星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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第二章
#33 ウサギ、御呼ばれする


(………帰りたい)

 

 

 カグナは緊張で強張っており、周辺の人々から浴びせられる圧力(プレッシャー)に胃がキリキリとなっている気がしている。

 カグナが居るのは冒険組合の建物ではなく、豪華豪勢としか言いようがない部屋の中で横に居るスサノと共に片膝を立て(こうべ)を垂れていた。

 カグナの左右には豪華な服装をした偉そうな雰囲気を出している人や、あきらかに一般兵とは思えない立派な鎧を身に着けている騎士達が立ち並んでいる。

 そしてカグナの眼の前には豪華な椅子があり、そこには一目で高価な生地で作られたとわかるドレスを身に着け頭には王冠のようなティアラを着けた金髪碧眼の女性が鎮座していた。

 

 

(わらわ)が、この国を統治している女王”オルヴィア・キャン・ガーヴァング”だ」

 

 

 自ら女王と名乗った女性は、膝をついているカグナとスサノを見下ろしている。

 そう……カグナ達は、ディ・フェウロ王国の王族が住む王城……その王座の間にいるのだ。

 

 

「そなたが、(くだん)の冒険者……カグナだな?」

 

「ひゃ、ひゃい!そ……そのとおり……です」

 

 

 王国の最高権力者に突然名前を呼ばれたカグナは緊張のあまり声が裏返った。

 その様子をみたオルヴィア女王はヤレヤレと言う感じに笑い、カグナにもっと楽にしろと伝えてくる。

 

 

「ふふふ、もっと楽にして構わん。肩に力が入りすぎては、まともに返事も出来まい?」

 

(む、無茶を言う……!!)

 

 

 つい最近までタダの一般社員だったのに、女王という会社の役員なんかよりも権力のある人の前に突然呼びだされたカグナには酷な話しであった。

 さて、なぜカグナが女王の前に謁見をしているのかというと……少し時間を遡る。

 

 

 *

 

 *

 

 *

 

 

 ザコブリン騒動から数日たった冒険組合の訓練所、そこには身体が訛らないように運動したり訓練をするために少しばかりの人影がある。

 そして訓練所の中央、カグナがカマッセルとの決闘に使われたリングの上にアリシア達がいた。

 

 

「……くッ」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 頬に汗をかき息が荒くなっている彼女たちの眼の前には杖を持っていないカグナが立っており、その背後には複数のバレーボールサイズの水の球が輪を描くように浮いていた。

 膝をついているアリシアとダリアンを見下ろしているカグナの首には、金色に輝く星が二つ付いているプレートがぶら下がっている。

 ザコブリン事件を解決したカグナは、冒険者として新人とされている銅一星から最上位である金二星まで昇格したのだ。

 本来はこのような飛び級昇格はあり得ないのだが、ザコブリン事件の解決および組合長であるスサノの母親という経歴から異議を唱える者は居らず、スサノからも特例中の特例だと告げられた。

 

 

「ほらほら、どうした?もっと上手く躱さないとヒドイ目にあうよ……ロランみたいにさ」

 

 

 カグナが目線でアリシア達の後ろの方を指した。

 二人の背後にはカグナの水球が腹に直撃したせいで伸びているロランと、ロランに治癒魔法をかけながら介護しているサラがいる。

 アリシア達はカグナの魔法を上手く対処するという特訓を、サラには負傷した人を治癒し続ける特訓をしているのだ。

 アリシアは左手に持った盾を構えなおし、肩で息をしているダリアンは立ち上がり再び構えをとる。

 

 

「カグナさん……次を、お願いします!!」

 

「こっちもだ……!!」

 

「わかった……水魔乱撃(アクィスランズ)!」

 

 

 アリシア達が特訓の再開を志願したのを聞き届けると、カグナが魔法をアリシア達に向かって再び放つ。

 水属性の魔法の球を複数飛ばす魔法であり、詠唱(チャージ)無しかつ魔杖も使わないので威力が落ちに落ちているので殺傷能力は、ほとんどない。

 しかし勢いよく飛んでくるので、まともに喰らえばぶっ飛ばされるうえ相当痛いであろう。

 だが、それが丁度いい。

 

 

「ハッ!クッ!!」

 

「ぐッ!くそッ!!」

 

 

 迫りくるカグナの水の魔球をアリシアとダリアンは、盾で防いだりギリギリで躱したりしてなんとか直撃を防いでいる。

 だが徐々に対処しきれなくなっていき、カグナの攻撃が掠り始めていく。

 

 

「ガッ……しまった!?」

 

 

 カグナの攻撃により、アリシアが左手に持っていた盾が弾き飛ばされる。

 アリシアが飛ばされた盾に意識を持っていかれてたのをカグナは見逃さなかった。

 

 

「意識がそれ過ぎてる、ぞ!」

 

「はッ………キャッ!!?」

 

 

 その結果、カグナの水球がアリシアに当たりまくり吹き飛ばされる。

 アリシアが地面に叩きつけられたのを見たカグナは一息ついて発射待機している水球を消した。

 

 

「さて、今日はこのくらいにしておこうか」

 

「ま……まだ大丈夫……です」

 

「いーや、これ以上は訓練にはならない。ただ疲れるだけで身に入らないからね」

 

 

 まだできるとアリシア達は言うが、ただ疲労が積み重なるだけで訓練にはならないだろう。

 そのため、カグナは今日は此処までにした方が良いと判断したのだ。

 アリシア達は、カグナの言葉に素直に従う。

 

 

「アリシアとダリアン、ロランはこのまま私の攻撃を余裕で躱せるようになれるようになったら次のステップだな」

 

「は……はい……」

 

「う、うっす……」

 

 

 カグナはアリシア達の改善点や今後の内容を告げる。

 しばらくは、この特訓を続けつつ徐々に別の内容の特訓も行うかと考えていた。

 そして次にサラへと特訓の内容を告げる。

 

 

「そしてサラは治癒魔法を使い続けてコツを身体に染みこませる。そうすることでスキルへの理解度や経験値が溜まって治癒魔法の発動が短縮されるはずだ」

 

「は、はい……」

 

「そして、いずれは浄化・再生・蘇生魔法まで使いこなせるようになるのが目標かな」

 

「そ、蘇生魔法ですか!?」

 

 

 サラが眼を点にして驚く、回復系統の魔法で蘇生魔法が最高難易度の魔法なのだから当然であろう。

 蘇生魔法とは字の如く、心肺停止した人を蘇生させる魔法のことである。

 ゲーム上のシステムとしてはHPが0になったプレイヤーやNPCを復活させる、主に回復役(ヒーラー)が扱う魔法だ。

 世界観の設定上では、肉体から離れた魂が蘇生可能状態であるのならば人体に戻して復活させる……と、メニューの世界観設定の紹介ページに記載されている。

 

 

「私に蘇生魔法が使えるようになるのでしょうか……カトリーナさんでさえ難しい魔法なのに……」

 

 

 サラの言うカトリーナは、金一星のカマッセルの仲間であり回復を担当している魔導士だ。

 彼女の実力は非常に高く、同じヒーラーの冒険者にとっても一種の憧れになっているとのこと。

 そんな彼女でも蘇生魔法は、かなり難しい魔法となっている。

 

 

「蘇生魔法は、私でも羊の召喚獣(ヒコナ)の手を借りないと成功率が低いんだ。でもサラは私と違って回復特化なのスタイルなのだから使えるようになってもらうよ」

 

「………でも」

 

 

 蘇生魔法には成功率があり、主役割(メインロール)がヒーラーでないと成功率は低いのだ。

 カグナはアタッカー兼サポーターなので、蘇生魔法は得意ではない。

 なのでヒーラーであるサラに、最終的には使いこなせるようになってもあろうとカグナは考えているのだ。

 

 

「まぁ、いきなり使えるようになれとは言わないよ。徐々に使える回復系の魔法を増やしていければいい。その最終目標が蘇生魔法だ」

 

「わ、わかりました……がんばります」

 

 

 頑張ると宣言したサラの顔を見たカグナは、無意識に笑顔になった。

 頑張っている子は、つい見守りたくなる……っと、心の奥底で思ってしまったのだろうか。

 この感情に関しては、カグナはまだ自覚はしていないようだが……。

 そんなとき、カグナ達の元に一人の男が近づいてきていた。

 

 

「随分と懐かしい特訓をしているな、母よ」

 

「ん?スサノか」

 

 

 冒険組合の建物の方からスサノが様子を見に来た。

 スサノはアリシア達の様子を見ると、どのようなことになっていたかを、すぐに理解する。

 

 

「その様子だと、そうとうコテンパンにされているようだなアリシア」

 

「お爺様……」

 

「母の特訓は実戦形式が殆どだ。まぁ、最初はキツイだろうが諦めずに続けていけば必ずお前たちの力となろう。その前例が俺なわけだしな」

 

 

 ハッハッハッと豪快に笑うスサノ。

 スサノもカグナの特訓を受けて強くなった一人なのだ。

 そのことを理解したアリシアは、カグナの特訓を受け続ける意志を固める。

 

 

「それで孫娘の様子を見に来たのか、スサノ?」

 

「それもあるが……俺の要件は其方だ」

 

「私?」

 

 

 冒険組合の組合長で多忙のはずのスサノがカグナの元に、わざわざ出向いて要件を伝えに来たとのことだ。

 その内容にカグナは驚くこととなる。

 

 

「母よ、これから俺と共に王城へ出向いてもらうぞ」

 

「え、なんで王城に?」

 

「俺と母に王城から召集がかかった。女王直々の指名だ」

 

「え……えぇぇぇ!!?」

 

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