星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#16 ウサギ、盗賊を捕まえる

「カ、カグナさん……あれは!?」

 

「ジェリースラッグっていう流体魔物(スライム)系のモンスターだよ。たしか物理系の攻撃に強い耐性があったはず……」

 

『主のおっしゃる通りです。ジェリースラッグ、流体状の身体で高い物理攻撃耐性を持っております。また弱点である”心臓(コア)”を破壊しない限り何度でも流体状の身体を再生して復活します』

 

「それって、かなりマズいんじゃないですか!?」

 

 

 カグナとアイは、アリシアとダリアンの眼の前に立ちふさがっているジェリースラッグについてサラへ説明する。

 それを聞いたサラは、今のアリシア達では苦戦する相手であることを即座に理解した

 サラがアリシア達の心配をしていると、盗賊のボスが高笑いしている。

 

 

「あははははッ!ダンジョン帰りの冒険者(まぬけ)共から盗んだモノだ!ちと勿体ないかもしれないが、これで終わりだなぁ!!」

 

「チッ!!!」

 

 

 ダリアンが拳に力を籠めると紅い(もや)のようなものが湧き出てくる、拳に闘気(オーラ)を纏ったのだ。

 闘気(オーラ)とは、剣士や拳闘士などの接近戦を主とする戦種(クラス)が技を繰り出す際に消費するものであり、魔術師にとっての魔力(マナ)と同じである。

 アナザーワールド・オンラインでは、体力や魔力(マナ)と同じようにゲージとして存在しており攻撃技や防御技などを使用する際に消費している。

 拳に闘気(オーラ)を十分に込めたダリアンは、ジェリースラッグを勢いよく殴る!

 

 

「オラッ!!!」

 

 

 しかしジェリースラッグにダメージはなく、ぬちょッ!という音と共にダリアンの拳は流体状の身体に飲み込まれた。

 ダリアンは急いで腕を引いて、飲み込まれた拳を引き抜く。

 そして諦めずに何発か殴ってみたが結果は先ほどと変わらないため、ダリアンはジェリースラッグから距離をを取った。

 

 

「くそッ!あの身体じゃ、殴ったダメージが入ってる気がしねぇ!!」

 

「無駄かもしれないけど……」

 

「何する気だ、ロラン?」

 

「コレをジェリースラッグ(アイツ)に投げつけてみる!ソラッ!!!」

 

 

 ダリアンが自身の攻撃の感触を確かめた後に、ロランが手持ちアイテムのジェリースラッグの顔に向けて投げつける。

 さきほど盗賊たちの顔に当てていた赤い玉が、ジェリースラッグの顔に命中して赤い煙が充満する。

 だがしかしジェリースラッグが怯んだり、盗賊たちのように苦しむ様子は見受けられなかった。

 

 

「効いて……ないな」

 

「チッ、やっぱり駄目か……」

 

 

 攻撃が無駄だと分かるとロランは追撃を止めた、貴重なアイテムの無駄使いにしかならないからだ。

 そんな二人の攻撃を見ていたアリシアはサラの方に振り返り、手に持った剣を掲げ叫ぶ。

 

 

「サラ!剣に属性付与(エンチャント)を!!」

 

「え?あ、はい!!」

 

 

 アリシアに属性付与(エンチャント)を要求されたサラは一瞬戸惑ったが、すぐに頭を切り替えて魔法の準備に取り掛かる。

 

 

「炎よ、敵を切り裂く牙となれ!”炎魔付与(フアムチャト)”!!」

 

 

 サラが呪文を詠唱し魔法を唱えるとアリシアの剣が炎を纏う、サラの魔法でアリシアの剣に炎の属性を付与したのだ。

 これによりアリシアの剣による攻撃に炎属性が追加される

 そしてアリシアも自身の闘気(オーラ)を剣に纏わせて、ジェリースラッグに斬りかかる!

 

 

「はぁぁぁ!”オーラスラッシュ”!!!」

 

 

 アリシアの闘気(オーラ)とサラの炎魔付与(フアムチャト)を纏った剣技”オーラスラッシュ”がジェリースラッグに当たる!

 焼き斬りつけられた跡がジェリースラッグの身体へ一直線に刻まれた!!

 だがしかし……アリシアが斬りつけた跡は、すぐに元に戻りダメージは確認できなかった。

 

 

「くっ、斬撃も炎も意味がありませんね……」

 

「はははぁ!無駄みたいだな!!コイツにお前らお得意の攻撃も効かないんだろう!?おいデカブツ、やっちまえ!!!」

 

 

 男の命令にジェリースラッグは身体の一部を変形させて触手のようなものを伸ばしてアリシア達を攻撃してきた。

 幸い攻撃の速度はそこまで早くはなくアリシア達はなんなく躱していく。

 だが有効な攻撃手段がない以上、ただ躱し続けては意味がない……その間に盗賊のボスが逃げ出す可能性があるからだ。

 思わぬ相手に手間取っているアリシア達の様子を見ていたカグナと、そんな主人の様子を伺っていたアイがカグナに問いかけてくる。

 

 

『主、加勢しないでのすか?』

 

「ん?」

 

『あのモンスターのレベルはアリシア様たちよりも上です。あの方たちだけでは倒しきれない可能性があります」

 

「そうだね。今のアリシア達では少しキツイかな……任せてと言われたが、さすがに手を貸さないとね。たしか、あぁいうのに有効なのが……アリシア!ダリアン!少しさがれ!!!」

 

 

 カグナはアリシア達に少し距離を取るようにと叫び、ジェリースラッグに向けて杖を構えた。

 杖を構えているカグナの姿を見たアリシア達は、すぐさまジェリースラッグから距離を取る。

 そしてジェリースラッグから離れる二人を確認したカグナは魔法を放つ!

 

 

「”氷魔縛鎖(フレズチェン)”」

 

 

 カグナが魔法を唱えるとジェリースラッグの周辺に水色の小さな魔法陣が複数展開し、そこから氷の鎖がジェリースラッグへと向かって伸びて刺さる。

 すると氷の鎖が刺さった箇所からジェリースラッグの身体が凍り、ジェリースラッグが苦しみ始めた。

 またジェリースラッグに絡みついた氷の鎖の一つが盗賊の男の脚にも絡みついて凍り、男もその場から身動きが出来なくなった。

 

 

「あのデカブツが、一瞬で凍りやがった……」

 

「すごい……こんなことが」

 

 

 先ほどまで苦戦していたアリシア達が見たのは、カグナが発動した氷魔縛鎖(フレズチェン)の氷の鎖で拘束されて完全に凍結したジェリースラッグと、脚が凍りついて地面から離れない盗賊の姿であった。

 

 

「なんだコレは!?動けねぇ!!?」

 

 

 盗賊のボスは凍った自身の脚を何とかしようともがいている、しかしカチカチに凍った脚はびくともしなかった。

 カグナは発動した魔法がちゃんと効果を発揮したことを見届けると、サラにジェリースラッグについて対抗策を話し始める。

 

 

「ジェリースラッグのような流体魔物(スライム)系のモンスターは基本的に物理攻撃に耐性があってあまり効かない。だから攻撃するなら属性魔法攻撃が有効だ。さっきサラが使った炎魔付与(フアムチャト)みたいなのがね」

 

「あ、はい!」

 

「ただちょっと火力不足だったかな。あれだけじゃジェリースラッグの心臓(コア)には届いてなかったし」

 

「うぅ……すみません」

 

「あと属性付与(エンチャント)するなら炎魔(フアム)よりも氷魔(フレズ)の方がいい。身体が固まると物理攻撃も受け流せないからね」

 

「な、なるほど……」

 

「状態の変化によって耐性や弱点がまるっと変わる場合があるんだ。さっき言ったみたいに物理耐性持ちのモンスターが凍結したら物理攻撃に弱くなることがある……」

 

 

 普段のジェリースラッグは流体状の身体で物理攻撃は受け流せる、しかし凍らせてしまえば受け流すことができなくなる、ということである。

 だがジェリースラッグほどの大きさと体積を持つスライムモンスターを一瞬で凍らせるという行為は、今のこの世界における一般的な魔導士には無理なのだがカグナはそのことを知らない。

 

 

「さてッと、そういうわけで……ダリアン!」

 

「……そういうことか!!」

 

 

 ひとしきり説明を終えたカグナから、ダリアン指名を受けた。

 突然カグナに名前を呼ばれたダリアンは全てを理解し、指を鳴らしながら凍ったジェリースラッグの元へと駆け寄り拳に再び闘気(オーラ)を込める。

 

 

「はぁぁぁぁぁ!”岩砕拳(ガンサイケン)穿孔(センコウ)”!!!」

 

 

 拳に闘気(オーラ)が溜まり切ると、ダリアンの渾身の一撃”岩砕拳(ガンサイケン)穿孔(センコウ)”がジェリースラッグに炸裂する!

 ダリアンの一撃は凍ったジェリースラッグの心臓(コア)をぶち抜き、カチンコチンのまま心臓(コア)をぶち抜かれたジェリースラッグはヒビが体中に広がり粉々になって散っていく。

 無事ジェリースラッグを撃破したダリアンは、そのまま盗賊の男の元へと歩いていく。

 

 

「さぁ~て、これで頼みのモンスターも居なくなったわけだが……覚悟は良いよな?」

 

「ひ、ひぃぇ!?」

 

 

 頼みの綱も失い抵抗する(すべ)は何一つ残っていない男、その結末を想像するまでもなかろう。

 ダリアンが怯える盗賊のボスの腹に拳をめり込ませて意識を奪い、アリシア達が縄で縛って確保する。

 すでに倒れている盗賊の下っ端たちも同様に縄で縛り逃げられないようにした。

 その様子を見ていたカグナは、無意識に笑みを浮かべていた。

 

 

『楽しそうな表情(かお)をしておりますね、主』

 

「ん?いや、ちょっと昔を思い出してね……」

 

『昔?』

 

「あぁ……”アリアドネの糸(クラン)”のメンバーとの冒険をちょっとだけ……ね」

 

 

 カグナはかつてのクラン”アリアドネの糸”に所属していた時の思い出を思い出している。

 

 

「”腐れ縁の友人(アズマエイ)”や”鉄拳令嬢(レイナ)”と一緒に、”口の悪い妹分(マコト)”と”わんぱくな妹分(アヤネ)”の面倒みた時のことを思い出したよ」

 

『お懐かしい名前ですね』

 

「たしか、あの時もジェリースラッグ相手に苦戦してたっけかな。マコトのヤツは戦斧(アックス)の物理攻撃技しか持ってなかったから全然効かなくてブチ切れてたっけ。そういやアズマエイと一緒に馬鹿笑いして、あとでキレられたな」

 

『それは主たちが悪いのでは?』

 

「あははは。そうだな」

 

 

 友人のアズマエイと、”鉄拳令嬢”と密かに呼ばれていたクランメンバーのレイナと一緒にカグナ達にとって妹分のような二人の女の子プレイヤーの面倒を見ていた時のことを……。

 その時の光景と、今目の前に居るアリシア達の姿が重なって見えてしまったのだ。

 

 

「ほんッと、懐かしい……」

 

 

 カグナがかつての思い出に語っていると、助けた商人がカグナ達の元に駆け寄ってきた。

 サラのおかげで盗賊たちから受けたケガもすっかり完治した様子だ。

 

 

「皆さん。助けていただき、本当にありがとうございます!!」

 

「いえ、お気になさらずに」

 

「そんな!ぜひともお礼を……」

 

 

 アリシア達が商人とお礼について話しをしている。

 双方の話し合いの結果、王都へについて落ち着いたら礼を受け取るという形に話しが付いた。

 

 

「それではカグナさん。行きましょう」

 

「あぁ、そうだね」

 

 

 カグナ達は再びハギキラワーク達に跨り、助けた商人と一緒に捕まえた盗賊たちを引きつれて王都へと向かった。

 

 

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