星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
「なんで……ログアウトができないんだ……?」
ログアウトができない、つまり現実の世界に戻ることができないということだ。
なぜ? どうして? Why? が、カグナの頭の中を駆け巡るが、理由がわからない原因もわからない。
「もし……もしも、このままログアウトできずにアナザーワールド・オンラインの世界に閉じ込められたままだったら、
アナザーワールド・オンラインだけではなくVRフルダイブゲーム全般に言えることだが、ゲームをプレイしている最中はプレイヤーは寝ているのと同じような状態になる。
つまり、このままログアウトができずリアルで眠ったままでいると食事も取れず衰弱していき、いずれ餓死することとなるだろう。
それに
朝早くから満員電車でぎゅうぎゅう詰めで揺られながら出勤し、大量の仕事を抱えながら皆から好かれていない上司から大声で言った言っていないなどと意味も分からず怒鳴られ、それほど高くない給料で夜遅くまで残業して夜遅くに帰り、栄養ドリンクの空き缶が増え続けたり終電が無くなって会社に泊まったり休日出勤を命じられたりする日々なのだが……
「…………ん?」
『どうしました?』
「スゥゥ~~~」
カグナは、深く息を吸い。
「ハァ~~~~~~」
そしてゆっっっっくりと息を吐く。
「……………」
『主?』
「あれ、無理に
カグナは気づいた、気づいてしまった。
そのことに気づいてしまったカグナの頭の中から無理にログアウトしなくてもいいという結論にいたるまで、思考時間が1秒もかからなかった。
『それは、こちらに留まる……という事でしょうか?』
「あぁ~うん、そういうことになるのかな?」
『左様ですございますか!?』
アイは歓喜を抑えきれないのか、黒い毛玉のような身体を弾ませながらカグナの周りをぴょんぴょん飛び回る。
そんな様子を見ていたカグナは、なぜアイのテンションが異様に高いのか理解はしていない様子であった。
「そうと決まれば……」
『決まれば?』
「野宿の準備をしようか!」
気づけば、すっかり日は傾いて空は朱くなっている。
そしてカグナの腹が可愛らしく嘆いていた。
「………飯の準備も必要だな」
何かないか? なんとかならないか? そう考えながらカグナは、メニューを開いた。
*
*
*
野宿していたカグナは朝日の光で目を覚ます。
「ふぁぁぁ、朝か…アイおはよう」
『おはようございます、主』
数年ぶりにゲームへログインしていろいろありログアウトできないと判明した後、日も暮れ始めてきたためメニューのアイテム欄にあった簡易拠点設置アイテムを使って一晩を過ごすこととなった。
すっかり日も暮れ腹が空いてきたカグナは、メニューのアイテム欄から食材系アイテムを取り出せることに気づき恐る恐る食材を引き出すと新鮮な状態で取り出すことが出来たことに驚いた。
そのまま簡易拠点設置アイテムについてきた鍋などの調理器具を使い簡単に調理をし腹を満たす。
やっててよかったね、1人暮らしの自炊!
腹を満たした後は、いろいろあったからかすぐに眠くなりアイに見張りと火の番を頼んで就寝したのであった。
『それでは主、これからいかがいたしましょう?』
「そうだな……まずは人が住んでいる場所、村か街を目指そうと思う」
『村か街ですか?』
「このまま廃墟に居るよりも現状を把握できそうだしね、たしかNPC達の村があったはず」
アナザーワールド・オンラインには、プレイヤーたちが冒険の拠点にしている大小さまざまな街や村が点在している。
冒険に必要なクエストを受注できるギルドや雑貨屋に鍛冶屋などの様々な施設がある。
そして人が集まるところには情報も集まる。
今のアナザーワールド・オンラインの世界が一体どうなっているのか、どうしてログアウトできずにいるのか。
カグナがどういう状況でこの世界にいるのか、それらを知るためにも人のいる所そして情報が集まる所に行くのが最善だとカグナは考えたのである。
『では、出発いたしますか?』
「あぁ~ちょっと待って」
『どうしました?』
「コレは……持っていくか」
カグナは、廃墟の中にあった2枚の写真を手に持つ。
同じクランのメンバーとの集合写真と、クランのメンバーではない種族が異なる子供らしきNPC3人とカグナが一緒に写っている写真である。
『それは、たしか……』
「懐かしい思い出だよ。運よくあまり劣化してなかったみたいだ」
2枚目の写真に写っている3人の子供NPCに関しては、クランメンバーの一人(実はゲームのお偉いさんのプライベートアカウント)にプレイヤーサポートNPC育成システムのβテスト……という名の厄介ごとを押し付けられたのだ。
――― カグナ!面白い話があるんだが!!
「ほんっとッ面倒ごとしか持ってこなかったアイツは……でもまぁ、あの子たちとの日々は楽しかったしな」
ほぼ公私混同職権乱用とも言える厄介ごとを押し付けられたが、面倒臭いと思いつつも新しいシステムに興味がないわけでもなかっため引き受けることとなった。
そしてしばらくの間、押しつけられたNPCの子たちの面倒を見つつ育成していくと多少の情も湧いてきたりするものでもあったことをカグナは思い出してきた。
「そういえば、この子たちは何処にいるんだ?以前ならマイエリア内に居たはずだけど……」
『周辺に人の気配は感じられません』
「此処には居ないってこと?」
『おそらくは』
「なら、この子たちを探すのも旅の目的に入れよう」
これからの旅の目的が一つ増えたと、ウサギ耳と尻尾を揺らしながら笑うカグナであった。
カグナは見開いた本の形をしたメニューを表示すると手に持っていた写真をアイテム欄に格納する。
写真が格納されたのを確認すると、バタンッと本の形をしたメニュー画面を閉じた。
「他にも何か使えそうなものが残ってないか探してみるか」
カグナは廃墟となった豪邸跡を物色し始める。
かつての自分の家として使っていたのだから何処に何があったかは、ある程度把握している。
しばらく物色していたが、旅に使えそうなものはほとんどなかった。
「あれ……こんなに物が少なかったっけか?結構アイテムとか装備とか保管していたと思ったんだけどな」
『もしかしたら、昨日のシーフモンキーのようなのに持っていかれたりしたのでは?』
「うわぁ、それありそうだな……」
廃墟となってはいるものの、保管していたモノがほとんど無くなっていることにカグナは違和感を感じつつも、これ以上の物色は無駄であると判断して止めた。
「これ以上は何もなさそうだし、それじゃ行こうか」
『はい!』
カグナは廃墟と化した自宅を後にし、アイを連れて来た道を戻っていった。
自分が望む場所に、たどり着くことを願って。