(スリング)を振り回して真っ赤な玉を盗賊たちの顔に目掛けて投げ飛ばす。

 投げ飛ばされた玉は盗賊たちの顔に次々と命中していき、真っ赤な煙が盗賊たちを襲う。

 煙に襲われた盗賊たちは、先ほどの男と同じような状況になっていた。

 

 

「効くだろ?唐辛子とか辛い食材(もの)をふんだんに使った特性の目潰し玉は。それッ!!」

 

 

 ロランの妨害により盗賊たちは思い通りにことを運べず、その間に盗賊たちを次々に倒していくアリシアとダリアン。

 その様子を商人の護衛ということで、馬車の近くで見守っていたカグナは感心していた。

 

 

「アリシア達、思ってたよりもやるね。連携の練度が高い」

 

「はい。ダリアン達なら、あの程度の盗賊相手に遅れなど取りませんよ」

 

「そのようだ。あの様子だと助太刀は必要ないかな」

 

「そうですね。今回はカグナさんが護衛(こちら)側にいますから、思いっきり暴れられて張り切ってるんですよ」

 

「そ、そうなんだ」

 

 

 サラは戦闘を楽しんでいるダリアン達の心情を笑顔で推測する、昔からの知り合いだからなせるのであろう。

 その笑顔(かお)は、まるでやんちゃな弟を身も守る姉のごとく……そんな気がした。

 カグナは、ダリアンたちが手間取るようなら手を貸そうと思っていたが、その必要はない。

 そう思っていたカグナと商人のケガを治療中のサラの元に、盗賊の一人が近づいていた。

 

 

「お前ら、あいつらの仲間だろ?」

 

「そうだけど?」

 

「なら……お前たちを人質にとれば、アイツらも大人しくなるだろうぜ!!」

 

「へぇ、できるの?」

 

「はッ!魔法使いなんぞ、魔法の詠唱する前に捕まえちまえば簡単に――」

 

「”雷魔(ザンド)”」

 

 

 カグナ達を人質にしようとしていた盗賊は、カグナの手加減した雷魔(ザンド)によって意識を失い倒れる。

 

 

「悪いね。魔導士の戦種(クラス)にとって高速詠唱系スキルの習得は必須なんだ。初級レベルの魔法程度は詠唱不要(ノーチャージ)で撃てるのが当たり前なんだよね。あれ聞いてる?」

 

『気を失って、聞いてませんね』

 

 

 カグナ達を人質にしようと似たようなことを考えていた者がいたが、すべてカグナによって潰された。

 そしてアリシアの剣によって、また盗賊の一人が倒され、残ったのは盗賊のボスであるガタイのいい男だけだ。

 アリシアとダリアンが男を近づく、二人の後ろでロランもすぐに動けるように待機していた。

 

 

「これで残るは、アナタ一人です」

 

「諦めてお縄に付きな。抵抗しねぇんなら、痛いめにはあわないぜ?」

 

「くそッ!こうなったら……」

 

 

 追い詰められた盗賊のボスは懐から手のひらほどの大きさの水晶の塊を取り出した。

 透明な水晶で、中に何かが入っているようだ。

 

 

「なんだ、それは?」

 

「へへ、ここで捕まるわけには……いかないんでねぇ!!」

 

 

 男は水晶を勢いよく地面へと叩きつける!

 地面に叩きつけられた水晶はあっさりと割れ散る……だが、ただ割れたわけではない。

 水晶が割れたところから魔法陣が展開されたのだ!!

 

 

「これは!まさか!?」

 

 

 アリシア達と盗賊の間に1匹のモンスターが召喚された。

 それは人より一回り大きい青いナメクジのような見た目である。

 しかし只のナメクジではなく、その青い身体はヌルヌルした流体状の身体をしており頭と思わしき所に二つの光る眼がついていた。

 

 

「なんだコイツ!人造流体魔生物(スライム)か!?」

 

「まさか、”ジェリースラッグ”!?」

 

 

 アリシアが召喚されたモンスターの名前を叫ぶ。

 アナザーワールド・オンラインにおいて、人の手によって造られた人造生物という設定を持ったスライム種モンスターの一体である。

 本来、この世界のスライムは水質浄化のために街や村などで使われるのだが、アリシアたちの目の前に現れたジェリースラッグは数少ない戦闘用のスライムだ。

 カグナは、アリシアたちの眼の前に召喚されたジェリースラッグを、右目に生命力視認魔法(シィ・ライファ)を発動してモンスターの情報を解析する。

 

 

「あれは……今のアリシア達じゃ、少し厳しいかな」

 

 




人造流体魔生物(スライム)
よくある一般的なスライム。
心臓部である小さなコアを中心に液体状の身体を持つ人工的に作られた生物。
水の浄化能力を持つため、アナザーワールド・オンラインにおいて人の生活で出す生活用水や下水を浄化して川や海に流すための浄水処理に主に使用されている。
知性はあまりないが、流体の身体のためコアを破壊しない限りは死なない。

まれに逃げ出した個体が野生化することもある。
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