星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#41 ウサギ、王子と合流する

 カタキラのおかげで、だいぶ時間短縮することに成功したカグナはシロカブリの脚にへばりついて登っていく。

 そしてしばらくすると、しがみ付いてる脚が振動しているのを感じた。

 

 

『主、この脚が動きます』

 

「おっと、落ちないように気を付けないと」

 

 

 巨大な生き物のようなモノである、シロカブリは移動する。

 すなわち6本ある長い脚を動かすということ……つまりカグナが登っている脚も動かす時があるということだ。

 あまりにも長く大きな脚なので1歩進む際に大きく揺れる。

 もしも登っている最中の脚が動いた場合は、しがみ付いていないと振り落とされてしまうのだ。

 そうなれば、いままで登ってきた苦労が水の泡となってしまう……冗談で済まされないであろう。

 しがみ付いている脚が動かなくなったのを確認したら、カグナは再び登り始める。

 

 

「ふぅ、ここまで登ってきて振り落とされるなんて冗談じゃない」

 

『主、シロカブリの第二の関節肢が見えてきました』

 

「第二チェックポイントってところか、ここからだな」

 

 

 すでに半分以上登っているため、脚登りも終盤となっているところだ。

 カグナが登っていると、遠くからプロペラのような音が近づいてくるのが聞こえてくる。

 

 

「やばッ、アレが近づいてきた!」

 

 

 プロペラの音が近づいてくるのが聞こえたカグナは周辺を警戒しつつ動くのを止めた。

 まるで自分はシロカブリの脚の一部ですと言わんばかりに硬直して音が近づいてくるのを待っている。

 するとプロペラの音の正体が視認できるほど近づいてきていた。

 

 

「――――キュ」

 

 

 カグナが顔を一切動かさず横目でみたソレは、小さな空飛ぶヤドカリこと”ドローンヤドカリ”であった。

 ドローンヤドカリは背負っている貝殻にプロペラが付いており、それで空を飛んでいるのである。

 カグナに気づかないドローンヤドカリは、そのままドローンのように飛び去って行く。

 完全に飛び去ったのを確認したカグナは、周りに他のドローンヤドカリが居ないことを確かめると安堵しながら再び登り始める。

 

 

「あぶないあぶない、今ここでアレの邪魔されるなんて嫌だからな……」

 

『あのドローンヤドカリは肉食で、シロカブリの脚に付きまとっている生き物に襲い掛かる性質を持っていますから』

 

「そうそう、アレに見つかると仲間を呼んで一斉に襲い掛かってくるから面倒なんだよな……でもアレは視力が悪いから、完全に止まっていれば生き物かどうか判断できない、だから身動きを取らないことが攻略のコツなんだ」

 

 

 空飛ぶドローンヤドカリは、シロカブリという巨大な生き物の周辺に群がる生き物を獲物にする生態をしている……さながら巨大な海の生き物の周りにいるコバンザメのように。

 だからシロカブリの脚を登るプレイヤーも攻撃対象、実に面倒で邪魔なエネミーとして設計されている。

 カグナはドローンヤドカリを警戒しつつ、登り続けると土の塊が見え始める。

 シロカブリが背負っている古城へと近づいてきているのだ。

 

 

「よし、あと少しだ……たしか入り口となる地下通路がむき出しになってたはず……」

 

 

 カグナはシロカブリの脚を登りきると、古城へ続く道を探す。

 実はシロカブリの脚を登り切っても古城へはたどり着くことができない。

 シロカブリの脚は、何とか人が登れるようになっているがシロカブリが背負っている古城の大地は鼠返しのようになっており、そのまま古城までは登れないからだ。

 なのでシロカブリの脚から古城へと続く別の道を探さなければならない……そう、たとえば大地が持ち上げられたおかげで露出した地下通路とかである。

 

 

『主、向こうに』

 

「あぁ、アレだな……ん、紐がぶら下がってる?」

 

 

 アイが示す方向を見ると地下通路らしきモノを見つけた。

 だがそこから何やら紐が伸びているではないか、しかも見た感じやたら新しい紐だ。

 なぜあんなところから紐が伸びているのか考えてしまっていると、何やらカグナの後ろの方でプロペラのような風切り音が複数聞こえてくる。

 カグナは恐る恐る振り返ると、プロペラの付いた貝殻を背負ったヤドカリが複数カグナの方を見ているではないか。

 ドローンヤドカリの大軍だ。

 

 

「…………あッ、やば」

 

 

 状況を理解したカグナは表情が青くなる。

 それと同時にドローンヤドカリたちは、一斉にカグナに向かって突撃を始めた。

 

 

『”脚力強化(リィ・レグドゥ)”を発動します!!』

 

「だっ、クソ!!」

 

 

 アイが代理発動した脚力強化(リィ・レグドゥ)によりジャンプ力が増したカグナは、すかさずむき出しになっている地下通路に向かって大ジャンプをする!

 カグナが地下通路に向かってジャンプしたことにより突撃してきたドローンヤドカリは先頭の数匹がシロカブリの脚に激突するものの、後方のものたちは上手く激突を避け旋回し地下通路に居るカグナに向かって再度突撃を開始してきた。

 

 

「あぁ、もう!しつこいな!!」

 

 

 再び突撃してきたドローンヤドカリたちを見たカグナは悪態をつきながらも地下通路を走って逃げる。

 幸いにもすぐに開いていた扉があったので、潜り抜けるとすぐさまに扉を閉めた。

 閉めた扉の向こうから扉に激突するドローンヤドカリたちの音が聞こえてくるが、しばらくすると音が止む。

 どうやら追撃を諦めたようだ。

 

 

「ふぅ、危なかった……あんなところで攻撃されたら落ちて台無しになるところだった」

 

『ですが、目的の通路まで来れました』

 

「結果的には、な……とりあえず進もう」

 

 

 安堵したカグナは地下通路を歩いてく。

 しばらくすると本来地上へと続くであろう階段を見つけ登ると広い庭へとたどり着いた。

 そして目の前には年数がたって所々朽ちてはいるものの、見る者を圧倒するほどの存在感を放つ大きく立派な古城がそびえ立つ……シロカブリが背負っている大地に到着したのだ。

 

 

「着いたな。さて……まずは、先に来ているはずの王子と合流するか」

 

『来てますかね、王子』

 

「たぶんね。さっきの地下通路に紐が繋がっていたけど、たぶんあれ王子の仕業だ。あの紐、あまりにもつい最近付けたとしか思えない」

 

 

 シロカブリの脚を登ること自体は、道中の対処と時間をかけさえすれば出来る。

 なので王子が古城があるところまで来れているとカグナは思っている……此処に来るまでに王子と遭遇もしていないから。

 ただ問題としては登りきってからである。

 

 

「おそらく古城の近くに居るはず……ただ」

 

 

 カグナが言い終わる前に何かが近づく音が聞こえた。

 それを聞いたカグナは、すぐさま近くにあった茂みに姿を隠し音の正体を確認する。

 近づいてきた音の正体は、人のサイズほどで人型だが脚が二足ではなく一輪車のような車輪のゴーレムである。

 すでに滅んでいる古城を、今だに警備するために徘徊している古代ゴーレム……つまり(エネミー)だ。

 本来であればシロカブリの脚登りを制覇したプレイヤーを待ち構えている敵なのだが、これが意外と厄介なのだ。

 今のカグナでは問題ないのだが、敵を見つけるとすぐさま集まってくるのが面倒なので警備の古代ゴーレムに見つからないようにスニーキングするのがセオリーとされている。

 

 

『兵士タイプの守護ゴーレムですね』

 

「あぁ、見つかると厄介だ」

 

 

 しばらく隠れているとゴーレムは離れていき、それを確認したカグナは隠れていた茂みから身を出す。

 軽く周りの気配を探ると、まだまだゴーレムが蠢いている気配を感じる。

 

 

「急ごうか……王子が、やられる前に」

 

『ですが、どうやって探しますか?此処は広く、人ひとり探すのにも時間がかかります』

 

「それもあるが、月光草の群生地も見つけないといけないからな……呼ぶか」

 

 

 先に来ているはずのシャルク王子が古代ゴーレムにやられていないことを願いながら探そうとするが古城はあまりにも広い。

 さらにそこから月光草も探さないといけない……なのでカグナは物探しのプロを呼ぶことにした。

 魔杖を地面に突き立て、魔法陣を展開し呪文を叫ぶ。

 

 

「”召喚(サモンズ)ハットリ・チュウゾウ”!!」

 

 

 カグナが発動した召喚魔法の魔法陣が光り輝くと、手のひらサイズの小さい影が飛び出してきた。

 

 

「んぉぉぉ!呼ばれて飛び出てぇぇぇ!!!!」

 

 

 小さい影は叫びながら大きく弧を描いて、そしてそのまま……。

 

 

「ッ!?」

 

「んぬぁ!暗くて狭くて柔らかくて、ほんのりと暖かい!?主殿は何処にぃぃ!!」

 

 

 カグナの胸元、丁度胸と胸の間にすっぽりと綺麗に嵌った。

 胸の谷間で小さな脚をじだばたさせながら可愛らしいお尻をふりふりしているソレをカグナは摘まみ上げ、手のひらの上に乗せる。

 

 

「はッ!主殿!!」

 

「お前は毎度毎度、胸元(そこ)に飛び込まないと気が済まないのか?」

 

「いや~(それがし)も何故そうなるのか、分からずで……」

 

 

 呼びだされた召喚獣のハットリ・チュウゾウは、カグナの手のひらの上で尻もちを突きながら申し訳ないという表情(かお)をしている。

 コイツは本当に申し訳ないと思っているのだろうか……。

 カグナもアイも何故いつもそうなるのか呆れつつ、仕事の話しに戻る。

 

 

「まぁいい……とりあえず仕事だ、チュウゾウ」

 

「はッ!何なりとお申し付けくださいませ!!」

 

 

 カグナは呼びだしたチュウゾウに、呼びだした経緯を説明した。

 

 

「ふむふむ、なるほど。ではそのシャルク王子という御仁と月光草が生えている場所を探せばよろしいのでございますな!?」

 

「あぁ、始めろ」

 

「承知!では、とくとご覧あれ……秘技!”ネズミ分身の術”!!」

 

 

 チュウゾウが小さな手を合わせ手印を組むと分身の術を発動させる。

 カグナの足元には、無数のチュウゾウの分身体が現れた。

 分身体たちはカグナに一礼すると一目散に四方へ散らばっていく。

 身体の小ささと目にも止まらぬ俊敏さで、古城を徘徊しているゴーレムに見つかることもないだろう。

 

 

「さて、これで見つかるの時間の問題……っと」

 

「あ、もう見つけたでござるよ」

 

「はやッ!!」

 

 

 *

 

 *

 

 *

 

 

 古城の入り組んでいる通路の隅にある、ちょっとしたスペースに肩で息をしている男が座り込んでいた。

 褐色の肌に黒い髪、シャムスダラ王と何か雰囲気が似ている青年……シャルク王子である。

 身に纏っている服を動きやすいようにまくり上げてるが、ところどころ汚れていたり破れたりとボロボロだ。

 傍らには大きなカバンを携えているが、こちらには汚れがあまり見えない……己の身よりも鞄を守ってきた様子。

 

 

「はぁ…はぁ……参ったな……これでは奥にいけない」

 

 

 シャルクは身を隠している壁から、こっそりと通路を除く。

 するとそこには古城を守るために徘徊している一輪脚のゴーレムが複数徘徊していた。

 まるでシャルクを探すかのように、辺りをキョロキョロしている。

 

 

「多少ケガをする覚悟で走るか……いや、無理か。まだ月光草の群生地を見つけていない」

 

 

 シャルクはゴーレムたちに見つかって攻撃される危険を顧みず進むべきかと思ったが、行き先がまだ定まっていない以上、無駄になると考え足を止めた。

 だがこれ以上留まっていても(らち)が明かない。

 今も刻々と日は落ちていっていくばかりで、すぐに満月の夜となってしまう。

 どうにかゴーレムたちの目をかいくぐっていく方法がないかと周りを見渡しているとシャルクの足元から声が聞こえてくる。

 

 

「シャルク王子とお見受けするでござる」

 

「なッ!だ、誰だ!?」

 

 

 突然の声にシャルクは驚き、護身のために持ち歩いている剣を手に持ち周りを見渡した。

 しかしいくら周りを見渡しても声を出したと思わしき者の姿が見当たらない。

 

 

「……声が聞こえた気がしたが」

 

「いや、気のせいではござらぬぞ」

 

 

 やはり気のせいではなかった、今度はしっかりと声がした場所が分かった……足元だ。

 シャルクは視線を下に向ける。

 するとそこには、忍び装束のハムスターがシャルクを見上げていた。

 

 

「なッ、ね、ねずみ……?」

 

「ねずみではござらぬ!!」

 

「なんなんだ、お前は……?」

 

「よくぞ聞かられた!某は主殿の忠実な忍!ハットリ・チュウゾウにござる!!」

 

「チュウゾウ?忍……だと?主殿とは誰だ」

 

「今コチラに向かっているでござるよ」

 

「なに、向かってるだと?」

 

 

 シャルクは突然現れチュウゾウと名乗った鼠に気を取られていると、ゴーレムたちがシャルクのことを発見し近づいていることに気が付かなった。

 

 

「ピィー!!ピィー!!」

 

「しまった!奴らに見つかった!!」

 

 

 ゴーレムが鳴らした警戒音を聞いた、シャルクは見つかったことに気づく。

 シャルクは、武器を構えながら近づいてくるゴーレムを迎え撃こうすると、さらに奥から何者かが近づいてくるのが見えた。

 それは手に持った魔杖をゴーレムたちに向けて、魔法を叫ぶ。

 

 

「”上級黒魔(ギガ・ディロン)”!!」

 

 

 魔杖から黒い塊がゴーレムたちに向かって発射される。

 ゴーレムたちは背後からの奇襲に、気づかず魔法をまともに受けた。

 すると黒い魔法をモロに喰らったゴーレムたちは黒い魔法に吸い込まれるかのように歪みはじめ、やがて耐えられずに爆破して壊れる。

 

 

「ゴーレムが破壊された!?」

 

「主殿!!」

 

 

 破壊されたゴーレムたちの残骸を気にせず魔法を放った者がシャルク元へと歩いてくる。

 ゴーレムたちを破壊した魔法を放ったのは、垂れたうさぎ耳と白い髪の毛をなびかせた女魔導士だ。

 魔導士の姿を見たチュウゾウは、主と呼び駆け寄っていき身体をよじ登っている。

 シャルクは自分に近づいてくる魔導士に警戒をしていた。

 

 

「シャルク王子……ですね?」

 

「おまえは?」

 

「私はディ・フェウロ王国の冒険者のカグナと申します。シャムスダラ陛下の依頼により月光草の花蜜の採取にきました。あとアナタのことも」

 

「父上からの依頼だと!?」

 

 

 カグナと名乗った魔導士は、シャムスダラ王からの依頼で来たとシャルクに言ってきた。

 魔道師がたった一人で来たこと、自身の父の名を出して来たことに対して警戒を抱いていると目の前の魔導士は、シャルクに何かを差し出す。

 それを見たシャルクは思わず声を荒げた。

 

 

「シャルク王子、こちらを」

 

「なッ!なぜ、お前がこれを持っている!?」

 

 

 カグナがシャルクに渡してきたのは、首飾りである。

 それもただの首飾りではない、これは彼が最愛の妹へ送った首飾りだ。

 本当に味方なのかもわからない魔導士がシャルクに渡してきたのだから、驚きもする。

 

 

「シェノラ姫から、お預かりしました。王子に会った時に渡してくれと」

 

「シェノラから!?」

 

「大層、ご心配されておられましたよ」

 

「そうか、シェノラが……。わかった、其方の言っていた父上からの依頼の件、信じよう」

 

 

 シャルクは、カグナから首飾りを受け取った。

 そしてシェノラが兄のためにとカグナに大切な首飾りを託したということは、少なくともシェノラがカグナを信用したということである。

 つまりカグナの言っていたシャムスダラ王からの依頼も本当のことであると、シャルクは判断した。

 シャルクは渡された首飾りの意味が、シェノラからの”無事に帰ってきてほしい”という願いだということは、きちんと理解している。

 カグナは首飾りを見つめるシャルクを見て、互いが互いのことを想っていることを感じ取っていた……なんて仲の良い兄妹なのだろうか。

 そんな様子を見ていると思わず微笑んでいるカグナに、アイが耳元でささやいてきた。

 

 

『主、こちらに近づくエネミー反応を確認しました。早急に移動するべきかと』

 

「そうか、わかった。王子、ひとまず目前の障害は排除してますので移動しましょう。月光草の群生地も見つけております」

 

「あぁ……了解した」

 

 

 先ほどカグナがゴーレムを破壊したことで、周辺のゴーレムたちが異変を感じ確認するためにカグナ達の元に集まってきていることをアイが感知したのだ。

 そのため、このままこの場に留まっていては面倒なことになると判断したカグナは合流したシャルクと、その場から離れることにした。

 そして二人と一匹が出発してから1分もしないうちに、数台のゴーレムがやってきて破壊された同機の残骸を確認し、警戒態勢を取るように周辺の機体に伝えるのであった。

 

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