星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#22 ウサギ、決闘を始める

 なにが、どうして、こうなった……?

 カグナは冒険組合が所有している訓練所の戦闘エリアに立っており、目の前に鎧を着込んだ金髪の男カマッセルが相対している。

 カグナとカマッセルは訓練所を借りて決闘を行おうとしているのだ。

 

 

「なんだ、なんだ。誰かが模擬戦でもするのか?」

 

「カマッセルが新人と決闘するってよ」

 

「はぁ?カマッセルって金一星の冒険者だろ。弱い者イジメにしかならねぇだろ、ソレ」

 

「いやぁ~なんでも、その新人はかなりの実力者らしいぜ」

 

 

 カグナとカマッセルの決闘を見学しに、他の冒険者たちが野次馬として集まっていた。

 そして周りの野次馬たちに混ざってサラ達もカグナとカマッセルの決闘を見守りに来ている。

 

 

「カグナさん、大丈夫でしょうか……?」

 

「問題ないだろ。カグナの強さは知ってるだろ」

 

「それは……そうですけど」

 

 

 カグナの心配をサラがしているとダリアンが問題ないと呟く、ロランもイヌミミの頭を縦に振りダリアンに同意する。

 サラもカグナの強さは知っている、だがそれでも心配なものは心配なのだ。

 ダリアン達と一緒に来ているアリシアは、カグナのことを黙って見守っている。

 アリシアのことを横目で見ていたカマッセルは、カグナの方に視線を戻した。

 

 

「君の名前は……たしかカグナだったね」

 

「そうだよ」

 

「あぁ安心してくれ、ちゃんと手加減はするさ。これは君の実力を測るための模擬戦だからね!」

 

「はぁ……そう」

 

 

 カマッセルは余裕そうな表情を浮かべており自身の勝利が絶対であると思っているようだ。

 だが彼の思い通りにはならないとカグナは考えている。

 カグナは既に”視認魔法”を使用してカマッセルの大まかな情報を取得していた。

 得た情報と経験則からカグナはカマッセル相手に苦戦はしないと思っている、が……。

 

 

『主相手に無謀な方ですね』

 

「たしかに彼の戦闘能力はハッキリ言って(オレ)より下だ。だが……」

 

『だが?』

 

「相手が格下だったとしても油断するな、ウチの団長の教えだよ」

 

『まさか、主が負けると?』

 

「負けるつもりなんてないよ。ただ相手の方が弱かったとしても持っているスキルに装備している武装。そして戦い方次第で、どうとでもなってしまう……だから気を付けなければならないんだよ」

 

 

 アナザーワールド・オンラインには対人戦闘(PvP)コンテツも存在しており、カグナも何度か対人戦闘の経験は何度もある。

 その際に自分のランクよりも低い相手に負かされたことも稀によくあったことだ。

 アナザーワールド・オンラインにおいて対人戦において重要視するべきなのは所有しているスキルと武装、そしてプレイヤースキルである。

 これらを駆使して戦えば、たとえランクが上の相手でも勝つことができるのであった。

 それゆえにカグナは、格上に勝ったことも格下相手に負けたこともある。

 よってカグナはカマッセル相手に手加減はするが、手を抜くつもりはない。

 カグナがサポートAIのアイとこっそり話をしていると、カマッセルの元に数人の男女の冒険者が駆け寄ってきた。

 とくに魔女のような帽子をかぶった純人種(ヒューマン)の少女が、興奮気味にカマッセル相手に大声で叫んでいる。

 

 

「ちょっとカマッセル!銅一星の冒険者(しんじん)相手に決闘だなんて、本当にやる気!?」

 

「あら、可愛い娘ですね♪」

 

「相手は獣人種(ジューマン)の魔導士か。懐に入れば問題ないが……」

 

「…………イイ」

 

 

 おっとりした雰囲気を纏った聖職者(クレリック)のような服を着た女性がカグナの容姿を見たの感想を呟き、ガタイの良い大きな男が冷静に分析し、フードを深々と被り目元とネコ耳とネコっぽい尻尾だけを露出している怪しい格好の獣人種(ジューマン)っぽい男は一言だけポツリと零した。

 雰囲気的にカマッセルのパーティー仲間だろう。

 

 

「あぁ、僕のパーティメンバーだ。気にしないでくれ」

 

「よろしくねぇ、対戦相手の可愛いお嬢さん♪」

 

 

 おっとししたお姉さんがカグナに向かって笑顔で手を振ってきたので、一応カグナも手を振り返す。

 カマッセルがパーティーメンバーと何やら話していると、いつの間にかスサノまでもがやってきていた。

 

 

「ほぉ、面白いことをしているではないか。相手は、カマッセルか」

 

「お爺さ……組合長!?どうして此処に?」

 

「なに、面白い催しをしているからサボr……仕事の合間に見学しに来たのだよ」

 

「はぁ、仕事はちゃんとしてください……」

 

「はははは。むっ、オッズドル!俺は魔導士の勝利に10……いや20だ!!」

 

「お爺様ッ!!!!」

 

 

 野次馬の中にはカグナとカマッセルの決闘で、どちらが勝つかの賭け事を行っている者達がいた……なのでスサノは賭けを仕切っていた冒険者の男(オッズドル)に大声でカグナに賭ける。

 アリシアは、まさかの祖父が決闘賭博に乗ってきたことに思わず叫ぶ。

 

 

「何をしてるんだ、アイツは……」

 

「むッ、スサノ組合長殿も見に来られたのか……ふふ、気合が入るじゃないか」

 

 

 アリシアに叱られているスサノの様子を見ていたカグナが呆れていると、カマッセルも組合長が来ていることに気づいた。

 スサノの姿を確認するとカマッセルは何故か気合を入れる。

 

 

「え、なんで……?」

 

「なんで……って、あの方は僕を含む此処に居る冒険者たちの憧れなんだぞ!そんな方に僕の勇姿を見せられる機会が来たんだ気合が入るってものだ!!」

 

「憧れだって!?」

 

「あぁ、そうさ!スサノ組合長殿は金五星の元冒険者で数々の武勇伝を残している!かの八大迷宮巨獣のうち5つに挑戦し!そしてそのうち3つを攻略した伝説の冒険者なんだ!!?」

 

「八大迷宮巨獣?」

 

 

 カマッセルが興奮しながらスサノの武勇伝を騙りだす。

 正直スサノの武勇伝とやらに興味があるのだが、それよりも今はゲーム時代でも聞いたことがない八大迷宮巨獣という単語に疑問を抱いた。

 するとアリシアの横で観戦モードのスサノが単語の意味をカグナに伝えてくる。

 

 

「サンダータートルドMk2(マークツー)のような、世界を徘徊しているダンジョンのことだ」

 

「あぁ~なるほど。ん、ちょっと待てよ?……ってことはスサノ、お前もしかして()()()()に勝ってサンダータートルドMk2を攻略(クリア)したのか!?」

 

「いや、ツクヨ達と共に()()に挑戦はしたものの敗北したよ」

 

「スサノでも負けたのか」

 

「あぁ、負けたとも……いいところまで行ったんだがな。我々の実力不足だった」

 

 

 カグナは得意げな笑みを浮かべながら、悔しがって頭を掻いているスサノのことを見ている。

 サンダータートルドMk2はカグナが、友人であり同じクランメンバーである”アズマエイ”と共に作り上げたダンジョンだ、その攻略法も攻略難易度も熟知している。

 そのダンジョンにスサノたちがチャレンジしていたことに、そしてスサノですらカグナ達が作ったダンジョンを攻略できなかったことにたいして、不思議と胸の内に嬉しさと”どーだ、強かっただろ?”という気持ちが湧き上がっていた。

 カグナがスサノと和気あいあいと語りあっているの見ていたカマッセルは明らかに不愉快を感じている表情をしている。

 

 

「なんだキミは、組合長のことを呼び捨てして。無礼だぞ!」

 

「と言われても、ね……」

 

 

 カマッセルは、カグナが組合長であるスサノのことを呼び捨てにしたことが気に入らないようである。

 カグナからすれば自分が育てた息子を名前で呼ぶのは当たり前のことなのだが、カマッセルは二人の関係を知らない。

 そのためカマッセルには、組合長という上の立場の人をいきなり呼び捨てで呼ぶ新人冒険者という構図にしか見えないのだ。

 カグナもスサノも、そのことに気づいていないのであった……。

 

 

「ふむ、俺は別に気にしておらんぞ。むしろ名前以外で呼ばれると背中が痒くなりそうだ」

 

「だ、そうだよ」

 

「むぅ…………」

 

 

 本人達が良いと言っているので、まだ納得いかないがカマッセルはこれ以上は口出ししなかった。

 だが、この決闘でカグナをコテンパンにし無礼な態度を改めさせようかとカマッセルは密かに考えていたりしている。

 そんな思惑があるとは知らないスサノはカグナ達の決闘を始めさせるべく、この場を取り仕切り二人に確認をとった。

 

 

「さて、そろそろ始めるとするか……双方構わんな?」

 

「はい!!」

 

「いつでも」

 

「よし、では結界準備!」

 

 

 スサノの問いにカマッセルとカグナは返事をした。

 それを聞いたスサノが合図をすると待機していた魔導士が何やら詠唱を始める。

 するとカグナとカマッセルが居る場所を囲うように結界が展開された。

 丁度周りの人たちが結界の外におりカグナ達だけが結界の内部に居る状況である。

 

 

「これは……」

 

「決闘用の結界だ。その中でならどんなに暴れても決闘の場の外にまでは攻撃は飛んでこん………壊すなよ?」

 

「むちゃをいう」

 

 

 スサノが言うには決闘用の結界であり被害を外にまで出さないようにするためのモノらしい。

 つまりこれでお互い、心置きなく戦えるわけとのことだ。

 カマッセルは結界が展開されたことを確認すると腰に差した剣を右手で引き抜いて構える。

 刀身には模様が刻まれており何らかの加護が付与されてる雰囲気をカグナは感じとっていた。

 

 

「それじゃ君の実力を見せてもらおうかな……そうだな、ハンデをあげよう。君が先に攻撃しても構わない。なんせ僕の方が冒険者のランクが上だからね!」

 

「そう?それじゃ遠慮なく、”中級炎魔(メガ・フアム)”」

 

 

 カマッセルは、カグナに初手を譲り渡した。

 自身の実力の高さからの自信ゆえか、それともただの傲慢なのか……どちらにせよカグナはお言葉に甘えて、手に持った魔杖をカマッセルへと向けて中級炎魔(メガ・フアム)を放った。

 

 

「ウソッ!アイツ、中級炎魔(メガ・フアム)を詠唱無しで放ったわよ!!?」

 

「避けろカマッセル!!」

 

 

 カグナが詠唱無しで中級炎魔(メガ・フアム)を放ったことに、スサノとアリシア達以外の冒険者たちが驚愕している。

 カマッセルの仲間である魔女帽子を被った少女はカグナのあり得ない行為に目を丸くして、ガタイの良い戦士の男は決闘をしている仲間に忠告をとばす。

 しかしカマッセルは避ける素振りは見せず、右手で握った剣を左に構える姿勢を取った。

 そしてカグナの中級炎魔(メガ・フアム)が当たる直前のところでカマッセルが構えた剣を左から右上へと振り抜く!

 

 

「はぁッ!!!!」

 

 

 カマッセルへと命中するはずだった中級炎魔(メガ・フアム)は二つに斬り裂かれ、カマッセルの真横を通り過ぎ決闘場の被害防止用の結界へとぶち当たる。

 なんとカマッセルは、カグナの中級炎魔(メガ・フアム)を斬り裂いて対処したのだ!

 その様子を見ていたカグナは余裕な表情をしつつも少し驚いていた……何度か見たことのある光景だが、まさか決闘相手の少年がやってくるとは思っても見なかったのだから。

 そして魔法を切り裂いたカマッセルは、頬に冷や汗を垂らしつつ深く呼吸をして自分を落ち着かせている。

 

 

「驚いた……詠唱無しで中級炎魔(メガ・フアム)を放てるとは。しかもこの威力……」

 

「驚いたのはコッチもだよ。まさか中級炎魔(メガ・フアム)を切り裂くだなんてね……秘密は、その剣かな?」

 

「さて、どうかな……?」

 

 

 正直にいうとカグナは眼の前の少年を侮っていた。

 詠唱無し(ノンチャージ)()()()()()()()()とはいえ、まさか中級炎魔(メガ・フアム)を切り裂いて被弾を避けたのだから。

 ゆえにカグナは眼の前の少年への評価を改めることにした。

 

 

「これは……ちょっとは楽しくなってきたかも」

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