星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#2 ウサギ、家に帰れず

「どうして……そんな……」

 

 

 かつては豪邸、今や廃墟を目の前にカグナは立ち尽くしていた。

 時間と費用をつぎ込んで作った自慢の屋敷が残骸の山となっていれば仕方ない。

 いつまでも棒立ちしてるわけにもいかず現状を確認するためにもカグナは恐る恐る廃墟の中へと足を踏み入れたが、なかなかの惨状であった。

 

 

「うわぁ、柱も壁もボロボロだし中は雑草生えまくりだし……うげっ崩れた」

 

 

 壁は剥がれ、扉は外れ、階段は壊れていた。

 部屋に置いてあった小物は風化していたのか、手に持ったらボロボロになる。

 屋根は崩れて落ちており崩れ落ちた穴から日の光が差し込んでくる、まさにThe廃墟という感じだ。

 

 

「本館と製造施設は廃墟になってるし、採取アイテムの農園は完全に草原に変わってた」

 

 

 廃墟の探索を終えたカグナは、拠点の屋敷の周りに作っておいた植物系アイテム栽培できる農園の様子も見てみたが畑だった痕跡がほとんどないくらいの草原となっており、ボロボロになっていた柵や錆びたり壊れたりしていた農具が辛うじて此処に畑があったと主張している。

 

 

「なんでこんな廃墟になっているんだ、まるで何年何十年も放置されてたかのように……いや確かに数年放置はしていたけどそれは現実(リアル)での話であって……」

 

 

 カグナは周りを見回し己の記憶と照らし合わせる、たしかに此処は自分が作った屋敷のある場所のはずだが建物や荒れた農園以外にも森の木々や遠くに見える山々の様子など細かいところが、記憶の中にあるマイエリアの様子と少し違っていたことに気づいた。

 

 

「そういえば、ここの風景って、こんな感じだったっけか……?」

 

 

 アナザーワールド・オンラインはオープンワールドゲームではあるが、各プレイヤーに与えられるマイエリアは完全に個別のエリアとなる。

 つまりメインとなるオープンワールドのエリアから切り離された空間でありマイエリアの外は霧などの描写で区切られているはずだが、今のマイエリアはまるで地続きになっているかのような雰囲気である。

 十年ほど前の自分の記憶を掘り起こしていると突然声が聞こえた。

 

 

『敵性生物の接近を確認しました。4時の方向です』

 

「え? この声は」

 

 

 突然の声にカグナは驚く。

 ふと横を見るとネコのような小さな耳が付いたテニスボールくらいの大きさの真っ黒な毛玉に白い眼が付いてるモノがフワフワと浮いていた。

 

 

「お前、プレイヤーサポートAIの……」

 

『驚き呆けてる場合ではありませんよ、主。敵性生物は複数感知しました』

 

「!?」

 

 

 カグナが振り向くと、そこにはサルと思わしきモンスターが十匹ほどカグナのことを睨んでいた。

 ただの猿ではなく安っぽい剣や槍などを手に持ちボロ布を身体に巻き付けておりニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。

 カグナは、このサルのことをよく知っている。

 

 

「こいつら、シーフモンキー(盗賊サル)か?」

 

『はい、数は十で所持している武器はすべて最低ランクの武器です』

 

 

 人から色んな物や武器を盗んで自分で使う生態を持つ【シーフモンキー】という名前のサル型モンスターだ。

 おまけに群れで活動し、盗賊のような行動をするサルなのでプレイヤーからは盗賊サルと呼ばれている。

 

 

「ウキャァァ!!」

「「ウキャァァァ!!!!」」

 

 

 体格が一番大きいシーフモンキーが手に持った剣の切っ先をカグナに向けて叫ぶ。

 おそらく、この群れのボスザルだ。

 ボスザルの雄たけびが合図となったのか、数匹のシーフモンキー達が雄たけびをあげながら手にした武器を振りかざして一斉に襲い掛かってくる。

 カグナは何とか戦闘準備をしようするが、なにぶん十年ぶりの戦闘なのでブランクを心配しているとカグナの身体が後ろへと勝手に飛んだ。

 その結果、最初に突っ込んできたシーフモンキーの攻撃を上手くよけつつ距離を取ることに成功した。

 

 

『緊急事態と判断したので、申し訳ありませんが回避スキルを使用させていただきました』

 

「いや、助かった!」

 

『ありがとうございます。また戦闘開始と判断したため戦闘用スキルを発動しております』

 

「助かるよ、ありがとう!」

 

『主のサポートをするモノとして当然のことをしたまでです。それでは武器を召喚いたします』

 

 

 カグナの手に先端に紫色の宝珠が付いた杖が現れる、カグナが好んでよく使っていた杖種の武器である。

 杖をシーフモンキー達に向けると杖の先にある宝珠が輝きだした。

 その様子を見ていたシーフモンキー達は危機感を覚えたのか、先頭にいた3匹のサルが一斉に飛び掛かってくる!!

 

 

「「「ウキャ!キャ、ゥキャァァァ!!」」」

 

「うるさいサル達だなッ!えぇっと、たしか……”炎魔(フアム)”!!」

 

 

 シーフモンキー達の攻撃がカグナに当たる前に、カグナは手に持った杖を勢いよく横に振るう。

 すると杖の宝珠の光が炎となり、飛び掛かってきた3匹のシーフモンキー達を一瞬で燃やし尽くした!!

 

 

「ウキャッ!?」

 

「危ない危ない。ふぅ……ちゃんと魔法が使えてよかった」

 

 

 仲間が一瞬で消し飛んだ光景を目のあたりにして驚きわめくシーフモンキー達。

 そんなシーフモンキー達などお構いなしにカグナは再び杖に力込める、すると先ほどとは違う光を宝珠は放つ。

 狼狽えてるシーフモンキー達は思わず後ずさりをする。

 

 

「先に襲ってきたのは、お前達なんだからな。後悔しても遅いぞ!」

 

 

 カグナに睨まれたシーフモンキー達は、実力の差を完全に把握しカグナに背を向けて一斉に逃げ出す。

 だが簡単に逃走を許すほどカグナは甘くはなかった。

 

 

「”風魔斬刃(ウィンズザム)”!!」

 

 

 カグナが魔法を唱えるとシーフモンキー達に向けた杖の先に魔法陣が出現する。

 すると魔法陣から風の刃を射出し、シーフモンキー達が逃げるよりも早く切り刻む!

 切り刻まれた断末魔の末に、血まみれになって動かなくなったシーフモンキー達を見てカグナは深く息を吐く。

 

 

「いきなり襲われたときはびっくりしたけど、さすがにレベル差がありすぎたからなぁ」

 

『お見事です、主』

 

「そうかな? だいぶブランクあると思うけど」

 

『ですが瞬時の対応力は、あまり衰えていないと思われます』

 

「うん、意外と反応できた。ともあれさっきはありがとう、アイ」

 

『主のサポートをするのが、私の存在意義ですので』

 

 

 カグナはアイと名付けたプレイヤーサポートAIの頭を撫でる。撫でられているアイは満更でもない表情をしているがカグナには見せないようにしている。

 プレイヤーサポートAIとは、プレイヤーが遊ぶときに動きをなどを補助してくれるAIのことだ。

 VRのゲームである以上、プレイヤーのプレイスキルに運動神経や反射神経も関わってくるのだが運動神経や反射神経というモノには個人差があり、それが決定的な差にもなってしまうことがある。

 それを補い、なるべくプレイヤー間での差をなくすために実装されたのがプレイヤーサポートAIである。

 それ以外にもプレイヤーの性格やプレイスタイルなどを学習し、プレイヤーの行動に合うようにサポートの内容を自分で調整したりすることもするのだ。

 先ほどの回避スキルを自動発動させて主人の危機を回避したことなどがあげられる。

 

 

「しかし、おかしいな……マイエリアにモンスターなんて出てくるはずないんだけどな……」

 

 

 カグナは倒したシーフモンキー達を見て思った。

 マイエリアはアナザーワールド・オンラインのメインエリアと切り離され隔離された場所である、それゆえにモンスターなんて出現するはずがないし出現したことなんて今までなかったからだ。

 だが、たった今モンスターに襲われて戦うこととなった。

 

 

「オフラインモードで仕様が変わった? いや、そんなわけが」

 

『オフラインモードのリリースの際にサーバーと通信する処理の一部に仕様変更はされましたが、今回のようなマイエリアにモンスターが出現する等の仕様変更は行われておりません』

 

「そうだよな。それじゃなんで……ん?」

 

 

 倒したシーフモンキーを見たカグナが違和感に気づいた。

 カグナは倒したシーフモンキー達に近づき、よく観察をする。

 

 

『いかがなさいましたか?』

 

「おかしい……どうして倒したシーフモンキー(盗賊サル)が、消えてないんだ?」

 

 

 違和感の正体が判明した、倒したモンスターの死骸が消えていないのである。

 アナザーワールド・オンラインでは倒したモンスターは、ドロップアイテムを堕として消滅する。

 だが今さっき倒したシーフモンキー達はアイテムをドロップするどころか、消えておらず血まみれで地面に倒れているではないか。

 

 

「この赤いのって……血か?」

 

『解析したところ、血液のようです』

 

「いやいやおかしいって、このゲームに流血描写はないはずだ」

 

『ですが解析を何度行っても、結果は同じで血液となっております』

 

「そんな、でもこの鉄臭さは……ん、臭いがする?」

 

 

 カグナがクンクンと匂いを嗅ぐ動作をすると、鉄臭さが鼻を刺激した……血の臭いだ。

 このゲームに嗅覚を強く刺激するシステムはない、せいぜい知っている匂いを嗅いだと錯覚する程度のはずだ

 しかし目の前の赤い液体からは強烈に血の臭いがしたのだ。

 何かが違う、何かがオカシイ……カグナの中で違和感が強まっていく。

 

 

「はぁ……拠点は時間がたって風化した廃墟みたいになってるし出てくるはずのないモンスターに襲われるし、おまけに倒したモンスターの残骸は残ったままで血まで出てるなんて、これじゃまるで野生の動物を殺したみたいじゃないか……」

 

『これからどういたしましょう?』

 

「訳が分からないことばかりだけど、とりあえずログアウトするよ」

 

『エッ、ハイ………かしこまりました』

 

 

 アイの口調が寂しいように少しトーンダウンしたが、カグナは気づいていない。

 カグナはログアウトするためにログアウトのコマンドを音声入力を行おうとする、一部のコマンドは音声入力つまり口にするだけで実行がされる。

 

 

「ボイスコマンド:ログアウトを実行」

 

 

 カグナがログアウトするコマンドを音声入力する…………しかし何も起こらなかった。

 

 

「…………あれ? ボイスコマンド:ログアウト実行!」

 

 

 再度ログアウトコマンドの音声で起動しようとするが、やはりなにも起こらなかった。

 不具合かなと思いつつ、今度はメニューを開き直接ログアウトのボタンをタッチしてログアウトを試すが、こちらもログアウトが実行されない。

 

 

「え? は? なんで、どうして?」

 

 

 メニューのログアウトボタンを何度も何度もタッチする、しかし反応はない。

 さすがに異常事態に気づき血の気が引いていく。

 

 

「ログアウトが……ログアウトが、できない?」

 

 

 カグナは再び数分近く放心状態となった。

 

 

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