星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#31 ウサギ、ボスと戦う②

 一軒家の玄関が開く音がすると、奥からドタドタと走ってくる足音が聞こえてくる。

 

 

「あっ!かずと兄ちゃんだ!!」

 

「わぁー、かず兄ちゃん!!!」

 

「あはは、今日も元気だな。おチビども~」

 

 

 家に入ってきた卯月(うづき) 和人(かずと)の元に、小学中学年くらいの男の子と低学年くらいの女の子が満面の笑みで駆け寄ってくる。

 今日は中学校の帰りに、そのまま友人の家に遊びに来ていた。

 友人の一家とは家族同士での付き合いがあるので友人の兄弟とも顔見知りであり、よく遊び相手にもなっており懐かれたのだ。

 

 

「おいおい、俺も一緒なんだが……実の兄貴には、なんもねぇのかよ?」

 

「あっ、おにぃ。おかえり」

 

「おにぃもいっしょだったんだ」

 

「よし、わかった。長兄との接する態度について再教育が必要だな、弟妹(ていまい)どもめ」

 

 

 和人と一緒に帰ってきた子供たちの実兄である石野 護に対して、そっけない態度をとる弟と妹たち。

 その対応を受けた石野 護は、兄としての接し方を見直そうかと考えたのであった。

 一方、和人はと言うと友人の弟妹たちに足や腕を掴まれて喚かれている。

 

 

「かずと兄ちゃん!今日はなにして遊ぶ!?」

 

「あたしも!あたしもいっしょにあそぶ!!」

 

「和人は、兄ちゃんと新作ゲームで遊ぶんだが」

 

「やぁーだー!ぼくもかずと兄ちゃんとあそぶ!!」

 

「あたしも!あたしもー!!」

 

 

 小さな子供の力なので振り払おうとすれば容易だが、和人はそんなことはせずされるがままであった。

 

 

「あははは、モテモテで困るわぁ~」

 

「ガキんちょに、モテてどうするんだよ……」

 

 

 何かと年下の子供たちに好かれやすい和人は満更でもないと口走るものの、友人に静かにツッコまれる。

 これはカグナこと卯月(うづき) 和人(かずと)と、リアルでも友人であるアズマエイこと石野 護が中学の頃のよくある他愛もない日常の風景であった……。

 

 

 *

 

 *

 

 *

 

 

 カグナは、クイーン・ザコブリナとザコブリンたちによって肉盾にされている子供たちの顔を見た。

 恐怖で怯えている顔が、なぜか昔遊んだ親友の弟妹と重なって見えてしまったのだ……。

 違う……あの子達ではない、と頭で理解はしているものの一度でも重なって見えてしまった以上……カグナの胸の内に怒りが込み上げて来てしまう。

 カグナは子供たちを救出するプランを思いつき、それを実行できそうな相手に声をかける。

 

 

「さて、ウツセミさん」

 

「………………………………ウツセミでいい」

 

「そう?ならウツセミ。素早く動くスキル……”瞬脚”とか使える?」

 

「………………………………できる」

 

 

 カグナが期待していた答えが返ってきた。

 考えていた作戦ができると分かりカグナは思わずニヤリと口角が上がる。

 

 

「なら、私がアイツらの隙を作る。その隙に子供たちの救出を」

 

「………………………………わかった」

 

「それじゃ、”氷魔縛鎖(フレズチェン)”!!」

 

 

 カグナが氷魔縛鎖(フレズチェン)を唱える。

 子供を盾にしているザコブリンの周辺に、氷でできた鎖がザコブリン目掛けて伸びる!

 氷の鎖がザコブリンに刺さると、その個所からザコブリンの身体が凍結していく。

 

 

「あの魔法は、ジェリースラッグの時の!!」

 

「ザコブリンだけが凍り付いていく!?」

 

 

 カグナの魔法を見たロランとダリアンが王都に着く前に見た魔法と気づく。

 凍結させて束縛させる氷魔縛鎖(フレズチェン)によりザコブリンはカチンコチンに凍り付いた。

 なお、カグナが上手く調整したため盾代わりにされていた子供たちは凍り付いていない。

 突然の出来事に、周りに居たザコブリンやクイーン・ザコブリナが困惑していると、その隙にウツセミが動く

 

 

「……”瞬脚”!」

 

 

 ウツセミは高速で動くスキルを発動させると一瞬で子供たちのところまで移動し、そのまま子供を奪還して皆の元まで戻ってきた。

 奪還した子供たちを地面に横たわらせると、サラとカトリーナが治療のために怪我の様子を確認している。

 

 

「カグナさん!子供たちは無事救出できました!!」

 

「いや待て!この子らの首元に何かあるぞ!?」

 

「……種?なんか根みたいのが伸びてる!?」

 

 

 カマッセルの仲間で戦士のバードンが、救出された二人の子供たちの首に何かあるのを見つける。

 子供たちの首元に種のようなものが食い込んでおり、皮膚の下に根が伸びていた。

 

 

『おそらくパラサイト・ラフレシアの種子が、根付いているのだと思われます。早急に治療が必要かと』

 

「サラ!そっちで浄化魔法とかで、なんとかして!!」

 

 

 子供たちの状況からアイがパラサイト・ラフレシアの種子が根付いていると判断する。

 パラサイト・ラフレシアは、他の生き物を操る際に自身の種子を植え付けてアンテナみたいして使うのだ。

 そして種子がそのまま成長すると新たなパラサイト・ラフレシアへとなる。

 カグナはクイーン・ザコブリナとパラサイト・ラフレシア撃破のために、子供たちへの処置まで手が回らないのでサラ達に託す。

 

 

「は、はい!やってみます!!」

 

「私もお手伝いします」

 

 

 サラとカトリーナが治癒を開始する。

 アリシア達とカマッセル達も、治癒に専念している二人を守るための陣形を取った。

 

 

「さて……覚悟はいいよな、お前ら……」

 

 

 ひとまず子供たちの安全は確保され、さらにアイが密かに探知魔法を使用して他に人質が居ないことも確認済みである。

 遠慮する必要がなくなったカグナは怒りの籠った眼でクイーン・ザコブリナとパラサイト・ラフレシアを睨みつけた。

 その圧を受けたパラサイト・ラフレシアが、奇声を一つ上げる。

 

 

「キィキャー―!!」

 

 

 寄生花の寄生がエリアに木霊すると、周りのザコブリンたちの様子がさらにおかしくなる。

 まるで壊れた人形のようにガクガクと震え初めて、ザコブリンたちの頭周りから草が生え始めた!

 

 

『主!パラサイト・ラフレシアによるザコブリンたちに埋め込まれたと思わしき傀儡種子の活性化です。先ほどの狂化状態と合わせて、さらに危険な状況になりました』

 

「なるほど……こちらにも種を植え付けていたってわけか……面倒な」

 

 

 傀儡種子を活性化させることにより、さらにリミッターを強制的に外したのだろう……これによりザコブリンたちは、壊れること前提の生物兵器と化す。

 ザコブリンたちが大変なことになっている中、カグナの後ろで治癒に専念していたはずのサラ達が子供たちに起きた異変を大声でカグナに伝える。

 

 

「大変です!子供たちに根付いている種子が急速に根を伸ばし始めました!!」

 

「これは……早急に処置が必要です。カグナさん!!」

 

 

 ザコブリンたちの傀儡種子が活性化したことにより、子供たちに食い込んでいた種子も活性化したのだ。

 時間がないことを理解したカグナは、ゴズに向かって叫ぶ。

 

 

「ゴズ!大技を使う、みんなを巻き込まないように守れ!!」

 

「御意!」

 

 

 主人の命令を聞いたゴズは二つ腕で持った大楯(タワーシールド)を地面に突き立て、残った二つの腕で印を結ぶ。

 

 

「”不落結界”!!」

 

 

 ゴズを中心にドーム状の結界が展開され、カグナを除いたメンバー全員が結界に入る。

 これでみんなを巻き込まないことを確信したカグナは、いつも使っている魔杖から別の魔杖に装備を変える。

 幾多の蛇が絡み合ったような少し禍々しい装飾の杖だ。

 カグナが握りなおした魔杖に魔力(マナ)を込めていると狂ったザコブリンたちがカグナに向かって襲い掛かってきたが、カグナは構わず詠唱を開始する。

 

 

「注げ注げ、酒を杯に――満たせ満たせ、贄を皿に――」

 

 

 するとバランスボールほどの大きさの真っ黒な球体が出現し、カグナより高い位置に浮かび上がる。

 そして真っ黒な球体が現れると同時に、カグナに襲い掛かろうとしていたザコブリンたちにも異変が起きる。

 飛び掛かってきたザコブリンたちはカグナに攻撃を当てる直前の空中で停止し、そのままカグナが出した真っ黒な球体へと吸い込まれていったのだ!

 球体はザコブリンたちを引き寄せていき、やがてザコブリンでできた球体へと見た目が変わっていく。

 

 

「餓えに唄うは、伊吹の蟒蛇(うわばみ)――」

 

 

 真っ黒な球体が、どんどん周辺のザコブリンたちを吸い寄せて大きな球に成長を続けているとカグナの足元に同じく真っ黒な8本の影が姿を現す。

 その影の形はまるで8匹の蛇のようだ。

 

 

「血飲み、肉(くら)いて、汝らの腹が満たされることを祈らん――」

 

 

 ザコブリンたちがどんどん吸われていき球体の一部へとなっていく。

 クイーン・ザコブリナとパラサイト・ラフレシアも、球体の一部にならないよう必死に逃走をしているが吸引力の方が勝っている。

 やがて努力虚しく、人には理解できない言語で叫びながらザコブリンと同じように球体の一部となっていった。

 

 

顕現せよ(おいで)……”八ツ喰ラウ毘レノ大蛇(ヤツクビオロチ)紅魔武士(アカマムシ)”!!!」

 

 

 詠唱が終わりカグナが魔法の名を唱え叫ぶとカグナの足元から一匹の影の蛇が、みるみると巨大になっていき……やがて灼熱の身体へと変化して、とても巨大な炎の大蛇の姿となった!!

 

 

「なんだ……アレは?」

 

「炎の……大蛇?」

 

 

 ゴズが張った結界の中で見ていたカマッセルとアリシアが、カグナが呼びだした炎の蛇を見上げて唖然としている。

 他のメンバーも同様の反応をしており、エリィは事の重大さに気づいて驚愕する。

 

 

「ウソでしょ!”獣造魔法”!?」

 

「なんだ、やばい魔法なのか?」

 

「魔法そのものに獣とかの特性を付与する技術よ。そうすることで魔法自体に簡単な思考や自我を付与させることが、できたりするんだけど……」

 

「……けど?」

 

 

 エリィは、カグナが発動した魔法に関する獣造魔法について魔法に獣の特性と簡単な自我を持たせることができると説明する。

 その結果に何が起きるのかと言うと、魔法そのものがある程度の自立稼働が可能となり獣と化した魔法が自分で考えて主人の命令を遂行することができるだ。

 つまり敵を自動で追尾したり、攻撃対象を自分で判断したり、敵の攻撃に自分から当りに行って主人を守ったりするようになるのである。

 

 

「あんな巨大な獣造魔法は宮廷魔導士長とか魔法学園の学園長とかのレベルで、やっとできるくらいの超高等魔法よ!?」

 

「なッ!?」

 

 

 カグナが顕現させた”紅魔武士(アカマムシ)”は、人ひとり簡単に一飲みできるほどの大きさの炎蛇である。

 エリィが言うには、これほどのレベルの魔法が使えるは王国でも一握りとのことらしい。

 もっとも魔導士を主戦種(メインクラス)にしているプレイヤーなら、ある程度鍛えていれば習得することは、そこまで難しいものではないだがエリィがそれを知るはずもない。

 

 

「シャァ……」

 

 

 炎の大蛇が唸る。

 カグナが使った”八ツ喰ラウ毘レノ大蛇(ヤツクビオロチ)”とは、日本神話に出てくる八つの首を持つ蛇を模倣したカグナの錬成魔法(ビルドスペル)だ。

 本来は8つの首があるのだが、そのうちの1本の首をである炎属性の” 紅魔武士(アカマムシ)”を今回は顕現させたのである。

 

「一匹残らず、焼き喰らえ”紅魔武士(アカマムシ)”!!」

 

 

 カグナは、顕現させた紅魔武士(アカマムシ)にザコブリンもろともエリアボスを喰らえと命じる。

 すると命令を理解したのか、贄の皿こと球体となったクイーン・ザコブリナとパラサイト・ラフレシア、そして哀れなザコブリンたちは口を大きく開きながら迫ってくる炎の大蛇に恐怖している。

 だが、身動きが取れないので抵抗何ぞできずに灼熱の大蛇に飲み込まれた。

 

 

「――――――!!!」

 

 

 ザコブリンたちの悲鳴が聞こえたが、飲み込まれてすぐに掻き消える。

 そしてダンジョンのボスは灰も残らずに消滅した。

 敵をすべて喰らった八ツ喰ラウ毘レノ大蛇(ヤツクビオロチ)紅魔武士(アカマムシ)は、そのままゆっくりと消えていき、広場には静寂だけが残った。

 

 

「…………ふぅ」

 

 

 一仕事終えたカグナは一息ついた。

 ダンジョンボスを倒したことにより、カグナ達はダンジョンクリアとなる。

 そしてカグナの眼の前には、ダンジョン管理用のメニューが表示されていた。

 

 




八ツ喰ラウ毘レノ大蛇(ヤツクビオロチ)
日本神話に出てくる8本首の蛇をモチーフにし作成した錬成魔法(ビルドスペル)
黒い球体を作り出し攻撃対象を拘束したあと、それぞれの蛇首を顕現させて丸のみさせる。
各蛇首で属性などが違うため、用途に合わせて蛇首を使い分ける。

紅魔武士(アカマムシ)
八ツ喰ラウ毘レノ大蛇(ヤツクビオロチ)の8本の首の一つで炎の大蛇である。
紅魔武士(アカマムシ)に喰われた者は、延々と炎に焼かれることとなり高耐久だったり耐性などがなければ、すぐに燃え尽きて灰となる。

また呼びだす蛇首の数に応じて、詠唱も長くなる。
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