星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#19 ウサギ、息子と会話する

 スサノがアマテルとツクヨと会合をした次の日に、カグナと再会した時に戻る。

 スサノは秘書と思わしき女性にお茶を用意するよう手配すると、秘書は手慣れた動きで三人分のお茶とお菓子を用意して部屋を出て行った。

 カグナは秘書のお姉さんが用意してくれたお茶を両手で持って飲み、怒涛の情報開示によりパンクしかけていた頭を落ち着かせる。

 

「あぁ~~おちゃがうまい……」

 

「ふむ、ようやく落ち着いたようだな母よ」

 

「あぁ~うん、なんとか……しっかし、スサノが冒険組合のトップで孫娘までいるとは。しかもその孫娘がアリシアだったとはね」

 

「アリシアから聞いたときには、もしやもしやと思ったが……本当に戻ってきたのだな」

 

「戻ってきた……か。そういう扱いになるんだな」

 

 

 スサノの言葉を聞いたカグナは言葉を濁す。

 スサノからすれば、カグナはこっちの世界に戻ってきたという認識だからだ

 現実世界(リアル)から来たカグナと、アナザーワールド・オンラインの世界で生まれた者との認識の差である。

 

 

「ん、どうした?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 

 スサノに大丈夫かと問われたのでカグナは問題ないと問い返す。

 せっかく会えたのだから落ち込んだままではいられない。

 カグナは気を取り直して、改めてスサノの顔を眺める。

 白髪にシワ、そして口髭まで蓄え、傷だらけのお爺さんの顔だ。

 しかも肉体は老人とは思えないほど筋肉で膨れ上がっている……本当に老人の身体か?と思うほどだ。

 だがかつての面影は残っている、とくに目元なんて昔の雰囲気そのままだなっとカグナは内心笑っている。

 

 

「しかし、面影は残っているとはいえ老けたね。スサノ」

 

「そういう母は、まったく変わらんな」

 

「魔力が高いせいかな?たしか魔力(マナ)闘気(オーラ)が多いと老けにくいって設定じゃなかったっけ」

 

『その通りです、主』

 

「アイか、お前も久しいな」

 

『こちらこそ、お久しぶりです。スサノ様』

 

 

 アイをみたスサノは口の端が上がる、懐かしい顔を見たせいかもしれない。

 そうとは知らないアイは、カグナの横でフヨフヨと浮かびながら本の形をしたメニュー画面を開いて世界観設定の詳細が書かれているページをカグナに見せてくる。

 そこには”人類を含むこの世界の生き物は魔力(マナ)闘気(オーラ)といった生命力が多いと細胞が活性化し老化が遅くなる。すなわち寿命が伸びるのである”っと記載されていた。

 そのため人種問わず、生命力が多いと年齢が100歳超えても現役バリバリな人も多い。

 スサノが100歳超えても元気な理由だ。

 

 

「スサノもレベル高いし、そこまで老けるのか?」

 

「若作りのツクヨと違って、俺の場合はわざとだ。妻と一緒に過ごすためにな」

 

「お、お爺様……若作りと言うのは……ちょっと……」

 

「おっと、今のは忘れてくれ。ツクヨに知られたら呪術攻撃さ(のろわ)れる」

 

 

 スサノの失言を聞いたアリシアは慌てふためく。

 アリシアにとって大叔母であるツクヨは怒らせると怖いと知っており、スサノがツクヨを怒らせては折檻されているところを何度も見ているからだ。

 そうとは知らないカグナは、ツクヨの名前が出てきたことで姉弟(きょうだい)仲はまだ良い感じか?などと的外れなことを考えていたりする。

 

 

「しかし奥さんと、ね……スサノって意外とロマンチストだった?」

 

「茶化すな……言って恥ずかしくなってきた……」

 

 

 スサノは照れながら頭を掻く。

 奥さんと一緒の空気を過ごすために、スサノは若々しい姿を保つよりもあえて老いることを選択したのだ。

 

 

「あはは、いいじゃないか。馴れそめとか聞きたいな。一応私は親だし、ね?」

 

「あっ!わ、私も気になります……お爺様とお婆様のことを……!!」

 

「そのうちに……な」

 

「それで、スサノの奥さんはどんな人なんだ?今の時間帯とかだと家に居るのか?」

 

「いや、妻は……マリアンナは、もうすでに死んでいる。俺のようにレベルは高くはなかったのでな」

 

「あ……そうか」

 

 

 スサノは遠い眼で妻は亡くなっていることをカグナに伝える。

 隣に座っているアリシアも、亡き祖母を思い出したかのように静かな表情をしていた。

 何気ない一言で重くなってしまった雰囲気に若干焦りを感じたカグナは話題を変えようと、残りの二人についてスサノに問いかける。

 むしろそちらが本題だ。

 

 

「そ、そうだ。他の二人はどうしてる?」

 

「ツクヨとアマテルのことか?」

 

「そうそう、実は3人を探すために旅をしようと思ってたんだけど、まさかこんなにも早く出会うなんて思ってもみなくてさ」

 

「そうか、ツクヨのことなら問題ない。会おうと思えば、すぐに会えるだろう。ただ……」

 

「ただ……?」

 

「問題は、アマテルのほうだ」

 

「どういうこと」

 

 

 スサノの言葉にカグナは疑問が浮かぶ。

 アマテルはスサノと同じく、かつてカグナが面倒を見ていた黒髪で狐耳の獣人族(ジューマン)の女の子だ。

 スサノやツクヨとは違い内気な性格で、よくカグナの後ろに隠れたりしていた娘であり、3姉兄妹(きょうだい)の中で一番カグナに甘えていた。

 そんなアマテルに問題があると聞いたカグナは一体どんな問題なのかと頭の中が疑問で埋め尽くされるが、スサノの次の言葉で疑問は考えもしなかった理由で解消する。

 

 

「アマテルは……母のことを恨んでいる」

 

「えっ……」

 

 

 スサノの言葉にカグナは驚愕する。

 スサノと同じくカグナの元で育てられていたNPCの子供であったアマテルが、カグナのことを恨み憎んでいると聞いたから、当然の反応である。

 なぜ?どうして?がカグナの頭に浮かび悩んだ。

 そんなカグナの様子を見たスサノが理由を説明する。

 

 

「アマテルは……あいつは”自分は母に捨てられた”と思ってるのでな」

 

「なっ!そんなわけ――」

 

「100年近くも、我々の前に姿を見せなったのにか?」

 

「あっ……」

 

 

 スサノの言葉に思わずカグナは立ち上がり異議を唱えたが、スサノの次の台詞で言葉に詰まった。

 カグナがアナザーワールド・オンラインにログインしなかった10年近くは、こっちの世界では100年の年月になっていた。

 つまりスサノたちは、カグナと100年近く会っていないことになる。

 そのことにようやく気付いたカグナは、血の気が引いていった。

 

 

「ち、ちが……おれは、そんなつもりじゃ………」

 

「我々のことを見捨てたわけではないことは、わかっている。だが100年というのは、人の考えを変えるのに十分だ」

 

 

 カグナは短絡的に考えていた……どこかで100年という年月を軽視していた。

 育ての親がいきなり100年もいなくなったら、子に恨まれるのは当然であろう。

 久しぶりに会ったスサノが好意的に接してきたから、カグナはアマテルも同じだと思ってしまったのだ……。

 

 

「…………っ」

 

「カグナさん……」

 

 

 気分がどん底に落ちて行ったカグナ、横に座っているアリシアもカグナの落ち込みように心配している。

 そんなカグナを見たスサノは、見てられないと思ったのか助け船を差し出してきた。

 

 

「ふぅ……アマテルのことに関しては、俺に任せてもらおう」

 

「……任せる?」

 

「あぁ、機を見て二人が顔を合わせる機会を作る。そもそもアイツは今、遠征で王都を離れているしな」

 

「そうか……うん、わかった。頼むよ」

 

「任された。なんとか機会を作るとしよう」

 

 

 落ち込んでいたカグナは、少し気分が晴れた気がした。

 アマテルから恨まれていることも恨まれている理由もわかったうえで、なんとか挽回する機会をスサノが用意してくれるとわかったからだ。

 アマテルの問題は先送りにはなるものの、なんとか解決への道が出来たとカグナは内心喜ぶ。

 カグナの表情が柔らかくなったのを確認したスサノは、今度は自身がカグナにしたかった話しを持ち出した。

 

 

「さて、次に俺からの話だが……母よ、其方には正式に我が冒険組合所属の冒険者になってもらう」

 

「私を、冒険者に?」

 

「何故という顔だな、理由は二つある。まず一つ目の理由として個人が強力な武力を持つことに、国または国公認の組織からの許可がいる」

 

「許可?なんでまた」

 

「どこにも所属していない一個人で強大な力を持つことは何も知らない民からすれば脅威と恐怖、そして迫害の対象となりえる。またなにかの事件を起こそうとするのも容易だ」

 

「そりゃ、まぁ……たしかに」

 

「そこで国に仕える騎士や、冒険組合に所属する冒険者などの肩書を持たせることで、ある程度管理をしやすくするためと思ってもらえればいい」

 

「これに当てはまらない者たちは、裏社会で暗躍する者や賊などと同じ扱いにされるんです。例外もありますけどね」

 

「なるほど、ね」

 

 

 スサノの説明にアリシアが補完を付け加えてきた。

 現実世界(リアル)の日本でも警察や自衛隊などが、ある程度の武力を有している。

 ただそれは国民を守ったり脅威を排除するためにという理由の元に所持している武力だ。

 そのため国家の組織ではない一個人や集団が同等の武力を有していると、ただの一般人からは恐怖の対象でしかない。

 

 

「ましてや母のように都市を滅ぼせるほどバケモノじみた能力を持つ者が、王国の騎士や冒険者ではないと言われれば国と民を脅かす存在として排斥されたりするであろうよ」

 

「お、親をバケモノ扱いって、私のことをなんだと……」

 

「自分の()()()が、どういう経緯で付いたのか……忘れたか?」

 

「カグナさんの二つ名……?」

 

「あ、あぁ~アレ……ね。あははは……、アレはウチの”アリアドネの糸(クラン)”の団長がGOサインを出したせいで……」

 

 

 カグナは当時のことを思い出して乾いた笑い声を出す。

 カグナはゲーム時代に他のプレイヤー達から、とある()()()呼ばれていた。

 呼ばれるようになった経緯も、とあるイベントで運営すらも動かしてしまうほどの()()()()をしたせいだ。

 

 

「カグナさんの二つ名……一体どんな二つ名なのですか!?」

 

「母につけられた二つ名は”星ウサギ”……まったく可愛らしい二つ名だろ?もっとも、その名前に込められた意味は末恐ろしいものだがな」

 

「星ウサギ……?」

 

 

 アリシアがその名前を聞いた時、とある絵画を思い出す……祖父であるスサノの部屋に飾ってあった絵画の題名が同じだからだ。

 祖父曰く、とある光景を描いたものらしいが詳細までは教えてくれはしなかった。

 だが絵画を見たアリシアは、その光景がとても恐ろしいものなのではないかと直感で感じ取っていたのだ。

 そしてその直感は、ほぼほぼ間違ってはいなかったりする……。

 アリシアが怯えた目でカグナのことを見てきたのでカグナは急いで脱線し始めた話題を元に戻す。

 

 

「ス、スサノの言い分はわかった。そういうことならば納得する……それで二つ目の理由は?」

 

「ふむ、二つ目は冒険組合の長として、俺からの依頼を受けてもらうために冒険者になってもらうのが手っ取り早いからだ」

 

「依頼?なんの」

 

「この国……いや、この世界に今も時折湧き出てくるダンジョンを消して回ってくれ」

 




・寿命について
アナザーワールド・オンラインの世界観にて、生命力が普通よりも多いと人種種族問わずに老化も遅くなり寿命が延びる(不老不死にあらず)設定がある。
そのためゲーム内での有名なネームドNPCは100歳超えている設定キャラも居たりする。
強力なモンスターにも、ドラゴンや怪物など長寿がいる。
スサノ達が100超えても元気なのは、カグナによって鍛えられて一般人よりもレベルが高いおかげです。
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