星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#37 ウサギ、召喚()びだす

「それで、どうして月光草の花蜜が欲しいんです?」

 

「はい……実はサンディヒル王国の姫は、お身体が弱く寝床に就いている日々が多いのです」

 

「なるほど、そのお姫様のための薬の材料に月光草の花蜜が必要というわけなのですね?」

 

「はい、そのとおりです」

 

 

 ハウラの要件とは、病弱な姫様のために月光草の花蜜が欲しいとのことだ。

 月光草の花蜜と言うアイテムは、ポーションなどの回復アイテムを作成する材料としてよく使われる。

 そのためかゲーム内での設定で、病気を治すための薬の材料としても使われるとされておりゲームでもハウラの要件と同じような内容のクエストがある。

 まさか現実でも同じ内容の問題が飛び込んでくるとはカグナも思っていなかったであろう。

 そんなことを考えていたカグナの横にいるスサノが、ハウラに質問をする。

 

 

「今のサンディヒル王国の国王の人なりは知っている。かの王ならば花蜜は多めに確保しているはずだが……」

 

「それが先日、モンスターの襲撃によって我が国の兵士たちの多くが負傷いたしまして……その治療のためにと、姫様は自分の薬に使う花蜜を分け与えたのです」

 

「ほぉ」

 

 

 スサノはサンディヒル王国の先代の王とケンカ友達だったとかで、その息子であろう現王のことも知っている。

 つまり現王の性格なども把握しており、スサノの言葉から物資等は余裕をもって準備している人のようだ。

 ましてや身内のためのものなら尚更余裕をもっておくであろうとスサノは考えている。

 そのためスサノは備蓄が不足したことに疑問を持ったのだが、どうやらモンスターとの大規模な戦闘があり負傷した兵士たちの治療のためのポーションの材料にしたようだ。

 

 

「行商などから買い足して不足を補う予定でしたが、どうもここしばらく不作らしくて数揃えられなかったと……」

 

「なるほど、それで俺を頼った……と」

 

「なんで他国に居るスサノ(おまえ)を頼ったんだ?」

 

「大方、先代の王……つまり現王の父親が、何かあったら俺を頼れとでも言ったのであろう。酒の席でそんなことを言った記憶があるからな……」

 

 

 しみじみとスサノが語る、昔のことでも思い出したのだろうか。

 喧嘩するほど仲がよかったようだ。

 

 

「ところで、手元にいくつ持ってる?」

 

「う~ん、いくつ残ってたかな……」

 

 

 スサノがカグナに手元にいくつあるかと聞いてきた。

 カグナは本の形をしたメニュー画面を開き、手持ちのアイテム欄から月光草の花蜜の名前を探す。

 幸いアイテム欄に表示されているのを見つけた……が、その個数はカグナが満足できる内容ではなかった。

 

 

「ふたつ……か。こんなに少なかったっけ?」

 

『かつて主がポーションを作る際に、多量に消費しておりました』

 

「え……まじ?」

 

『はい』

 

 

 予想以上に数が少なかったことにカグナは驚いている。

 それを見ていたサポートAIのアイが、少ない原因を教えてくれた。

 どうやら、まだゲームだったころに大量に消費していたようだ。

 

 

「う~ん、マイホームが万全だったら畑で栽培していたんだけどな……」

 

 

 カグナは、かつて活動拠点としていたマイホームの畑で植物系アイテムを栽培していた。

 その中には月光草も含まれており、月光草のように希少な植物アイテムも栽培で増やせてたのでプレイヤーたちは特に苦労することはなかった。

 だが廃墟とかしたマイホームでは、畑も荒れ放題なので月光草どころか植物アイテムなど残っているわけもなく、カグナも離れるときにスルーしている。

 そして現実と化した、この世界ではプレイヤー以外に簡単に栽培できるわけもなく希少価値が上がっているのだ。

 なにか方法はないかとカグナは考えていると、とあることを思い出す。

 

 

「あ、そうだ」

 

「ん、妙案でも思いついたか?」

 

「ミズハが居た」

 

 

 カグナが思い出したのは、自身が契約した者の名前だ。

 ミズハは数ある召喚獣たちの中でも特殊な権能を持った個体である。

 その権能と言うのが、”物々交換”である。

 ゲームの仕様に下位のアイテム数個を上位のアイテムと交換するシステムがあるが、ミズハはそのアイテム交換をすることができるのだ。

 それも街のNPCが行う特定のアイテムのみの交換と異なりカグナが一度でも手にしたことのあるアイテムなら交換条件をクリアすることと交換上限までなら何でも交換ができるという権能である。

 これでとても希少なアイテムや、レア度の高い周回アイテムも用意できた。

 無論、月光草の花蜜も例外ではない。

 

 

「ミズハか……たしかにアレならば対価で交換してくれるだろうが……大丈夫か?」

 

「大丈夫だって、それじゃ召喚()ぶよ」

 

 

 ミズハの名を聞いたスサノは、すぐに理解した。

 たしかに彼女ならば問題を解決できるであろうと、だが別の不安が頭をよぎっている。

 そんなスサノを横目にカグナは、召喚魔法の準備を行っていた。

 

 

「”召喚(サモンズ) ミズハ”!!」

 

 

 カグナの目の前に召喚魔法の魔法陣が展開され、まばゆい光が放たれる。

 そして光が収まると、魔法陣に一つの人影が現れた。

 それは白い髪の毛は肩に届くかどうかぐらいの長さに揃えて所々黒いメッシュがあり、頭の上にはネコ科のような耳が生え、可愛らしいく若干幼めなトラのケモノ顔。

 巫女服を着用し少し膨らんだ胸部の襟の部分から若干胸毛がはみ出ている虎系の人獣種(ビーストマン)だ。

 

 

「…………あれ、ウズメ?」

 

「はい、お久しぶりでございます。カグナ様」

 

 

 召喚に応じたのはミズハではなく、ミズハの世話係であるウズメであった。

 ウズメもカグナの召喚獣の一人ではあるが、この場合は違う。

 カグナは本来召喚されるはずのミズハではなく、ウズメが召喚されたことに困惑をしている。

 本来ならば、このような召喚事故は起きないからだ。

 

 

「え、なんでウズメが出て来た?私はミズハを召喚()んだはずなのに……」

 

「すいません。その……ミズハ様から、言伝(ことづて)を預かっております」

 

「ことづて?」

 

「はい、えっと……”我を召喚()びたければ、まずは直接来い。話はそれからだ”……とのことです」

 

「な、な、なんだってぇぇ!!!?」

 

 

 ウズメからの伝えられたミズハの伝言を聞いたカグナは驚愕した。

 なんとまさかの召喚拒否である。

 さすがのカグナもこんなことは初めてだ。

 

 

「当てが外れたな……薄々こうなるだろうとは、思っていたが」

 

「うぅ……ミズハなら簡単に月光草の花蜜を用意できるはずだったんだが……」

 

「なにやら込み入ったご様子ですね、申し訳ございません」

 

「気にするな、悪いのはこっちの方だろうからな」

 

 

 まさかの結果に肩を落としているカグナの様子を見て、ウズメは思わず誤ってしまった。

 こういう結果になることを予測していたのか、スサノはウズメにお前は悪くないとフォローを入れている。

 スサノもミズハとは顔見知りであるし性格なども熟知している、そのため他の召喚獣達と違って100年ぶりのカグナの召喚に素直に応じるとは思っていなかったのだ。

 

 

「ミズハが当てにならないとなると……どうしよう」

 

「まだ一人当てがあるだろ?」

 

「…………あの()を呼べと?」

 

「戻ってきてから一度も呼んでいないのだろ?いい加減呼んでもいいと思うが……後が怖いしな」

 

「………………」

 

 

 スサノの言葉に、カグナは冷や汗がダラダラと湧き出て来た。

 スサノが言う者にカグナはもちろん心当たりがある……あるが、少々性格に難があるのだ。

 そのためカグナは、その者を召喚することに少し躊躇いがある。

 だが今回の問題を解決するすべを有しているのもまた事実。

 

 

「”召喚(サモンズ)”………”キヨノヒメ”!!」

 

 

 カグナは再び召喚魔法を使用し、再度展開された魔法陣から眩い光が放たれると召喚の影響で土煙が立ち上がり、その中に一つの気配が現れる。

 すると土煙の中から太く長いナニかが勢いよく飛び出し、カグナの身体に巻き付いてきた!!

 

 

「ッ!?」

 

「カグナさん!?」

 

 

 突然の出来事にスサノ以外が驚き臨戦態勢をとるが、スサノはただ静観している。

 カグナに巻き付いたソレは、力が強く簡単に降るほどけるものではない。

 よくみると巻き付いたソレには、鱗がびっしりと生えており全体的にまだら模様だ。

 滑らかな光沢があり、まるで大蛇の尾である。

 カグナが巻き付いてきた尾の中でもがいていると、召喚の際に生じた土煙の中から悲鳴のような雄たけびのような声が聞こえてきた。

 

 

「あ……あぁぁ………あぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁ!!!!」

 

 

 土埃が収まり始めると中から一人の女性の姿が現れる。

 長い髪の毛に目元を布を巻きつけて目隠しをしていて、妖美な雰囲気を(かも)し出している。

 そして上半身は人間の女性の姿だが、下半身が大きな蛇の尾になっている……いわゆるラミア体型というやつだ。

 その尻尾がカグナの元に伸びて巻き付いている。

 彼女が、カグナの召喚魔法によって呼び出された召喚獣ことキヨノヒメである。

 

 

「カぁぁぁグナぁぁぁさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁんぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

 キヨノヒメはカグナに巻き付いている蛇の尾を手元まで勢いよく引き寄せ、そのままカグナの頭を抱き寄せ自身の胸に押し付けた。

 

 

「キ…キヨノ………ちょっ、まッ」

 

「カグナ様!カグナ様!!カグナさぁまぁぁ!!!」

 

 

 キヨノヒメはカグナの静止を聞き入れず、抱き寄せたカグナの感触を堪能している様子だ。

 涎が垂れている。

 

 

「ようやく、ようやく、よぉ~~~やく!このキヨめを、お呼びにいただきましたね!わたくし、首と尾を長く……ながぁ~くしてお待ちしておりましたぁ!!ハァハァ……どのようなご用件でもわたくしめにおまかせくださいまし!!サクっと究明!ぱぱっと解決して残りは主従親睦親愛を深める時間といたしましょ!そうしましょう!!……というか、どうしてどぉ~して!わたくしめよりも、あぁんの老猿鍛冶師(ジジイ)を先に呼んだのですか!?わたくし、わたくしずっとお待ち申していましたのに!!今か今かとずっとずっとずっとずっとお待ちしていたんですよ!ひどくありませんか!?わたくし、放置プレイは趣味ではないのですよぉ!!あ、いや、でも待たされれば待たされるほど、私の(なか)の炎が燃えに燃え上がるのも、また事実なのですが……。いえ、やっぱりすぐに会いとうございました!!カグナさまぁ!!クンクン……あ、イイ匂い……やっば涎垂れて来た。ちょっとだけ、ちょっとだけいいですよね?さきっぽだけ味見……いえ、確認するだけです。だけですから……ね?ハァハァ、ではいただきま『フシャッ!!!』あッ痛ッ!!!!」

 

 

 人様に見せられないような表情をし始めたキヨノヒメの顔に向かって、サポートAIであるアイが思いっ切りタックルを喰らわせた。

 タックルを喰らったキヨノヒメは、その勢いにより大きく仰け反りカグナの頭をホールドしていた腕を離す。

 自由になったカグナは押し付けられていたキヨノヒメの豊満な部位から、すぐさま顔を離してまともな呼吸のありがたみを知るのである。

 キヨノヒメは体勢を立て直すと、アイがぶつかってきたを頬を摩りながらアイを怒鳴りつけた。

 

 

「な、な、なにしやがるんですか!この黒毛玉は!!!」

 

『お黙りください!我が主を速やかに開放して、用件だけ済ませたらさっさとお帰りください!!』

 

「なんですとぉ!!?」

 

『なんですか!!?』

 

 

 フニャー!フシャー!!と、アイとキヨノヒメが言い争っている……まるで猫と蛇が威嚇しあっているような光景だ。

 キヨノヒメがアイと言い争っている間に、カグナは尾の巻き付けが緩くなった隙をみて何とか脱出を試みる。

 呆気に取られていたアリシア達の手を借りて何とか脱出に成功した。

 アイと不毛な争いをしているキヨノヒメを見ていたスサノは咳払いをしつつキヨノヒメを宥めて本題に入ろうとしている。

 

 

「そろそろいいか、キヨノヒメ?」

 

「おや、これはスサノさん。お久しぶりですね……ん?」

 

 

 スサノに呼び止められたキヨノヒメが、ようやく周りにカグナ以外の人々がおり皆が困惑の表情でキヨノヒメのことを見ていたことに気づく。

 

 

「…………あぁ~、なるほど……こほん」

 

 

 状況を理解した彼女は身なりを整え、キヨノヒメの締め付けによりボロボロになったカグナが皆に彼女のことを紹介するのであった。

 

 

「い、いろいろと遅くなったけど紹介するね……この娘は私の召喚獣でキヨノヒメって言うんだ……主に錬成や魔法道具の作成とかを担当しているんだ……」

 

「お初にお目にかかります皆々様。我が主カグナ様より、ご紹介に与りましたキヨノヒメと申します。以後お見知りおきを」

 

「あ、はい」

 

 

 先ほどまでとは、まるで別人のような雰囲気で喋りだすキヨノヒメにアリシア達はさらに困惑する。

 そんなアリシア達のことは見なかった振りをしているキヨノヒメがカグナに召喚理由を問いだす。

 ただ若干まだ鼻息が荒めだ……。

 

 

「それではカグナ様、此度のご用件はなんでしょうか?」

 

「やっと本題に入れる。キヨノヒメ、月光草の花蜜を持ってない?余ってたら譲ってほしいんだけど」

 

「月光草の花蜜……ですか?」

 

 

 カグナはキヨノヒメに、カクカクシカジかと説明をする。

 それを聞いたキヨノヒメは、すぐに理解した。

 

 

「ふむ、なるほど……そういう事情なのですね、わかりました」

 

「で、では!」

 

「申し訳ございません。わたくしが務めている白蛇堂でも月光草の花蜜の在庫に余裕はなく、お譲りすることができないのです」

 

「そ、そんな……」

 

 

 キヨノヒメに期待を持ったハウラが喜びかけたが、残念ながらそうはいかなかった。

 そんな彼女の様子を見たキヨノヒメは、ハウラに助け舟をだす。

 

 

「お譲りすることは出来ません……ですが」

 

「ですが?」

 

「月光草が自生している場所は存じています」

 

「自生している場所?」

 

 

 キヨノヒメの自生している場所という言葉を聞いたスサノとカグナは、すぐに理解した。

 他の者たちは、まだ理解していない様子。

 

 

「なるほど、手に入らないのなら自ら取りに行くしかないというわけだな」

 

「はい。月光草は満月の光を浴びることで咲く花です。そして満開の時に採取する蜜こそが、月光草の花蜜となります」

 

 

 キヨノヒメの説明の通り、月光草は夜に咲く花である。

 満月の光の下で花開くときに採取できる蜜こそが月光草の花蜜として扱われている。

 つまり採取するのに時間制限があるので希少性があるというわけだ。

 ならば、その時間に採取しに行けば良いということらしい。

 

 

「サンディヒル王国とのことでしたね、なら丁度いい」

 

「丁度いいとは?」

 

「月光草の自生している場所の一つが、まさにサンディヒル王国の近くを徘徊しておりますゆえ」

 

「砂漠を徘徊?……ま、まさか」

 

 

 カグナはイヤな予感を覚える、砂漠を徘徊しているというワードに心当たりがあるからだ。

 キヨノヒメは、構わず続きを言う。

 

 

「えぇ、月光草の数少ない自生地の一つが、この南方(サウシュウ)大陸の砂漠を徘徊し八大迷宮巨獣の一つに数えられるダンジョン――”シロカブリ”……その背中にある、古城の中です」

 

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