星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
カマッセルは最後の一撃を放つために剣を構えている。
カグナもカマッセルの一撃を迎え撃つために、すぐに対処できるように身構えていた。
「汝、時を告げる蟲なり――汝、翼を束ねる大鷲なり――汝、力を喰らいし山羊なり――汝、目覚めし三角の王なり――」
準備が出来たのか、カマッセルは詠唱を唱え始める。
それと同時にカマッセルの行動を見た彼の仲間たちが騒ぎ始めた。
「ちょッ、カマッセル!それは人に向けて放つ技じゃないでしょ!!?」
「だがアレくらいしないと、あの魔導士には通じないだろう」
「なんてたって、あの組合長のお母様なんですからねぇ。アレを使うくらいじゃないと、ねぇ」
「…………カマッセルの覚悟を受け止める姿……美しい」
カマッセルの仲間たちの反応からして、どうやら彼が使おうとしている技は対人用ではない。
それをカグナに向けて放つらしいので、サポートAIであるアイがカマッセルを観測している。
『対戦相手カマッセルが
「なるほど……大物用の技ってことか」
アイの解析からすると、カマッセルが使おうとしている技が大型モンスター向けらしい……つまり彼から見たらカグナは大型モンスターと同等と思われているようだ。
カマッセルよりも背が低いのに。
「切り札は我が手に!我が
カマッセルが切り札であるスキルの名前を叫ぶ。
するとカマッセルの眼の前に3つの丸い魔法陣と不完全で歪な魔法陣のようなモノが2つが展開される。
「なッ!まさか……!?」
カマッセルが発動したスキルを見たカグナは眼を見開き驚愕した。
何故ならカグナが、よく知っているスキルにソックリなのだから。
「そのスキルは、
アナザーワールド・オンラインのゲーム時代、カグナの友人であるアズマエイが自信作だと自慢していた
使用者の眼前に5つの魔法陣を展開、それぞれを潜り抜けると独自の
その状態で敵に攻撃すると大ダメージを与えられるというモノである。
特撮好きのアズマエイが、とある特撮ヒーローの必殺技を模倣して作ったものだが意外にも実用性があるので多用していたのをカグナは覚えている。
カマッセルが展開した魔法陣は、アズマエイが作ったものと酷似している……おそらく同じ物だろう。
だがきちんと展開できているのは最初の3枚だけで、残りは不完全な状態である。
おそらくカマッセルが、このスキルをきちんと使いこなせていないのであろう。
「はぁぁぁぁ!!!!」
カマッセルが
1枚目の魔法陣を潜り抜けることにより攻撃力が上がり2枚目で攻撃速度が上がり、3枚目でクリティカル率と威力がアップする
これらの
どうしてカマッセルが友人の技を使えるのか、気になることはあるが……今はどう対処するのかの方が優先である。
カグナは迫りくるカマッセルに向かって魔杖を構えた。
「天に
カグナは迎え撃つための秘策の魔法を使おうとしたら、垂れているウサギ耳がピンと立ちあがり詠唱を始めていた。
「カグナさんが……詠唱した!?」
「初めて見たぞ、詠唱してるカグナさんなんて!!」
カグナが魔法の詠唱を始めた姿を見たアリシア達は驚いた。
今まで無詠唱で魔法を使っていたカグナの魔法の詠唱をする姿を初めて見たのだから。
詠唱が終わるとカグナは、カマッセルに向かって魔法を唱える。
「"
「ッ!?」
向かってくるカマッセルの眼の前に白くて細い光の鎖が十数本、空から地面に向かって伸びてきた!
カマッセルは勢いのまま白い光の鎖の群れの中に突っ込んでいき、まるでツタのように鎖が絡みついてくる。
これによりカマッセルのスピードは大幅に減速した。
しかし絡みついてきた鎖の方も軋む音が鳴りやまず、その細さゆえに壊れ千切れそうになっていた。
カマッセルは身体に巻き付く鎖に構わずカグナに向かっていく。
「この程度で……僕が止まるものかぁぁ!!」
「いや……これで終わりだ。”ひれ伏せ”」
カグナがそう言うと、カマッセルは腹に違和感を感じる。
身体に絡みついている白い鎖とは別の……1本の太くて頑丈そうで真っ黒な鎖がカマッセルの腹を貫いていたのだ!!
黒い鎖による痛みも流血もない、ただただ黒い鎖が貫通したという感覚だけがある。
だが変化はすぐに訪れた、カマッセルは地面に思いっきり落ちていったのだ!!
「ガハッ!?」
カマッセルは地面に伏せている、いや押し付けられていると表現したほうが正しいのかもしれない。
地面にへばりついているカマッセルを、カグナが見下ろす形となった。
(ん、俺は今……詠唱を口走ったのか……?
カグナはカマッセルを止めるために、
だが、その際に唱えるつもりはなかったはずの詠唱を無意識に口走っていたことを不思議に思っている。
詠唱は魔法の効果を高めるために必要だが詠唱無しでもカマッセル相手であれば問題なかったと判断し、詠唱は省くはずだったのだが……カグナは自身の行動に違和感を感じていた。
カグナが自身の違和感について思考を巡らせていると、地面に縛り付けられたカマッセルが抵抗しようとしている。
しかしカマッセルは立ち上がるどころか、指一本もまともに動かせずに眼だけでカグナのことを見上げていた。
「なん……だ、これは?」
「知りたいかい?今の君は加重状態になってるんだよ」
「加重……状態……?」
「あぁ、つまり君自身が重くなって地に伏せているんだよ。重くて動けないだろ?」
「くッ……!!」
黒い鎖に腹を貫かれたカマッセルは何とか立ち上がろうとするもののピクリともしない……そんな状態の彼にカグナは再び魔杖を向ける、
その様子を見ていた周りの人々は唖然としている……カマッセルがカグナの眼の前でうつ伏せとなり無抵抗状態なのだからだ。
アリシアも、カグナがカマッセル相手に何をしたのか理解しきれずにいた。
「何んですか、今のは……?」
「あの魔法は、
カグナが使用した魔法は、カグナが
拘束力は低いが出だしが最速の
魔法に対する高い耐性を持ち合わせていないと脱出は困難である。
カマッセルの魔法耐性では打ち破れないようだ。
「二種類の拘束魔法を時間差で発動させる魔法?そ、そんな……二種類の異なる系統の魔法を一つの術式にまとめて発動させるなんて、そんな高等技術を扱えるなんて……」
「俺もすべてを知っているわけじゃないが、母は軽く100を超える大小様々な
「なッ、100を超える!?」
スサノの言葉にアリシアは驚愕する。
魔法も扱うことができるアリシアからすれば、それがどれだけ難しいことなのか理解していた。
カグナは実用性のあるものからネタ枠まで様々な
そんなカグナは、今だ地面にへばりついているカマッセルに向かって問いかけた。
「さて、どうするカマッセル。拘束から脱出できないようだが、降参しないのなら攻撃するぞ?」
「ふ……ふッ……ふあはははは」
カマッセルは、うつ伏せのまま大笑いを始めた。
そして何か悟ったような表情をしてカグナにこう告げた。
「僕の負けだ……完敗だ」
「あっさり認めるんだ」
「切り札を止められ、攻撃が届かなかったんだ……そのうえ、この状態ではどうあがいても勝ち目はない。いや、負けるとはわかっていたんだがな……」
カマッセルは敗北を認めて降参した。
彼の降参を確認したカグナはピンと立てたウサギ耳が再び垂れ、カマッセルを拘束している
加重状態の重圧から解放され、身体が自由になったカマッセルはすぐさま身体を起こす。
カマッセルの降参を聞いたスサノは、周りの人たちに聞こえるように声高らかに勝者の名前を叫ぶ。
「うむ。此度の決闘の勝者は冒険者カグナだ!!」
決闘の結果が判明すると、周りで見ていた人々が喝采をあげる。
中には大泣きしている者たちもいたが、カグナは見なかったことにした。
「ちょっと、カマッセル大丈夫!?」
「あんなに可愛いお嬢さんが、まさか組合長のお母様だったなんてね」
「相手が悪かったな、カマッセル」
「…………彼女の闘い、美しかった」
カマッセルの仲間たちも彼の元にやってきて健闘を讃えつつ慰めている、相手が悪かったのだと。
決闘が終わったカグナは、とあることを確認するためにカマッセルの元に行った。
「さて、カマッセル。君に聞きたいことが一つある」
「負けた身だ。聞かれたことには、なんでも答えよう」
「君が切り札と言っていた、あのスキルだが……どこで習得した?」
カグナはカマッセルに、友人のアズマエイが作成した
それを聞いたカマッセルは少し考えたような仕草をしてカグナに向かって答える。
「アレは僕の実家にあった、秘伝書を読み解いて習得した技だ」
「秘伝書?」
「僕の実家は名の知れた商家でね、いろいろと珍しい物も集まってくる。中には”古の賢人”達が残したとされている秘伝書も含まれている」
秘伝書とは、プレイヤーが作成した
これのアイテムを使えば、他のプレイヤーがスキルを作る基盤が揃わなくても他人が作ったスキルを使用することができるのだ。
ただし秘伝書で習得したスキルは、習得後に修正や改変することができないという欠点がある。
「なるほど、秘伝書か。ありえなくはない……のか」
『主もアズマエイ様と幾つか秘伝書のやり取りを行っていますよね』
「やったね、懐かしい」
カグナはクランメンバー達と作成したスキルの秘伝書のやり取りを行って、互いに教えたり教わったりしている。
特に友人であるアズマエイとは、特に秘伝書を渡したり貰ったりしていた。
そのためカグナは、アズマエイが作った
「聞きたいことと言うのは、そのことかい?そういえば何か知っているかのような素振りをしていたような……」
「あぁ、よぉ~く知っているよ。キミが使った
カマッセルは自分が使った切り札が、カグナの友人が作ったスキルであることを伝えられる。
それを聞いたカマッセルは驚きを隠せずにいた。
自身の切り札を作り出したのが、カグナの友人だったと知ったからだ。
「本来は
「それは……僕の未熟さゆえだ」
「なるほど……きちんと使いこなせなければ、あぁなるというわけか」
自分が知っている
プレイヤーと現地人の違いなのだろうか……。
そのようなことを考えていると、カグナの元にアリシア達が駆け寄ってきた。
「カグナさん!勝利おめでとうございます」
「さすがです、カグナさん!!」
「あぁ、スカッとしたぜ!!」
「最後の魔法、凄かったです!!」
カグナの戦いぶりを絶賛するアリシア達、それに追従するように周りの冒険者たちもカグナのことを讃えている。
強いなら初めから言ってくれ!と文句を言っているのも居たが、カグナの知ったことではない。
カグナの周りに人が集まっている中、カグナに負けて意気消沈しているカマッセルの元にスサノが歩み寄っていた。
「派手に負けたな、カマッセル。まぁ、相手が母であれば致し方ないがな」
「……スサノ組合長」
「今のままでは、俺や母を
「くっ……精進いたします……」
ははははッ、とスサノが大笑いしていると冒険組合の建物の方から受付嬢が焦ったような感じで走ってきた。
「く、組合長!緊急事態です!!」
「内容は?」
受付嬢の焦り具合と異なりスサノは冷静に話しを聞く姿勢を取った。
相当急いでいたのか肩で息をしている受付嬢は数度深呼吸して息を整えると報告する。
「それが……ザコブリンの大軍が王都に向かって襲撃!関門警備していた王立騎士達が対応しているとのことで、王立騎士からの援軍要請です!!」
・
カグナの友人アズマエイが、某ヒーローの必殺技を模倣して作ったスキル。
5枚のサークルを展開して1枚くぐるたびに特殊バフが付与される。
順に、攻撃力アップ/攻撃速度アップ/クリティカル率・威力アップ/防御力一定値無効化/スーパーアーマー付与
その見た目と実用性もあって、よく魅せプレイに使っていた。
・
カグナが作った、軽量最速の鎖と重量最遅の鎖を時間差で発動することで相手を拘束する魔法。
主に足の速い相手を捕まえることを目的として作成された。