星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#42 ウサギ、秘密の花園に着く

 カグナとシャルクは、シロカブリの背にある古城の通路を走っていた。

 召喚獣であるチュウゾウの分身体が目的である月光草の自生地を発見したため、そこへ向かっている。

 しかし問題が発生していた。

 

 

「あぁ、もう!しつこいな!!」

 

「「キャピー!!!」」

 

 

 古城を警備している一輪車のような脚のゴーレム達が、カグナ達を追いかけているのだ。

 カグナとシャルクは、徘徊しているゴーレムに見つかってしまったのである。

 見つかってすぐに、カグナが何体か倒したがすぐ次のゴーレムがやってきてキリがないので逃げているというわけだ。

 

 

「主殿!この通路を左に曲がり階段を登るでござるよ!!」

 

 

 カグナの肩の上に乗っかているチュウゾウが見つけた月光草の生えている目的地へのナビをする。

 しかしカグナは、チュウゾウの言うとおりに通路を左に曲がらずまっすぐ進んでいった。

 

 

「なっ、主殿!?そっちは違うでござる!!」

 

「いや、今はこれでいい!」

 

 

 チュウゾウの道案内に従わないカグナにチュウゾウは驚いたが、カグナは構わない言う。

 カグナと一緒に走って逃げているシャルクがカグナに問いただす。

 

 

「どういうことだ……これでは目的地から遠ざかってしまう」

 

「このまま月光草の花園に向かってしまっては、我々の目的がゴーレムにバレるでしょう」

 

「むッ……たしかに」

 

「そうなれば、ヤツらは花園までの道に集結してしまう……とてもじゃないが蜜の採取どころではなくなります」

 

「なるほど……目的を達成するためにも、まずはヤツらの目を欺かなければならないというわけか」

 

 

「そういうことです」

 

 

 カグナがチュウゾウの道案内通りに走らなかった理由を聞いたシャルクは納得した。

 このまま目的地へまっすぐ行けば、すぐにたどり着くだろう。

 しかしそれはゴーレムも一緒に付いて来てしまうということだ。

 それではマズいと思ったカグナは、まずはゴーレム達の追跡を巻く必要があると考えたのである。

 そしてカグナには、一つ案を思い浮かんでいた。

 

 

「チュウゾウ、(デコイ)を作れたよな?」

 

「出来るでござる!」

 

「よし……次の曲がり角を曲がって、ヤツらの目線から一瞬外れた瞬間に(デコイ)を作れ!!」

 

「承知でござる!!」

 

 

 カグナはチュウゾウに囮を作れと命令を出す。

 それを聞いたチュウゾウも承諾し、カグナとシャルクが曲がり角を曲がった瞬間に術を発動した。

 

 

「秘技!ネズミデコイの術!!」

 

 

 チュウゾウが小さな手で印を結ぶ。

 すると分身の術の時のようにチュウゾウと同じ姿をしたものが大量に現れた。

 しかし分身の術の時とは違い、バラバラに散らばるのではなく逆に集まり人の形の塊を形成していく。それが二つだ。

 そしてその二つの塊は、やがて姿形色合いが変わっていき、だんだんとカグナとシャルクに似ていく……デコイの完成である。

 それを確認したカグナはシャルクを連れてデコイとは別の道を行き物陰に隠れる。

 デコイの方はそのまままっすぐ進んでいき、カグナ達を追いかけて来たゴーレムに視認された。

 デコイは隠れているカグナ達からどんどんと遠ざかりゴーレム達もそれを馬鹿正直に追いかけていく。

 やがて物音がなくなったのを確認したシャルクは恐る恐る周りを見渡す。

 

 

「……うまくいったか?」

 

「……そうみたいですね」

 

 

 カグナも物陰から顔を出して確認した。

 どうやらデコイ作戦は上手くいきゴーレムはいなくなったようである。

 

 

『主たちを追っていたゴーレムがデコイを追いかけて離れていくのを感知しております』

 

「よし、上出来だ。では今の内に行きましょう」

 

 

 念のためアイが探知の魔法を代理発動して確認してみたが、問題はないようだ。

 安全が確保されたので、改めてカグナ達は月光草が生えている場所へと急いで向かった。

 道中、まだ徘徊中のゴーレムを見かけたが今度はちゃんと上手く隠れてやり過ごし古城の奥へとつき進む。

 しばらく歩いていると古城の中でも高い場所へとたどり着くと、複数のチュウゾウの分身体が待っていた。

 

 

「主殿!」

 

「ここでござる!!」

 

「待っていたでござるよ!!」

 

 

 チュウゾウ達が見つけた場所は、古城の中にある部屋の一つと思われる。

 しかし壁と天井が崩壊し空が丸見えであり、床は何故か土が敷き詰められていた。

 そして一面、青白い花が咲いていた。

 

 

「此処が月光草が生えている場所か」

 

「どうやら、間に合ったようですね」

 

 

 カグナ達は、無事に月光草が生えている花園へと着いたのだ。

 カグナが崩壊した壁から地平線を見た。

 すでに太陽は半分近く沈んでおり、反対側の空から順に暗闇が広がっている。

 

 

「日が暮れて満月が出る……仕事は此処からだ」

 

 

 カグナは、シャルクの持ち込んだ鞄から瓶を取り出し準備を行う。

 チュウゾウと無数の分身体たちもカグナにならって瓶を取り出し蓋を開けていく。

 そうしていると日は完全に落ちて空は黒に染まると、一際大きな光源がカグナ達を照らす。

 落ちた日の代わりに満月が顔を出したのだ。

 すると満月の光を浴びた月光草の花が、青白く光りだすと花びらを大きく開き始める。

 

 

「こ、これが月光草の開花……なのか」

 

 

 その光景はまるで光輝く花畑……なんという幻想的な光景だろうか。

 アニメのワンシーンに使われてもおかしくはない。

 シャルクは始めて見る幻想的な光景に目が奪われて、思わず目的を忘れかけるほどだ。

 

 

「なんという美しい光景だ……シェノラ達にも見せてみたいものだ」

 

見惚(みと)れている場合ではありませんよ。早く花の蜜を回収しなければ」

 

「あぁ、そうだった……」

 

 

 呆けていたシャルクはカグナの言葉に我に戻り、此処に来た目的を思い出す。

 カグナは空き瓶を手に持ち、一つの月光草の花へと手を伸ばした。

 満開に開いた月光草の花を見ると真ん中のくぼみに輝く蜜が溜まっている。

 それを零さないように、花びらを伝わせて瓶へと注いでいく。

 採取のお手本と言わんばかりに、カグナは瓶に溜まった蜜をシャルクへと見せる。

 

 

「さぁ、王子。姫のためにも採取を行いましょう」

 

「あぁ……!!」

 

「チュウゾウ、お前たちにも働いてもらうぞ」

 

「「「ガッテン承知でござる!!!!」」」

 

 

 カグナとシャルク、そしてチュウゾウ達による採取作業が始まる。

 花一つからは微々たる量ではあるが、一面に生えている月光草は数えきれないほどある……。

 零さぬよう慎重に、されど迅速に採取を続けていく。

 

 

「しかし……なんとういう量だ。まだまだあるぞ」

 

「場所が場所だけに、人の手が入っていないからでしょうね。おかげで大量に入手できそうです」

 

「そうだな、急ごう」

 

 

 作業を続けていく一行、シャルクの持ち込んできた瓶もだいぶ埋まってきた。

 そんななか、カグナの近くをフヨフヨと浮遊していたアイが何かの気配を感じ取る。

 

 

『主!何かが、こちらに近づいてくるのを探知しました!!』

 

「なんだって!なにが来る!?」

 

 

 アイの報告を聞いたカグナは作業を止めて周りを見渡し、気配を探る。

 たしかにアイの言うとおり、何かが近づく気配(おと)が聞こえた。

 古城を守るゴーレムのモノではない……もっと大きくて力強い気配(おと)だ。

 カグナが警戒のため魔杖を出現させると、作業をしていたシャルクもカグナの様子から異常事態に気づく。

 

 

「何かあったのか?」

 

「わかりません……ん、あれは?」

 

 

 カグナは、こちらに近づいてくる影が空を飛んでいるのを見つけた。

 その影が近づくほど、大きな羽で羽ばたく音が大きくなっていく。

 さすがのシャルクも近づいて飛んでくる影に気づいた。

 そしてシャルクは影の正体と()()()を見て驚愕する。

 

 

「なんだ……アレは!?」

 

「なッ!アレは………”ジャイアントパープル”!?」

 

 

 影の正体は、巨大な蝶のようなモンスター”ジャイアントパープル”であった。

 鮮やかな紫色の(はね)を力強く羽ばたかせ、優雅に夜空を飛んでいる。

 ジャイアントパープルの身体は、カグナとシャルクよりも遥かに大きく5~6メートルは超えている……翅を含めた横の長さは、およそ10メートルにもなる。

 さらにその力も凄まじく、翅の羽ばたきだけで小さな生き物をラケットで打たれるテニスボールのように吹き飛ばせるほどだ!

 もし翅の一撃を喰らえば、人間であろうと致命傷となる。

 見た目は、ほぼ蝶ではあるが完全にバケモノだ。

 

 

「ジャイアントパープル?あの巨大な蝶みたいなのことか?」

 

「えぇ……本来なら、砂漠地帯ではなく密林地帯の奥地に生息しているモンスターですよ」

 

「なんでそんな奴が此処に!?」

 

 

 そう……ジャイアントパープルは、本来なら密林や緑豊かな場所に生息しているはず。

 こんな緑がない砂漠地帯に居るはずがないのである。

 だが現にカグナ達の目の前にやってきている……となると理由は一つ。

 

 

「コイツ……まさか月光草の花が咲くのを見越して、わざわざここまでやってきたのか?」

 

「どういうことだ?」

 

「ヤツの好物は花の蜜………とくに月光草のような希少な花の蜜が大好きなんです」

 

「それじゃまさか、あのバケモノは、月光草の蜜を……」

 

「吸いにやってきたんでしょう……わざわざ海の向こうから」

 

 

 そう、ジャイアントパープルは西方の(ウェスト)大陸から海を越えてカグナ達がいる南方の(サウシュウ)大陸までやってきたのだ、花の蜜を吸うためだけに。

 なんという食への執念なんだと、カグナは心の中で呟いたが納得もした。

 ジャイアントパープルは、美味しい蜜を吸うためなら他の凶悪なモンスターとも戦うという設定があったのをカグナは思い出す。

 カグナがジャイアントパープルと相対して静観していると、ジャイアントパープルの複眼と翅が紫色の光を放った。

 すると月光草の花から蜜だけが宙に浮き始めていったのである。

 

 

「なッ!花の蜜が宙に浮いていく!!?」

 

「ヤツの能力です。こうやって花の蜜を集めて次から次へと飲み干していくんだ!!」

 

 

 念動力に近い力だ、器用に蜜だけを浮かせ吸い寄せて食す。

 巨体なジャイアントパープルが自身の翅の羽ばたきで花の蜜が吹き飛ばないようにするために編み出した技なのだ。

 

 

 

「王子はチュウゾウ達と、そのまま花の蜜採取を続けてください」

 

「キミはどうするつもりだ?」

 

「アレの相手は、私がします」

 

「なッ!一人では危険だろ!?」

 

「では、このまま月光草の花蜜をすべてアレに奪われるのを見ていますか?」

 

「そ、それは……」

 

「安心してください。これでも金二星ですので」

 

「…………わかった」

 

 

 シャルクも、あのバケモノをなんとかしなければいけないと理解している。

 そして共にいるカグナが首に下げている金色に輝く冒険者の証を見た。

 自分では、あのバケモノのを相手にすることすら出来ないと瞬時に理解したシャルクは、カグナに託すしかなかった。

 

 

「さて行くぞ、アイ」

 

『”脚力強化(リィ・レグドゥ)”を発動します!!』

 

 

 

 カグナがしゃがむと、アイが魔法を代理発動する。

 アイの代理魔法発動で、脚力を強化したカグナはジャイアントパープルに向かって大ジャンプをする。

 そしてそのまま脚力強化(リィ・レグドゥ)によって強化された脚で、ジャイアントパープルの腹を蹴り飛ばした。

 

 

「ふんッ!!!!」

 

「ギィ!!?」

 

 

 腹を蹴り飛ばさるなんて想定していなかったのか、ジャイアントパープルは抵抗も出来ず花畑の外にある広場へと吹き飛ぶ。

 突然の攻撃で床に叩きつけられて何度かバウンドをしつつも、ジャイアントパープルは巨体をうまくコントロールして体制を立て直した。

 その眼には、困惑と怒りの感情が映っていたように見えた。

 

 

「ギィ……ギィアアア!!!」

 

「あはは……楽しいディナーの最中に蹴り飛ばされたら、そりゃ怒るよね」

 

 

 カグナは警戒しつつ、ゆっくりとジャイアントパープルの元へと歩いていき互いの目が合う。

 ジャイアントパープルは自分を蹴り飛ばしたのが、目の前の小さな存在であることに気づいた。

 そして怒りの矛先でもあることを理解した。

 

 

「悪いんだけど……今夜のディナーは諦めてくれ」

 

 

 カグナはジャイアントパープルに向かって魔杖を向ける。

 ジャイアントパープルは、再び翅を大きく動かし宙に浮く。

 その巨大な翅を下に向かって動かすたびに、ものすごい風がおきる。

 チュウゾウのように小さなモノでは簡単に吹き飛ぶであろう……カグナも意識しなければ尻もちをつきそうだが、そうもいかない。

 カグナの後ろでは、チュウゾウ達とシャルク王子が蜜の採取を続けている、それを邪魔させるわけにはいかない……。

 

 

「……邪魔は、させねぇからな」

 

 

 ジャイアントパープル討伐ミッションが始まる。

 

 

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