星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#40 ウサギ、シロカブリへと向かう

「えッ!あのシロカブリに、王子が一人で行ったんですか!!?」

 

「うむ、家族思いな息子でな……兄弟で一番上のせいか、弟妹たちのことを大層可愛がってるいる。とくに病弱なシェノラのことは一番に気にかけていてな」

 

「だから自分で月光草を取りに行くためにシロカブリへ?」

 

「そうだ」

 

「なんて無茶な、普通の人には危険すぎますよ!?」

 

 

 シャムスダラの言葉を聞いて、カグナはサンディヒル王国の国王の前だというのに声を荒げてしまった。

 しかしそれぐらい一般人には危険な行為なのである。

 カグナの荒げた声を聴いた横で聞いたアリシアが問いかけて来た。

 

 

「そんなに危ないのですか?」

 

「前にも言ったけど、シロカブリは雲を突き抜けるくらいの高さだ。たどり着くためにはシロカブリの脚をよじ登らないといけない。数百メートルの高さがある脚をね」

 

「でもカグナさんは登りきったことがあるんですよね?」

 

「昔に、ね。それだって私が冒険者だからってこともあるんだよ。それに危険なのは何も脚登りだけじゃないんだ……」

 

 

 シロカブリは見た目が巨大なヤドカリであるが、目的地である背負った古城まではシロカブリの長くて高い脚を登らなければならない。

 まさにロッククライミングならぬ、レッグクライミングである……それも数百メートルの。

 ゲームだったころ、当時のカグナはまだランクが低かったがスタミナ管理やアイテムを駆使して登り切っただけだ。

 後から登るためのコツを聞いたが再び登ろうという気は、あまり起きなかった……すでに攻略済みのダンジョンでもあったから。

 

 

「シャルク王子では、無理と?」

 

「うーん、一般人……あ、いや王子だった。冒険者ではない人でも、時間をかければ登れないことはないと思いたいけど、それでも危険であることには変わりないんだ」

 

「一般人でも登れるきれるのかよ」

 

「文字通り死ぬ気でやれば、ね」

 

 

 サラが冒険者ではないシャルク王子では無理なのかと聞いてきたが、実際は絶対に無理というわけではなくダリアンは一般人でも登れると聞いて少し落胆した様子。

 無理ではないとは言ったが、死ぬほど危険であるということで文字通り命を懸ければ不可能ではない、たぶんきっと。

 だがシャムスダラの話を聞く限りシャルク王子は、それでも向かったのだろう。

 愛すべき家族のため、妹のために。

 

 

「弟妹や仲間のためになら、何かと無茶をする息子でな……余も少し困ってるのだ」

 

「シャルク王子は昔からそうなんです……しかし、いくらシェノラ様のためにとはいえ、シロカブリの元に行くのは……」

 

「あぁ、まったくだ」

 

(家族のために……か)

 

 

 シャムスダラとハウラが困ったように第一王子のことを言う。

 それを聞いていたカグナは家族のために危険を顧みず行動を起こした王子のことを勇気があると思うべきか無謀と思うべきかと少し考えていると、部屋の扉が開く音が聞こえ全員が扉の方へと顔を向けた。

 そこには十代半ばと思わしき褐色肌の少女が姿が立っており、身に着けている衣服の生地から高級品であることがわかる。

 少女は部屋に入ってくると、一目散にシャムスダラの元へと駆け寄っていった。

 

 

「お父様!」

 

「シェノラ!?体調は大丈夫なのか!?」

 

 

 シャムスダラのことを、お父様と呼ぶ少女がシャムスダラの娘であるシェノラ王女だ。

 見た目は可愛らしい顔をしているが、病弱であるため病床に伏せていることが多いと言われていた通り細い身体をしている。

 

 

「はい。それよりも先ほどの話は本当ですか?シャルク兄様が、私のために……」

 

 

 どうやらカグナ達との会話が部屋の外まで響いていたらしいく、それをシェノラは聞いていたのだ。

 兄であるシャルク王子が妹のために危険を冒していることも……。

 

 

「部屋の外で聞いていたのか……あぁ、本当だ」

 

「どうして……そのような危険なことを……」

 

「お前のためだ」

 

「わたし……のため?」

 

「お前も知っているだろ、アヤツが家族のためになら無茶をするのを」

 

「…………はい」

 

 

 シェノラは思い当たることがあるのか、父親の言葉に同意をした。

 それが自分のためであるということからか罪悪感を感じているようで、表情が少し暗い。

 

 

「お前が兄を心配しているのはわかっている……だが安心しろ」

 

「え?」

 

「此処に居る者たちは、ディ・フェウロ王国から来た冒険者だ。しかも、このカグナ殿は金二星の冒険者だ」

 

「あはは、はじめまして」

 

 

 いきなりシャムスダラに紹介されて、カグナは思わず頭をかきながら挨拶をする。

 そして首からぶら下げていた星が二つ刻まれた金色のプレートを見せ、カグナが数ある冒険者たちの中でも上澄みとなる金二星冒険者である証拠をシェノラに提示した。

 それを見たシェノラも、思わず頭を下げて返事を返す。

 

 

「この者達に月光草の花蜜の採取とともに、シャルクのことも頼むつもりだ」

 

「シャルク兄様を!?」

 

「あぁ……シャルクのことだ、くたばっているとは思わないがついでにな」

 

 

 シャムスダラは、先走った息子のことをカグナに任せると言ってきた。

 それを聞いたカグナは、えぇ!?と一瞬思ったが声に出すことはせず表情も変えないように我慢する。

 とはいえ目的地は同じなので、ついでに確認するくらいは特に問題ないであろう。

 なのでカグナも最初は驚きはしたものの、ついでに様子を見るくらいは良いだろうと考えはじめた。

 

 

『主、一つ重大なことをお忘れでありませんか?』

 

「アイ、どうした……重大なこと?」

 

 

 カグナが、王子の様子をついでに確認することを考えていたらサポートAIのアイが重要なことを忘れていないかと確認をしてくる。

 重要なことと聞いても、カグナは何のことなのかイマイチわからなかった……。

 カグナがなんのことだと思っていることを察したアイは追加で言ってくる。

 

 

『目的の月光草ですが、蜜を採取するための条件は満月の夜であることです』

 

「うん、そうだけど……それが?」

 

『満月の夜は、()()です』

 

「………え、マジ?」

 

『はい』

 

「明日じゃなくて?」

 

『今夜です』

 

 

 カグナはアイの言葉を聞いて言葉が詰まる。

 月光草は満月の夜に花が咲き、その時に取れる花蜜が重要となるのだから。

 そして、その満月の夜が今夜だった。

 

 

「それって急がないとマズいんじゃないですか!?」

 

「うん、マズいね。だから私も今出発しないと間に合わなくなる」

 

「だったら俺達も出発の準備を……」

 

「いや、今回は私だけで行くよ」

 

「え?」

 

 

 今夜が満月と聞いたダリアン達が出発の準備をしようとしたとき、カグナが制止した。

 

 

「悪いけど、これはスピード勝負だ。今夜までにシロカブリの古城までいかないといけない」

 

「私たちは足手まとい……ですか」

 

「はっきり言うと、そうだね。余裕がある時なら皆で挑戦してもいい……けど、タイムリミットは今夜。残念だけど、悠長にしていられない」

 

 

 時間がないとのことで、慣れていないアリシア達を一緒に連れていくと遅れる可能性がある。

 カグナが単独で行こうとした理由であり、そのことにアリシアは気づいていた。

 

 

「…………わかりました。私たちは此処に残り、カグナさんの帰りを待ちます」

 

「まぁ、仕方がないね」

 

「そうですね。残念ですけど……」

 

「まぁ、時間がある時にみんなでチャレンジしよう」

 

「はい」

 

 

 アリシアはカグナの言っていることが正しいと判断し、理由を聞いたロラン達も納得する。

 カグナも、余裕がある時にみんなで行こうと提案し、アリシア達も同意した。

 

 

「そういうわけです。陛下、私は今すぐにシロカブリへと向かいます」

 

「わかった、よろしく頼むぞ」

 

「えぇ、お任せを」

 

「あ、あの!」

 

 

 カグナはシロカブリへ向かうため部屋を出ようとしたところ、シェノラが声をかけてきた。

 振り返ると、シェノラは手に何かを握りしてめている。

 

 

「ん?」

 

「これを……」

 

 

 シェノラは、カグナに何かを差し出す。

 彼女の手には首飾りがあった。

 

 

「これは?」

 

「昔、兄様から頂いたお守りです。兄様に会えたら渡してくれませんか」

 

「わかりました、ちゃんとお渡しします」

 

 

 シェノラから首飾りを受け取ると、カグナは彼女がコレを渡してきた意図を理解し大切なものとしてメニューからアイテム欄へと収納する。

 渡した首飾りが突然と消えたことにシェノラは驚いていたが、カグナは彼女を安堵させるために優しく言葉をかけた。

 

 

「安心してください。ちゃんと王子も連れて帰ってきますから」

 

「は、はい!よろしくお願いいたします!!」

 

「それじゃ、行ってくるよ」

 

「はい、お気をつけてカグナさん」

 

 

 カグナの言葉を聞いたら安心したのか、シェノラ王女の表情は少し和らいだ。

 彼女の心配を減らせたと思ったカグナはアリシア達を残し、カグナは王宮の外に待機させてるカタキラの元へと向かう。

 速足で外に出ると、くつろいでいたカタキラ達が見えた。

 

 

「カタキラ!」

 

「ウッス!!」

 

「急いでシロカブリの元へ向かう必要が出た、最速で行くぞ!」

 

「最速っスね!おまかせくだせい!!!」

 

 

 カタキラに跨ると街の外へ急いで向かう。

 カタキラ以外のハギキラワークのメンバーは送還しカタキラ単体にしている、その方が早いからだ。

 シロカブリは砂漠を特定のルートを巡回しているので、おおよその位置は把握している。

 カグナは街の外に出ると、シロカブリが居るであろう方角へとカタキラを走らせた。

 カタキラは街へ向かう時よりも、早いスピードで砂漠を駆け抜けている。

 

 

「姐さん!前方に!!」

 

「あぁ、見えてきたな」

 

 

 しばらく走っていると、遠くの方に巨大な影を見つける……シロカブリだ。

 まだ距離があるが、その巨体ゆえに存在感を放っていた。

 シロカブリに近づいているはずだが、巨体ゆえに距離感がバグる。

 

 

『目標補足。このスピードですと約30分後に接触いたします』

 

「よし、カタキラもうひと踏ん張り頼むぞ」

 

「ガッテン承知だぜ!!」

 

 

 見えたシロカブリへ向かって一直線にカタキラを走らせる。

 しばらく走っていると、先ほどよりも少しづつスピードが上がっていることにカグナは気づいた。

 

 

「ん、カタキラ?スピード上げてないか?」

 

「大丈夫っす。俺に良い案があるっス!!」

 

「案って?」

 

「このまま飛ぶッスよ!!」

 

「は?」

 

 

 とぶ?飛ぶとは?っとカグナは一瞬困惑した……カタキラに水面を走ることはできるが、空を飛ぶ方法はないからだ。

 だがカタキラの言う飛ぶという意味は、カタキラの次の言葉でカグナは理解した。

 

 

「この砂の坂を、このまま駆け上がれば大ジャンプができやす!そしてそのまま姐さんが俺を踏み台にして、さらに飛べばシロカブリの脚の第一節くらいは短縮できるはず!!」

 

『たしかに……その方法でしたら、かなりの短縮になるかと』

 

 

 カタキラの案とは砂漠の坂を猛スピードで駆け上がり、その勢いを利用してシロカブリまで大ジャンプして高さを稼ぐというものだ。

 さらにギリギリまで高さを稼いだカタキラを踏み台にカグナも大ジャンプをすれば、さらに高さを稼げるとのことである。

 

 

「だが、お前はどうする!?いくらお前でも、その高さから落ちれば、さすがにタダじゃすまないぞ!?」

 

「大丈夫っすよ!俺ぁ頑丈ですし!それに地面に叩きつけられる前に送還されるかもしれやせんしね」

 

「しかし……」

 

「時間ないんッスよね!?だったら少しでも短縮したほうがいいに決まってる!!」

 

「……わかった。お前の案でいくぞ」

 

「ウッス!!!!」

 

 

 時間がない、たしかにそのとおりである。

 カグナはカタキラの案を採用することにした。

 そして了承を得たカタキラは、さらにスピードを上げ砂漠を走る。

 

 

「行くっスよ、姐さん!!」

 

「あぁ……かっとばせ、カタキラ!!」

 

 

 カグナは覚悟を決め、カタキラに全速力で突っ走れと命令した。

 その命令を聞いたカタキラも障害物がない砂漠を走り進む。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 ものすごい砂埃を巻き上げながらシロカブリまで、あと少しというところまで近づく。

 そしてシロカブリの一番近くにあった砂漠の上り坂を勢いよく駆け上がると、坂を登りきったところでカタキラが大ジャンプをした。

 高さにして50m以上は飛び上がっただろうか……最初は勢いよく飛び上がったが、だんだんと勢いは落ちていき上昇もしなくなっていく。

 

 

「今っス!!」

 

『”脚力強化(リィ・レグドゥ)”を発動します!』

 

「”グレートホッパー”!!おりゃッ!!!」

 

 

 カタキラの大ジャンプでギリギリまで高度を稼いだところで、アイが脚力を高める魔法を発動する。

 そしてカタキラを踏み台にしてカグナが思いっきりカタキラの身体を蹴り飛ばす!

 ”脚力強化(リィ・レグドゥ)”により強化された脚力をつかい、さらに大きくジャンプするスキル”グレートホッパー”を使用したカグナは地上から、かなり高い位置のシロカブリの脚の部分へと飛び乗ることができた。

 シロカブリの脚にしがみ付いたカグナは、すぐさま落ちていったカタキラの様子を確認する。

 

 

「カタキラ!!」

 

「姐さん!御武運をぉぉぉぉ………」

 

 

 カグナによって地上に向かって蹴り堕とされていったカタキラは、落ちながら身体がキラキラと輝きながら姿が薄れていき砂漠の大地に激突する前に消えていった。

 元の場所に送還された証拠である。

 カタキラの姿が消えたことにより砂漠に激突して大けがする前に送還されたことが分かってカグナは安堵した。

 

 

「ふぅ、よかった……さて、今度はコッチだな」

 

『はい。カタキラのおかげで、だいぶ高度を稼げましたね、主』

 

「あぁ、でもまだ半分以上ある……急ごうか」

 

『承知しました』

 

 

 カグナはシロカブリの脚の出っ張りに手と足をかけて登り始める。

 時折大きめなコブのようなものがあり丁度良い休憩所となるため、スタミナ回復も兼ねて少し休みながら頂上を目指し登り続ける。

 

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