星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
どうやらカマッセルは、アリシアに対して特別な感情を持っている。
彼女へのしつこい勧誘やアリシアの仲間であるダリアン達への態度は、それゆえなのであろう。
だがそれらが悪手であろうということは、そういう事に疎いカグナでもわかることだ。
そのことを指摘するかどうか、カグナが少し悩んでいたりしているとカマッセルが若干恥ずかしそうな顔をしている。
「き、キミには関係のない、話だ……!」
「う~ん、完全に関係がないってわけじゃ……ないんだけどな……」
「何をわけのわかないことを……」
カグナとアリシアは曾祖母と曾孫娘の間柄なので関係者なのだ。
そうとは知らないカマッセル、再び剣を構え戦う姿勢を取る。
まだ戦う意志は健在のようだ。
「まだ続けるつもりだったら相手するけど、大丈夫かい?」
「舐めないでもらおう……あの程度のダメージ、なんも問題ない!!」
呼吸を整えたカマッセルは蹴り飛ばされたダメージが残っているはずだが、それを感じさせない立ち振る舞いであった。
なにか痛みを和らげる手段を取ったのだろう、もしくヤセ我慢か。
そんな二人の闘いぶりを観戦していたダリアンとロランは、カマッセルについて語り合っている。
「カマッセルのヤツ……イヤなヤツなんだけどさ、実力は本物なんだよな……」
「あぁ、悔しいが
「だよな……でも正直アイツが、カグナさんに勝てる姿が見えない」
「奇遇だな、俺もだよ」
カマッセルは両手を突き出して剣の刃を横に倒した構えを取る。
そして
「風よ、纏いて我が
「風属性の付与魔法か」
カマッセルが魔法を唱えると、彼が握っている剣に風がまとわりついた。
装備している武器や己の肉体に風属性を付与させる付与魔法である”
そして剣を上に掲げて、上段の構えをとる。
「はぁぁぁ……”オーラエッジ”!!!」
カマッセルは、風属性が付与された剣をカグナに向けて大きく振り下ろし斬撃を飛ばすスキルである”オーラエッジ”を放った!
「あれは、オーラエッジ!?」
「それだけではない。事前に
カマッセルの放った技を見て驚くアリシアと冷静に分析しているスサノ。
斬撃を飛ばすスキルを使うのは、そこまで難しいわけでない……が、そこに属性魔法を付与して上乗せするのは難易度が跳ね上がるのだ。
アリシアは斬撃を飛ばすスキルを使えはするが、カマッセルのように自身で属性付与してスキルに上乗せする行為は、まだできない。
それゆえに年齢が近いカマッセルがそれを行えるということは、彼の実力の高さが伺える。
カグナも、カマッセルの技量の高さを素直に讃えた。
「オーラエッジに
カグナは迫り来ている、風を纏った斬撃を自身の杖で横殴りした!
すると斬撃は霧散して消え、カグナには届かなかった。
「悪いがその程度なら簡単に対処でき………ん?」
カグナがカマッセルの攻撃をかき消していると、カマッセルは剣を地面に突き刺して先ほどとは違う魔法詠唱している。
「大地よ、我が盾となれ!”
「!?」
カマッセルが魔法を叫ぶと、カグナの眼の前に巨大な岩の壁が出現した!
カマッセルが
どうやら先ほどのオーラエッジは、
「
本来は防御目的で使用する魔法ではあるが、土の壁による目くらましとしても有効な手段だ。
カグナは左右のどちらかから来るのと予想し双方を警戒していると、カグナから見て右の方から足音が聞こえた。
すかさず音のする方へと魔杖を構える、だが何かがオカシイ……そうカグナは感じ取っていた。
『右から来ますね、主』
「……いや、これは」
カグナは垂れているウサギ耳を軽く立てて周りの音を拾う、すると違和感の正体が分かった。
「なるほど……上からか!」
「なッ!?」
カグナは、足音がする方向ではなく上を見上げた。
するとカグナに向かって斬りかかろうと、頭上から向かってくるカマッセルと目が合ったのだ。
カグナは、すかさず身体をずらして頭上からの奇襲を避け、カマッセルの剣は虚しく空を斬った。
奇襲に失敗したカマッセルの剣は切っ先が床にめり込んでいる。
そしてしゃがみ込んでいるカマッセルのこめかみに、カグナは魔杖を突きつけた。
「”
アナザーワールド・オンラインにおいて音を出すという行為は重要である。
わざと大きな音を出して敵から
カマッセルが奇襲のために使用した二つのスキルが偽りの足音で敵の注目を逸らす”ファントムステップ”と、音を出さずに大ジャンプを行う隠密系スキルの”サイレントホッパー”だ。
眼の前の
「あの奇襲を察知していたっていうのか……」
「ウソだろ、マジかよ!?」
「やべぇな……魔導士の方に賭けておけばよかったぁ!!」
カマッセルの奇襲を難なく躱したカグナの姿を見た周りの冒険者たちは、まさかの光景に興奮したり賭けが負けると確定したと思って落胆したり、反応はさまざまだった。
大騒ぎしている観客達とは真逆にカマッセルは冷静に考える、なぜ奇襲がバレたのかを……だが分からない。
魔杖を突きつけられて身動きが取れないので、視線だけをカグナに向けて聞いてみた。
「何故……わかった?」
「足音の違和感と壁の向こうから聞こえたジャンプしたような音かな。耳がいいんだよ、私は」
カグナは、普段垂れているウサギ耳をピクピクさせているのをカマッセルに見せつける。
サイレントホッパーは極力音を立てずにジャンプするスキルであって、完全に無音にすることはできない。
ゆえにものすごく小さな音は出てしまい、カグナはそれを聞き取ったのである。
「カマッセルのヤツでも、カグナさんに勝てないどころか攻撃も当てられないのか」
「よっしゃ!やっちまえカグナ!!コテンパンにしちまえ!!」
「ちょっとダリアン!!」
ロランとダリアンも、二人の決闘の内容に興奮気味である。
カグナは、カマッセルに向けている魔杖に魔力をほんの少しだけ溜めて魔法を放つ準備をする。
「それじゃ、ちょっとビリッとするよ。”
「がはっ!!!?」
カグナの魔法による雷撃で、カマッセルは再び吹き飛ばされた。
先ほどと同じように地に伏せて、また立ち上がろうとしているヨロヨロのカマッセルはカグナに問いかける。
「はぁ……はぁ……キミ……一体何者なんだ……?」
「何者なんだって、新人の冒険者なんだが」
カマッセルに何者だと問われたので、カグナは首に掛けている星が一つ刻まれた銅色のネームプレートをカマッセルに見せびらかした。
さっきほど受付のお姉さんに貰ったばかりに汚れもついていない逸品である。
「ふざけているのか?……キミのような……上位の冒険者を一方的に叩きのめせるのが、新人なわけないだろう……」
カマッセルが言った内容を聞いた周りの冒険者たちが一同に賛同し頷く。
無名の新人冒険者が実力も実績もある凄腕の冒険者を一方的にボコっているなんて見たことも聞いたこともない話しであったであろう……今、目の前で起きているの見るまでは。
「いや実際何者なんだ、アイツは……!?」
「金一星の冒険者をボコれる新人冒険者なんて聞いたことがねぇよ!!」
「そりゃ、俺を育てた母親だからな。俺よりも強いさ」
「あぁ~なるほど、組合長の母親か。それなら納得………え?」
「く、組合長……今なんと?」
「あの魔導士は、俺を育てた義理の母親と言っただけだが?」
周りの冒険者たちがカグナの正体について話しをしていると、スサノがカグナの正体をあっさりと暴露した。
「「「「えっ…………え、えぇぇぇ!!!?!?」」」
それを聞いたスサノとアリシア以外の者たちは一瞬思考を放棄し静寂が広がった後、驚きの声で訓練所が揺れるくらいに響く。
すでに知っていたアリシアはとくに驚きはしていなかったが、周りで驚き騒いでいる冒険者たちと同じようにアリシアとカグナの関係を知らなかったサラ達も困惑している。
「カ、カカカグナさんが、組合長のお母さん!?!」
「お、おおおお母さんって、母親ってことだよね!?」
「バカッ!ビックリしすぎて当たり前のこと言ってるだけだぞオマエ!!!」
「え……ってことは、カグナさんは……アリシアさんの曾おばあさんってこと!?」
「「はぁぁ!?」」
突然の暴露に驚きに襲われている周りの様子を見たアリシアは、思惑通りという
「お、お爺様……」
「別に隠しているわけではなかったし、いずれわかることだ」
カグナもスサノの方をジト目で見ている、わざとだとわかっていたからだ。
よりにもよってこのタイミングで言ったことで、周りは軽いパニック状態に近いのだから。
「だからってスサノ……お前、暴露するタイミング見計らっていただろ」
「はて、なんのことだか?」
この男……自身とカグナの関係を暴露することで周りの人たちの驚く反応を楽しんでいるようだ。
随分と愉快な性格になったなっとカグナは内心思いつつ対戦相手の方を見ると案の定、驚愕の顔で固まっていた。
「おいおい……マジかよ……」
「えッ……今、カマッセルが戦っている相手は組合長の母親って聞こえた気がするんだけど……?」
「奇遇ですね、私もです」
「…………それもまたイイ」
カマッセルの仲間たちも同じような反応をしている。
よく見ると冒険組合の建物の窓からも覗いていた受付の人たちにも聞こえていたようで、カグナのことを見る雰囲気がとてつもないことが伝わってくる。
「あは……あははは、あはははははッ!!!」
スサノの暴露を聞いたカマッセルは空に向かって大笑いを始める。
「なッるほど……キミはスサノ組合長殿の母親だったのか。こんなにも強い理由がわかったよ……いや納得した」
「それで、どうする?キミが勝てる見込みはないようだけど」
「そうだね……たしかに今の僕がキミに……いや、貴女に勝てそうにはないみたいだ……だが」
カグナから
カマッセルの眼は、まだ諦めていなかった。
「全力も見せずに負けるのはイヤなのでね……悪いけど最後まで付き合ってもらおう……!」
「へぇ……嫌いじゃないよ、そういうのは」
カマッセルは、これまでの攻防とスサノの母親という情報から完全に勝てないと分かっている。
しかし金一星の冒険者としての意地なのか、はたまた男としてのプライドなのかは分からないが、今回の決闘の最後に切り札を使う意思を見せた。
「いいよ。ほら、おいで……お望み通りに最後まで付き合ってあげるよ」
カマッセルの意思を読み取ったカグナは受ける姿勢を示す、まるで頑張っている子供の相手をするかのように……。
カグナの返答を聞いたカマッセルは、足を肩幅に広げ中腰になり剣の切っ先を空に向けて構える。
カマッセルの身体から
これがカマッセルの最後の攻撃になるだろう、カグナは避けずに真正面から相手するつもりである。