星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
「王城……か」
カグナはスサノに連れられてディ・フェウロ王国の王城へと出向いていた。
立派な城門をくぐり城の入り口までの道を歩いている、王都の何処からでも見える大きな城だ。
「来たことがあるのか?」
「昔に一度だけ、ね」
一緒に歩いているスサノに問われる。
カグナはゲームだったころに、イベントの関係で王城には入ったことがあるのだが、その時は只のNPCとの会話イベントしかなかったわけだが……。
「しかし、なんでまた呼び出しなんか……」
「十中八九、この前の件だろう」
「あのザコブリン事件のことか?」
ザコブリンの大軍による王都襲撃事件、およびその原因となったダンジョンへの対処……これらはすべてカグナの手によって解決された。
冒険組合の長としてスサノは、ことの顛末を報告する義務がある。
つまりスサノの報告内容をみた女王がカグナに興味を持ったとのことだ。
「立場のある人との謁見って苦手なんだけどな……断ることって……」
「できるわけないだろう。相手は、この国の女王だぞ?」
「だよね……」
カグナは、なんとか女王と会うのを回避したかったが無理な相談である。
国のトップからの招集を無視することなんてできるはずもなく、嫌がったとしてもスサノに掴まれ連れてこられたであろう。
カグナとて、それが分らぬほどバカでもない……。
しぶしぶ城の中へと歩いていった。
*
*
*
そして時は戻り、玉座の間。
金髪碧眼の女性が玉座に座りカグナのことを見下ろす。
どことなく顔立ちがアリシアに似ている気がするが、視線から感じる雰囲気は全く違う。
カグナの姿を見たオルヴィア女王は、ぽつりと呟く。
「話には聞いていたが……想像よりも幼い見た目だな」
「あ、あははは……」
女王に全身をマジマジと見つめられたカグナは愛想笑いをするしかなかった。
左右にはお偉いさんが多数、正面には王国のトップという空間のど真ん中に座している……今だ一般人メンタルが残っているカグナにとって居心地が悪いなんてものではない、ストレスでお腹を壊しそうである。
カグナのお腹がキリキリ言っているのを察したのか、スサノが女王に二人を呼びだした理由を聞いた。
「陛下、此度はどのようなご用件で我らを呼びしたのでしょうか?」
「あぁ、この前の魔物の軍勢による王都襲撃未遂事件について報告書は読んだぞ」
報告書とは、スサノが城に提出した先日のザコブリンの大軍の襲撃に関するモノだ。
事件の詳細、被害の内容、原因となったダンジョンへの対応が事細かく書いたらしい……無論、カグナのこともだ。
カグナの活躍は多くの人が目撃しているため書かないわけにいかず、細かい所は省きスサノが程よい内容にしてある。
それを読んだオルヴィアがカグナに興味を持ったのだ。
「報告書に書いてあった冒険者について興味が湧いてな……ゆえに直接会ってみたくなった。其方の隣に居るのが例の冒険者だな?聞けば、お前の母親らしいな?」
「はい、その通りでございます」
女王の問いにスサノが素直に答え、それを聞いた周りの者たちがざわつき始めた。
静かに佇んでいる長い黒髪を一つに纏めた狐耳の女騎士を除いて……。
「アレが冒険組合長の母親……だと?」
「まだ少女ではないか」
「いや見た目で判断するべきではない。見た目よりも実年齢が遥かに高い者も居るからな」
「しかし二人の人種が違うではないか……本当に親子か?」
スサノが言ったことを信じられないという声が多数だった。
無理もない……スサノの見た目は初老の男だが、カグナの見た目は10代半ばの少女である。
双方の見た目が違いすぎる、むしろ祖父と孫娘といった方が信じられるであろう。
「血の繋がった親子ではなく、育ての親という意味での母親でございます」
「うむ、なるほど」
二人の人種が違うというヤジの声にスサノが反応し、血の繋がった親子ではなく義理の親子であると弁明した。
スサノの言葉を聞いた女王と周りの人々は、その内容に一応納得する。
親のいない子供を別の大人が親代わりに面倒を見るということは、珍しいことではないのだから……。
「さて、冒険者カグナよ」
「は、はい!!」
「其方の活躍のおかげで、この王都は救われた。感謝する」
「い、いえ……私は当然のことをしたまでで……」
「当然か……まぁ、よかろう」
オルヴィアに話しかけられたカグナは思わず声が裏返ったが、オルヴィアは気にせずに感謝の言葉を継げる。
女王の感謝の言葉に対して、カグナは王都が危なかったので戦ったのは当然だと返した。
実際にカグナが手を出さなければ、もっと乱戦となり被害が増えていたのは目に見えている。
このことにカグナは至極当然のことをしたまでだと思っており、なにも特別なことではないと考えていたのだ。
カグナの言葉を聞いた女王は何か思うところがあるのか、玉座に深く座り込む。
そんな女王の姿を見たカグナは、緊張で強張った身体で何とか声を出して女王へ質問をした。
「あ、あの……」
「ん、なんだ?」
「私が、ここに呼ばれた理由は一体……」
「理由か?妾が其方の顔を一目見たかった……ただ、それだけよ」
「それだけ?」
「それだけだ」
「えぇ……」
カグナを呼びだした理由は、カグナの顔姿を一目見ることだとオルヴィアはあっさりとした口調で答えた。
カグナは唖然とした……一般人メンタルにとって居心地がイイと感じない場所に呼ばれた理由が、顔がみたいなのだからだ。
どう言葉にすればいいのか分からずに、カグナは困る。
もっとも向こうからすれば様々な問題を解決した人物の顔を見る見せるというのは大いに意味のあることなのだが、カグナはそこら辺を理解していない。
「なんだ、不服か?そうだな……其方は何か言うことはないのか、アマテル魔法騎士団長?」
「…………アマテル」
オルヴィアは部屋の壁際に佇んでいた黒髪狐耳の女騎士に問いかけた………スサノの妹にしてカグナの子の一人、アマテルだ。
カグナが横目でアマテルの姿を見る。
その姿はカグナの記憶に残っている小さな少女の姿よりも、麗しく成長している姿であった。
アマテルは女王の言葉に反応して、カグナの方を一瞬だけ見ると視線を戻した。
「私から何も………いえ、一つ言うとすれば。我が騎士団が遠征で王都を離れている時に起きた危機を助けていただき、感謝しております…………以上です」
「…………」
静かに、そして淡々と話すアマテル……その口調は感情が籠っていない業務的なトーンであった。
だがカグナは確かに感じ取っていた、一瞬だけ目が合ったアマテルの瞳には何か強い感情が籠っていたことのを……そして、それが好意的なモノではないことを……。
「………はぁ、真面目め」
アマテルの対応を見たオルヴィア女王は軽くため息をつきボソッと呟く。
「あぁ、騎士団で一つ思い出した……そういえば騎士団が遠征で討伐した盗賊団の一部が王都近くに逃げて来たらしいな。それを捕縛したのも其方だったか……なぁ、エディオール?」
何かを思い出したオルヴィアは、すぐ横で待機しているメガネをかけた青年の名前を呼ぶ。
オルヴィアと同じ金髪碧眼で若いイケメンだ。
カグナ達の横で整列している貴族や騎士たちとは違い女王のすぐ横に立っていることから、それなりの地位の役職の人だと思われる。
オルヴィアが聞いてきた内容は、カグナが王都に入る前にアリシア達と共に倒して捕まえた盗人たちのことだった。
オルヴィアに問われたエディオールは、かけていたメガネを直しつつ静かに答える。
「えぇ、組合長からの別の報告によればダンジョンから帰還した冒険者たちを襲い戦利品を奪取して逃走していた者たちだと……その者たちを捕縛したのもカグナ殿であるとも」
「ふむ……であるならば、先日の魔物による王都襲撃とは別の報酬を渡す必要があるな」
オルヴィアの口から魔物王都襲撃事件とは別の報酬と出た時、カグナを含め周りの者たちもざわつき始める。
「別の報酬……?」
「母よ。盗賊などへの対処は、本来は騎士団の仕事だ……仕方がない状況だったとはいえ、本来は冒険者に盗賊などの相手をする義務はない」
「なるほど……」
スサノが言うには、冒険者とは本来は魔物討伐や一般人にとって危険な場所での依頼、そしてダンジョンの攻略が主な仕事である。
盗賊などの危険な者たち……つまり、主に人間相手への対処は冒険者への協力依頼がないかぎり国に属している騎士団の仕事とのことだ。
早い話しが、王国では騎士が現実世界の警察と同じように犯罪者を取り締まる立場でもあるのだ。
つまりカグナは騎士団が捕まえるはずの、ならず者たちを倒したことが警察の逮捕協力行為にあたるとのこと。
その謝礼を女王自ら出すと言ってきたのだ。
その行為に思わず貴族と思わしき中年の男が、オルヴィアに話しかける。
「よろしいのですか?たかが冒険者相手に、陛下がそこまでしなくとも……」
「何を言うかと思えば……我が王国のために動いたのだ。謝礼の一つや二つ追加するくらい問題ない。それともなにか、妾の言の葉に不服があると申すか?」
「い、いえ!滅相もございませぬ!!」
オルヴィアの言葉の圧に、あっさり負けた貴族の男は口と閉ざす。
それを見た他の者たちも異を唱えることはしなかった。
「さて、冒険者カグナとスサノ組合長よ。先ほどの件でも話がある……二人とも応接室で待て」
「承知しました、女王陛下」
カグナとスサノは、オルヴィアに一礼して部屋を出る。
部屋の扉が閉まり廊下にスサノと二人だけになると、ピンッと張った緊張の糸が緩んだのかカグナは大きくため息をつく。
「はぁ~~~、緊張した……」
「まったく……陛下と謁見するだけなのに、なんてザマだ」
「無茶言うな、女王なんていう大権力者との謁見なんて経験ないんだぞ!しかもあの人なんというか
「金二星の冒険者となったのだから、これからもっと増えるだろう。依頼の内容によっては女王自ら指名し言い渡すこともある」
「げぇ……マジか……」
通常よりも危険だったり対処の優先度が高い任務などは王国から直々に依頼が冒険組合に来るらしい。
高難易度ゆえにランクの高い冒険者、とくに金星級に回されるとスサノは言う。
その際に女王などから直々に依頼をされることもあるのだとか。
つまりオルヴィアがカグナに何かの依頼を命じるために、また呼びだすことがあるかもしれないということだ。
またあのプレッシャーを浴びなければならないのかとカグナが考えていると、玉座の間の扉が開き部屋に居た者たちがぞろぞろと出てきた。
その中にはアマテルの姿もあり、彼女の姿を見つけたカグナは声をかける。
「ア、アマテル!」
カグナに呼び止められたアマテルは、表情を変えずに振り返る。
そして声に感情を乗せずに言葉を返してきた。
「私から言うべきことは先ほど申しました。これ以上、此処で言うことはありません」
「え?」
「仕事がありますゆえ、私はこれにて」
「え、ちょ!待って!アマテル!!」
アマテルは、カグナの言葉に耳を傾けずにそのまま廊下を歩いていき、部下と思わしき女性がカグナのことを見つつ困惑しながらアマテルを追いかけていった。
カグナの虚空を掴んでいた手の力が抜けて、だらんと下がっていく。
見かねたスサノがカグナの肩に手を置き落ち着かせる。
「落ち着け」
「……スサノ」
「アマテルと落ち着いて話すのは、まだ今ではない。それにアイツは此処では私情を出さん」
スサノの言葉を聞き、カグナはアマテルが姿を消した廊下を見つめる。
母親であるカグナのことを憎んでいるはずのアマテルが、実際にカグナと出会ったのに怒りの感情を見せずに話しかけてきたのは仕事で公私混同させないためだ。
「では行くぞ」
「………わかった」
カグナは、スサノと共に応接室へと向かった。
*
*
*
玉座の間から少し離れた場所にある応接室にあるソファにカグナとスサノが座っていた。
家具や装飾は豪勢であるが先ほどまでいた玉座の間とは異なり、少人数で使うことを前提とした部屋である。
しばらく待っていると部屋の扉が開き、オルヴィア女王とエディオールと呼ばれた青年が入ってきた。
「ふむ、待たせたな」
カグナ達と向かい合うようにオルヴィアはソファへと腰を掛け、エディオールは彼女の後ろに立つ。
ソファに座ったオルヴィアは玉座に座っていた時と違い、砕けた姿勢でソファに座っている。
ソファの背もたれに腕を乗せ脚は組み、頭を数回揺らして首をポキポキと鳴らしてた……先ほどまでの威厳がどこへやらという感じであった。
「母上、つけっぱなしですよ」
「ん?あぁ……」
エディオールがオルヴィアのことを母と呼び、何かを指摘する……どうやらエディオールはオルヴィアの息子のようだ。
突然の女王への母上呼びにカグナが驚いていると、オルヴィアは息子の指摘を聞くと頭にかぶっていたティアラを外す。
「あ、あの……女王陛下?」
「あぁ、
「へ、身内だけ……?」
オルヴィアの言葉をカグナは理解しきれなかった。
身内しかいないと言われたが応接室に居る身内とは二組いるはずである、なのでカグナは聞き間違いかと思ったのだ。
だが、そんなカグナの表情を読み取ったのか、オルヴィアはヤレヤレと言わんばかりの顔で続けた。
「なんだ、聞いておらんのか?まぁ、良い……それも含めて本題に入るとしようかスサノ冒険組合長、いや……」
オルヴィアがニヤリと笑いながら、スサノに向かって言い放った言葉にカグナは耳を疑った。
「スサノ
「……………は?」