星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#29 ウサギ、ダンジョンを進む

「これはまた……壮大な景色だな」

 

 

 ダンジョンへと突入したカグナ達が見た光景は木々が生い茂る樹海である。

 樹木が天高く生い茂り、所々に色鮮やかな草花が道の脇に咲いており、所々崩壊した遺跡と思わしきオブジェクトもあった。

 おそらく密林と遺跡がコンセプトテーマとして作成されたダンジョンなのだろう。

 そんなことをカグナが考えていると、ロランが口元を……正確には鼻を抑えて唸っていた。

 

 

「うっ、キッツ……」

 

「どうした、ロラン?」

 

「いや……ここ、ちょっと花の匂いがキツくて」

 

 

 ロランが匂いがキツイと言ってきたので、カグナもダンジョン内の空気の匂いを嗅いでみた。

 たしかに甘ったるい匂いが充満している。

 カグナはまだ平気だが鼻が良いロランにはキツイらしい。

 

 

「身を隠せる場所が多いな……奇襲に注意してくれ」

 

「…………気を付けて進むぞ。花の匂いのせいで、俺やロラン(そいつ)の鼻が効かん」

 

 

 カマッセルと彼の仲間であるフードの猫耳男が警戒しながら先頭を歩く。

 その後ろをカグナたちはついていき、お互い奇襲を警戒をしながら奥へと進む。

 そんな時、カグナは大事なことを思い出した。

 

 

「そういや君たちの名前を聞いてなかったな」

 

「そういえば、そうですね……」

 

 

 カマッセルのことは決闘で戦っているのでわかるが、彼の仲間たちのことをカグナは知らない。

 そのため名前も知らないカグナへ、カマッセルの仲間たちの自己紹介が始まった。

 

 

「では改めまして、私の名前はカトリーナと申します。主に回復を担当しております。」

 

「アタシはエリィ。見ての通り魔導士よ」

 

「俺は戦士のバードンだ。よろしくな」

 

「………ウツセミ……隠密だ」

 

 

 豊満な身体をした回復役(ヒーラー)のカトリーナに、カグナと同じ魔導士の少女エリィ、ダリアンよりも屈強な身体で巨大な戦斧を肩に担いでいるバードン、そしてなぜかカグナと眼を合わせようとしないフードを被った猫耳の獣人種(ジューマン)の男のウツセミ。

 ウツセミ以外の3人は純人種(ヒューマン)だ。

 

 

「改めてよろしく」

 

「こちらこそ、まさかあのスサノ組合長のお母様に同行できるなんて光栄ですわ」

 

「頼りにしてるぜ、組合長のお袋さんよ」

 

「見せてもらおうかしら、あの組合長の母親のダンジョンでの実力ってヤツを」

 

「あははは、スサノの母親……ね」

 

 

 スサノの母親と言われて困惑するカグナ。

 言っていることは間違ってはいないのだが、カグナはまだその事実を受け入れきっていない……なんせ元は、只のおっさんなのだから。

 そんな複雑な心情の中、カグナはアリシア達と供に周辺を警戒しつつダンジョンの奥を目指し進むのであった。

 

 

 *

 

 *

 

 *

 

 

 ダンジョン攻略だが、結論から言って道中は楽であった。

 

 

「はぁぁ!!!」

 

「そいッ!!!!」

 

「グギャァァァ!!」

 

 

 ダンジョンの最奥へ続く道中でのザコブリンの奇襲に対して、カマッセルのパーティーメンバーが適切に対処していた。

 剣技と魔法を自在に操るカマッセルと彼の仲間である重戦士系アタッカーの男が襲い掛かってくるザコブリン達を軽々と撃退し、カマッセルたちの撃ち漏らしを後方の魔導士のエリィとウツセミが遠距離攻撃でフォローしている。

 カトリーナは、いざという時のためにすぐに魔法を使える準備をしていた。

 

 

「なるほど……金星級冒険者パーティーは伊達ではない、ってことなのか」

 

『出番がありませんね』

 

「楽できるし、いいんじゃないかな?」

 

 

 カマッセルたちの連携を見て、これが金星の冒険者パーティーの動きかと感心しているとサポートAIのアイが小言を言ってきた。

 実際に彼らの連携は隙が少ないうえ、出来る限り最小限の動きを意識して動いている。

 今のところ撃ち漏らしもないので、後方のカグナ達は体力を温存できており、楽だ。

 ただカグナ達の中で一人だけ、険しい表情で前方の活躍を見て続けている者が居た……ダリアンである。

 

 

「………」

 

「どうしたダリアン?眉間にしわを寄せて」

 

「………あ、いや」

 

 

 カマッセルたちの活躍を見て複雑な心境を抱えているような表情をしていたダリアンに、カグナは思わず声をかけた。

 ダリアンは、カグナに話しかけられたことで自分がしかめっ面をしていたことに気づき表情を戻す。

 

 

「アイツ……性格はイヤ奴なんだが、金星級の実力は本物だなと」

 

「まぁ、たしかにね」

 

 

 カマッセルと初めて会った時は褒められた態度ではなかったが……いざ決闘を行った後だと、良い子なのがわかる。

 もっともダリアン達に当たりがキツイのは、アリシアが関係しているせいなのだが……それさえなければ、もっといい関係を結べるかもしれないが、今はまだ難しいかもしれない。

 

 

「悔しいが今の俺達の実力じゃ、あそこまでの練度が出せるかどうか……」

 

「それはちょっと無理かなぁ」

 

「………はっきりと言うんだな」

 

「ここでウソをついたり、慰めの言葉を言ったって意味ないだろう?」

 

「それは……そうだが……」

 

「なぁ~に、これから強くなればいいんだよ。アリシアにも頼まれたしな」

 

「あぁ……そうだな!」

 

 

 今はまだ未熟だとしても、これから強くなる機会は沢山あるんだしチャンスもあるとカグナがダリアンを鼓舞する。

 カグナの言葉の意味を理解しモヤモヤが晴れたのか、ダリアンの瞳にヤル気が灯ったのを見えた。

 それを見たカグナは自然と笑みが出てきていると、アイが敵意を感知していた。

 

 

『主、遠くの方から敵が狙っております』

 

「なんだって!?」

 

 

 アイが遠くに居る敵を発見し、カグナに伝える。

 カグナもその声に従いアイが示す方角に眼をやると、遠い場所に生えている大樹の枝に乗っているザコブリン達が弓矢を構えている姿が見えた。

 ザコブリンたちが此方に向かって弓矢を放つ、矢の狙いはカマッセルの仲間である魔導士のエリィだ。

 

 

「エリィちゃん、あぶない!!」

 

「なにッ!?」

 

「えッ!?」

 

 

 カマッセルもエリィも眼の前のザコブリンたちの対応をしていたせいで弓矢の攻撃への反応が遅れた。

 このままではカリンにザコブリンたちの矢が当たってしまう………はずだった。

 

 

「ハっ!!」

 

 

 エリィを庇うようにアリシアが盾と剣で矢の攻撃をすべて防いだのだ!

 攻撃を防がれたのを確認したザコブリンたちは再び弓矢を構えるが、ロランが投石紐(スリング)にて阻止する!

 そしてロランの妨害によって隙が出来たところを、すかさずカグナが魔法で迎撃。

 

 

「”白魔貫旋(シャロンセン)”」

 

 

 カグナは光属性の白魔(シャロン)に貫通属性の貫旋(セン)を付け加えた”白魔貫旋(シャロンセン)”を唱える。

 するとカグナが構えた魔杖の先からビームのような光線が発射され、命中したザコブリンたちの頭に大きな穴が空き消滅した。

 脅威が排除されたことを確認したアリシアは振り返り、狙われていたエリィの安否を確認する。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫よ!!……………その……ありがとう」

 

 

 助けられたことを理解したエリィは、恥ずかしそうな態度で感謝の言葉を呟いた。

 まさか実力が下の者に助けられたことに恥ずかしいのか、エリィは赤面している。

 カグナたちのおかげで事なきこと終えたのを見たカマッセルはカグナ達に向かって謝礼を述べた。

 

 

「すまない、フォロー感謝する」

 

「いいよ、こっちは楽させてもらって余裕があるしね」

 

「そうか……後ろは任せるよ」

 

 

 ちょっとしたハプニングによって止まっていた一行は再び歩みを進める。

 何度か奇襲に襲われるが、それも全て対処していった。

 そうして、しばらくダンジョン内の道を歩いていると、カグナ達は明らかにボスが出てくるだろうと思わしき広場へと辿り着いた。

 広場は石畳が丸く敷かれており周りは木々や草が生い茂っている。

 そして先へと続く道がない。

 

 

「どうやら、ここがダンジョンの最奥のようだ」

 

「ってことは、ここにダンジョンの主が居るってことね!」

 

 

 ダンジョンの最奥にたどり着いた一行は、ダンジョンの主であるボスが出現するのを待つことになった。

 だがロランとウツセミが異変を感じ取り、皆に周りの状況を伝えてくる。

 

 

「みんな!気を付けて!!」

 

「…………囲まれてるぞ」

 

 

 カグナも周りの草木から何かが隠れている気配を多数感じ取った……囲まれている。

 全員が円陣を組み臨戦態勢を取ると、茂みから大量のザコブリンたちが武器を構えて出てきた!

 

 

「なんだ……この数は!?」

 

「まだ、これだけの数がいたなんて……」

 

「来るぞ!!」

 

 

 ザコブリンたちが一斉に襲い掛かってきた!

 アリシア達とカマッセルのパーティーが、次々とザコブリンたちを倒していく。

 一体一体はそこまでの強さではなく、冷静に対処すれば負けることはないだろうが……数が多すぎる。

 

 

「クッソ!キリがねぇ!!」

 

「このままだと、この物量で先にこっちが参っちまうぞ!!」

 

魔力(マナ)が枯渇しちゃう!!」

 

 

 ダリアンとバードン、そしてエリィがバカみたいな数の相手に文句を口に出している。

 回復役(ヒーラー)のサラとカトリーナも、皆の補助をしつつ近づいてきたザコブリンを魔法で消し飛ばしていく。

 少量の魔石と種のようなドロップアイテムを残して、数匹…十数匹……数十匹と塵となって消えていくザコブリンたち、しかしどんどんオカワリが湧いてくる。

 

 

(また種がドロップした……)

 

 

 ザコブリンを倒したときに落ちたアイテムを見たカグナは、このダンジョンのボスのモンスターについて考える。

 本当にザコブリン系統のモンスターが此処のボスなのかどうかを……。

 

 

「まさか、このダンジョンのボスは……」

 

 

 カグナが違和感に気づき、ダンジョンのボスの正体に関して考察しているとロランとウツセミが異変……というよりも異臭に気づいた。

 

 

「なんだ……この匂いは?」

 

「………ナニかが来るぞ!?」

 

 

 ロランとウツセミが叫ぶと、ザコブリンたちの群れの奥から雰囲気が違うモンスターが姿を表す。

 見た目は人型でありザコブリンに酷似しているが、まず体型が異なっている。

 ザコブリンと比べて髪の毛が長く顔も小顔だが人とは異なる顔をしており、胸部に膨らみがあり腰にくびれがある。

 そして頭に巨大な花を1輪、髪飾りのように付けていた。

 モンスターの姿をみたカマッセルが記憶にあるモンスターの名前を口に出す。

 

 

「あれは……クイーン・ザコブリナ!?」

 

 

 ザコブリナは、ザコブリンの希少なメス個体であり1体いるだけでザコブリンを大量に産みだし群れを拡大させていく。

 その頂点にまで上り詰めた個体をクイーン・ザコブリナと呼び、冒険組合でも特例討伐対象とされている。

 

 

「まさか、このダンジョンの主がクイーン・ザコブリナとは……」

 

「だからこの数ってか……めんどうな相手だ」

 

 

 クイーン・ザコブリナは、常に十数匹以上のザコブリンたちを引き従えている指揮官タイプのモンスターだ。

 普段は自分勝手に襲ってくるはずのザコブリンたちを統率し、時には支援魔法まで使って強化してくる厄介なモンスターだ。

 そのうえ自分は配下のザコブリンたちに徹底的に守らせるので、頭から先に潰す戦法が通りにくい……。

 しかも今回は十数匹なんて数ではなく、周り一面に武装したザコブリンたちに囲まれている。

 アリシア達もカマッセル達も、どう対処すべきかを考えているとカグナが呟いた。

 

 

「いや……違う」

 

「え?違うとは……どういうことですか、カグナさん?」

 

 

 カグナは否定の言葉を口に出す。

 アリシアは意味がわからなかった……カグナが一体、何を否定したのかを。

 言葉の意味をつたえるべく、カグナは魔杖をクイーン・ザコブリナの方へと向けた。

 

 

「このダンジョンの本当のボスは………お前だろ?」

 

 

 カグナは魔杖でクイーン・ザコブリナ……ではなく、その頭部にある大きな花飾りに向けていた。

 するとクイーン・ザコブリナの頭部にある花がカサカサと動き出し、カグナを除いたメンバーが驚愕する。

 クイーン・ザコブリナの頭につけてる花飾りと思ったソレは、花の付け根部分に気味の悪い小さな顔がありケラケラと笑ってカグナ達を見ていた。

 

 

「な、なんだありゃ!?」

 

「まさか、他のモンスターに寄生するモンスター!?」

 

『はい。アレは寄生植物型のモンスター、その名前を……”寄生傀儡花パラサイト・ラフレシア”』

 

 

 バードンがクイーン・ザコブリナの頭の花飾りを見て声を荒げ、アリシアがその正体に気づく。

 カグナの横で浮いていたサポートAIのアイがモンスターの名前を言う。

 ”寄生傀儡花パラサイト・ラフレシア”、他のモンスターに寄生して本能のリミッターを外すことで通常よりも強力な個体にしつつ人形のように操る寄生型の植物モンスターだ。

 

 

「――――!!!」

 

 

 パラサイト・ラフレシアが操るクイーン・ザコブリナが叫ぶ。

 すると周りに居たザコブリンたちの眼の色が変わり、先ほどよりも荒々しい雰囲気を出す。

 クイーン・ザコブリナによる、ザコブリン集団への強化(バフ)スキルである。

 先ほどよりも強力になったザコブリンがカグナたちへ、にじり寄ってくる。

 

 

「さて……ここからが、ボス戦の本番だ」

 

 

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