星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
カグナ達が王都に着く前日に、時を巻き戻す。
大勢の人々で賑わう王都に貴族や富豪たちが住まう貴族街があり、その貴族街に一つの屋敷が立っている。
冒険組合の組合長こと、スサノが住んでいる屋敷だ。
スサノ自体は、ここまで大きな屋敷に興味はないのだが冒険組合の組合長という役柄や今は亡き妻の関係上、立場や格にあった屋敷に住まねば周りに示しがつかないとのことで仕方なく住んでいる。
そんなスサノだが、屋敷の書斎にて冒険組合から持ち帰ってきた仕事の資料と睨めっこしている。
「ふむ……さてさて、どうしたものか……」
手に持っている資料には盗賊による冒険者への被害の詳細が記載されている。
件数はまだ少ないが軽視していい内容ではなく放置していたら、とても面倒なことになることは眼に見えていた。
なにか対策はないものかと頭を悩ませていた時、ふと壁に掛けている絵画がスサノの眼に入る。
頭に長い耳が生えている真っ白な女性が天に杖を掲げ空から光が降り注いでいる、なんとも神秘的な絵である。
この絵画は、スサノが昔見た光景を絵師に頼んで描いて貰ったものだ。
スサノは今でも鮮明に思い出せる……スサノとスサノの姉と妹が見た、彼らの育ての母親が
あの時からすっかり老けたスサノは自身の髭を撫でながら絵画を見続けていると、書斎の扉がノックされ屋敷のことを任せているメイドの女性が入ってきた。
「旦那様。アマテル様がお見えになりました」
「あぁ、わかった。通してくれ」
「かしこまりました」
メイドは一礼すると部屋を出て行く。
そしてしばらくして騎士の格好をした黒髪で狐耳と狐尻尾の
「用件は、なんだスサノ。遠征の準備で私は忙しいんだ、話なら手短に話せ」
「まぁ、待て。そう急かすなアマテル。」
スサノがアマテルと呼んだ女性、ディ・フェウロ王国の数ある騎士団の中の一つである魔法騎士団の団長を務めているスサノの妹だ。
部屋に入ってきたアマテルはソファーに座り鋭い眼でスサノを睨んだ。
いつも通り不機嫌そうな妹の態度を見たスサノは、やれやれと呟く。
「まだ一人来ていない。話は3人揃ってからだ」
『あら。もしかして私を待っていたのかしら?』
書斎に置いてる鏡のような形をした魔水晶から女性の声が聞こえた。
離れたところと連絡が取れる魔道器具、ようは現実世界でいうところのテレビ電話だ。
リアルタイムで会話ができることで、とても便利なのだが庶民には手が出しづらい価格なのが欠点である。
机の上の魔水晶には、派手な柄の着物を着崩して胸元を露わにした桃色の髪の毛に角の生えた
「来たか、ツクヨ」
『ふふふ、お待たせ。久しぶりねスサノ。アマテル』
魔水晶の中で微笑みを浮かべている彼女の名前は、ツクヨ。
スサノとアマテルが居るディ・フェウロ王国とは違う国で商売をしているスサノとアマテルの姉だ。
これで書斎に
「これで揃ったな。で、話はなんだスサノ」
『もう~せっかちね。せっかく3人揃ったのだから、もう少しゆっくりしていきましょう?』
「断る。スサノ、さっさと話せ」
ツクヨの提案を断ったアマテルは、スサノに要件を話すことを催促する。
スサノは、再びやれやれと溜息をつくが彼女の多忙も理解しているので話しを始めることにした。
「ふむ、では……リズの村の近くに新たなダンジョンの入り口が発見されたのは知っているか?」
「あぁ、その話は聞いている」
リズの村とは、アリシア達に調査に向かわせたダンジョンの近くある村のことだ。
スサノはその村の近辺に新たなダンジョンが出現したことについて問いかけ、アマテルが知っていると答える。
「ダンジョンから出てきたモンスターによる被害を調べるために、アリシアが率いるチームとゴーゼのチームを調査へ向かわせた」
『あら、アリシアちゃんを向かわせたのね』
「そうだ」
スサノの言葉に、魔水晶越しのツクヨが反応する。
ツクヨはスサノの孫娘であるアリシアのことを、何かと可愛がっているのだ。
アマテルもアリシアに何度か稽古をつけたこともあり、騎士団に入らないかと何度か誘ったりもしている。
二人の会話を聞いたアマテルが不機嫌そうにスサノへ問う。
「それで、よもや我らを集めた理由はわざわざ孫娘自慢をするためか、スサノ?」
「待て待て、本題はここからだ」
スサノは手元のメモに目を移す。
アリシアからの報告を自身で簡潔にまとめたメモだ。
「今回調査に向かったダンジョンだが、最終地点を守るガーディアンゴーレムからの不意打ちでアリシアたちは窮地に陥ったとの報告を受けた」
「なに、アリシアが……?」
『あらあら。アリシアちゃん達で苦戦するってことは、そのダンジョンそれなりのレベルだったのね』
「あぁ、そのようだ」
アマテルもツクヨも、スサノの孫娘であるアリシアの強さは把握している。
今はまだ英雄級ほどの実力はなくとも、いずれ辿り着くほどの才能を有していると二人は思っているのだ。
そんなアリシアが窮地に陥ったということは相手が単純にレベルが上だったか、不意打ちなどによってチームの体制が崩されてしまったかのどちらかであろうとアマテルは考察している。
実際は後者なのであるがツクヨが知りたいのは、その後だ。
「で、アリシアのチームはどう対処したんだ?」
「うむ……それがな。アリシアたちがガーディアンゴーレム相手に苦戦していた時、一人の魔導士が助けてくれたらしい」
『魔導士?』
「あぁ、アリシアが苦戦するレベルのガーディアンゴーレムを魔法で倒したと聞いている」
「魔法か……だとすれば相当な実力者か、その魔導士は」
スサノの言葉に、へぇ~とツクヨは他人事のように反応した。
一方、アマテルの方は騎士団を纏めているためか、ゴーレムを単騎で倒した魔導士の実力に興味があるようだ。
しかし二人はスサノの次の言葉を聞いて考えを改めることとなる。
「その魔導士はダンジョンの入り口を
「何ッ!?」
『ダンジョンを消した……もしかしてその魔道士は、”
スサノの言葉に、アマテルとツクヨは驚愕する。
ダンジョンの入り口を消すなどという行為は普通の人には行うことなど出来ず、できるとすれば
スサノの説明からツクヨの頭の中で情報が連鎖反応を起こし、一つの結論へと辿り着くのに秒とかからなかった。
「高レベルの魔導士……ダンジョンを消した………それをわざわざ私たちに聞かせるってことは……まさか……」
「魔導士は白銀色の髪をした兎の
思考していたツクヨにスサノが決定的な情報を開示した。
いや、この名前を聞いただけでツクヨとアマテルは、すぐに理解する。
『あら!あらあら!あららららら!!』
「……………ッ!?」
『ついに戻ってきたのね、”
カグナと聞いたツクヨは目をキラキラと輝かせ、喜びを身体で表現している。
一方、アマテルはというと……表情が強張り不愉快と怒りを眼が訴えているようであった。
「ッ、ふざけるなッ!!!!!」
アマテルが屋敷に響くぐらいの大声で叫び、喜んでいたツクヨはアマテルの叫び声により最高潮にまで上がっていたテンションが一瞬で落ち着いた。
「私たちを見捨てて何処かへと消えたくせに!!いまさら帰ってきて、どういうつもりだ!!!」
『アマテル……』
「私は帰らせもらう!!!」
アマテルは鬼の形相という言葉がピッタリな表情で立ちあがり、そのまま扉を強引に開けて部屋を出て行ってしまった。
途中、外の廊下から女性の悲鳴が聞こえたが、おそらくアマテルの気迫に驚いたメイドであろう。
部屋から出ていくアマテルを見送ったスサノは椅子に深く腰掛けて、ため息をつく。
「………ふぅ」
『スサノ。あの子にお母様の話をすれば、こうなることはわかっていたでしょ』
「まぁ……な。だが、アイツにも知らせないわけにはイカンだろ」
『それは……そうね』
スサノは先ほど見ていた絵画を見つめる。
まるで天に祈りを捧げているかのように杖を空へ掲げている長い耳の生えた真っ白な女性の絵を……。
ツクヨもスサノに釣られて水晶から絵画を見て、スサノに確認する。
『それで、さっきの話だけど。本当にお母様なの?』
「アリシアの報告では、まず間違いないだろう。なんせアリシアの目の前で、あのマヒトツを召喚したのだから」
『マヒトツを?』
「なんでも破損したアリシアの剣を
『ふふ、それもそうね』
鍛冶師マヒトツがどんな性格をしているか、二人ともよく知っている。
主人であるカグナの命令には文句は言っても従うだろうと、二人は思っていた。
ただ、怒ったマヒトツに殴られてるとまでは思いもしなかったであろうが……。
『あら、ということは……お母様は今、アリシアちゃんと一緒に居るってことかしら?』
「あぁ、アリシアには此処に連れてくるよう言ってある」
『ふぅ~ん、そうなの』
ツクヨはスサノとの会話で母カグナが戻ってきていると聞いて、とあることを思い出した。
かつて言われた、ツクヨ達とも縁のある一人の男の言葉を……。
『それにしても……本当に、
「あの人?」
『かつてのお母様の仲間。いずれ、お母様は戻ってくると言っていてけど本当になったわね』
「あぁ、そうだな」
『そぉ~だ。賭けをしない?』
通信越しのツクヨがイタズラを思いついたような満面の笑みでスサノに賭けを持ちかけてきた。
それを見たスサノは眉間にシワを寄せた、経験則でこういう顔をしている姉はろくでもないことを考えていると知っているからだ。
「賭けだと?」
『そッ。お母様が私たちに気づくかどうか』
「いや、気づくだろうよ。血の繋がりはないが、親子だぞ………だが、面白そうだ」
『でしょ~、そうね……負けたほうは―――』
*
*
*
ツクヨは魔水晶を使ったスサノとの通信を終えると自室の窓の方へと歩み寄り、とても嬉しそうな顔で窓の外の景色を見下ろした。
見下ろした視線の先には、ディ・フェウロ王国とは異なり色鮮やかな木造の建物が並び、着物を着た人々が行きかう花街が見える。
ツクヨは自分が治めている街を眺め、面白いイタズラを考えている無邪気な笑顔を浮かべながら呟く。
「ふふふ、これは楽しくなりそうね……」
愛しの母との再会を、どのようなシチュエーションでいこうか……すでに十数通りのパターンを考えていたのであった。