星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
ザコブリンとは、アナザーワールド・オンラインにて雑魚モンスターの代表の一つとしてあげられる。
そのほとんどが100cm前後の人型の見た目で赤・青・緑の肌色をしており、顔の上半分を骨や石で作られたドクロのような仮面を被っている小鬼のようなモンスターだ。
1匹1匹では、さほど強くはなく簡単に倒せるモンスターだが問題は数が多いこと。
通常は数匹から十数匹、多くて数十匹の群れを成しており集団で襲ってくるタイプのモンスターである。
さらにイヤらしいことに連携なども行ってくるのでタチが悪い。
たとえ高ランクのプレイヤーであっても背後からの襲われれば不意打ち補正が掛かり、クリティカル判定やスタン確立が高まって不利になってしまうことがある。
数の暴力は恐ろしいということを、リアリティをコンセプトにしているアナザーワールド・オンラインの運営は語っている……とはいえザコブリンは自分から危険にツッコむようなバカなモンスターではない。
王都という騎士や冒険者と言った強者が大勢いる街に襲撃するようなことは無いはず……なのだが……。
「なんだ……これは?」
「これは、また凄まじいな……。組合の冒険者たちは騎士たちに加勢しろ!」
カグナとスサノ率いる冒険者たちが襲撃を受けたという場所に向かって見た光景は、数百匹のザコブリン相手に関門警備している騎士たちが王都に入る許可を待っていた商人たちを守りながら戦っている姿であった。
状況を見たスサノはすぐさま冒険者たちに、数で劣勢な騎士たちへの加勢を命じる。
「魔術師は前衛に強化魔法を!遠距離攻撃するヤツは味方に当たらないように気をつけろ!!」
「数が多い!背後からの攻撃に注意しろ!!必ず近くに誰かが居る状況を保て!!」
「くそ雑魚どもが!ブッコロしてやる!!」
スサノの命令を聞いた冒険者たちは戦闘態勢を取り、すでに戦っている騎士たちに加勢に走り出す。
「カマッセル!私たちも!!」
「あぁ……王都を守るために、僕たちも加勢するぞ!!」
「へへ、腕が鳴るぜ!!」
「…………かの御仁も見ている、手柄を立てねば」
仲間の治癒魔法により決闘での疲労も回復したカマッセルと、その仲間たちもザコブリンの討伐へと向かっていった。
剣士・拳闘士・魔術師、各々が自分のスタイルでザコブリンと戦い始める。
カマッセルもカグナと決闘した時のようにスキルを駆使しつつ、仲間たちの連携を取っていた。
あれが彼の本来の戦闘スタイルなのであろう……。
すでに戦闘していた騎士に冒険者たちが加勢して大乱戦状態となった戦場を観察し、すぐさま指示が出せるようにしていたスサノの元に一人の騎士が駆け寄ってきた。
「助太刀感謝する、スサノ殿」
「むッ、ガインツェ殿か」
ガインツェと呼ばれた騎士は、見た目はスサノと同じくらいの年齢と思わしき老人だった。
スサノの横に居たカグナは、初めて見る老人について知り合いそうなスサノに聞く。
「スサノ、この人は?」
「あぁ、この外壁警備の部隊を仕切っているガインツェ殿だ」
「お初にお目にかかる、お嬢さん。スサノ殿の紹介の通り、ここら一帯の部隊を纏めているタダの老兵じゃ」
自身のことをタダの老兵と呼んだ老騎士ガインツェ。
しかしその身に纏う雰囲気が明らかにタダものではないと訴えてくる、かなり出来る御仁のようだとカグナは感じた。
「詳しい紹介をしたいが……まずは、この異常なまでの多さのモンスターをなんとかせねばな」
「スサノ殿が連れて来た冒険者たちのおかげで、だいぶ楽にはなったが……なにか、あと一手欲しいな」
詳しい話しをしたいが、まずは眼の前のモンスターの大軍を先になんとかしなければならない……カグナも同意見である。
この惨状を早く解決したいのはアリシアも同じのようで、戦闘準備が完了したアリシア達も戦いに行こうとしていた。
「お爺様、私たちも行きます」
「あぁ、頼んだぞ」
アリシアとダリアンとロランは、他の冒険者と同じように戦場へと走っていく。
サラは後方で待機し、戦闘が得意ではない冒険者たちと一緒に回復などの支援に努めていた。
魔道士であるカグナも魔杖を手に持ち、戦闘に参加するために前線へと向かおうとしていると……。
「よし……じゃぁ、私も魔法で……」
「待て待て、待つのだ」
スサノに止められた。
「なんで止めるんだ、スサノ!?」
「気軽に魔法ぶっぱするのはいいが……母よ、敵味方入り乱れてる乱戦で
「………ッ」
「たしか
「うッ、それは……」
アナザーワールド・オンラインにて、基本的に味方へのフレンドリーファイアはない。
だがイベントなどによっては実装されている場合もあり、その場合は味方に当たらないように気を付けたりしなければならない。
もっともフレンドリーファイアしたとしても、すぐに立て直しできるようにするのが当たり前ではあった。
だが現実となった今の世界において、カグナの強力な魔法は味方や周りの人々を簡単に巻き込んでしまう。
現に目の前の乱戦の中に、かつてのダンジョンのガーディアンゴーレムを倒した
「ならどうしろと」
「広範囲にわたる殲滅級魔法の使用は禁止だ、味方も吹き飛ぶ。もっと小さい魔法を使ってくれ」
「そんなチマチマとしている暇は………」
『では、接近戦が得意な方たちを呼ぶのはいかがでしょうか?』
「接近戦が得意?………あ、そうか」
カグナの横でフヨフヨと浮いていたサポートAIのアイが助言する。
それを聞いたカグナは、すぐに意図を理解してとある魔法を発動した。
「”
カグナは召喚魔法を二回発動し、二つの魔法陣から二体の召喚獣の姿を現す。
「召喚獣メズ。我が主の召喚に応じ、馳せ惨状いたしました!」
「同じくマカミ。主殿の声に呼ばれ参りました」
カグナによって召喚された、巨大な薙刀を構えた召喚獣の名前はメズ。
地面から頭までの高さが2mを超えており黒を基調とした甲冑を全身に着込んでいて生身が露出しているような部分は見当たらない、それでも豊満さを強調する丸い胸部が目立っている。
そして下半身が馬の姿、いわゆるケンタウロス型の召喚獣だ。
もう片方の召喚獣は狼のような顔にキリッとした眼、フワフワな髪の毛が腰まで伸びており大きな尻尾が風に揺れていた。
着ている着物を軽く着崩して、はだけた胸元からは白い体毛に覆わされた大きな双丘がチラリと見えている。
腰に二本の刀を刺している女侍のような狼の
黒い兜から覗くメズの光る眼光とマカミの鋭い視線は、二体の主の姿を捕らえると一礼をした。
「なるほど……今回のに、うってつけの召喚獣たちか」
カグナによって呼び出された近接戦特化の召喚獣の姿を見たスサノは感服する。
お得意の魔法で殲滅できないのなら、近接戦闘で手間なく倒せる者を召喚すれば良い。
「久しぶりだね。メズ、マカミ」
「えぇ、お久しぶりです。主殿」
「いろいろと語りたいこともありますが……」
「その前に、まずはアレを片付けるといたしましょう」
マカミとメズが振り返ると、ザコブリンの大軍と戦う人々の姿があった。
この戦場の様子をみた二体は、状況と召喚された理由を瞬時に把握する。
「あぁ、ケチらせ」
「「御意!!」」
カグナがマカミとメズに殲滅の命を出す。
それを聞いた二体は、すぐさま戦場へと走っていった。
ザコブリンの群れに向かって走っているマカミが腰に刺した二本の刀を両手で抜刀する、そして同時に2体のザコブリンの首が飛ぶ!
マカミが抜刀する際に間近に居た2匹のザコブリンの首を斬り飛ばしたのだ。
「我が名はマカミ!我が主カグナ様の命により貴様らを討つ!!さぁ、大人しく……その首置いていけ!!」
マカミの声が戦場に響き渡り、それを聞いたザコブリンたちが怯む。
その隙を見逃さないマカミは凄まじい速度で二本の刀を振ると数匹のザコブリンの首と胴が斬り飛ばされ塵となって消える。
眼にもとまらぬ剣撃の嵐によって、瞬く間に塵へと消えていくザコブリンたち……さながら無双ゲームの雑魚敵のようだ。
「まさか……あれもカグナさんの召喚獣なのか!?」
「だとすれば、なんと心強い味方でしょう」
「負けてられないな!!」
マカミの活躍を見たアリシアたちも、負けずと奮闘する。
前方に居た同族たちが次々と倒されていくのを目の当たりにして、後方にいたザコブリンたちは怖気づき始め足が下がり始めた。
メズは大地を蹴り大ジャンプして後ずさりしているザコブリンたちを飛び越すと、ザコブリンたちの退路に陣取る!
「我はメズ。我が主の命だ……塵芥となってもらおう!!!」
ふんッ!とメズが手に持った薙刀を左へと大きく振るうと、逃げようとしていたザコブリンが十数匹消し飛んだ!
そしてそのまま一歩踏み込み、逆の方へ薙刀を振り返すと同じようにザコブリンが消し飛ぶ!!
4つの脚で地に立ち2mを楽々と超える薙刀を軽々と振り回す巨人が退路に立ちふさがっている、ザコブリンにはそう見えているであろう。
先ほどまで数百匹はいたであろうザコブリンはマカミとメズに挟まれ、さらに王国の騎士たちと冒険者たちも相手することとなり物凄い勢いで殲滅されていく。
*
*
*
あれほどいたザコブリンたちは全て倒されて塵となって消え、戦闘は終わった。
ザコブリンとの戦いを終えた騎士や冒険者たちは、傷を癒したり武具の確認を行ったりザコブリンが落とした魔石を拾ったりしている。
スサノもガインツェと共に被害の確認をしに行った。
カグナはメズとマカミの元へと行き奮闘を労おうと考えているとメズが駆け寄り、膝を折ってカグナの目線に近づくと……。
「お疲れ様、メズ、マカミ。今回は急に呼んで悪かった、ふねぇえぇぇ!?」
いきなりカグナのほっぺたの左右を掴み引っ張り出したのだ。
「
「怒ってません……怒ってませんよ、我が主。100年近くほったらかしされて怒ってなどおりませぬ、ゆえ」
「
「久々の戦場への呼び出しも、あのような雑魚ばかりでは物足りません……まぁ、あのウシ頭ではなく私をお呼びした懸命な判断はさすがです我が主」
「やめふぇぇぇ」
全身甲冑姿で表情が読めないが確実に怒りマークが頭についている雰囲気を出しているメズ。
手加減してるため痛くはないのだが、それでもメズは涙目のカグナの頬を引っ張るのを止めない。
しばらくメズに頬をぷにぷにと引っ張られていると、見かねたマカミが止めに入ってきた。
「その辺にしたらどうだ、メズ。我らの主殿の可愛らしいほっぺが真っ赤っかだぞ」
「む……今回はこの辺にしておきます……」
名残惜しそうにカグナの頬から手を放すメズ。
涙目のカグナは引っ張られて赤くなっている頬を摩る、だが非はカグナの方にあるようなので致し方なし。
「うぅ……痛い」
『大丈夫ですか、主?』
「某もいろいろと言いたいことはありますが……主殿、コレを」
「種?」
マカミはカグナに直径3cmほどの植物の種を見せてきた。
カグナは種を手に取り、まじまじと見つめているが見た目はタダの種である。
「あのザコブリンどもを斬りふせたときに落ちた物です」
「ザコブリンのドロップアイテムに種が?」
「えぇ、ザコブリンが落としたものにしては妙でして……」
倒したザコブリンは魔石やザコブリン特有のアイテムや装備していた武具を残して消えていった。
その中に手に取った種が混ざっていたとマカミは言う。
モンスターを倒せばいくつかのドロップアイテムを落とすが、ザコブリンを倒したときに種系のアイテムを落とすなんてカグナは聞いたことがない。
『主、アイテムを鑑定したところ……”寄生怪花の種”であることが、わかりました』
「”寄生怪花の種”……それって確か……」
サポートAIのアイが、カグナが持っている種を解析していた。
解析の結果として、種のアイテム名は”寄生怪花の種”とのこと、その名前にカグナは心当たりがある。
突然のザコブリンの大軍に、本来ドロップしないはずのアイテム……これらの情報からカグナが考察をしていると、スサノが戻ってきた。
「此処に居たか」
「あ、スサノ。被害状況はわかった?」
「なんとかな、戦闘に参加した者たちは負傷はしているものの死者はいない。マカミ達のおかげだ」
「そうか、よかった」
スサノによると、ザコブリンたちとの戦闘で負傷した人たちは居るもの幸い死者はいないようだ。
カグナがマカミ達を召喚したおかげで想定より早く戦闘が終了したおかげでもあるだろう。
皆の無事を確認したカグナは、考察していた内容の一つを確認するためにスサノにとある質問を投げる。
「ところでスサノ」
「む、なんだ?」
「あのザコブリンたちについてだけどさ……あいつら、ダンジョンから溢れ出てきたヤツなんじゃないか?」
「おそらくな……倒したのに死体が残らず、塵となって消えるのはダンジョンのモンスターだけだ」
ザコブリンたちがどこからやって来たのか……カグナはダンジョンから溢れ出てきたのではないかと考えたのだ。
そのことをスサノに聞くと、カグナの考えと同じ回答を返してきた。
通常、外に居る魔物や魔獣を倒すと死体はその場に残るのはカグナも把握している。
だがダンジョンで生まれたモンスターは倒すとドロップアイテムを残して塵となって消え死体は残らない。
あれだけ大量に居たザコブリンたちの死体が一つも残っっていないのはそのためである。
「やっぱりか……ってことは、この種も……」
「ん?なんだ、その種は」
「あぁ、これはね……」
『あ、主!!』
「どうしたアイ、そんなに慌てて………」
アイの慌てた声にカグナは振り返ると……まさかの光景を見た。
周りの冒険者や騎士たちも同じものを見て声を荒げる。
「なッ!?」
「……うそだろ」
「おい…おいおいおい!マジかよ!!」
カグナ達が見たのは……先ほどまで戦っていたザコブリンたちの群れであった、
ただしさっきまでの数百匹という規模ではない。
相当離れているはずのザコブリンの大軍の足音が、カグナ達にも聞こえてくる。
『新たなザコブリンの大軍が王都に向かって進行しているのを確認しました!!その数……千匹超えております!!』
「なんだと……!?」
アイが観測した数は千匹を超えていた。
さらに群れにはザコブリンだけではなく、ひときわ大きな個体も混ざっているのが見える。
激闘を終えた冒険者や騎士たちは、新たな大軍を前にして絶望の表情を浮かべている。
「ふむ……どうやら、おかわりのようですな」
「また某が蹴散らしてきましょう」
「いや………」
「主殿?」
さっそく斬りに行こうとしていたマカミを制止し、カグナが前へと進む。
魔杖に
「私がやるよ。味方がいないのなら全力が出せる……いいな、スサノ?」
「………あぁ、構わん」
その様子を見ていたスサノは、やれやれといった感じで了承した。
カグナはニヤリと笑い、耳を立たせる。
・召喚獣 メズ
全身を黒色を基調とした甲冑で覆った、女ケンタウロス型の召喚獣。
巨大な薙刀と弓を使って戦う重戦車タイプ。
胸部装甲は厚い。
・召喚獣 マカミ
女侍な狼の
少し背が高い女性であり、顔は犬のスタイルで脚が若干犬よりである。
いわゆるメスケモワンワン。
二本の刀を使う二刀流であり、回避しながら斬りかかるスピードタイプ。