星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
ジャイアントパープルは激怒していた。
夜空に浮かぶ月が、満月から再び満月になるまでの間で一度きりの贅沢の日。
それを楽しみにわざわざ海を越えてやってきたのだ、一晩限りの美味を味わうために……。
今回も自分だけの美味を味わえるのが当たり前だと思っていた……が、今夜は違った。
あろうことか目の前に居る、ちっぽけな存在に邪魔されたのだ。
許されることだろうか?……否、許されるわけがない。
それゆえに、ジャイアントパープルは邪魔者を叩きのめさなければ気が済まない。
怒りに満ちた複眼が、小さなウサギ耳の少女を睨みつける。
「めっちゃ、怒ってるな……」
『向こうからすれば、食事をいきなり邪魔されたようなものですから』
「まぁ、そんなことされれば激怒して当然ってわけだよな……」
怒りのあまり、ジャイアントパープルの翅の羽ばたきにも力が込められていると感じる。
カグナは魔杖に
そして杖を地面に突き立て、魔法陣を展開して魔法を発動する。
「”
光り輝く魔法陣から二体の召喚獣が呼び出される。
一つは馬の下半身に人間の女性らしいフォルムの上半身のシルエット、全身甲冑を着込んだケンタウロスのような召喚獣メズ。
もう一つは人の身体に牛の頭、そして腕が4本あり二つの大きな盾を構える召喚獣ゴズ。
攻めと守りの召喚獣であり、カグナが多用するコンビである。
「メズ、此処に!!」
「ゴズ、参上いたしました!!」
「ジャイアントパープルですか……これは面白い相手ですね。しかし……お前と一緒とはな、
「それはこちらの台詞だ、馬女め」
仲は、それなりに悪かったりする。
互いの視線上に火花が飛び交っているかのような雰囲気のいつも通りな二人を見たカグナは、ヤレヤレと思いつつ宥める。
「二人とも、ケンカはそれくらいにしておけよ」
「「ハッ!!」」
主であるカグナの言う事には素直に聞く二人であった。
大人しくなったので、カグナは二人に指示をだす。
「ゴズ、お前は後ろの花畑を結界で守れ。
「御意!!」
「メズは、一緒にあれと戦うぞ」
「ハっ!喜んで!!」
カグナから命令を受けたゴズは影に潜り、そのままチュウゾウ達とシャルクがいる花畑まで移動した。
影から現れたゴズを見たシャルクは驚きで言葉が出ないが、一緒に居たチュウゾウは懐かしい同士に明るく言葉をかける。
「おぉ、ゴズ殿。久しいでござるな」
「チュウゾウか。ここで何をしている」
「主殿の命でござる」
「そうか……我も、主君の命を全うするとしよう」
ゴズは両の腕で持っている二つの
そして残った二つの手で印を結び叫ぶ。
「”不落結界”!!!」
ゴズの強固な結界が月光草の花畑を囲うように展開されていく。
ドーム状に広がる結界の壁は、そう簡単には砕かれない。
カグナも信頼しているため、被弾や流れ弾を気にせず心置きなく戦えるであろう。
「こ、これは……結界?」
「ゴズ殿は守りのプロフェッショナルでござる。この程度の結界、お茶の子さいさいでござるよ!!」
ゴズが展開した結界を見たシャルクは今まで見て来たどの結界よりも巨大で強固であると肌で感じ取っていた。
目の前の牛頭がこの結界の要であることも理解している。
そんなのを召喚し、軽々と指示を出しているウサギ耳の少女がどれだけ自分が知っている範疇を逸脱してるのかを、シャルクは改めて実感するのであった。
そんなカグナは、ゴズが結界を展開したのを無事見届け戦闘を開始するため魔杖に魔力を込める。
「それじゃ始めるか」
「えぇ、では一番槍を……」
メズが手に持った薙刀を振り回しながら、ジャイアントパープル目掛けて走り出す。
己に向かって走ってくる黒い塊を見たジャイアントパープルは翅を羽ばたかせて距離を取ろうとしていた。
しかしそれを見逃すほどメズも甘くはなく、大きくジャンプをして近づき薙刀を力強く振り下ろす。
「てりゃぁ!!!!」
振り下ろされた薙刀の刃がジャイアントパープルの身体に食い込む。
このままジャイアントパープルの身体が真っ二つになる……と思われていたが。
「むッ、固い!?」
メズの薙刀は、ジャイアントパープルに身体に喰い込んでいるように見えたが傷はつけることができなかった。
予想以上に固い。
『メズの攻撃が、あまり通っていませんね』
「かなり防御が固いな……」
カグナの瞳の中に小さな魔法陣のようなものが浮かび上がる。
相手の強さを測る魔法、”
相手の体力の量を身体を覆うオーラの量や色で確認できるようになり、カグナの眼にはジャイアントパープルの体力の量が見えている。
「思ったより体力が多い」
『あのジャイアントパープル、通常個体よりもレベルが高い個体のようです』
「やっぱり強個体か……なんか通常よりデカいし」
モンスターには通常個体よりも強い個体が稀に出現することがあり、その場合体力などのステータスが多かったり本来なら使えないはずの技や魔法を習得している場合ある。
倒せばドロップするアイテムの量が増えたりレアドロップしたりなど恩恵もあるが、モンスターよっては倒すのが面倒だったりする。
「アイ、ジャイアントパープルの
『主に魔法を主体とした攻撃を中心に、大きな翅による叩きつけや突風攻撃。あと稀にストロー状の口から液体を勢いよく飛ばす攻撃もあります』
「……唾攻撃か、いやだな」
アイからジャイアントパープルの攻撃に関して聞いていると、最後の情報でカグナの表情が明らかに嫌なことを聞いた気分になっていた。
モンスターの攻撃方法の中で、口から液体を飛ばす系の攻撃はプレイヤーから忌み嫌われていたりする。
特に人型のモンスターだったら、なおさらだ。
「とにかく体力を削るぞ。メズ!攻撃を止めるな!!」
「承知しました!!」
メズに攻撃し続けろとカグナは命令し、メズもその命令を実行するためにジャイアントパープルに再び攻撃を仕掛ける。
カグナも、自分たちが有利になるために魔法をジャイアントパープルに目掛けて放つ。
「ひとまず下げるか……”
カグナがステータス低下状態にする
このまま効果が発動しジャイアントパープルの防御が低下する……かと思った時、まとわりついていた魔法が弾き飛ばされる。
「!?」
『
「弱体耐性持ちってことか……ホント面倒だな」
目の前のジャイアントパープルに弱体魔法は効かないと判明、耐性値はどのくらいだと思わず思考を始めそうになる。
メンドクサイなと思いつつも、次は自分も攻撃に転じようと考えを切り替えた。
そしてカグナの行動を見たジャイアントパープルが、阻止すべきと思ったのか攻撃対象をカグナに変更。
ジャイアントパープルの翅が輝きだすと、周りに光の球が複数出現する。
『ジャイアントパープルの周辺に、魔法攻撃と思わしき反応を感知しました』
「この感じ……広範囲系か!?メズ、戻れ!!」
おそらく
ただし光の球の数が多い。
カグナはメズに近くまで戻るように指示、メズは指示通りにカグナのすぐ近くまで駆け寄る。
「キィァァァァ!!」
ジャイアントパープルが叫び声をあげると、周辺に浮遊していた光の球を一斉にカグナ達に向けて撃ちだす。
いくらカグナでも、この数の光の球をまともに受けてしまうとタダでは済まない。
なので魔杖を地面に突き立て、魔法を発動させる。
「”
ジャイアントパープルが広範囲攻撃を放つと同時に、カグナが防御の魔法を発動させカグナ達の四方に4枚の土壁が出現して覆い囲む!
ジャイアントパープルの攻撃は、カグナ達の周りの土壁に阻まれて届かない。
怒涛の攻撃が続いている中、後ろの方から叫び声が聞こえてきた。
シャルクとチュウゾウの声だ。
「うわぁぁぁ!!」
「ご、ゴズ殿ぉ!?」
「ふん!この程度の攻撃で我の結界が破壊されるものか!!」
どうやらジャイアントパープの攻撃は後ろの花畑にまで届いているようだが、ゴズが展開した結界により無事のようである。
無事なのことを安堵していると、攻撃の勢いが落ちていく……攻撃が止んだようだ。
攻撃に耐えきった土壁は、そのまま崩れて消えていく。
そして崩れた土壁の向こうから、魔杖を構えていたカグナが現れるのジャイアントパープルは見た。
「”
ボーリング玉より少し大きい雷撃の球がカグナの周りに複数出現し、ジャイアントパープル目掛けて発射された。
速度は上々、威力も悪くないはず、全弾命中はせずとも一つ二つは当たるとカグナは確信していた……のだが。
「キィアァ!」
ジャイアントパープルは、その巨体で上手く避けたのである……それも全弾だ。
カグナの攻撃をすべて躱したジャイアントパープルに、アイとメズは驚きを隠せない。
『なッ!?』
「主の魔法を全て避けた!?」
(距離、タイミング……すべて悪くなかったはず。でも避けられた……まさか)
「こいつ……”秘境ボス”か!?」
アナザーワールド・オンラインにおいて、敵モンスターは人が多く住む街に近いほどレベルが低く離れていれば離れているほど高レベルのモンスターが生息している設定である。
そして大きな街から遠く離れている未開の地、特に秘境と呼ばれる場所には他の個体よりレベルやステータスが高い特殊個体モンスターが生息していることがある、そのモンスターをかつてのプレイヤー達は”秘境ボス”と呼んでいた。
秘境ボスと呼ばれるモンスターは、相性や装備によっては高レベルのプレイヤーでも
カグナは相対しているジャイアントパープルが、その秘境ボスだと判断したのだ。
通常よりも大きな体格、平均値よりも高い体力と耐性値、カグナの攻撃を易々と躱すほどの身体能力……間違いなく秘境からやってきた特殊個体である。
眼前のジャイアントパープルが秘境ボスと聞いて自身の攻撃が通りづらいのをメズは納得した。
「秘境の主……ですか。これは厄介ですね」
「あぁ、面倒な相手だ……」
『ジャイアントパープル、接近してきます!!』
アイの警告通り、ジャイアントパープルが突進を仕掛けて来た。
カグナとメズは左右に分かれ回避する。
避けられたジャイアントパープルは、そのまま旋回してメズに目掛けて再び突進してきた。
「舐めるなッ!!!」
再度突進してくるジャイアントパープルにメズは薙刀で応戦した。
メズの薙刀と、ジャイアントパープルの翅による叩きつけ攻撃がぶつかる。
互いの力が拮抗しあっていたのか、お互い弾き飛ばされていた。
後方に大きく飛ばされたメズは4つの脚で大地を踏みしめ態勢を維持し、ジャイアントパープルは大きく羽ばたいて空中で態勢を整えている。
「メズの力は、かなり高いはずなのに、あの蝶……メズと同等の力持ちってか」
「申し分かりません……」
「いや気にするな。それよりも攻撃の手を休めず、攻め続けろ」
「ハッ!」
思ったように決定打が撃てないことにメズが申し訳なさを感じていると、後ろの花畑の方から大きな声が聞こえてくる、ゴズの声だ。
「どぉうした馬女ぁ!主の前で、たかが虫ごときに無様をさらすとはなッ!!」
「な、なんだと牛頭ぁ!!」
花畑で結界を張り続けているゴズが、メズに向かって茶々を入れる。
その言葉にケンカ腰に反応してしまう。
そこで見ていろ!とメズは叫び、再びジャイアントパープルへ攻撃を開始、今度は手数で捌いていく。
時折カグナも魔法で援護を行うが、避けるか翅で弾かれ決定打には至っていたない。
ジャイアントパープルもタダやられるているわけもなく、魔法や物理攻撃で反撃を行ってくる。
カグナとメズもそれに対応し、大ダメージは受けていない。
そんな攻防が数分ほど続いていく。
『いかがいたしますか、主?』
「そうだな……まずはあの翅をなんとかしよう。機動力と攻撃手段を奪うんだ」
『なるほど、ではいかように?』
おそらく今するべきは、ジャイアントパープの巨大な翅を潰すこと。
相手はあくまでも蝶である以上、翅で羽ばたき移動する。
その翅をなんとすれば、移動手段と翅による叩きつけ攻撃を同時に潰せるというわけだ。
だが魔法耐性が高いジャイアントパープには、カグナが作った束縛用の魔法である
ならばとカグナは、魔法耐性をある程度無視できるであろう魔法を使うことに決めた。
「メズ!アレの注意を引け!」
「主は、どうなされるので?」
「大技で、あの翅を潰す」
「御意」
メズは再びジャイアントパープへと向かっていき、
その間にカグナは握っている魔杖から、数多の蛇が絡み合った禍々しい魔杖へと装備を変えた
そして垂れているカグナのウサギ耳がピンッと立ち上がり、体中から
「注げ注げ、酒を杯に――満たせ満たせ、贄を皿に――」
カグナとジャイアントパープルの間に、光すら飲み込みそうな真っ黒な球体が現れる。
それと同時にカグナの足元に8本の影の蛇が現れ円を描く。
カグナは詠唱を続ける。
「餓えを唄うは、伊吹の
得体の知れない気配を感じたジャイアントパープルは気配の元がカグナであることを察すると、阻止するためにカグナに向かっていく……だが、黒い球体がそれをさせない。
ジャイアントパープルは、黒い球体に吸い寄せられ捕まった。
カグナは詠唱を続ける。
「蒼き鱗の君よ、凍てつく牙よ――血飲み、
黒い球体に捕まったジャイアントパープルは何とか抜け出そうともがく。
翅を球体から何とか剥がし、そのまま身体も立ち上がろうとするが吸引の力に勝てない。
ストロー状の口をプルプルと震わせながらカグナに向かって伸ばす……遠距離攻撃をして詠唱の邪魔をしようとしている。
ジャイアントパープルの口から、カグナに向かって勢いよく液体が発射された。
先ほどアイが言っていた液体による攻撃だ……だが、攻撃はカグナの頬を掠りわずかなケガを負わせるだけで終わる。
カグナは詠唱に集中しているためか、特に気にせず続けている。
「
カグナの足元からジャイアントパープルが捕まっている黒い球体の元まで氷塊の道が伸びていく。
氷の道は黒い球体の真下で止まると、今度は球体に捕まっているジャイアントパープルに向かって真上に伸びている。
伸びていく氷は次第に形を変えていき、やがて大きく口を開いた大蛇へと変化していった。
その姿はまさにジャイアントパープルすら一飲みで飲み込めるほどの氷塊の大蛇である。
突如と現れた氷の大蛇の姿を見たジャイアントパープルは逃げ出そうともがく……だが、黒い球体からは完全に逃れられない。
「シャァァァァァァァ!!!!!!」
口から冷気が漏れ出してる氷の大蛇は、ジャイアントパープルの抵抗すら気にせず丸呑みした。
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日本神話に出てくる8本首の蛇をモチーフにし作成した|錬成魔法ビルドスペルである